霊夢の賽銭箱に、お金を入れ続けてみた   作:sayutan

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春の訪れ、世は道連れ

「はーるがきーたーはーるがきーたー」

 

幻想郷(こーこー)にーきたーっと。」

 

「ようやく冬が開けたな…親父、春の幻想郷ってどんななんだ?」

 

「あぁ?そりゃー、花見に宴、団子に酒よぉ。」

 

「花見以外季節関係無いじゃん。」

 

「まぁな。しっかし、春は行事が山程ある。年はじめより多いぞ。」

 

「ほーん。んじゃ、これから団子屋も忙しくなる訳だ。そういや最近、親父が三色団子多めに作ってんのも、それが理由か?」

 

「あぁ、もちろんだ。だが、今年はトオルとクシナがいるからな。楽させてもらうぜぇ?」

 

「おーおー、そうしろそうしろ。また倒れられちゃ堪らん。」

 

「はっはっは!精々、台所で団子作ってるだけだがな!」

 

「作る量と時間を考えろって言ってんだ。まったく。」

 

「トオルには今まで以上に走り回ってもらうぜ?多分過去最高だろうな。」

 

「…マジ?」

 

「マジだ。幻想郷(ここ)の宴会好きの異様さは知ってんだろ?春は花見絶好の季節だ。その酒のつまみに団子を頼まれてみろ。作って渡し、場合によっちゃ配達よ。おめぇはまだ幻想郷の春を経験してないから、今は余裕ぶってられるが…倒れんなよ?」

 

「…なぁ、親父よ。」

 

「なんだ?」

 

「ちょっと辞表書いてく…」

 

 

 

 

 

 

バァン!!

 

 

 

 

 

 

「クシナ、たらいまとうひゃく( 到着 )ひましらぁっ!!」

 

「おう!クシナ、よく来てくれ…あぁ?」

 

「うおっ!?酒臭ぁっ!?どうしたんだクシナ!?」

 

「いやぁ…そのぉ…昨晩、妖怪の皆様で行う『迎春の宴』に参加してきましてぇ…ヒック…ちょっと酔っちゃったみたいです…。」

 

「いやー、ちょっとじゃないね。大分だね!?」

 

「そーれすかぁ?…まみろうさんはわらひの10はい飲んでもヘーキだったんですよぉ?これくらい何とも…。」

 

「他の妖怪と比べるんじゃありません!…っかぁ!もう今日は寝てろ、な?」

 

「ふぇ?いやいや、働きますよぉ!!ガン・バリ・マフ!!」

 

「はぁーい。急患1名、寝床へご案内しまーす。」

 

「おぅ。しっかり寝かしつけとけよー。」

 

「ぐぁぁ!!離せぇ!!離せばわきゃるぅ〜!!」

 

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…疲れた…。」

 

「…お?クシナはどうなった?」

 

「布団に入れたら爆睡したよ。」

 

「扱いやすくてよかったな。」

 

「まぁ、布団に入れるまでが大変だったがな。」

 

「そりゃご苦労なこった。んじゃ、クシナの分までよろしく頼むぜトオル。」

 

「へいへい了解。暖簾掛けてくるわー。」

 

 

 

 

 

 

ガララッ

 

 

 

 

 

 

「あっ!!」

 

「あ…えっと、もしかしてリリー…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スウゥゥゥゥゥゥゥゥッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁーるでぇーすよおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

 

 

 

「うわっ!?ビックリしたあっ!?」

 

 いきなりリリーが『春ですよ』コールをして来た。が、やはり早朝に叫んだ為か、朝のサイレンになっている。

 

「さぁ、団子を寄越すのですよ!!」

 

「いきなり叫んで団子を寄越せとか、図々しいにも程があるわっ!!」ポカッ

 

「あいたっ!!な、何でぶつんですか!?約束通り春を告げにやって来たんですよー!?」

 

「それにしたって時間をわきまえろよ!?こんな朝っぱらに来なくたって良いだろうに…。」

 

「い、今じゃなきゃいけなかったんですよー!!」

 

「え?なんでまた?」

 

「う…そ、そんな事より団子!!団子を寄越すのですよー!!もちろん三色なのですよー!!」

 

「はぁ?なんでまた団子をやらなきゃいけないんだ?」

 

「これも約束通りですよ!?団子用意して待っておけって伝えたはずですよー!?」

 

「買いに来るって意味じゃなかったのかよ!?」

 

「そんな訳ないのですよー!?春告精は、春を幻想郷中に届けるため飛び回りますが、その時の春パワーを補給する為に、毎年ここに来て団子をもらっているのですよー!」

 

「あっ!?もしかして親父が朝から三色団子を作ってた理由ってこれだったのか!!」

 

「…。」ムッスー

 

「あれ?お、おい。どうしたリリー?」

 

「フン…せっかく一番に来てあげたのに、台無しなのですよー…」

 

「え?なんだって?」

 

「な、なんでもないのですよー!!」

 

「あーわかったわかった。とりあえず団子が欲しいんだな。ほら、くれてやるから入ろうぜ?」

 

「は、はいなのですよー…。」

 

「…なんでしおらしくなるんだよ…。おい親父ぃ!!春告精だ!もう三色団子できてるよな!?」

 

「んぁ!?春告精様だぁ!?もう団子をご所望なんですかい!?」

 

「何驚いてやがんだ親父、毎年のことじゃねぇのか?」

 

「いやなぁ…春告精様への三色団子は、あちこちで春告精様が春を告げる声が耳に入ってから準備しててな。それでまだ準備してねぇんだよ…。」

 

「あっれぇ?なんか話が噛み合わないんだが…。」

 

「ととと、取り敢えず、今ある団子だけ貰えればそれでいいのですよー!!」

 

「はぁ…わかりやした。今ある分で包みますんで、それを受け取ってくだせぇ。」

 

「はいなのですよー。」

 

「い、いいのか親父?これから売る分は…。」

 

「なぁに、良いってことよ。お客さんにゃ、ちぃとばかし待ってもらえりゃいいさ。」

 

「そりゃそうだが…まぁ親父がそれで良いならいっか。」

 

「そうですよー。私の言うことを聞いていればいいのですよー!」

 

「調子に乗るんじゃありません。」ポカッ

 

「あだっ!!…くーっ!!あなたはすぐ手を出す人間なのですよー!!最低の人間なのですよー!!」

 

「はいはい。悪かった悪かった。」ワシャワシャ

 

「ご、強引に撫でるのもやめるのですよーっ!!」

 

「色々忙しそうだから落ち着かせようと思って。」

 

「誰のせいでこうなってると思ってるですか!!」

 

「リリー?」

 

「あなたですっ!!」

 

「なんでだよ…。なんだ?お前も酒に酔ってんのか?」

 

「酔ってなどいませんよー。ただ、春パワーが強くなって気分が高揚してるだけですよー!」

 

「ん?あぁ、だから今日のリリーは、前と比べて一段と明るいんだな。見てるこっちがほっこりするぜ。」ワシャシャー

 

「…っ!!」

 

「ん?どうした?いきなり黙りこくって?」

 

「…あ。」

 

「あ?」

 

 

 

 

 

 

「あ…あなたの春は、もう来ましたか?」

 

 

 

「へ?春ならもう、リリーが届けてくれたろ?」 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ!!」カァァッ!!

 

「うおっ!?どうしたリリー!?体から湯気出てんぞ!?」

 

「春告精様、今包み終わりまし…」

 

 

 

 

 

 

「ふ、ふんっ、なのですよぉー!!」バシッ!!

 

 

 

 

 

 

「うおたぁっ!?」ドン!!

 

「お、親父ぃ!?」

 

「は…は…。」

 

「リリー!?なんで親父突き飛ばし…ん?」

 

「は、春は…」

 

 

 

 

 

 

「春はみんなの物なんですよぉーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンガラガッシャーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?それって当然…ってうぉぉぉい!?玄関の扉突き飛ばしていくんじゃねぇ!?」

 

 

 

 

 

 

ダッダッダッ…

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

………あー、

 

 

 

 

 

 

「トオルは春に、いつ気付くんだかなぁ…。」

 

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 

 

「いやー、玄関窓取り付けるのに苦労したぜ…。幻想郷の春一番ってのは、やけに騒々しいんだな。」

 

「騒々しくなった原因は間違いなくおめぇだけどな。」

 

「んー?なんで俺なんだ?」

 

「あー、まあいい。それより店の準備終わらせてくれ。もうじきお客さんが来ちまうからよ。」

 

「それもそうだな。うっし!春一番の客さん、張り切って迎えるとするか!」

 

 

 

 

 

 

団子屋奮闘中…

 

 

 

 

 

 

「…なぁ、親父よ。」

 

「…なんだぁ…トオルぅ…。」

 

「ここの人たち春好きすぎじゃない!?昼間でしか働いてないのに、今までで一番働いた気がするわ!?」

 

「…はは、トオルぅ…こんなのはまだ序の口だぜぇ?」

 

「えっ?」

 

「まだ春は始まったばかりだ…これから宴会の為の注文も入り始めるからよぉ…。」

 

「う、嘘だろ!?これ以上忙しくなるってのか!?」

 

「あぁ、団子屋冥利に尽きるぜ…。」

 

「先に俺たちの命が尽きるわ!!ってか、今までどうやってきたんだよ!?」

 

「あぁ…俺もあの頃は若かったからなぁ…無茶の一つや二つどうってこたぁ…」

 

「一年前の話だよね!?一気に老けたわけじゃねぇだろが!!」

 

「いや何、トオルと働いてたらよ、自分の老いに気付かされちまってなぁ…。」

 

「あー、そりゃ悪かったな。」

 

「つー訳で、これから宴会に顔だしてくるわ。片付け頼んだぜぇ!」

 

「十分元気じゃねぇか親父ィ!!っておいこら待っ!!」

 

 

 

 

ガララッ!ピシャッ!!

 

 

 

 

「な…なんて速さだ…。」

 

 親父の逃げ足の速さに驚かされつつ、しんと静まり返った団子屋の客室に、夕焼けの光だけが佇む。

 

「…かーっ!!しゃあねぇなぁもう!!」

 

 今回の親父の行動に不満はあれど、仕事の後の楽しみなら仕方ない。現に、今日一番働いたのは親父なのだ。急な来客や注文に迅速に対応し、疲れた様子は閉店まで客には見せ無かった。

 

 だからまぁ、そういうところは目を瞑ってやる。

 

「さぁって、やりますかねぇ。」

 

 後片付け自体は俺の仕事ではあるのだが、台所付近の片付けは主に親父がしている。

 

 親父はそれをほっぽり出して行きやがったので、それも俺の担当になった。

 

「けっ、団子作る道具だけはしっかり片付けてやがる…。」

 

 親父が残していった食器や湯呑茶碗を掴み、水を貯めた桶に通して汚れを落としていく。

 

「うーむ、石鹸の量が減ってきたなぁ…また永琳さんに頼むかぁ…。」

 

 使い続けて小さくなった石鹸を見て少々面倒に思う。

 

 というのも、永琳さんからコレを譲り受ける前までは、食器や茶碗は洗って天日干しをし、翌日に使用するというサイクルだったのだが、天候が悪い日が続くと干せないで、衛生的に良くなく、団子を食器に乗せて提供できなくなる可能性が出てしまうのだ。

 

 それを解決するために、永琳さんを頼ったのだが…。

 

「…しかしなんだ、この生活に慣れたからいいものの、技術的には外に比べて遅れ過ぎてるんだよなぁ…。」

 

 桶に浸した手を見つめながらふと思う。幻想郷の技術面は遥かに遅れていると。

 

 まず、水道は通っていないし、電気も無い。街灯の光の元は蝋燭だ。長い間は保たないし、そもそも夜に出歩く人も少ないため、滅多に点くことは無い。

 

 衛生面も同じで、基本日光に頼る。水も、道具も、自分の体さえ太陽に頼ることもある。

 

「まぁ、精々鍛冶や建築関連がやっとか?」

 

 団子を作る道具を並べた棚に一つ、俺が料理をするために使う包丁を見て思う。こういう鉄の加工や、木組みの家の建築、橋などの建設は人里でもこなせる技術としてあるが、それ以外はさほど発展していない。

 

「製紙技術もなぁ…大量にはできないっぽいし…。」

 

 紙を作る技術もありはするが、聞屋さんの配る新聞のように、一度に大量に生産するのは厳しいらしい。

 

「うーむ…どうしてこう、原始的というか前時代的というか…。」

 

 と、ふとそんな事を思っていると、後ろの方から足音が聞こえてきた。

 

「ふぁ…あ、トオルさん、おはようございます…。」

 

「…おぅ、おはようクシナ。」

 

 結局店じまいの時間まで寝てたクシナがようやく起きてきた。

 

「うぅ〜、頭がぁ痛いですぅ〜。」

 

「だーっ!!まだ頭痛いなら大人しく寝てろ!!」

 

「そ、そんなわけにはいきませんよー。もう開店するんでしょう?」

 

「外見てみろよ!!綺麗な…」

 

「朝焼けが見えますねぇ〜。今日はいい天気になりそうで…」

 

「…胸焼けどころか全身焼けてんな…。」

 

「え?」

 

「あーもう!!ほれ、水飲んで、ゴー!!ホーム!!」

 

「え!?で、でも…!!」

 

「今日はお休みなの!!だから働かなくていいの!!オーケー!?」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「そうなの!ほい水!!」バッ!!

 

「はいゴクッ!!」プハー!!

 

「マミゾウさんのところへ帰りなさいっ!!」ビシッ!!

 

「やったー!!今日はお酒飲み放題だぁ!!いっぱい飲むぞぉ!!」ダッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ダッダッダッ…

 

 

 

 

 

 

「…うーん。先に酔い止めの技術を発展させたほうがいいのかもなぁ…。」

 

 優秀かつ唯一、外の世界に引けを取らない程の酒の製造技術を持つ幻想郷で、果たして酔い止めの技術が発明されるかどうか、首を捻りながら、残りの片付けを済ませていくのであった…。

 

 

 

 

 

 

青年片付中…

 

 

 

 

 

 

「ふいーっ、ようやく終わったぜ…。」

 

 すっかり日も沈んで、辺りが月明かりに照らされ始めた頃、ようやく片付けが終わる。と、ちょうどその時、

 

 

 

 

 

 

ガララッ

 

 

 

 

 

 

「おう!トオル、任せちまってわりぃな。」

 

「ま、今日ぐらい構わねぇよ。」

 

 宴会に行っていた親父が帰ってきた。

 

「で?どうだったよ宴会は?」

 

「おう、楽しかったぜ?あいつら話し合いが終わった途端ハメ外しやがって…いつもより飲んじまったぜ…ったく。」

 

 そういう親父の顔はほんのり赤い。普段は酒を飲まない親父だが、今回は流れで勢いがついていたのだろう。なれない感覚に混乱してるようだ。

 

「そうかい。楽しそうで何よ…ん?」

 

(ちょっと待て。今なんて言った?"話し合い"?親父は今日宴会に行ったんじゃなかったっけか?)

 

 なぜか嫌な予感がしたが、とりあえずその"話し合い"とやらの内容を聞き出すとする。

 

「なぁ親父…。」

 

「おう、そうだ。トオルに土産があったんだった。」

 

「え?」

 

 そう言いながら、親父は懐から小さな巾着袋を俺に手渡して、言った。

 

 

 

 

 

 

「よしトオル。おめぇ、明日から守谷神社の賽銭奉納士な!!」

 

 

 

「ふざけんな親父ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

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