<ポケットモンスター トライアル・パレード>   作:にじのふで

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ポケモンの二次小説です。主人公はサトシです。ご興味あれば、お読み下さい。



1話「マサラタウンの少年」

<サトシの旅がはじまって一年後>

 

カントー地方にある、山に囲まれた田舎町<マサラタウン>。

時刻は、朝日が山を超え、温かい日差しで町を照らしている時間。その光に照らされ人々やポケモン達は目を覚まし、新しい一日を迎えていた。

その町に、ある1つの二階建ての一軒家。その二階にある部屋から、電子音が鳴り響いていた。その部屋では、一人の少年が鼻提灯を作り、いびきをかいて寝ていた。彼が、サトシだ。

そこは、サトシの部屋でロフトベットのある仕様だった。壁には、ポケモンの<ヒトカゲ・ゼニガメ・フシギダネ>のポスターをはじめ、ポケモン関連の壁紙や写真などが貼られている他、ポケモンの人形やフィギュアがあり、ポケモン関連の本がある本棚や机、いろいろなポケモンバトルの大会で手に入れたトロフィーやメダルが並べられた台などと、ポケモン好きの彼らしい部屋模様だった。だが、部屋は床も含めて余り片付けられておらず、散らかっていた様だ。そんな部屋で、先程からヘッドボードに置かれたモンスターボール型目覚まし時計が、アラームを鳴り続けているのに対して、一切起きる気配がないサトシ。そのサトシの体に僅かに掛かったタオルケットに、1つの膨らみが出来ている。暫くすると、その膨らみは動き出し、目覚まし時計を目指した。タオルケットから黄色い小さな腕が飛び出し、必死に時計を触ろうとした。

すると、サトシが寝ぼけながら、起き上がった。その拍子に、タオルケットが引っ張られ、黄色い手の正体が顕になった。それは、でんきタイプのねずみポケモンであり、サトシの相棒ピカチュウだった。タオルケットから抜け出たピカチュウは、一回自分の頭を振るうと、寝ているサトシに向かい「ピカピカ」と話しかける。どうやら、早く起きるように言っているのだ。だが、ピカチュウの言葉が聞こえていないのか。サトシは、上半身を起こしながら、まだいびきをかいていた。その姿を見て、ピカチュウは呆れた顔をしながら、ため息を出す。

「よぉ~し、行くぞぉ~」

すると、サトシが突然、寝言を言うと、腕を伸ばして右手で目覚まし時計を掴んだ。

「ピッ・・・ピカピカ、ピカチュウ!」

その状況を見たピカチュウは、すぐに慌てた声で、サトシに話かけ何かを注意している。その言葉は、寝ぼけているサトシへ伝わる訳がなく、ピカチュウの注意を無視して、彼は。

「キミに・・・決めた!」

彼のよく使う決め台詞を発しながら、腕を大きく振るい、モンスターボールこと置き時計を壁へ向かってスイングした。その結果は、ピカチュウが恐れていた通り、時計はバラバラのガラクタへと姿が変わり、床に転がった。

「ピーカー」

時計の成れの果てを見たピカチュウは、頭から汗を流し、再度ため息を付いた。そして、少し怒った顔つきに変え、サトシへ向き直った。

「ピィカァーチューウ!!!」

ピカチュウは、全身から得意な電撃を放ち、鼻提灯を出しているサトシに浴びせた。その電撃を受けたサトシは、全身が伸び縮みを繰り返しながら、言葉にならない悲鳴を出した。電撃が終えると、彼の髪はアフロ状となり、全身は黒焦げになっていた。ピカチュウの電撃を受けるこれは、毎回行っている彼らのコミュニケーションと言うべきか悩むが、彼らなりの触れ合い方なのだ。二人が共に旅をしてから、この1年以上、ずっとこのようなことを何百、何千回以上と行っている。そのせいか、通常の人間なら既に目を覚ましたり、体が痛みと痺れでまともに動けないのだが、サトシはというと。

「いぃぞ~、ピカチュ~ウ~。10マ~ンボルトだぁ~」

再び、鼻提灯を作り寝ていた。その姿を見たピカチュウは、本日三度目となるため息をつく。そんなサトシを見てピカチュウは、(サトシは、まだ早起きが出来ない変わりに、僕の電撃に耐性が付くばかりだ。どうしたものやら)と悩んでいるような顔をした。そうしていると、ピカチュウの耳が突然、何かに反応した。

「!」

何かが部屋に近づいて来ることに気付いたピカチュウ。だが、その反応を聞いて少し喜んだ表情になった。ピカチュウは、ロフトから降りて部屋のドアの前に立つと。ドアが開き、一人の人間が入ってきた。入って来ると、そのまま寝ているサトシに近づいた。

「こぉ~ら、サトシ」

サトシに話しかける大人の女性。いつまでも、寝ているサトシを揺さぶり、起こそうとする。

「いい加減、起きなさい!」

「ん・・・うん?あれ、・・・ポケモンバトルは?」

やっと目覚めたサトシは、夢から現実に引き戻されたが、まだ寝ぼけているようだ。

「何が、ポケモンバトルよ。いい加減、目を覚ましなさい」

そんなサトシの姿を見て、少し怒った顔をして強めに話すと。

「あ、ママ」

「ママじゃありません。もう朝よ。11歳にもなって、まだ一人で起きれないの?!」

「ご、ごめん」

「全く、もう」

この女性は、サトシの母親である。名前は、ハナコといい、年齢は今年で30歳となる。

「ほら、目覚まし時計片付けてから、顔洗って来なさい。朝ご飯、出来てるわよ」

両手を腰に当てて、サトシにそう告げると。足元で見上げるピカチュウに目を向けた。

「さぁ、ピカチュウ。ポケモンフーズの準備が出来てるからね」

「ピッカー!」

それに喜ぶピカチュウは、返事すると部屋を出て一階へ降りて行った。サトシの母親も後に続いて出て行く。

「ハァ~」

大きな欠伸をしたサトシは、起き上がり、ロフトの階段をゆっくり降りていく。そして、先程投げた置き時計の残骸の前でしゃがみ込んだ。

「ハァー、やっちゃたな。・・・ごめんな」

サトシは、時計にそう謝ると、残骸を1つ1つ拾い集め、ビニール袋に入れていく。集め終わると、袋ごとゴミ箱に捨てた。それから、一階に降りて洗面台で手と顔を洗い、サトシはリビングへ入った。

リビングでは、ピカチュウがテーブルの上に置かれたポケモンフーズが盛られたポケモン用のトレーから1つ1つ手で取って、喜んで食べていた。

「ほら、サトシ。席に付きなさい」

サトシのママは、サトシの朝食をテーブルに並べていた。

「うん」

席につくと、並べられた朝食の前で手を合わせた。

「いただきます」

早速、朝食を食べ始めた。

朝食は、バターとはちみつの掛かったトーストに、ハムエッグとサラダ、コーンスープだった。サトシは、美味しそうに、食べていった。

「ふぅー。ご馳走様」

「ピピカチュ」

朝食を終えたサトシとピカチュウ。母親は、二人の食器を片付けながら、話しかけた。

「サトシ。今日は、オーキド博士のところに行く約束があるんでしょ?」

「ん?うん。ちょっと、子供たちへのポケモン講習会の手伝いを、頼まれたからね。来年からトレーナーになる子もいるから、ちょっと旅の話やレクチャーとかしてほしいって。それと、預けているポケモンたちに顔も出さないといけないし」

「そういえば、ヤマヒコさんの所のケン君に、お花屋さんの所のスミレちゃん、ミチナガ牧場のカンくん、あとは去年引っ越して来たウチマさん家のトオキ君も、参加すると聞いたわねぇ。今年は、結構多いみたいよ」

「そうか。そんなに来るんだ。よぉーし、いいとこしっかり見せないと」

サトシは、やる気を出そうと気合を入れる。

「なら、ちゃんと、しっかりしないさ。貴方は、この街でも有名なポケモントレーナーなんだから」

「わ、分かってるって」

「どうだか。ねぇ、ピカチュウ」

「ピカ、ピカ」

「なんだよ、ピカチュウまで」

ピカチュウと母親の二人に、少し不安に思われるのに不満なサトシ。

「ところで、オーキド博士との約束の時間は何時なの」

「えぇと、確か。9時だったかな」

「・・・もう8時55分よ」

母親は、掛け時計に指を向けると、サトシもその時計を見た。

「・・・」

「・・・」

突然、黙る二人。その沈黙の空気を、ピカチュウの声で終わらせる。

「・・・ピ、カァーーー(ため息本日4度目)」

「うわぁぁぁ!遅刻だぁ!」

同時に、慌て始めるサトシ。急いで、洗面所に行き、うがいをして歯磨き粉をつけた歯ブラシを口に突っ込み。二階に駆け上る。部屋に戻り、歯を磨きながら、服を着替えていく。そんな慌ただしい音が2階から響くのを1階から見上げる母親とピカチュウ。

「1年経っても、あの子は成長しているやら。ねぇ、ピカチュウ」

「ピカピカ」

それから、3分程が経過した。

「よし、準備OK」

サトシは、着替え終えると、机に置いてあった帽子を掴み、1階へ降りていく。

「ピカチュウ!」

サトシは、玄関で靴を履きながらリビングに居たピカチュウを呼んだ。ピカチュウは、その声を聞いて、玄関まで駆けていく。

「じゃあ、行ってきます!」

玄関を開けるサトシは、リビングにいる母親に向かって出掛ける挨拶をした。

「はい、いってらっしゃい。気をつけなさいよ」

サトシが玄関から出ると、家の前でエプロンを身に着け箒がけをしているポケモンのバリヤードが居た。このバリヤードは、サトシがかつてマサラタウンで起きたある騒動の後でゲットし、現在はサトシの家で母親であるハナコの手伝いをしつつ、一緒に住んでいるのだ。母親のハナコになつき、家族同然に暮らしている。ちなみに、母親からはバリちゃんと呼ばれている。

「おはよう、バリヤード」

「バリバリ」

バリヤードは、右手で手を降ってサトシへ挨拶を返す。

「ピカピ」

「よし、行くぞ!ピカチュウ!」

「ピカァ!」

ピカチュウは、サトシの肩へ飛び乗り、サトシと共にオーキド博士のいる研究所へ向かった。

 

 

サトシとピカチュウが向かった先は、丘の上にある巨大な建物だ。屋根は赤色で半円のアーチ状や三角形状があり、巨大な発電用の風車が備えてある。そこは、オーキド研究所だ。

マサラタウンにあるポケットモンスター研究施設で、カントー地方で最も有名なポケモン研究の施設でもある。ここは、ポケモン研究学会では、有名なオーキド博士の研究施設であり、マサラタウンに住むポケモントレーナーを志す子供達へ支援や初心者用のポケモンやポケモン図鑑を渡すことにもなっている。更に、ここではオーキド研究所で登録している多くのポケモントレーナー達がゲットしたポケモン達を預かり、世話をし、時に研究や観察を行うための、自然豊かな広い敷地を保有している。ポケモン数は、既に千体を超えていると言われている。

二人が、玄関の前につくと、少しだけ息を整え、呼び鈴を押した。暫くして、待っているが反応が無かった。

「あれ」

サトシは、再度呼び鈴を押すと、扉の奥から僅かに足跡が聞こえてきた。そして、玄関の扉が開き、一人の男が出迎えた。

「は~い、お待たせし。あぁ、サトシ、ピカチュウ」

「やぁ、ケンジ」

「ピカピカチュー」

二人を出迎えたのは、ケンジという青年だった。年齢は、サトシより少し年上の10代中盤。かつて、サトシがオレンジ諸島で旅をしている途中で、出会い暫く共に旅をしていた。ポケモンウォッチャーとして、世界中を旅し、様々なポケモンの特徴や能力を観察、研究していた。現在は、ここオーキド研究所でオーキド博士の助手を務めている。

「遅かったな。また、寝坊したのか?」

「ご、ごめん」

二人を研究所に招き入れて玄関を閉めたケンジ。

「もしかして、もう終わったとか?」

「まだ、大丈夫だよ。予定より少し遅れて始まったから」

「そうか、良かった。それで、子供たちは?」

「もう、みんな来ているよ。今は、オーキド博士が研究所内を案内しているところ」

「そうか、よーし。気合い入れていくぞ」

「ハハッ、あんまり力まなくてもいいよ」

「何いってんだ。先輩トレーナーとして、格好いいところを見せないと。それに、来年からトレーナーになるならキッチリ教えて上げないと」

「まぁ、いいけど。あんまり調子に乗って、恥じをかいても知らないぞ」

「大丈夫だって」

ケンジは、二人をオーキド博士と子供達の所へと案内し、ある部屋に入って行く。

部屋の中では、研究用の書物が並んだ本棚や機械が置かれていた。その奥では、7,8人の子供たちと白髪で白衣を身に纏った初老の男性が立っていた。

それの男性が、オーキド博士。このオーキド研究所の所長であり、ポケモンのタイプによる分類法を提唱し、ポケモン世界におけるポケモン研究の第一人者だ。

「という訳じゃ。お?やっと来たか、サトシ」

子供たちに説明をしているオーキド博士は、部屋に入ってきたサトシ達に気付いた。

「ごめんなさい、オーキド博士。ちょっと寝坊しちゃって」

遅れたことに謝るサトシは、申し訳ない顔で近づいていく。

「全く、1年経っても変わらんのう」

困り果てた顔をしたオーキド博士は、サトシを見て眉をひそめ、1度咳払いをしてから子供たちに向いた。

「さて、みんなに紹介しよう。この少年が、1年前にここマサラタウンからポケモントレーナーとなって、旅をしたサトシじゃあ」

オーキド博士は、子供たちにサトシを紹介すると、サトシは背筋を伸ばしぎこちない感じで子供たちに手を振った。

「ど、どうも、みんな。はじめまして・・・サトシです」

「ピカッチュ」

サトシの挨拶に続いて、ピカチュウは肩から降り床に着くと、自己紹介をした。

すると、子供たちはサトシからピカチュウに目線を変えて笑顔になった。

「わぁー、ピカチュウだ」

「私、はじめて見た」

「かわいい」

子供たちは、ピカチュウへ凄い好奇心を示し、すぐさまピカチュウに近づいて、囲んでしゃがんだ。

「ピ、ピカ、ピカ」

その突然の状況に、ピカチュウは辺りを見渡しつつ驚く。そして、子供たちの手はピカチュウへと伸びていった。

「ピカー」

「あ、あぁ、みんな!ピカチュウをあんまり」

ピカチュウは、余り知らない人から体を無闇に触られたり、いじられると怒って電撃で放つ癖がある。この1年近く、旅の中でそういったことは何度も見て、自分の体でも直に経験してきた。そのことを全く知らない子供たちが、ピカチュウを下手に刺激して、電撃を食らったら不味いとサトシは、慌てて止めようとする。だが、ピカチュウの鳴き声で、サトシの不安は一瞬で消えた。

「チャ~」

ピカチュウは、子供たちに触られても怒ることも電撃を放つこともなく、喜んでいた。

子供たちは、顎の部分を撫でられたり、しっぽを優しく触られたりと、気持ちよさそうになっていた。

「あ、あれ?」

「びっくりだろ」

意外な顔をするサトシを横からケンジが話しかける。

「ここ最近、子供たちにピカチュウが人気なんだ。そのせいか、ピカチュウに関する本が売れたりして、ピカチュウの扱い方を知っている子供が多いんだよ」

「へぇ~」

だが、子供たちが自分よりピカチュウに興味しか示さないことに、少しだけ嫉妬したサトシ。

「ちぇ、俺より人気になりやがって」

ピカチュウをちょっと細目で眺めつつ、舌打ちをした。

「さぁ、サトシ。これまでの冒険やポケモンと出会い、バトルについて話してやってくれ」

そうこうしていると、オーキド博士に頼まれていた要件を、早速お願いをされた。

「あ、はい」

「それじゃあ、みんな。これから、サトシの旅の話を聞いてくれ」

それから30分近く、サトシによるこれまでの旅の話が始まった。最初に、ピカチュウとの出会いから初のポケモンゲット、ジム戦、仲間が出来たこと、いろいろな思い出を語っていく。しかし、サトシは、余りたくさんの人前で、このようなプレゼン的なことをしたことが無く、不慣れな説明で、時々言葉が止まったり、噛んだりした。それでも、出来るだけ、子供たちに丁寧に話そうと必死に説明し、最後までやり切った。

「ハァ、ハァ、い、以上です」

「はい、サトシ。説明、ありがとうございました。さぁ~みんな、彼に拍手しよう」

ケンジは、説明を終えたサトシに拍手をし、子供たちにもお願いをした。それに対して、何人かの子供が軽い拍手をしてくれた。

「ど、どうも」

やり切った顔をしたサトシは、少し疲れたような顔をし、拍手をする子供たちに手を振る。

「じゃあ、質問タイムに入ろうか。みんなは、何か質問はあるかな?」

「・・・」

「・・・」

質疑応答時間に入り、ケンジが子供たちに聞いていく。しかし、子供たちからは何も無かった。

「では、次はマサラタウンで貰えるポケモンを見ていこうか」

ケンジは、それから次から次へと予定を進めていった。一方、サトシは思ったより自分の活躍する場面が余り無いことに、不満にはなっていた。あれから1時間以上が経過した。

「そうだ。ポケモンバトルについてだけど、サトシから何かレクチャーをして貰おうか。彼、ポケモンのジム戦をたくさんしているし、リーグ戦でもいっぱい出ているんだよ」

先程から、不満な顔をしていたサトシに気を利かして、ケンジが話題に出す。

「へぇー」

「お兄ちゃん。凄かったんだ」

「そうさ。えっへん」

子供たちから憧れる眼差しを向けられて、一気に元気を取り戻した。

そのサトシを見て、(現金だな)と思うケンジだった。

子供たちから一人ずつ、質問をされていくサトシは、答えていく。だが、説明が偏りすぎて子供たちの質問と眼差しは徐々に薄れていった。それにまた、ショックを受けるサトシ。そうしていると。

「フン」

先程から、窓際の壁に背を預け、両手をポケットに入れた少年が居た。

「ん?あの子は」

サトシは、その少年に気付いていると、背後から近づいたオーキド博士が口開いた。

「あぁ、トオキくんじゃあな。去年、お前さんが旅立ってから暫くして引っ越して来た家のお子さんじゃよ」

そう二人が話していると、同じく気になっていたケンジがトオキに近づた。

「ねぇ、トオキくん。君もサトシのレクチャーを聞かないのかい」

「いいよ。あの人の話なんか。全然、宛にならない」

「あ~ぁ」

「?!」

その言葉を聞いて、汗を垂らすケンジ。だが、時は遅く。その言葉はサトシの耳にも届いてしまった。

「おい、お前。なんで、俺の話が宛にならないんだ?」

少し怒りを出したサトシが、トオキに近づいて行く。

「フッ。そんなの簡単だよ。サトシさん」

そういって、ポケットから手を出すと腕を組んで、サトシの顔を見て言った。

「貴方、セキエイ大会でベスト16だった人でしょ?」

「ウッ。そ、そうだょぉ」

少し痛い過去を言われたサトシは、声を小さくして返事する。

「それで、シロガネ大会でベスト8」

「そ、そうだ」

「次のサイユウ大会でも、またベスト8」

「ッ」

「スズラン大会では、やっとベスト4上がり」

「フン」

「そしたら、ヒガキ大会でまたベスト8へ転落」

「(ガク)」

「あとは、ミアレ大会では準優勝でしたっけ」

「そう、そう、準優勝だぜ。凄いだろ!」

最後に自身を持って大声を出すサトシ。だが、トオキはサトシに向かい。

「ねぇ。サトシさん」

「ん?」

「これだけリーグ戦に参加しているのに。いつに、なったら・・・優勝できるの?」

最後にトオキは、サトシを舐めきった顔をして、トドメを放った。その顔と言葉に、サトシはついに。

「な、なぁぁぁにぃぃぃ!」

サトシは、噴火した。

「お、落ち着け、サトシ」

途中から嫌な予感していたケンジは、慌ててサトシを後ろから羽交い締めにして、止める。サトシは、怒りの余りに2つも年下の子供に大人気ない態度で突っ込もうとする。

先程の、言葉がかなり癇に障り、怒ったオコリザルの状態だった。

「俺は、マナーロ大会で優秀しているんだぞ」

サトシは、怒りつつも反撃の言葉を放った。その言葉を聞いて、トオキは少しだけ間を空けてから質問をした。

「マナーロ大会?・・・どこの大会?」

「アローラ地方だ!」

「あぁ、あの観光地で有名な」

「そうだ」

「つまり、田舎の小さい大会ってことか。・・・意味ないね」

「・・・この野郎ぉぉぉ!」

怒りのボルテージがもう一段階上がったサトシをケンジは必死に止める。

「おい、サトシ。相手は、年下の子供だぞ」

大人気ないサトシのため、ムカつくが守らないといけないトオキのため、必死に踏ん張るケンジ。その彼の気持も露知らず、トオキは言葉を続けた。

「どうせなら、もっと大規模な大きい大会で優勝しなよ」

「クッ」

「まぁ、僕なら来年ポケモントレーナーになって旅に出て、初の大会で優勝とは流石に行かなくても、ベスト4入りの自信はあるね。それで、次の大会では優勝出来るさ」

「フン、どうせお前には出来ないよ」

「何を根拠に、少なくとも貴方より可能性はありますよ」

「見てろ!俺は、次のリーグ戦で優勝してやる。絶対に」

トオキに指を向け、勢いよく宣言したサトシ。

「じゃあ、出来なかったら、どうするの?」

それに対して、問うトオキ。

「絶対、なってみせる」

「なれなかった話だよ。何か賭けてよ」

「な、何か賭けろって・・・言われても」

突然、賭けを持ち込まれ、困るサトシ。何を賭ければいいのか全然考えれないサトシにトオキは、提案をした。

「では、こうしましょう」

「ん?」

「<僕は、マサラ、いやカントー地方で一番ポケモンバトルのセンスがない駄目トレーナーです>って書かれたタスキを一生につけて貰おうかな」

トオキは、サトシにドヤ顔をして内容を説明した。

「ウッ」

それに対して、萎縮してしまったサトシ。その顔を見てトオキは、続けて舐めた態度で言う。

「自信ないの?」

「や、やってやるよ!そんなもの。だが、お前も賭けろよ」

ムキになったサトシを誰も止めない、いや止めれないのだろう。このまま、早く収まってくれとケンジが願う。

「なら、もし本当に優勝したら、貴方に謝罪でも弟子にでも何でもやってあげますよ」

トオキは、どうせ叶わないと分かってるのだろうか、自信満々に自分自身にも厳しい賭けをした。

「よっしゃ!見てろ、今年のリーグ戦で優勝してやるぜ」

「逃げないでくださいね」

「誰が逃げるか!」

年の差2つの子供が喧嘩している光景を眺める、他の子供たちとケンジ、オーキド博士、そしてピカチュウ。

「本当に、サトシはこの1年成長しているのかしてないのか分からん奴だのぉ」

「ハハッ、本当ですね」

「ピカピカ」

その顔は、呆れているという他に無かった。

 

 

昼になり、子供たちは家に帰る時間となった。子供たちを見送ったケンジとサトシ。

最後に、トオキはサトシの方を見て小声で。

「逃げるなよ」

それに対してサトシはというと。

「誰が逃げるか。べー」

舌を出して子供みたいな反撃をした。

もう止めることも突っ込むことにも疲れたケンジは、ただそれを見ているだけだった。

子供たちを送り返した二人は、研究所内に戻りオーキド博士の元へ返った。

「さて、昼食食べますか」

ケンジは、そういって昼食を提案する。

「そうじゃな」

「サトシとピカチュウも予定通り食べて行くだろ」

「うん。母さんにも既に言っているし食べていくよ」

「ピカ」

そう言って、リビングに向かって一緒に昼飯の用意をする。

「わしは、昼飯のカレーを温めるから。そっちはポケモンたちのを頼む」

「はい。サトシ、ポケモンたちの昼飯も用意するから手伝って」

「うん、分かった」

そう言って、研究所にいるポケモンたちのポケモンフーズを用意していく。冷蔵庫から昨晩作っただろうカレーのタッパーを取り出し、鍋で温めるオーキド博士。準備している途中で、ケンジがサトシにふっと話かける。

「ところで、サトシ。本当に大丈夫なのか?あんな約束までして」

「え?何が?」

「何がって、リーグ戦に参加することだよ」

「なんだよ。ケンジまで俺が優勝出来ないとか思っているのか?」

その言葉、サトシは少し不機嫌になる。先程の怒りがまだ残っているようだ。

「いや、そうじゃなくてリーグ戦に参加することだよ」

「・・・どういうこと?」

ケンジの意図する言葉に理解出来ていないサトシ。その会話に、オーキド博士は昼飯のカレーを温めるながら、サトシに話しかける。

「サトシ」

「はい?」

「もう、今年のリーグ戦じゃが。カントー地方もジョウト地方もやらんぞ」

「え?」

オーキド博士の言葉を聞いて、沈黙するサトシ。1分が経過した。

「えぇぇぇ!」

やっとリアクションをして見せたサトシ。

「やっぱ知らなかったか」

「オーキド博士、う、嘘ですよね」

サトシは、オーキド博士にかけよって問う。

「本当じゃあ。とっくに終わった。次は、1年後じゃ」

「・・・」

黙ってから、ほんの数秒考えるサトシは、続けてオーキド博士に投げかけた。

「な、ならホウエン地方だ。それに、シンオウ地方もあるから大丈」

「そちらの2つも、もう終わったよ」

今度は、背後からケンジが答えた。

「そ、そんなぁぁぁ」

「ちなみに、ホウエン地方は3ヶ月前で、シンオウ地方は1ヶ月前にね」

その言葉を聞いて、両手と膝を床につき、絶望した人間のポーズを形作るサトシ。

「きっと、あのトオキくんは、それを見越してあんな条件を突き出したんだよ」

「へぇ?な、なんで教えてくれなかったんだよ」

「いや、僕もあの時すぐに気付かなかったよ。子供たちを見送る時にフッと思い出してさ」

「サトシ、お主が悪い。11歳になっても、年下の子供の挑発に乗った自分を反省するのじゃな」

「・・・」

「ピカピカ」

最後に、慰めるピカチュウがサトシの腕に手を当てる。

サトシの絶望感は、もう立ち直れないかもしれないと言わんばかりに悲痛な状況へと変わっていった。サトシの頭の中では、(神様、伝説のポケモン様、た、助けて)と考えていた。

この絶望的状況で、どう打開するか考えても考えられない中、ケンジが話かける。

「サトシ、嫌かもしれないけど。トオキ君に謝ろう。まだ許しくくれるよ」

「そ、それだけは」

それだけは、嫌だと駄々をこねるが、サトシにとってそれはポケモントレーナーとして、一人の男として許せない。その様子を見て、オーキド博士はため息をつくと、カレーの火を消して、サトシへ近づく。

「だが、・・・ラッキーじゃぞ。サトシ」

「まだ、チャンスはある」

救いの言葉を聞いたサトシは、顔を起こし、オーキド博士を見る。

「え?」

「アハラ地方とシントー地方の大会が残っている」

「ア、アハラ?シントー?」

余り聞き慣れない言葉に、サトシは言う。オーキド博士の言ったワードを聞いてケンジは問いかける。

「ですが、博士。あそこは、何年もリーグ戦をしていませんよ」

「あぁ、確かに6年前からやっておらん。しかし、今年は特別にアハラ地方とシントー地方を混ぜた合同リーグ大会をやる事が決まったのじゃよ。先週、ポケモン協会のバトル協議会で開催が決まったと、連絡が来ていてのお」

「合同リーグ?」

また、はじめて聞く言葉にサトシは聞いた。

「合同リーグ大会。アハラ地方とシントー地方、それぞれで開かれていた2つのリーグ戦を、1つに混ぜて行うという大会じゃよ。その名もソウテン大会」

「ソウテン、大会」

サトシは、立ち上がりオーキド博士に質問を続ける。

「博士。そのアハラ地方とシントー地方って、どこなんですか?」

「アハラ地方は、ジョウト地方から西の方向で、フィオレ地方やハルタス地方の向こう側じゃあ。そして、シントー地方は、フィオレとアハラの南側。丁度、ホウエン地方とジョウト地方の間に位置する大きな島じゃ」

「やったぜ!俺には、まだチャンスがある」

そう言って、両腕を上げて大声で言った。

「ヨーシ!ソウテン大会へ行くぞ!なぁ、ピカチュウ!」

「ピッカチュウー!」

格好をつけて決めるサトシと、続けて腕を伸ばして返事をするピカチュウ。だが、その二人の空気をぐぅ~と大きなお腹の虫が鳴り響いた。

「と、その前に、昼飯」

「チャーーー」

結局、最後に決まらずピカチュウは、転けた。




はじめまして。はじめてSS投稿します。完全オリジナルでなくオリジナル二次小説です。作品でポケモンを選んだ理由は、10年以上ポケモンに触れておらず、他のゲームや漫画にハマっていました。最近、子供の頃好きだったアニメのポケモンが終わるとか聞いて、ここ数年の作品を調べてました。そして、趣味で小説をたまに書いているので、これを機会に二次小説を投稿しようと思い、書いています。結構、文章力が駄目だったり誤字脱字もありえるので、気付いたら修正します。
最後まで読んで頂ければ、幸いです。

ハーメルンもはじめて使いますので、使用を間違える場合もあります。
Q&Aでも分からない点もありますので、教えて頂ければ嬉しいです。
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