妖夢二冠スゲェ…
「さぁ!今日も頑張るぜぇトオル!!」
「おうよ!親父ぃ!」
いつものように、団子屋『梅枝』の朝は始まる。台拭いてー、椅子並べてー、団子包んでー、お賽銭もらってー....。
ん?
台拭いてー、椅子並べてー、団子包んでー、お茶用意してー、窓の埃取ってー、お賽銭もらってー....
「おい親父ぃ!!お賽銭渡すんならいっぺんに渡してくんね!?」
「いやー、お前いっつも賽銭渡すときに嫌な顔すっからよー。少しずつ渡しゃあ少しは気が....」
「気が散るだけだわ!!いいから全部寄越せぇ!!」
「わーったわーった、ほれ。これだよ。」
親父はいつもの袋に入れたお賽銭を、面倒にも十等分に分けていた分の八つを放り込んで渡してきた。
「ったく....そこまで気ぃ使うんならその役員やめさせてもらったらどうだ?」
「はっはっは!!まぁ、面倒なもん預かったのは認めっけどよぉ、何にしてもお前に任せるつもりだったからなぁ!」
「親父クズだ!?」
「いってな。おれゃ団子作るくれぇしか能がねぇ老人だからよ。他のことは全部かみさんに任せてたんだよ。」
「親父は結婚してねぇだろが!!」
「わかったわかった。トオルの言い分はよーくわかったから、ほれ、まずは仕事だ仕事。」
それを言った親父はいつものように、団子を串に刺して丁寧に作っていく作業に没頭し始めた。
「....ったく....。」
この状態になると親父は何言っても聞こえないので、諦めて暖簾をかけに外に出ると....
「は....春を....くれぇ....。」
何か、
「春告精が、夜連れてきてどうすんだよ....」
朝っぱらから縁起の悪いものを見させられた気がしたので、取り敢えず中に入って三色団子を親父からぶんどってくる。
「お、おいトオル!?何してやがる!?」
「お客さんだよ!!ちぃと面倒なお客さん!」
うん。まぁ、さすがにあんなん見せられちゃあねぇ?朝に寺子屋いく奴らの悪影響になりかねんし?『幻想郷はおしまいだぁ!!』と、誰かが負の感情に当てられて気が触れてもらっても困りますし?
と、言うわけでふよふよと浮かび去っていく春告精の目の前に団子を見せる。すると、ピタッと動きを止めて団子を凝視する。
「おい春告精。三色団子は何を表しているか知って....」
「はーるでーすよー!!!」
あまりの声音で叫んだ春告精の声は、早朝ということもあり、どちらかと言うと朝を人里中に届けてしまった。
「うるさっ!?ち、ちょっと控えて....」
「我が世の春が来たぁーーー!!!」
「ち、ちょっと落ち着けぇ!!」
「むごっ!?」
あまりにも元気がいいお口なので、三色団子を口の中にねじ込んで春告精を沈静化することに成功した。
「....ムグムグ」
「ほぅ....やっと落ちつい....」
「うんまぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
「フンッ!!」
「もがっ!?」
またも三色団子を犠牲にして、春要素を見つけて異様に興奮した春告精を沈静する。
ふん。またつまらぬ口を塞いでしまった。
じゃなくて、これではらちがあかないので、当初の予定を実行しよう。
「さて春告精よ。さっき三色団子は春を表していると言ったが、それは正解だ。だが、この三色には春に関連した意味がきちんと込められている。まずはこの桃色が表すのは?」
「....ムグムグ....桜!」
「ふむ。じゃあ緑は?」
「ふきのとうなどの、自然の芽吹きを表すのですよー!」
「じゃあ最後に白は?」
「冬なんて滅べばいいんですよ....」
「冬に恨み持ちすぎじゃね!?」
(本当は白酒とかが由来なんだがなぁ....んー、当初の予定では三色団子渡してバイビーだったんだけど、白色の部分めっちゃ睨んでるのがわかるし、さてどうしたものか....ん?そういえば....)
と、春告精の服をみて指摘する
「じゃあさ、なんでそんな恨めしい色の服を着てるんだ?」
その言葉に目を見開いた春告精は、自分の服を掴んでじっと見つめたまま停止した。
「そんなに冬のイメージカラーが嫌いなのに、なんでその服着てるんだろな?」
その言葉に、停止していた春告精の肩が震えた。
「た、確かになんで私はこんな服を....これじゃ春告精じゃないのですよ....ただのかまぼこ精になってしまうのですよ....いっそのこと全部ピンクと緑にしてしまったほうが....」
そういって自分をひたすら卑下し始めた春告精の周りに再び陰が浮かんでくる。その気配は先程よりもなぜか強力であり、近くにいるトオルをまるで飲み込もうとしていた。
(うおっ!?マズイマズイ!?何とかしなければばば....!!)
「そそそ、そうだ!!あれだよ!!冬があるからこそ春が際立つって言うかさ、ほら!!緑とピンクの服よりも春告精は今の服が断然似合っているっつうかさ、もう何?お前しか春告精やれない的な?冬の白を利用しまくって春の白を代表してるのが春告精って感じでさ!!お前の目の青色とか綺麗な金髪とかさ、むしろ春の白が可愛く仕上げてるって感じでさ!いや、何着ても可愛いとは思うけ....ど....?」
必死に捲し立てて春告精を説得していたトオルだが、ふと目に入った春告精の様子に驚く。掴んだ服を見つめたまま、顔を伏せてプルプル震えているのだ。
「お、おいどうした春告精....」
「ふ、ふん!なのですよーっ!!」バシッ
行きなり叫んだと思ったら団子全部取られちまったよ....しかも後ろ向いちまうし....嫌われたか?流石に。
「と、取り敢えずこの春はいただいていくのですよー。」
「あーはいはい。もともとお前にやるつもりだったからいいけどな。」
「ふ、ふん!あと、春の白色は白酒が由来なのですよ!!知ってたのですよー!!」
「あっそ。流石春告精ですな。春について右に出るものはいませんな。」
「....そ、それと、私にはきちんと名前があるのですよ!!」
「え?春告精にも名前あるんだ。」
「そうですよー!!リリーホワイトって名前があるんですよー!!」
「へー。ってか、名前にまで白色あるじゃん。実は白色めちゃくちゃ好きなんじゃねぇの?」
「ーーーっ!!もういいのですよーっ!!春になったら来てあげるから、団子用意して待ってるがいいのですよーーー!!!」ピューン
そういって春告精は冬空の彼方へと飛んでいった。
「あー。行っちゃった....まぁいっか、機嫌なおったみたいで何よりだ。」
そういって店に戻るトオルには、リリーの顔が春色に染まっていることなど、知るよしもなかった。
「は....はーるでーすよー....///」
◼️◼️◼️
太陽が有頂天にいるのが疲れて30度くらい傾いた時間。昼時を過ぎた団子屋には特に人の来る気配は無かった....
「うーん。もうすぐ3時くらいか?おやつ時だが、今日は来るかねぇ....」
「さぁな。年取った者にとっちゃあ寒いのはこたえるからな。まぁ、トオルがお賽銭入れにどうしても行きたいってんなら行ってきてもいいぜ。」
「へいへい、是非そうさせてもらいますよーっと。」
店番の服から外に出るための厚着に着替えて、颯爽と博麗神社に向かっていく。
◼️◼️◼️
「うい~っ....さっぶぅ!!」
ビュービューと北風が吹き抜ける道を歩きながら、寒い冬に愚痴を言う。肌に突き刺さるような寒気は、外の世界で作られるような防寒着はないため、ほぼ直に体温を奪っていく。
「くーっ....こんなときに誰が外に出るかっての....」
そう思ったそのとき
「まてーっ!!」
「ウフフ♪捕まえてごらーん♪」
視線の先にはチルノと雪女が空中で鬼ごっこをしていたのであった。
「はぁー。まぁ、寒いのが好きな妖怪には願ったり叶ったりだろうからな....大目に見るか....」
トボトボと歩を進め、ようやく博麗神社に着いた。
「えー。恒例の賽銭確認ですが....301円。カイロならいっぱい買えるな。ヒョイっと。」カランコロン
「うー寒っ!!さっさと帰ろう....」
トットコトー....
....
ガラリ
「うーん。お賽銭の音がぁ....聞こえたぁ....」
「おい霊夢....こんな寒い時に参拝客なんてきやしねぇよ....」
暖かい炬燵の中にいた魔理沙と霊夢が、布団にくるまって外に出てきた。
「で、でもぉ....聞こえたんだもぉん....」
「はいはい....あれ?このパターンは....?」
「....」
「お、おい霊夢?まさか....」
「あったのよ....お賽銭が!!」
霊夢が指の間に挟んだお賽銭を見せつけてくる。
「くっ!!今すぐ行けば....」
ビュオオッ!!!
「うーっ!!ムリムリッ!!こんな寒いのに外出れるかってのっ!!」
「そうね。今日は炬燵でゆっくりしましょう。はーっ、でも、お賽銭が暖かく感じるわぁ♪」
「誰かが直前まで握ってたんだろ....うわっ!?鼻につららができてやがるっ!?早く戻るぞっ!!」
◼️◼️◼️
「ふぅ~。しっかし、やけに神社の周りだけ寒かったなぁ....やっぱりあの雪女のせいなのかねぇ?」
ほぅ....と白い息を吐きながら、人里を歩いていると....
「ん?誰だあの人?」
そこには団子屋『梅枝』の前で、そわそわとした挙動で、あっちにいったり~こっちにいったり~している。白髪の、黒いカチューシャを着けた、腰に二本の刀を提げている....何より彼女の周りを飛び回る霊魂が特徴的であった。
「おーい。そこの人。何やってんだ?」
「ふぇっ!?あ、あーはい。な、何でしょうか?」
「それはこっちが聞きたいんだが、うちの店になんか用か?」
「へ!?あ、あぁ~、それは....。」
「まぁ、なんだ、外は寒いから取り敢えず中入ろうぜ?」
「わ、わかりました....」
「親父ぃ!!いくら寒いからって入り口閉めてちゃお客さん入ってこれねぇだろうがぁ!!」
「あぁ!?入り口閉めねぇと部屋あったまら....ね....ぇ....。」
「ん?どうした親父ぃ?」
「....と、とととトオルが....」
「?」
「トオルが女連れ込んできたぁ!!!」
「ちっげぇよ!?」
「違いますよ!?」
「やべぇ。赤飯なんてうちに置いてねぇぞ!?こ、米屋に行かねぇと....」
「何もめでたくねぇしわざわざ外に行こうとしてんじゃねぇよ!!お客さん!外で開いてるかわかんなくて入ろうか迷ってたお客さん!!」
「ど、どうも。」
「お、おう。そうか、取り乱してすまなかったな。まぁそこに座ってくれ。詫びに少しサービスすっからよ....。」
「いえいえそんな....」
「ま、ここは受け取っておいてくれ、親父が全面的に悪いからな。」
「は、はぁ。わかりました。」
トスッと座敷に腰を下ろした彼女は隣に霊魂をおいて、出されたお茶を静かに啜っていた。
「ほい、おまちどおさま。三色にきな粉、餡によもぎだったな。あとこれはお詫びの団子汁粉だ。ごゆっくり。」
「はい、ありがとうございます。」ペコリ
そういって団子に向き合った彼女は、まるで気品のある女性のようにゆっくりと団子を口に運んでいった。
それを端で見ていたトオルと親父は....。
「おい、あの嬢ちゃんはどこの娘だ?」
「知らねぇよ、寺子屋でも会ったことねぇし....あーでも、買い出しの時にチラッと見かけたような....?」
「ふーん。あんくらいのべっぴんさんなら、トオルの嫁にでも来てくれりゃいいんだが....」
「ありゃ高嶺の花だろ....」
「いや?お前に似合っているとかじゃねぇ。うちの看板娘に....」
「おいっ!!」
「あ、あのー。」
「「は、はい!!なんでしょう!?」」
「この団子....とても美味しかったです。」
「おぅっ!!自慢の団子一筋だからな!!当然よ!!」
「あーあ。すっかり鼻高くなってるよ....。」
そんな二人を見据えて、綺麗な膝を向けたと思ったら、両の手を付き、頭を下げて言った。
「ご無礼を承知で申し上げます。私、魂魄妖夢に、おじさまの団子作りの技術をご教授願えないでしょうか!!」
....え?