B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast3-3

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 夕食後、恋歌と共に食器を洗っていた隼人は体を寄せてくる彼女に濯いだ食器を手渡す。突き出される形で渡されたそれに不満そうな表情を見せる恋歌はにやけそうになるのを堪えているせいか凄く変な表情だった。

 

「さっきは、ゴメンね隼人。ご飯食べるのに寝ちゃってて」

 

「ん、まあ・・・マナー違反だからなぁ。嫌って訳じゃないけど直した方が良いな」

 

「じゃあ手伝って、隼人・・・私に、教えて」

 

「べ、別に一人でできるだろ? それとも何だよ、まだ眠いのか?」

 

「ううん、隼人の体温が・・・落ち着くの」

 

 食器を拭く手を止め、隼人の腕にそっと抱き付いた恋歌は彼と二人きりの台所で彼の腕へ縋り付く様に抱き直していた。何かに怯える様な目、自分に依存しきった目に悲しい思いが込み上げてくる隼人は

最後の食器を濯ぎ終えると恋歌が持っていた布巾で食器を拭いた。

 

「隼人?」

 

「とりあえず、仕事終わってからな。それからゆっくり聞いてやるよ」

 

「うんっ」

 

 笑みで頷いた恋歌に寂しそうな微笑みを返した隼人は二人で協力して食器を片付けるとリビングに並んで座った。コーヒーとホットココアを淹れた隼人はソファーに座る恋歌にココアを渡すと席について一口啜った。

 

 ホットココアに口をつけた恋歌はテーブルの上にカップを置くと隼人の隣まで移動し、コーヒーのカップを傾けていた彼の懐に入って抱きついた。

 

「ぶッ」

 

「うわぁあああ! 汚いっ!!」

 

「うるッせェ!! 何抱きついてんだよビックリしちまったじゃねえか!!」

 

「だ、だって・・・さっきの続き・・・」

 

「それなりに一言声かけろよ・・・俺は別に駄目って言う訳じゃないんだから。それ位分かってるだろ?」

 

 口の周りにコーヒーの滴をつけながらそう言った隼人に撫でられ、頬を少し膨れさせて不満そうに彼を見上げた恋歌は彼がカップを置いたのを待って話を続けた。

 

「えへへ・・・隼人」

 

「何だ?」

 

「んふふ~呼んでみただけ」

 

 幸せそうな彼女の笑みに苦笑しながらなされるがままになっていた隼人は不意に開いたドアに身を竦ませた。

 

「隼人、お風呂空いたわよ」

 

「お、おう。分かった」

 

「明日もおやすみだからって恋歌ちゃんと夜更かししないで早く寝なさいよ?」

 

「分かってるって」

 

「それじゃ、いい夜を」

 

 そう言ってドアを閉めた母親にお節介焼きめ、と内心呪った隼人は時計を見て行動プランを練った。

 

「なぁ、恋歌。風呂どっちが先に入る?」

 

「え?! ええっと・・・隼人が先」

 

「良いのか?」

 

「う、うん。私お風呂入る時は色々準備するし・・・ね?」

 

「そうか・・・じゃあ、どうすっかなぁ・・・」

 

「は、早めの方が良いんじゃない?」

 

「そりゃそうだけどさ」

 

 何か考えてるな、と恋歌を見た隼人はどうしようと考えながら粒子が混じるコーヒーを啜って余りの苦さに舌を出した。そんな様子を見ていた恋歌もココアを飲んでいた。

 

 飲み終わった隼人は流しにそれを置いて部屋に戻り、自分の着替えを取ってきて脱衣場に入った。服を脱いだ彼はシャツとズボンを洗濯機に入れ、風呂場に入った。

 

「ふぅ・・・・はぁ」

 

 温めのお湯に全身を浸からせた隼人は今までに溜めてきた気疲れか眠気が込み上げてくるのを自覚し、何とか堪えて体を起こした。目頭を揉みながら首を鳴らした彼は大きく伸びをして腰をツイストさせた。

 

 と、その時やはりと言うか何と言うべきか音も無く引き戸を開けた恋歌の裸体が一切の補正無しで隼人の目に飛び込み、あらぬ所全部を網膜に焼き付けてしまった。対する恋歌は恥ずかしさから要所を隠して

湯船に入ってきた。

 

 よりにもよって隼人はリラックスムードで足を伸ばして入っていた為に彼女の小ぶりな尻が彼の足に乗っかり、赤かった彼の顔が更に赤くなった。

 

「お、お前・・・何のつもりだ。予想は付いてたが本当に実行するとは思わなかったぞ」

 

「え?! えっと、一緒に入った方が便利かなぁって・・・駄目?」

 

「だ、駄目じゃな・・いや、駄目だろ、絶対駄目だろコレ!」

 

 俯いたまま慌てる隼人を見ながら彼の方へと移動する恋歌は感触から移動を察知した彼の両手を胸に受けて身を竦ませた。触った隼人も感触からすぐさま物を特定したらしく慌てて手を引っ込め、

気まずそうに他所に視線を逃がした。

 

「ご、ゴメン」

 

「別に・・・良いわよ」

 

「なっ何がだ?」

 

「別に触っても、良いわよ・・・私困らないし」

 

「お前はそうでも・・・お、俺はだな・・・その、困ると言うかえっと・・・」

 

 どう言おう、と考えていた隼人は擦り寄る恋歌に慌てて彼女の肩を掴んだ。いきなりの事に驚く彼女から目を背けながら安全策を考え始めた隼人は真っ白になり始めている脳内で必死に考えた。

 

「ねえ・・・隼人ぉ」

 

「な、何だよ」

 

「私の裸見た責任、とってよ?」

 

 恋歌のあんまりな言い方にお前が仕掛けてきたんだろうが、と言いたかった隼人だったが状況が状況なのでそれ所ではなかった。顔を背けていた彼は何かの拍子で滑った手に頭が白くなり、

それなりに育った恋歌の胸が大胸筋に当たるのを否が応でも感じた。

 

 理性が飛びかけた隼人は恐る恐る顔を戻すと息を荒げる恋歌の頭があった。濡れて水面に浮かぶ黒の長髪、それを嫌っている筈の彼女がそんな事をするのは何故だろうと考えが変わった隼人は

抱き付いて来た彼女に驚いた。

 

「お、おい・・・恋歌?」

 

「隼人」

 

「どうしたんだよ、お前。何か、あったのかよ」

 

「私は・・・隼人の物、だよね?」

 

「・・・? 何で、いきなりそんな事言うんだよ。お前はお前だろ?」

 

「そんなの、嫌・・・。私を、一人ぼっちにしないで・・・隼人から、離さないで」

 

「恋歌・・・お前・・・そんな事で・・・」

 

 良いのかよ、と。そう言いかけて隼人は口を噤んだ。一人になった恐怖、計算もあったのだろうが恋歌が風呂に乱入したのは半ば衝動的な事だったのだろう、直接言えば自分が断る事も計算していた。

 

 今の彼女に暗闇の孤独は残酷すぎる。幼い頃、体育倉庫に深夜まで閉じ込められ、一人で啜り泣いていた彼女にとって恐怖を励起させる物でしかない筈だ。それが偶々、今日ぶり返してきたのだろう恋歌は

支えを欲していた。

 

 支えなければ、守らなくては。彼女を彼女に降りかかる敵意から守り続けていた自分が、今こうして必要としている彼女を、見捨てる事も伸ばされた手を放す事も許されないのだから。

 

「・・・恋歌、お前は今、俺にどうして欲しい?」

 

「隼人?」

 

「お前が、望む事なら・・・何でもするよ。俺が、今出来る事ならば」

 

「じゃあ、抱き締めて。ぎゅっと、私の事を」

 

「ああ、分かった」

 

 優しく、そう言って抱き締めた隼人は嬉しそうに甘えてくる恋歌を守る様に抱き寄せた。お互いの体温を通じ合わせる様に、しっかりと寄せた彼は満足そうに笑っている彼女に見えない様に表情を張り詰めさせた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 それから一時間後、恋歌の就寝を確認して深夜にログインした隼人は時間連動している電脳の町を歩いていた。所謂試したい事の為、無理を言って男子四人にログインしてもらったのだ。

 

 人気の少ない訓練場に足を入れた隼人は明るい一室の中で準備をしていた武達と合流し、両手にサブマシンガンを構えた武にアイコンタクトを送るとセーフティーをかけた銃をクルクル回す彼と向き合った。

 

「悪いが時間が無い、早速始めよう」

 

「応よ。で、俺は如何すりゃ良いんだ?」

 

「二丁の短機関銃による近接射撃戦闘をしてくれれば良い」

 

「分かった」

 

「始めるぞ」

 

 言い様飛び出した隼人は握った拳を武目掛けて突き出す。ギリギリで回避した彼は左の銃口を隼人に向けるがそれを見越した動きで射線を逸らされ、銃弾があらぬ方向へ飛んでいく。すかさず右の銃口を向けた武は

向けてからコンマ数秒の射撃を避けた隼人に驚愕する。

 

 肩からぶつかった隼人に吹っ飛ばされた武は両手のサブマシンガンを連射するが、それに向けて隼人はまっすぐに突っ込んでいく。三人が驚愕する中、隼人は両手を発光させながら弾丸をすり抜けさせた。

 

「な・・・?!」

 

 思わず声が出た武に隼人は両手での掌底を叩き込む。あまりの衝撃に吹き飛ばされた彼は満足そうな隼人の表情に小首を傾げていた。

 

「お、お前・・・何したんだよ」

 

「試したい事だよ、思った以上の出来だった。サンキューな、武」

 

「お、おう・・・」

 

 チンプンカンプンの武に手を差し伸べた隼人は呆然としている利也と浩太郎の元に移動した。

 

「リーヤ、バレットの方は?」

 

「調整済みだよ」

 

「了解だ。じゃあ、そろそろ仕掛け時・・・だな」

 

「仕掛けって・・・まさかこっちから?!」

 

「そのまさかだよ。まぁその方が不意打ちの効果が上がるって事もあるしな」

 

 そう言う隼人にやれやれと溜め息をついた利也は調整を終えたバレットを立て掛けるとウィンドウを開いて空間キーボードを叩き始めた。

 

「さて、そろそろログアウトするかな」

 

「ん? ああ、そうかお前急いでたんだっけ」

 

「まぁな、泊まってるし」

 

「はぁ?! 誰だ?! 恋歌か?!」

 

「・・・恋歌だよ」

 

 仏頂面の隼人に呆れ半分の武は苦笑する浩太郎に目を向けると手を頭の後ろで組んで壁に凭れかかった。

 

「おーおーお熱ですなぁ隼人君ってもういねェ!!」

 

「何時も通りだからもう帰っちゃったんだね」

 

「ったく、恥ずかしいけど熱入れるって言う訳の分からん性格なんだからあいつは・・・」

 

「まぁ、隼人君らしいね、そう言う所」

 

「面倒臭いだけだぜ、そう言うの」

 

 半目になる武に苦笑した浩太郎は早々にログアウトした隼人の残滓を見つつ、軽く伸びをして武達と共にログアウト作業に入った。

 

「さーて、俺は一人寂しく寝るかぁー。利也、お前もだろ?」

 

「まぁ・・・まだ起きてると思うから少し電話して寝るかな」

 

「チクショー、良いなぁそう言うの出来てよぉ」

 

 悔しがる武に苦笑を向けた利也は片手を上げて挨拶した浩太郎がログアウトしたのを見送って武と一緒にログアウトした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 一足早くログアウトした隼人は強制遮断させられた反動で頭痛を起こしていた。頭を押さえながらベットに横になる彼は何時の間にか起きていた恋歌の仏頂面と向き合いつつ頭痛が抜けるのを待っていた。

 

「何で内緒でログインしてるのよ・・・」

 

「いや、それについては悪かったって言ってるだろ。でも外せない事だったから」

 

「むー・・・じゃあ、お詫びに何かして」

 

「何かって・・・明確には何だ?」

 

「え、えっと・・・えっと、マッサージ?」

 

「お前が答えるべきなのに何で疑問系なんだよ・・・まあ良いや、その・・・マッサージだっけか? 今するのか?」

 

「え?! う、うんそうだけど・・・その心の準備が」

 

 慌てて体を起こし、どぎまぎしている恋歌に半目を向けた隼人はその意図を悟ったが責任感から咎める事はできなかった。案の定上を脱ぎ、上半身を彼に見せた彼女は彼の隣に寝転がる。

 

 背中を見せ付ける彼女に一息漏らした隼人はその華奢な肩に触れる。びくりと身を竦ませた恋歌は雑な体勢の彼を睨みつけ、不満そうな表情を見せる。それを見て深い溜め息を漏らした彼は加減した力を掌にかけた。

 

「んぁ・・・っ」

 

「・・・大丈夫か? 加減するか?」

 

「う、ううん。大丈夫、ちょっとビックリしただけ」

 

「と言うか、ホントにコレで良いのかよ。他にもあっただろ」

 

「いきなり大きな物頼んだら幸せが薄れちゃうでしょうが」

 

 頬を膨らませる恋歌に嫌そうな顔をした隼人は溜め息一つ落とすと充電中のデバイスに目を向けた。

 

「今更だけどよ、強制的にLAN抜くの止めろよ。危ないぞ」

 

 半裸の事を意識しないようにそう言った隼人は肩越しに見上げてくる恋歌にたじろいた。表情から見るに頭に血が上っているのだろうと察した彼は体ごと振り向こうとする彼女を押さえつけた。

 

「な、何するのよ!」

 

「馬鹿野郎お前今の状況分かってんのか!?」

 

「うるさいっ黙って行っちゃうのが悪いのよ!」

 

「会話になってねえ!!」

 

「も、もう。痛いのよッ!」

 

 馬鹿力で振り解いた恋歌に嫌な予感を感じた隼人はそのまま真横に顔を向け、真っ白な壁と目を合わせ続けた。

 

「こ、こっち見なさいよ! 何でそっぽ向くのよ、私の事そんなに気に入らないの?!」

 

「い、いや・・・違う。違うけど向きたくない」

 

「じゃあ、何? 何で向かないのよ!」

 

「お、男の事情だ。察してくれ・・・」

 

「いいからこっち向きなさい!」

 

 無理やり顔を向き直させられた隼人は引っつかんでいた予備のブランケットを恋歌の上半身目がけて投げた。

 

 恋歌に被さったブランケットは大事な所を上手く隠してくれてその隙にパジャマの上を手に取った隼人は慌てて取ったが故にバランスを崩し、片腕をついた。

 

「つ、疲れる・・・。おい恋歌、上を着ろそれから話は聞く」

 

「わ、分かってるわよ・・・悪かったわね」

 

「まあ、俺も乱暴なやり方してしまったし。ビックリさせちまったな」

 

「き、気にしなくて良いわよ。それぐらい」

 

 苦笑混じりに謝る隼人の正面ブランケットお化けがモゾモゾと呟いていた。着替え終わるまでの間、薄暗い室内で待っていた隼人は突然飛んできたブランケットに驚き、

バランスを崩して倒れこんだ。

 

 幸い枕がクッションになって頭部にダメージは無かったがブランケットが視界を覆った直後の衝撃で彼は意識を失った。

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