B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast4-3

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 同時刻、城壁周辺ではデュークを追っていた隼人と恋歌が彼と激闘を繰り広げていた。両手二丁のMP7サブマシンガンが火を噴き、隼人達を牽制し続け、弾幕に押された彼らが着弾点で引かれた曲線に沿って駆け抜けてチャンスを待つのを周囲に展開した弾幕の中心となっているデュークがあざ笑う。

 

 BOOでも屈指の実力者の自分には敵わないだろうと高を括った彼は敢えて弾幕に突っ込んだ隼人に驚愕し、僅かに銃身をブレさせる。高速の低空ジャンプで迫る彼が拳を振り被り、殴り付けようとするがその前に逃げたデュークが両のMP7をリロードして構える。

 

 カギ爪状の手で地面をホールドした隼人は着地点からの予測射撃を行おうとしていたらしいデュークの狙いを外させる為、手で減速しつつ真横に体を向けて地面を蹴った。抉れるほどの勢いで蹴り飛ばし、デュークに迫る。

 

「う、ぉおおおおッ!!」

 

 叫びながら迫る隼人に焦りを浮かべつつ引き撃ちしたデュークは空を切った拳に安堵した。その直後、気合一閃と共に真横に弾き飛ばされ、二回転しつつ地面に引き倒された。

 

 何だ、と思った彼は隼人を足場に跳躍して回し蹴りを放ったらしい恋歌の姿を認めると飛びすがる彼女に向けてMP7を向ける。

 

「クソアマがぁああああああッ!!」

 

 寸分違わぬ正確さで撃ち込まれるフルオート射撃が恋歌を追う。だが、持ち前の素早さで回避し逃げ切っている恋歌はデュークに向けてサイドアームのHK45拳銃を向け、闇雲に連射する。

 

 だが、碌な狙いも付けていない射撃が当たる筈が無く、デュークの周囲で土の逆瀑布をぶち上げるのみだった。

 

 当たる筈が無い、と内心で嘲笑したデュークは横から迫る気配に振り向くと拳を振りかざした隼人の姿があった。

 

「もらったぁああああッ!!」

 

 瞬間、デュークの世界が揺れた。御しがたい衝撃が叩き込まれ、彼の視界は揺れながら地面に近付いた。意識が無くなった一瞬、冷たい土の感触に自分が倒れている事を悟ったデュークはHPの六割を吹っ飛ばした攻撃に戦慄し、そのダメージを叩き出したペアがハイタッチしているのを忌々しげに見つめた。

 

 口にハイポーションを入れつつ、胸中に広がるどす黒い感情を口にして吐き出したデュークは右のMP7を捨て、装備変更したベネリ・M4ショットガンに変えると左のMP7で隼人達を射撃する。咄嗟に飛び退いた彼らは距離を詰めようと走り出す。

 

 その中で真っ先に突っ込んできた隼人を見て無駄だ、と嘲笑ったデュークは予めセミオートに変更していたショットガンを構えた。それと同時、左の拳を構えた隼人は容赦なく引き金を引いた彼にニヤリと笑い、散弾の至近射撃を受けた。

 

「ヒャハハッ!! ゲームオーバーだッ!!」

 

 本来ならログアウトする、筈だった。着弾した散弾は何の効果も示さず接近した隼人は左拳によるアッパーカットを叩き込み、デュークを空高くまで打ち上げた。空高くで苦悶の表情に変わる彼は何が起きたのか理解できないまま、直下に向けて落下を始めた。

 

「貴ッ様ァアアアッ!!」

 

 落下しながらショットガンを構えたデュークは照準が合わず射撃できない事に苛立ち、照準を合わせようと必死になっていた。それが、自身にとって致命傷となる事も知らずに。銃を下方に構える彼から距離を取って跳躍した恋歌が先に落下していくデュークを睨みながら空中で叫んだ。

 

「ショートカット、『メテオストライク』ッ!!」

 

 言い様、飛び蹴りの体勢で高速降下した恋歌は落下点が重なったデュークを捉え、着地と同時に引き摺るとその勢いを消すかの様に後方へ跳躍し着地した。

 

 まるでヒーローの必殺技の様なフィニッシュに大満足の恋歌は自身の傍を通り過ぎ、ボロ雑巾の様になったデュークの傍へ歩み寄った隼人の後を追った。

 

 デュークの傍にしゃがんだ隼人は瀕死の彼の襟首を掴んで持ち上げると額を掴んだ。

 

「お前の目的は何だ」

 

 冷静さを崩し始めた隼人がそう問うても瀕死のデュークは黙している。

 

「もう一度聞く、お前の目的は何だ!! 言えッ!!」

 

 焦っている様なそんな表情に恋歌は疑問を抱き、質問の意味を問おうとして歩み寄るや否や苛立ちを浮かべた彼はMP7で自殺したデュークの総身を地面に叩きつけ、彼女の質問を遮った。バウンドした死体がポリゴンエフェクトとなって消滅する。

 

「・・・こちら、ハヤト。ターゲット処理に成功。ミッション終了だ、撤収するぞ」

 

『了解』

 

 全員からの返答を聞きつつ、撤収し始めた隼人の後を追いかけた恋歌は開放された城門を潜ろうとしていた彼が悔しそうに拳を叩きつけたのに驚き、一息ついた彼が振り向いてきたのに合わせて歩み寄った。

 

「お疲れさまっ」

 

「ああ、お疲れ。良い蹴りだったぞ」

 

「えへへーありがと」

 

 嬉しそうな恋歌の表情に寂しそうな笑みを返した隼人は周囲を確認してから甘えてくる彼女に薄く笑うとそっと抱き締めた。アバターデータの猫の尾が激しく揺れ、嬉しいのかと理解したらしい彼は彼女を放すと撤収までにかかる時間を計算しながら宿への道を歩み始める。

 

 一仕事終えた撤収となればもうアイランに留まる必要は無い。かれこれ一週間近く宿に止めていたバイクを使ってウイハロへ戻り、領地の管理や新たな依頼の確認などを行って必要があればその準備を進める必要がある。今回の依頼でかなりの報酬を貰った。

 

 ケリュケイオンが貰い受けた町、ウイハロは独自発展の町だ。自分達が得た金が直接ウイハロの発展に使われる事は無い。自分達は中心となる産業を決めたのみで後はほったらかし、店舗設営設定やらは申請の後に金を払う事で自由に店を作れる。

 

 そう言う開放政策で成り立っている町だからあまり活気が無くどちらかと言うとアウトローな印象を受ける事が多い。そんな町作りのお陰でケリュケイオンが引き受ける仕事は実に様々な物となった。

 

 狩場帰りを狙うPKグループを警戒する初心者グループや物品の輸送を行う情報屋グループの護衛から複数パーティでの集団戦闘やPKグループの駆逐まで今までこなして来た任務は数知れない。

 

 雇う側からすればフットワークの軽い自分達は小規模な行動に駆り出すにはかなり扱いやすいらしい。現実で言う所の民間軍事代行会社(PMSCs)に近い扱いなのだろうと納得していた事までを思い出した隼人は腕を絡める恋歌に目を向けてからやけに静かな町を見回す。

 

「・・・もう、十一時か」

 

 戦闘開始から三時間経過していた。深夜に近い夜の気候、ひんやりとした夜風に当てられた彼はログインしているプレイヤーの少ない仮想都市を見回して宿のドアを開け、個室に移動するとリラックスムードの彼女が寝転がる隣に腰掛けた。

 

「疲れたな・・・」

 

「ん・・・・そう言えば、隼人。アンタ、銃撃喰らいながらアッパーかましてたけど、あれどう言う手品?」

 

「ああ、アレか。トリックは拍子抜けする位簡単だぞ、カウンタースキルだ」

 

「カウンタースキル・・・? あれって近接攻撃限定なんじゃなかったっけ」

 

「いいや、そんな事は無い。近接攻撃専用って言われてるのは攻撃無効化時間が短いから、どうしても近接戦にならざるを得ないだけだ」

 

「って、事はアンタ、相手の発砲タイミングに合わせてスキルを発動させてた訳?」

 

「そう言う事だ」

 

 茶目っ気のある表情を浮かべた隼人に呆れている恋歌は自分のやった事の大きさに気付いていない様に見える彼に半目を向けたがログアウト作業に入ろうとしているのを見て慌ててログアウトした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 翌日の昼休憩、生徒会室にてプロテクト解除した情報を渡した隼人はカードキーを差し込んだコンピューターを操作している生徒会長は無線送信で隼人の持っている携帯端末に検索した学校サーバー登録情報を送信した。

 

「山岸幸助。あなたの言っていた『デューク』を使っている生徒の名前よ」

 

「分かった、ありがとう。これからこいつについて調べてみる。何か分かったら報告する」

 

「ええ・・・でも、大事にはしないようにね。最近VRMMO絡みの事件が多いせいでPTAからの風当たり良くないんだから」

 

「分かってる」

 

「じゃあ、がんばってね。後輩君」

 

 柔らかい微笑を浮かべた生徒会長に頷きを返した隼人は生徒会室を出ると、ドアの方で待っていたらしい恋歌に気付き、敢えて無視して彼女の前を素通りした。途端不機嫌になった彼女はポケットに手を突っ込みながら歩く彼の後ろを追いかけ、腰に抱き付いて足を踏ん張らせた。

 

 いきなり後ろに引かれた彼は驚きながらもバランスを取り、そのまま恋歌を引っ張る様にして歩き出す。その様子を見ている周囲は何しているのか分からずただただドン引きで180cmクラスの隼人を140cmクラスの恋歌が引く様はまるで我侭な妹が兄を引っ張るようだった。

 

「だー、もー離れろ恋歌!! 鬱陶しい!! 皆見てるだろうが!!」

 

「じゃあ何で目を合わせないのか言いなさいよ!」

 

「良いだろうが別に! 何で一々言わなきゃいけないんだ!!」

 

 突然の喧嘩に周囲がざわつき始め、不機嫌そうな隼人に食って掛かる恋歌は頑固な彼に苛立って思わずハイキックを放ったがそれを予期していた彼が左腕一本のガードで腕を弾かれながらも蹴りから顔を防いだ。

 

「ってぇ・・・何がそんなに不満なんだよ」

 

「だって、だって・・・・」

 

「・・・あのよ、俺だって言いたくない事位あるんだよ。だからまあ、あんま首突っ込んでくるなよ?」

 

「やだ」

 

「お前よぉ・・・」

 

 意固地な態度に半目になる隼人はため息一つ落とすと教室に帰ろうと廊下を歩き始める。その後ろを付いてくる恋歌を定期的に見た彼は泣き出しそうな顔を俯けて歩いている彼女を見る度どうしようか、と内心悩んでいた。

 

 正直、この調査に彼女を巻き込みたくない。と言うか、探偵部の面々もあまり巻き込みたくない隼人は生徒会室での事をあまり話したくなかった。だが、知りたがりで勘の鋭い恋歌にはどんな誤魔化しも通用しそうに無かった。

 

 そうこうしている内に教室に戻った彼は、楽しげに話している武達の傍を素通りして自分の席に着くと携帯端末を取り出して先ほどのデータを閲覧した。冴えない格好の男子生徒、彼についての情報を収集して検挙、または情報を聞き出す。

 

(こいつが持っているのはPKグループの情報だけじゃない・・・きっと、こいつ等を動かした何かがある筈だ。俺達を執拗に狙うだけの何か)

 

 傭兵で無いならPKグループには行動をする上での信念がある筈だと隼人は思っていた。それが何なのか、今の自分には分からないが調べれば分かる筈だと彼は自分に言い聞かせてデータを仕舞うと武達がいる方へ移動した。

 

 それからしばらく、他愛の無い話に付き合った後、放課後の事について話すと席に戻って始業に合わせて準備を始めた。それから時間は経過して放課後、単独で聞き込み調査を始めた隼人は教室で話し込んでいる生徒を見つけると彼らに声を掛けてから山岸の写真だけを表示した携帯端末を見せた。

 

「この、山岸って奴について知ってる事を教えてくれ。クラスとか、そう言う小さい事でも良い」

 

「んー・・・山岸君かぁ2-Dなのは知ってるんだけど彼二年生になってからガッコ来てないんだよねぇ」

 

「来ていない? 何でだ?」

 

「詳しくは分からないんだけどさぁ。なんか一年の終わり掛けにいじめにあったらしいんだよねぇ、その山岸君。ね、ミカ」

 

「・・・いじめにあった?」

 

「そ、クラスの事情通の子が言ってたんだけどね。詳しい事知りたいんなら紹介したげよっか? 多分今新聞部にいると思うから」

 

「新聞部か・・・・そいつは信頼できる奴か?」

 

「うん、口堅いしそれに生徒会からの警告で探偵部絡みの記事作成は禁止だって言ってたよね? 部長総会で言ってたらしいじゃん」

 

「そう言えばそうだ。じゃあ、連絡頼む。何かあったらこのアドレスにメールをくれ」

 

「はーい」

 

「じゃあ、よろしく頼む」

 

 そう言って教室を後にした隼人は校舎を彷徨いつつ、手当たり次第に情報を収集していくが不登校児である事とその大まかな原因ばかりが寄せられ、肝心の詳細情報が不足していた。

 

 個人情報や実態調査証などがあれば楽に捜査が進められるが生憎自分は生徒だ。そう言った物に関われるほどの権限がある訳でも無く調べるリソースも殆どが太いパイプに裏付けられたコネクションだ。

 

 基本的に待ちの調べ方になってしまう為、もしもの時の反応が遅いのだ。それ故今の隼人は苛立っており、捜査情報が書き込まれた端末を見下ろしてはため息と共にそれをポケットに突っ込んでいた。渡り廊下の手すりに凭れた彼はそんな自分に気づいたらしい妹に声を掛けられた。

 

「よう、秋穂」

 

「何してんの? あ、話があるからそっち言って良い?」

 

「ああ、良いが穏便な方法で来い」

 

「ちぇっ、ばれてたか」

 

「いつもの事だろうがバカ」

 

 引っ込んでいった秋穂に苦笑した隼人は暫くして友人らしい少女を連れてきた彼女に軽く手を上げると、連れられている友人を見て驚いていた。

 

「君は・・・」

 

「あ、はい。あの時模型店でバイトしてました。戸津香美、です」

 

「あー、あの時の子か」

 

 そう言えばそうだったな、と内心で言った隼人は半目を向けてくる秋穂に視線を返すとその様子を微笑みながら見ている香美の印象を計った。大人しめで、何と無く夏輝や利也に似ている。掛けている赤色のメガネも頭脳明晰な印象を強めていた。

 

 スポーティな印象が強い秋穂とは対照的なタイプだと思った隼人はそっちのけにされている秋穂の方に視線を戻すと詰まらなさそうな彼女に頭を掻き、ため息を漏らすと手すりに凭れて彼女に話を切り出した。

 

「んで? 何か話す事でもあるんだろ?」

 

「あー・・・うん。そうそう、部活の事なんだけどさ」

 

「部活? あー、そう言えばうちの学校は入部推奨なんだっけな・・・何だよ、入る所の相談か?」

 

「ま、まあ・・・そうなんだけど」

 

「だったら、探偵部の部室に行ってこいよ。そう言う相談事とか、うちの得意分野だ」

 

「ちょ、ちょっと違うんだって!」

 

「はっきり言えよ、困る事でもないのに」

 

 そう言った隼人はそれでももじもじしている秋穂にため息をつくとその先を促した。

 

「その、私達探偵部に入ろうかなぁって思っててさ」

 

「・・・何でだ?」

 

「一番楽そうだから」

 

 のん気な秋穂に少し苛立った隼人は妹の額にデコピンをぶち込むと苦笑する香美に視線を向けた。

 

「それで、このバカ妹はともかく、君も入ろうと?」

 

「は、はい。え、えっと前から探偵部の方々の事は聞いていて自分もやってみたいなぁって」

 

「あんまり良い部活動じゃないぞ? 校内で暴れる事なんかしょっちゅうだから風紀委員会から物凄く睨まれてるし」

 

「暴れ・・・? 何してるんですか普段」

 

「大体頼まれる事柄が委員会業務じゃ何ともならん事ばっかりだからな、暴れる事も辞さないって訳だ」

 

 そう言って笑った隼人は心配そうな表情を浮かべる秋穂達の様子を伺いつつ、何とか探偵部に入らない様に誘導しようとしていた。先も言った通り、探偵部は些細な事から普段扱えないようなアウトローの依頼をこなす事までをやってのける部活動だ。あまり人に勧めたいものではない。

 

 部活に入る入らないにしろ探偵部にだけは入って欲しくない。その一心で誘導しようとしている隼人だったが彼女達には意味がなかった。

 

「でも、小さな事とかも扱うんですよね?」

 

 嫌な所を突っ込まれた。少しばかりの動揺を浮かべた隼人は平然とした振りをしつつ、返した。

 

「ま、まあ、そうだな」

 

「じゃあやります! 私、細事担当で良いので! そう言う人の為になる事をやりたいんです!」

 

 大事の悪い事で細事の良い事が塗り潰される部活動なんだが、と言いかけた隼人は目を輝かせている香美に気圧されて言い出せなかった。やばい、と内心焦りだした彼は考え込んでいる秋穂の方に目を向けると香美を見て賞賛する様な声を漏らしていた。

 

「香美ちゃんやる気だねぇ、まあ私なら荒事いけるし即戦力っしょー」

 

「ま、待て。本気か!? 荒事って暴力沙汰だぞ!?」

 

「だーからいけるって言ってんじゃん? それに面白そうだし」

 

「面白いからで首突っ込んだら痛い目見るぞ」

 

「大丈夫だって、そう言うの慣れてるから痛いとかあんまり気にしないよ」

 

 あはは、と笑う秋穂に額を押さえた隼人は深く息をつきながらバイブレーションの作動した携帯を取り出した。聞き込みの連絡用に取得したメールアドレスに紹介された新聞部の子からのメールが届く。新聞部の部室にいるらしいその子からの連絡を見て話を切り上げようと思った。

 

「まあ、何にせよ興味本位で探偵部に入るのは止めとけ。俺は用事が出来たから、じゃあな」

 

 そう乱暴に言った隼人は新聞部の部室がある本館三階の部屋に向かうと三回ノックしてから部室に入室した。部屋に入ると新聞部員が興味深げに隼人を見ており、彼らを睨み返した隼人は手を振ってきた小柄な少女の傍に足を向けると彼女が用意していたらしい椅子に腰掛けた。

 

「いらっしゃい部長さん、話は聞いてるよ」

 

「だったら話は早いな。詳しい事が聞きたい、どんなネタでも良い。出来る限り多くの情報が欲しいんだ」

 

「多くの情報ねぇ・・・じゃあネタ被りたくないから今掴んでる情報教えてくれない?」

 

 自己紹介を後回しにして掴んでいるネタを少女に話した隼人はふむと一声上げた彼女がパソコンに取材内容をまとめたメモを表示させ、それを見ながら話を始めた。

 

「山岸幸助、現在2-Aに所属。進級前にいじめを理由に不登校」

 

「そこまでは分かってる。そこから先だ、いじめが起きる前に何か有るんだろう?」

 

「鋭いね・・・彼の家は政治家の家だったの知ってる?」

 

「いや、政治の事は疎くてな・・・市議会議員の息子だったのか」

 

「それでさ、いじめってのはお父さんの汚職事件がきっかけだったのよ。始めはクラスにいた政治に詳しい子の何気ない一言だったらしいわ。それがエスカレートして不登校になる程にまでなったらしいわ」

 

「まあ、いじめってのはそんなもんだろ」

 

「そうやって往なせる辺り、君も慣れたもんだね。経験って奴?」

 

「まあ、そんなもんだ。あ・・・そうだ。住所、分かるか? 会いに行くから無線転送してくれ」

 

「え? まあ、断っても無駄なんだろうけど・・・えっと、このケータイで良いの?」

 

「ああ、頼む」

 

「はい、送ったよ。ま、穏便にね」

 

 あはは、と笑った少女に無言で頷いた隼人は端末をポケットに入れると少女に連絡先を教えてもらった。

 

「あ、そうそう名前。言ってなかったね。私は2ーCの御堂、あなたは?」

 

「俺は2ーAの五十嵐だ。これからよろしく頼む」

 

「うん、よろしくね五十嵐君」

 

 満面の笑みを浮かべる御堂にそう言った隼人は知り合いである新聞部の部長に顔を見せてからその場を後にした。荷物を置いてきた部室に戻りながら携帯から電話をかけた。

 

「もしもし、姉ちゃんか?」

 

『どうしたのさ、アンタから私の携帯に掛けてくるなんて。珍しいじゃん』

 

「こっちで事件起こしてた奴のホシ〈注:犯人の事〉が出た。今から問い詰めに行く」

 

『ホシって・・・例のPK犯? でもアンタ、今そんな事したら・・・』

 

「分かってる、でも俺は捕まる覚悟で行くから。だから姉ちゃん、早く来てくれよ。位置、送っとくから」

 

 そう言って電話を切った隼人はポケットにスマートフォンを突っ込んで住宅地へ向かっていった。

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