かつて地球という星で大きな事件が起きた。まぁ、極一部の人間しかそのことは知らないし、それ以外の人にとっては日常が脅かされるものでもなかった。何しろ、魔法なんていう誰でも一度は夢見るファンタジーで非日常な事が関わっていたなんて、誰も信じちゃくれないだろう? だが、少なくとも、俺を含め何人かの人生を大きく変える出来事だったのは確かだ。
ん?俺がだれかって?そんなことはどうでもいいことさ。名無しの権兵衛でも、ジョン・ドウでも好きに呼んでくれ。…だが、あえて言うのなら俺は
ミッドチルダ郊外にある廃棄区画。ここは倒壊したビル等の建物が撤去されること無く、廃棄された文字通り廃墟だ。本来、人が寄り付くことも無いような場所だが、今は激しい音が周囲に鳴り響き、複数のロボットが獲物を追うように群がっていた。
そのロボットの名は『ガジェットドローン』とある科学者が作った何とも迷惑な玩具だ。実際、性能自体はそこそこで単体なら何の問題にもならないが厄介な能力を持っている上に尋常じゃない数が量産されているせいで迷惑な存在としか言いようがない。そんなガジェットが追っているのは、一機のロボットの様な存在だった。ガジェットとの違いは人型なこと、背中にX字のスラスターを持ち全身の装甲が銀色なこと、そして何より胸部に髑髏のレリーフが施されていることだった。
その機体は追ってくるガジェットの方を向きながらスラスターを吹かし、後方に下がっていく。ガジェットからは絶えず熱光線が放たれるがそれを難なく躱し、サイドスカートから二丁のライフル『バタフライバスター』を構え数発ビームを放つ。放たれたビームは正確にガジェットを捉え直撃するかのように見えたが、その全てが四散していく。これがガジェットドローンの持つ厄介な能力フィールド系魔法防御
それを確認した操縦者は内心舌打ちをしながらバタフライBを折りたたみサーベルモードに切り替える。今度はガジェットの群れに突っ込むようにスラスターを吹かす。フェイスオープンしながら凄まじいスピードで突っ込む様は人ならば恐怖を感じる事だろうが、ガジェットには感情なんてものは無い。こちらに接近するのを確認したガジェットはアームケーブルを伸ばす。捕縛するにしろ、破壊するにしろ直ぐそばまで来たのならサーベルも消され成す術が無くなるからだ。ガジェットから伸ばされた無数のアームケーブルがその機体を捉えようとするが、それらは全て切断された。見れば僅かに刀身が揺らめいているものの、AMFの範囲内で形を保っている。これはその機体に施されたあるシステムによるものだ。
対
接近戦に移行してからは一方的な戦闘が行われていた。ガジェットの性能自体は決してその機体の性能を上回るものではなく、機動性という点に置いては天と地程の差がある。その結果、至近距離でもアームケーブルや熱光線といった武器をことごとく回避され、虎の子のAMFも無効化されている状況では勝っている点は一対多数ということのみだった。そして、何よりもその機体を操る操縦者が自身の期待をよく理解し、戦闘経験が豊富だというのが数的不利という状況で戦えている要因の一つでもある。
ガジェットのアームケーブルを切り裂き、本体を両断する左右から迫って来る相手にはバタフライBを投げつけ、背後の敵には腕部に装備された『ブランドマーカー』で突き刺す。破壊されたガジェットを踏み潰すように群がってきた敵には投げたバタフライBを腰に装備されたシザーアンカーに掴ませそれを振り回すことで一気に殲滅する。そして最後にそのままシザーアンカーを横なぎに振るいビルの柱を破壊する。そうすることでギリギリのバランスを保っていたビルは瞬く間に倒壊し、最後に残っていたガジェットの数体を下敷きにした。
「ふぅ…疲れたなぁ」
『お疲れ様です。マスター』
戦闘が終了すると全身に装備されていた装甲は解除され蛇のレリーフが刻まれたネックレスに変化した。そして、そこに残ったのは無残に破壊されたガジェットの残骸とサングラスをかけた一人の青年だけだった。
「相変わらず全力の戦闘はできないけど、大分様になってきたかな?」
『視覚共有をすればもっと楽にすみますが?』
「あれは苦手なんだよ」
そう笑いながら青年は歩き始めた、遠くにはリニアレールが見える。目的はガジェットとの戦闘ではなくある物の回収で、それは情報によればあそこにある。多少、イレギュラーはあったがそれも済んだので問題あるまい。
「そんじゃあお仕事しますかね」
『さっさと終わらせて休息を取る事提案します』
青年の名は
これは彼の冒険の物語だ。
まぁ、なんも面白く無い冒険の話だけど付き合ってくれよ。