魔法科高校の五条悟   作:YUTO1247

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五条悟と七草真由美 その2

 「約束は関係ないだろ!」

 「あります~!」

 「ねぇよ!」

 

 五条と真由美だが、未だに言い争っていた。

 沈静化していくどころかさらにヒートアップしていく二人。

 普段は中々お目にかかれない素の真由美と最強問題児五条のやり取りが面白く、特に何も言わずに見ていたが流石に見兼ねた摩利が二人を止めた。

 

 「止せ、二人とも」

 「でも摩利!」

 「だってコイツが!」

 

 互いに相手が悪いと指をさす二人に呆れた摩利だが呆れてばかりもいられない。

 

 「いい加減にしろ」

 

 摩利の声で二人は黙った。

 正に鶴の一声だ。

 

 「まず真由美、いくらバカにされたからと言って少し大人げないぞ」

 

 摩利に指摘され、シュンとしている真由美。五条はその姿をざまぁ見ろと言わんばかりのうざい顔で見下していた。

 

 「そして五条、前々から思っていたがお前は目上の人間に対する態度がなってなさすぎる」

 「え、俺もかよ!」

 「当たり前だ!むしろ6割はお前が悪い」

 

 今回の件も元を辿れば五条の煽りが原因だ。

 摩利から説教をくらうのも必然だった。

 

 「少しは敬語を覚えたほうがいいぞ」

 「はいはい……」

 

 無論、天上天下唯我独尊、天上天下唯我最強を地で行く五条は敬語など覚える気がない。

 もしも使うとしたら相手が自分よりも強かった場合だ。

 ただ五条より強い存在など地球上にはいないので、実質的に使う気がないのと変わらない。

 

 「本当にわかっているのか?社会に出た時、後悔するのはお前――五条はどこだ?」

 

 振り返ると五条は既にいなかった。

 摩利が生徒会室を見渡すがどこにも姿は見えない。

 生徒会室はそれなりに広いとはいえ、隠れられる場所はない。

 

 「五条なら渡辺委員長が話しているときに出て行きました」

 

 告げたのは達也。

 常人では見逃してしまうほどの速さで逃げた五条だが達也には見られていたようだ。

 

 「五条ッ!!」

 

 摩利の怒りの声が生徒会室にこだまするが五条には届いていなかった。

 

 ◇◇

 

 「あーうるせー」

 

晴れた空だったが眩しくはなかった。

ここは屋上。普段は解放していない為、誰もいない場所だ。

 五条は着くと同時に仰向けに寝た。

 

 「ったく、ちょっとからかっただけでヘソ曲げやがって……ガキか!」

 

 それはお前である。

 

 「ハァ……どうすっかなぁ」

 

 手掛かりが得られたかもしれなかった。しかし五条はそのチャンスを捨ててしまった。

 つまらない意地を張らずに素直に謝ればよかったと少し後悔していた。

 ただ、後悔はしていてもきっとあの場面では絶対に謝らないという確信があった。

 

 「ふぅ……」

 

 サングラスを外し、目を瞑る。

 

 『ん~そうね……かわいそうだから』

 『は?』

 『だって悟くんは人を助けたのよ。それって立派なことなのに、誰も労ってあげないなんて可哀そうじゃない』

 『……』

 『貴方があのおばあちゃんを助けているところ、私は確かに見ていました。よくやったわ、悟くん』

 

 瞼の裏に映る思い出。

 なぜ今この記憶が出て来たのだろうか。

 

 「……ッ」

 

 心に熱い鉄を流し込まれたかのような気分だった。

 鼓動の速さは変わらなかったが鼓動の大きさは大きくなった。

 なんだ。

 この感情は一体なんだ?

 この感情にもしも名前があるならばそれは一体なんだ?

 もしもこの感情が――

 

 (ないない。俺があの女に惚れるとか絶対ないわ)

 

 「……もう昼休み終わる時間か」

 

 いつの間にか午後の授業が始まる時間になっていた。

 真由美との言い争いに意外と時間を使っていたらしい。

 気だるげな表情のまま上体を起こそうとして辞めた。

 とはいえ、行かないわけにもいかないので五条は寝た姿勢のまま、印を組み、跳んだ。

 

 ◇◇

 

 「うわ、すげぇ人混みだな」

 

 五条が見下ろす先には人、人、人の大渋滞が起きていた。

 新入生を確保したい者たちが血走った眼で獲物(新入生)を探している。

 既に何十人かは捕まってしまったみたいだ。

 

 「五条悟はどこだ?」

 「今年度入試首席だ」

 「絶対に捕まえるぞ!」

 

 入試首席の超大型新人、どの部活も喉から手が出るほど欲しい逸材だ。

 しかし今のところ五条は部活には入る気はない。

 まずは記憶を取り戻す、それが五条にとっては一番優先すべきことだ。

 また、興味のある部活がないことも大きかった。。

 

 「うわ、捕まったら面倒だな…ん?」

 

 ふと五条の目線の先に見知った顔が映った。

 それは入学式の日に出会った人生初の友人たちだ。

 

 「雫とほのか、捕まっちゃったんだ」

 

 四方八方からの勧誘の嵐に二人とも困惑しているようだ。

 深雪や五条には及ばないが二人とも入試成績は優秀。

 入ってほしい存在だろう。

 

 「全く、世話が焼けるな」

 

 言葉とは裏腹に声色は嬉しそうであった。

 両手を組み、その場から跳んだ。

 

 (さて…まずは二人をあの中から出さないとな)

 

 「え、悟君!?」

 「……浮いてる」

 

 二人は宙に浮く五条に気が付いたようだ。

 規格外だとは思っていたが、まさか浮遊魔法を使えるとは思ってもみなかった。

 空中にいる五条を唖然とした顔で眺めていた二人だが、次の瞬間には五条は消えていた。

 

 「え、どこに?」

 「隣にいるよ」

 「きゃあ!?」

 

 突然隣に現れた五条に驚いたほのかは尻餅をついた。

 一瞬痛みが走ったがすぐに引いたため、雫の手を借りて起き上がった。

 

 「二人とも、随分揉まれてたねぇ」

 「悟くん、いつの間に!」

 「どうやって…」

 「ん~跳んだの」

 

 突然現れた五条に周りの勧誘は勢いを削がれてしまった。

 その隙を逃す五条ではない。

 

 「さ、これでしばらくは大丈夫だろ」

 

 勧誘されていた場所から少し離れた場所に跳んだ。

 

 「え、え!?」

 「嘘……」

 

 騒音に囲まれていた場所から一転、人通りの少ない、静かな場所にいた。

 二人からすると突然変わった景色。なにが起こっているのかわからないだろう。

 

 「悟なにしたの?」

 「ま、これも無下限の応用かな」

 「無下限ってあの届かなくするバリアのことですか」

 

 思い出すのはカフェ【紗夜】での一幕。

 五条が持つ五条家だけの魔法。

 

 「そ、自身を中心に0に収束する無限を作り出すって説明したよね」

 「うん」

 「無下限はそれだけの魔法じゃない。応用すれば瞬間移動だって可能なんだ」

 「「!!」」

 「これでも入試首席だからね、魔法は結構得意だよ」

 

 不敵に笑ってみせる五条に二人は認識を改めた。

 あの天才深雪をも超える天才。

 普段の態度からは想像できないが間違いなく魔法師として自分たちよりも頭二つ以上は跳び抜けている。

 

 「でも、魔法使っていいの?」

 「あ……」

 

 雫の冷静な突っ込みに固まる五条。

 その反応で二人は察しがついた。

 

 「でも魔法使わなきゃあんな人混み抜けらんねーって」

 

 開き直る五条。

 しかしその通りだった。

 

 「で、二人はどうする?このまま帰んの?」

 「えっと一応部活を観ていきたいんですけど」

 「あの人混みじゃ無理」

 「ふ~ん」

 

 どうしようかと相談する二人を視て五条は――羨ましい気持ちになった。

 

 (友達と駄弁って、部活やって……)

 

 五条が思い描く青春の一コマを切り取ったような光景に胸を締め付けられた。

 青い春はもう始まっている。

 だが青春を始めるには、何も無さ過ぎた。

 友人も家族も趣味も思い出も、何もない。

 あるのは家と戸籍と知識だけだ。

 

 (さっさと記憶取り戻さないとな)

 

 早く今を生きたい。

 そのために過去を取り戻したい。

 自分のアイデンティティが皆無というのは想像以上に辛いものだ。

 

 「悟?」

 「大丈夫?さっきからぼーっとしてるけど」

 「ん、ちょっと考え事をね」

 

 二人に話かけられ、漸く自分の世界から脱した五条は二人に目線を向けた。

 

 (まぁ、なんとかなるでしょ)

 

 「どっか気になる部活あんの?」

 「え?」

 「俺がそこまで連れてってやるよ」

 

 ◇◇

 「はい、着いた」

 「二度目だけど、信じられない……」

 「うん、でもすごく便利」

 

 二人は特に入りたい部活などはなかったようだが、雫が『バイアスロン部が気になる』というのでそこに行くことにした。

 ちなみに目立ちたくはないとの希望があったため、近くの人目につかない場所に跳んだ。

 

 「じゃあ俺は――」

 「観に行かないの?」

 「折角だから一緒に見学しようよ」

 

 立ち去る五条を引き留める二人。

 五条は部活に入る気はないが呼び止めてくれた二人の誘いを断るのはどこか気が引けた。

 

 「ま、暇だし。俺も一緒に行くわ」

 「うん、行こう」

 

 ふと頬を撫でる風が運ぶ桜の花弁に目を奪われた。

 

 (……いたのかな、俺にも)

 

 こんな友達が。




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