いざ決めたものの、思ったよりも難しいですね。主に時間の確保が!
多分、今週はもう一本だすのでそちらの方も読んでいただけると幸いです。
『レリックの回収ご苦労だったな。ゴースト』
明かり一つ無い部屋にゴーストがいた。彼のいる部屋には他に誰にも居ないが、それとは別に三人の声がする。彼を囲むように表示されている三枚のディスプレイにはその姿は映されていないものの、その声から彼よりも高齢の人間だという事は分かるがどこか機械的なその会話から不気味なものを感じる者もいるだろう。
「いえ、掴んだ情報のいくつかは外れでしたし、回収できたレリックはごく僅かです。その内の一つも起動六課に回収されたようですし」
『レリックではないとは言え、ロストロギアの回収・管理も我らの使命だ。レリックの回収は早急な問題でも無い。貴様は十分な成果を果たしたのだ』
『起動六課に回収された物も問題あるまい、結局は我々の元に来る』
『引き続きレリックの回収を続けろ、くれぐれも貴様らの存在を悟られぬようにな』
そう言い残し、声が消えるとその部屋にはゴーストだけになった。
ゴーストは大きく息を吐くと脱力したようにフラフラと部屋を出て歩き始める。まるで、幽霊のように歩く姿にすれ違う者達は軽く悲鳴を上げるがそれが自分たち上司だと気づくと何時もの事か、と何事も無かったかのように素通りしていく。この場所ではよく見る光景なのだろう。そんなゴーストに一人の男が声をかける。
「ようボス!また随分と疲れてるみたいじゃないの」
「イレギュラー続きの任務から帰って直ぐ爺様方に報告だ。まだ10代の若者がやる事じゃないんだよケイト」
そう呼ばれた男は大きく笑いながらゴーストの肩を叩く。
『ケイト・フェリング』ゴーストが故意にしている情報屋の一人にして部下でもある。自身の上司の方を叩くその姿は真面な組織だったらありえない光景ではあるが、実質のトップであるゴーストが特に気にしていないので誰もそれを咎めもしない。
「慣れない事ばかりやるからそんな風になるんだよ。少しは他の奴らに仕事を分けたらどうだ?皆言ってるぜ、ボスは仕事のし過ぎだってな」
「慣れないっていうか性に合わない仕事だけどな、俺の仕事には変わりないんだからいいんだよ。他の皆も良くやってくれてるし」
そう言うとケイトの手を払いのけ自室へと入っていく。あまり長く話しているとこの男にペースを握られて気づけば洗いざらい吐かされるのをよく知っているからだ。この男は自身の事は喋らない癖に人の事は知りたがる。今の名前も幾つかある偽名の一つを気まぐれで使っているだけだ。もっとも、その仕事ぶりは確かなもので、依頼者が金を払う限りは口を滑らさない、という彼の信条をゴーストは評価し頼っているのだが。
ベットに横たわると傍に置いてある写真立てにそっと触れる。その写真は一人の少年と大きなケーキを中央に大勢の人が移っている。その少年、ゴーストの誕生日に撮った写真だ。過去の戦いで破損したクロスボーンが唯一残せた写真データを現像したものだ。
ゴーストの眼は何も見る事は出来ない。それは、過去の戦いで追った傷であると同時に今の自分をゴーストとして縛る為に自分で決めた戒めだ。だから、その写真が何なのか知っているが、どんな写真なのかは分からない。それを知るのはゴーストがゴーストでなくなった時だろう。
昔を思い出している様に穏やかな表情を浮かべ写真に触れるが、次第にその表情に影がさす。
いつの日か、いつの日か、そう願い戦うしか今のゴーストに残された道は無い。光を失い、泣いてる誰かの元へと歩む足を失い、助けを求める誰かへ伸ばす手も失い、名を奪われ、未来を奪われたゴーストには他の道などありはしなかった。写真をそっと棚に戻すと目を閉じる。
暗い夜の中を駆ける黒と白、紫三つの光がある。それは幾たびもぶつかり合い、その度に凄まじい金属音と衝撃が響く。黒い光は右手に持つボウガンの様にも見える銃で紫の光が振るった剣を受け止め、左手に持った大剣で背後から迫った白い光の起動外殻を切り裂く。
二対一、それも自身に勝るとも劣らない実力者を同時に相手取って、一進一退の攻防を繰り広げている。
紫の光を蹴り飛ばしビームを撃つ。紫の光は上昇することで容易く回避し、逆に黒の光は上空から撃ちおろされる。雨の様に降り注ぐ弾丸をスラスターを吹かし、ギリギリのところで回避し続け、更に加速する。避け切れずに被弾した弾丸は両肩に装備されたユニットのおかげで霧散するが、それに追いすがって来た白い光が起動外殻の腕を振り下ろす。数瞬前に切り落とされた箇所は既に修復が済んだのか傷一つ見えない。黒い光は左手に持った大剣のビーム刃の出力を上げ再び薙ぎ払う。しかし、今度は切り裂くことが出来ず障壁に防がれる。そのまま振り下ろされた拳が地面を抉り凄まじい衝撃波を発生させるがそこに黒い光の姿は無く、既に背後に回り込んでいた。
防御をされるよりも早く起動外殻を破壊しようと、銃からサーベルに持ち替え両手の剣を振り下ろすが、その上空から紫の光が急降下をしながら剣を振る。
回避が遅れた黒い光は左足を切り落とされ、体制が崩れたところを振り向き様に打たれた裏拳が直撃し幾つものビルを貫通し吹き飛ばされる。
体中から発する尋常じゃない痛みに呻きながらもその目は未だに二つの光を捉えていた。
気づけば纏った鎧は傷だらけで至る所の装甲が砕けている。
「今度は皆の所に帰れるかな?」
そう呟くと同時に黒い光は更に強く輝き、二つの光とぶつかり合った。
何時の日か……帰る為に
感想、評価を頂けると励みになります。
皆さんの正直なものでいいのでお待ちしております!