「フラワー、今日はありがとうね」
「いえいえ、好きでやってますから」
ニシノフラワーは料理が得意だ。
こうやって時々、セイウンスカイに何か作ってくれる。
今日の朝食もまた、セイウンスカイがお願いしたからニシノフラワーが作ったものであった。
献立はおにぎりと、味噌汁。
余り豪華な朝食ではない。
だが、簡単に食べられるため、朝が苦手でまだぼんやりしているセイウンスカイにはぴったりの食事だ。
「では、いただきまーす…… あちっ」
早速味噌汁に口をつけたセイウンスカイは、すぐに口を離した。
猫舌なセイウンスカイには少し熱すぎたようだ。
冷めるまでおにぎりを食べてようと、椀を置いたセイウンスカイ。
その椀を、ニシノフラワーが持ち上げた。
「お味噌汁、少し冷ましますね」
「う、うん」
「ふー、ふー」
息を吹きかけて味噌汁を冷まそうとするニシノフラワー。
その唇が妙に色っぽい気がしてセイウンスカイはドキマキしていた。
できるだけそちらを見ないようにしながら、おにぎりを食べる。
セイウンスカイの好きな、鮭のほぐし身が入ったおにぎりだ。
これもニシノフラワーが握ったものだろう。そういえば、ほんのわずかに、ニシノフラワーの花のようなにおいがする気がする。
いやそんなわけないでしょうと思いながらも、一度そんな考えがよぎるとその考えを振り払えず、セイウンスカイは余計緊張してしまった。
「おいしいですか?」
「う、うん、すごくおいしいよ」
「よかったです」
笑顔で味噌汁を差し出してくるニシノフラワー。
受け取り一口すすると、セイウンスカイにちょうどいいぐらい冷めていた。
苦手な豆腐も入っておらず、セイウンスカイ好みの味噌汁だ。
一生懸命ニシノフラワーが息を吹きかけたせいで、ニシノフラワーの香りがする気がするが、セイウンスカイは気にしないように頑張っていた。
片手に持っていたおにぎりを口に放り込み、味噌汁で流し込むセイウンスカイ。
せっかく作ってくれた料理にはちょっと乱暴な食べ方だが、これ以上ニシノフラワーのことを意識させられると、頭がおかしくなりそうだった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」
セイウンスカイが手を合わせると、ニシノフラワーがそう答える。
満腹になり、セイウンスカイの気が緩み、口が軽くなる。
「とってもおいしかった」
「フフフ、ありがとうございます」
「あー、毎日フラワーの味噌汁飲みたいなぁ。毎日作ってくれない?」
なんとなしに条件反射のように、そんなことを言ってしまったセイウンスカイは、自分の発言にすぐに気づいた。
これ、プロポーズみたいじゃん、と。
気づいて顔がどんどん熱くなっていくセイウンスカイ。
いやいや、ニシノフラワーのことなんて別に好きじゃない、訳じゃない。むしろ世界で一番大好きだけど。結婚とかしてくれたら嬉しいけど。そもそも同性だし。
訳の分からない考えがグルグルと巡っていく。
そんな挙動不審のセイウンスカイに、ニシノフラワーは特に気にした様子も見せず
「じゃあ、毎日作ってあげますね♪」
と嬉しそうに答えた。
「う、嬉しいなぁ。セイちゃんとってもハッピーだよ」
動揺しながらも、必死に言葉を紡ぐセイウンスカイ。
なんにしろ、ニシノフラワーに先ほどの発言を変にとられなかったようだ、とほっとした。
片付けのために食後のお盆を持って、席を立つニシノフラワー
すれ違う時、セイウンスカイの耳に口を寄せて、彼女はささやいた。
「わかってますよ。責任、取ってくださいね。愛してます」
セイウンスカイは机に撃沈した。