「ただいま」と言うために   作:ZG

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前回ああ言ったのに早速一週間サボってしまった……


Memory 2

それ(・・)はいつもそこに居た。人のシルエットをしていながら、人とはかけ離れた姿をした機械。製造されたのは数年前でおおよそ設計者の意図通りに仕上がったそれは従来のデバイスとはかけ離れた性能を持って生まれた。しかし、それは欠陥品として生まれてしまった。性能、機能共に完璧に作り上げたものの、それは誰にも起動させる事が出来なかったのだ。そう、誰にも(・・・)。管理局の名立たるエース達を主と認めることは無かった。立った一人の平凡な少年を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行こうファントム。初陣だ」

『イエス。マイマスター』

 

少年の名は「グレイ・エインシャル」デバイスは「ファントム」

緑と白の鎧を身に纏いリニアレールに降り立ったグレイは自身のデバイスにそう言い放ち、そのままサイドスカートから『フレイムソード』を引き抜きリニアの天井を破壊しようとすると、別の声が聞こえてくる。

 

『私もいますよ!マスター!』

 

グレイともファントムとも違う少女の声、「ハロロ」の声だ。ハロロは魔法の収集と研究と言う名目(本音は唯の暇つぶし)でグレイ自身が生み出したサポートAIなのだが。余計な事を教えた所為か、暇あらば色々な所から表には出ないような情報を引っ提げて帰ってくるとんでもないトラブルメーカーに成長していた。

もっとも、そういった所を含めてそこらのデバイスより優秀な(土産話のように持ち帰る情報に胃を痛めることにはなるが)性能を誇り、戦闘面のサポートも十分以上にこなせるのでグレイからは重宝されている。

 

先に降りた二人の少女を追うようにリニアレールの天井を破壊し内部に侵入すると無数の光熱線とアームワイヤーがグレイに殺到する。狭い車内を縦横無尽に飛び回り可能な限り回避しながら接近する。距離が近づくにつれ攻撃の密度が厚くなり。回避が難しくなるとフレイムソードでアームワイヤーを切り落とし、光熱線はプロテクトでガードする。

 

「ハッ……ハッ……」

 

複数のガジェットの攻撃を見事に捌ききっているものの、段々と動きのキレが落ちてくる。元々グレイは武闘派の人間ではない。魔力量も並以下、稀少技能(レアスキル)も変換資質も持たず士官学校の同期ほど戦闘センスがあるわけでも無い。いくら優秀なデバイスとサポートがあったとしても長時間の戦闘は危険。

そう考えたグレイは更に加速しガジェットの懐に飛び込みフレイムソードで切り捨てる。切り捨てたガジェットの後ろから光熱線を撃ち込まれるが、寸でのところで横に飛び回避、既にグレイを包囲するように囲んでいたガジェットに直撃する。向こうの方が数が多く、こっちの武装では広範囲の殲滅は出来ない。それに対して出したグレイの結論は同士討ちをさせる事。狭い車内で複数の敵を相手するのなら、自分だけではなく相手にやらせばいい。実戦慣れしていない人間がやるようなものでは無い。もっとも、グレイもガジェットに対抗できる能力を持つファントムと索敵、予測、魔法補助なんでもござれのハロロのサポートが無ければやろうとは考えなかった事だ。

 

『5時方向アームワイヤー来ます!』

 

右後ろから繰り出されるアームワイヤを掴み振り回すことで周囲のガジェットを薙ぎ払い、最後に引き寄せ逆手に持ったフレイムソードを突き刺し破壊する。

 

『次!2時と8時の方向から光熱線!』

「ファントム!」

『Iフィールド全開』

 

ファントムのツインアイが強く発光し、ガジェットのAMFをかき消していく。次にラウンドシールドを使い光熱線を反らし別のガジェットに直撃させる。魔法攻撃ではなく、ガジェットの内臓電池による攻撃はいくらAMFといえども無効化は出来ず、次々と破壊されていく。

 

「Iフィールドの調子は良さそうだな」

『当然です。マイスター達が完璧に私を仕上げたのですから』

 

ファントムに搭載されているワンオフの能力『Iフィールド』

本来の世界では機体の周囲に展開される対ビームバリアだったが、この世界ではある少年が魔法を無効化する防御システムとして設計していた。

その少年はAMFという脅威に対する対抗策として、自身を中心にあらゆる魔法に干渉するフィールドを形成し範囲内の魔法を構築するプログラムを書き換え、無力化するシステムを提唱した。当初は所詮子供の考えた荒唐無稽な物だと一蹴されたが、ガジェットドローンの出現やAMF装置の小型化といった、既存の魔法による犯罪者の取り締まりが困難になりつつあることなどが原因になってか、試験的にIフィールドを搭載したデバイスの製造と運用の認可が下りた結果。ファントムが作られた。

製造の過程においてIフィールドを形成するための装置の大型化によるバリアジャケットの装着者に合わせた調整といった汎用性が失われたこと、維持するための莫大な魔力、Iフィールドの副産物の能力による要求される操縦技術の高さ、AMFの濃度によっては逆にIフィールドが無効化されることなどの問題点が見られたものの、対AMFの戦術が確立されていない現状ではIフィールドの対AMF能力・魔法戦における優位性を十分に証明している。

 

「Iフィールドの持続時間は?」

『最大出力のままだと10分も持ちません。出力を落としても15分が限界です』

「カートリッジを使ったら?」

『蓄積されていた分をカートリッジで補おうとすればマスターの身体がもちませんよ!』

「なら10分以内に終わらせるのが理想的だな!」

『この程度の敵10分もいりません』

 

グレイの役割はリニアレール内のガジェットの殲滅。ガジェットに優位に立てるファントムを使いガジェットの大半を殲滅しその間にグレイの同期二人、スバルとティアナがリインフォース・ツヴァイのサポートの元、リニアのコントロールを奪取もしくは停止、そして、年少組、エリオとキャロが件の遺失物(レリック)の回収をする手筈になっている。中々にハードな役割だが、ファントムの運用評価もグレイの役割に入っているため多少の無茶も仕方ない。

 

(俺は武闘派じゃないんだけどな⁉)

 

内心そう愚痴りながらリニアレール内を移動し、ガジェットを破壊する。最後の一機をフレイムソードで切り裂き両断する。

ガジェットを殲滅したのを確認したグレイはどちらの援護に行こうか迷っていると、リニアの後方で大きな爆発音が聞こえる。ハロロによると年少組、エリオとキャロがⅢ型のガジェットを倒したようだ。

続けてティアナから念話がくる。

 

『グレイ!そっちの首尾は⁉』

「丁度終わったところだ」

『こっちも終了よ』

『レリックの回収終わりました!』

 

リニアの奪取・ガジェットの殲滅・レリックの回収。新人たちの任務は満点とはいかぬものの無事に終了した。グレイは気が緩んだのか、ファントムを解除するとその場にへたり込み壁に身を預けた。改めて言うが彼は武闘派ではない。戦闘など門外漢の人間だ。士官学校もほぼ強制で入れられたようなもので、最低限の戦闘スキルしか身に着けていない彼が訓練を受けていたとはいえ単独で戦闘をこなしたのだ、へたり込んでも無理はあるまい。

 

『マスターは相変わらず体力がないですね~』

『私を使いこなす為に訓練メニューの変更を提案します』

「少しはやすませてくれぇ!」

 

前途多難な未来に少年は咆哮する。

まだまだ問題は山積みだ。

 

 

 




ファントム

管理外世界のとある少年が提唱したシステムを組み込み設計したデバイス。
分類上はインテリジェントデバイスとなっているが、実際はアームドデバイスと遜色ない堅牢さを誇り、汎用性は他のインテリジェントデバイスより下がっている。(性能のほとんどが戦闘と操縦補助に割り振られているため)その分、戦闘においては他のデバイスを超える性能を発揮する。本来の使用用途は戦闘用デバイスではない。

Iフィールド
この世界では、日々進化していくAMFに対抗する為に提唱されたシステム(分類上はフィールド系魔法防御)。
その仕組みは使用者を中心に一定の範囲を魔法に干渉するフィールド形成し、その範囲内に入った魔法のプログラムを書き換え無力化する。しかし、ファントムを製造する過程でIフィールドの発するフィールドが魔力エネルギーをの流れを乱すことが判明。その結果、魔法の無効化と魔力エネルギーの操作といった想定以上の防御力を誇るが、フィールド内の魔力エネルギーは嵐のように荒々しく流れるため、高度な魔力操作の技術が必要。
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