B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast5-2

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 二時間後、BOOに入った隼人達は中継地点に使っていた宿からスタートし、チュートリアルに突入したらしい秋穂達からSNL経由で連絡が届き、開始拠点らしいアイランのプレイヤーオフィスにケリュケイオン全員で移動すると、露出の多い踊り子衣装と水色の髪が特徴的な長身エルフと露出の少ない長袖とボディアーマー姿に漆黒の翼と長髪、そして赤枠のメガネをかけた堕天使が入り口で待っていた。

 

「おーい」

 

 一番外見の変化が少ない隼人がエルフ達に手を振る。通る声で読んだ彼を目印にした彼女らは隼人達の方に移動して行き、八人と合流した二人はそれぞれの外見に驚きと意外さを交えつつ電脳世界を見回した。

 

「兄ちゃんとコウ兄だけ現実と変わんないね」

 

「まあな、さて体の調子はどうだ? 気分悪くないか?」

 

「大丈夫。それよりも、この世界について案内してよ。チュートリアルも含めて」

 

「はいはい、分かったよ。じゃあ、移動するか」

 

「はーい」

 

 元気よく返事したエルフにアバターを設定した秋穂が隼人の後に付いていき、その後ろを恋歌が付いて行く。その三人から離れた位置で香美を囲む様にして六人が歩く。隣に並ぶ秋穂からチュートリアル画面を見せてもらった隼人は、一番初めに行う項目にあった武装の購入を行おうと知り合いの武器屋に向かった。

 

 隼人の進路に無言で付いて行く秋穂と香美は武器屋に入店するといの一番に店主に顔を店に行った隼人の後ろに付いていき、護衛する様に店内を見て回り始めた七人の方を振り返ってからカウンターに向かった。

 

「よう、いらっしゃいハヤト。今日は何用だよ」

 

「新人二人の為に装備を見繕って欲しい。現状扱える限りの物をな。金はキチンと払う」

 

「まー、アンタの律儀さは知ってるから金の事は気にしないけどよ。門外漢は一切入れないアンタ等に新人って珍しいな、どう言う風の吹き回しだ?」

 

「そこらへん、詮索してくるなよ。面倒な事になるぞ?」

 

「はいはい、分かったよ。じゃあ装備選びでもするかね」

 

 そう行った店主に招かれた二人は店の奥にあるポータルから広大な練習場に移動し、薄暗い印象を持ったそこに足を踏み入れながら周囲を窺っていた。そんな彼女らを他所に端末を用いている店主の隣に隼人が立つ。

 

「ココは、店舗にある練習場だ。武器の試しに使う空間でHPは減らない様になっている。ここで練習しながら武器を選んでもらうぞ、好きなの選べ」

 

「なーんか本格的だねぇ。うーん・・・と、じゃあスタンダードに剣」

 

 そう言った秋穂に呼応して初心者向け性能の片手剣が空間に突き刺さる様にして現出し、それを手に取った秋穂は片手に握ったそれで円を描く様に振り回しながらアクロバットを行う。演舞の様な動きに香美が見惚れるが、当の本人はその動きを気に入らないと言った風情で一回転した片手剣を手に取った。

 

「どうだ、アキホ」

 

「んー、何か動きが鈍るっぽいんだよねぇ。剣の重量に引かれてさー。リーチはこのままで良いけど、もうちょっと軽くならない?」

 

「剣のカテゴリじゃ当てはまる武器はねーよ。だけど・・・イロモノ武器にならそう言うのはあるぞ」

 

「イロモノ武器? どんなの?」

 

「聞いて驚くなよ、アークセイバーだ」

 

 そう隼人が行った直後、転送された円筒形の柄を見て驚いた秋穂はおおよそ硬派なSF作品でしかお目にかかれなさそうなそれを手に取るとプッシュ式らしき長方形のボタンを押し込んだ。すると特徴的な発振音の後にプラズマ形成が安定した刀身からスパーク音が消えていく。空気の膨張する音を聞きながら、重量のないそれを振り回した秋穂は一見すればおもちゃにしか見えないそれを気に入ったらしく、軽々と振り回す。

 

 どうやら彼女との相性が良いのは殆どの人が避ける様なイロモノ武器らしい、と苦笑した隼人はサンプルの刀身発振を収めた秋穂が、アークセイバーカテゴリーから更なるイロモノを引っ張り出してきた。二つの柄を連結させた形状のアークセイバー、いわゆるダブルブレードアークセイバーのスイッチを入れた秋穂によって、柄の両端から放出されたプラズマの輝きと縦横無尽に振り回されるそれの軌跡に見惚れていた。

 

「あっはは、凄い凄い!! 兄ちゃん、この武器凄い扱いやすい!」

 

 そう言いながらの秋穂が見せる超高速の剣捌きに驚愕を禁じえない隼人は、鍛え抜かれた金属で作られた刃を扱う楓や武とは対極の、エネルギーで形成された刃だからこそ出来る振り抜きの速度を重要視した剣術。凄まじい速度で光の軌跡を生みながらその中心で無邪気に笑う妹が振り回しながらスイッチを切った。

 

 短いバトンの様な柄を振り回した妹に引き戻された隼人はイロモノに当たる武器を主兵装として決めた彼女に半目を向けつつ、購入手続きを進めると今度は香美の武器を決めるべく銃器に詳しい利也を呼んだ。

 

 予告通りにフィールドワーカーを選択したらしい香美の傍に立った利也は、銃を選ぶべく射撃場モードに変更した練習場のレーンでフィールドワーカーが使用できる銃のカテゴリに付いての説明を始めた。

 

「フィールドワーカーが使用できる銃のカテゴリは『拳銃』だけ。まあ、元が攻撃職じゃないから仕方ないんだけどね」

 

「って事は『拳銃』って言うカテゴリが銃では一番弱いんですよね? 連射も出来ないし」

 

「弱いっちゃ弱いけど・・・連射は出来る銃があるよ? 大体このカテゴリ、サブマシンガンやPDWまで入れてるからややこしいんだけどね」

 

「サブ、マシンガン? PDW? 普通のマシンガンとはどう違うんですか?」

 

「あ、えーっと・・・サブマシンガンって言うのは拳銃と同じ弾丸を使う小型の機関銃。PDWって言うのは使う弾を強力な物にしたサブマシンガンって所かな。厳密には違うんだけどここで詳しい事話しても仕方ないからね。

それで、君が使う銃なんだけどPDWの『FN・P90』って言う銃がお勧めかな」

 

 そう言って選択した利也は転送されたそれを香美に手渡した。利也の指導の下、P90・トリプルレイルモデルを構えた彼女は追加装備されたドットサイトを覗き込み、人型のターゲットを照準した。

 

 父親がたまに見ているガンアクション映画で見かけるこの銃だったが奇天烈な外見とは裏腹に使いやすいデザインがなされていた。

 

 威力は控えめだがボディアーマーへの貫通力に優れており、防御力の低い防具に対して安定したダメージを期待できそうだった。P90の説明書きにある通り、自衛用の火器としてはかなり優れた性能を持っている様だった。

 

「いっぺん撃ってみなよ。反動とか、そう言うのも大事だから」

 

「分かりました」

 

「ターゲットを五回破壊したら終わりにするね」

 

 そう言った利也の言葉に集中力を高めた香美は狙いやすい胴体を集中して狙って射撃する。頭部は命中しにくいので極力狙わず堅実な狙いを心がけた彼女は反動の少ない銃に驚きつつも規定回数破壊して練習を終えた。

 

 P90と言う銃を気に入ったらしい香美の表情に一応の安堵を得た利也はそのまま、二人の副兵装の一つとなる拳銃の選定に移行した。魔法職以外なら誰でも扱える拳銃は近接職であってもよほどの事が無い限り携行しているのが常だった。

 

 総じて小型である為、携行の負担になりにくく小回りが利いて接近するまでの牽制が出来る上に、遠距離武器への対抗も出来ると有れば、無いよりあった方が良い精神で誰も彼もが持つのはごく当たり前の事だった。

 

「さて、ハンドガンは混乱しやすいから僕らと共通の物で良いね。アキちゃんにはレンレンと同じ『HK45』拳銃を、カミちゃんには僕と同じ『Px4』拳銃を使ってもらう事にするよ」

 

「分かりました。・・・やっぱり射撃の練習はした方がいいですか?」

 

「ううん、ハンドガンは基本的にオートサイト仕様だから、抜いて向けたら当たる様になってる。だから、練習とかは基本しなくても大丈夫」

 

 そう言う利也に納得する香美と秋穂は彼から拳銃と受け取ると現出した収納用ホルスターにそれを収めた。この後、香美は『ナイフ』カテゴリのマチェットを近接装備に加え、秋穂はバードの装備として『バトルファン』を装備し、武装の買い物はこれにて終了した。

 

 練習場から出てきた秋穂と香美は購入したばかりの武装を下げた自分達を見て感動している恋歌達に気恥ずかしさを感じて揃って俯いた。

 

 武装分の代金をグループの金庫から引き落としで支払った隼人は馬鹿にならない値段だったそれに今までの稼ぎがあってよかったと内心胸を撫で下ろしていた。

 

 次に向かったのは防具の購入に関してのチュートリアルである。BOOにおいて防具は防御性能と同時に外見の一旦も担う重要な装備だ。因みにプレイヤーが男子なら性能を、女子なら外見を重視する傾向にあるらしく秋穂や香美の防具選択もその例に漏れない選択の仕方だった。

 

「まー、予想ついてたが外見選択かぁ・・・」

 

「えー良いじゃん良いじゃん、可愛いって目立つかもよ」

 

「性能的には微妙ライン、でもまあ許容範囲内か」

 

 そう言った隼人が購入手続きを済ませたのに大喜びの秋穂はやたらと露出が多く扇情的な外見の自身とは対極的に露出を極力避け、ミリタリズムな外見の香美に変わった魅力を感じていた。そんな彼女らを他所に購入系チュートリアルを終えた事を確認した隼人達はスキルの設定に移らせた。

 

「じゃあ、スキルの設定な。初期はスキルポイントが10くらいある筈だ。まあ、割り振りはどれか一つに特化するより使える種類を増やす様に設定した方が良いぞ。後、マスタリースキルを忘れずにな」

 

「ん、じゃあ私は舞踏スキルって言うのとアークセイバーのマスタリースキルを選ぼっと」

 

「香美は、サポート特化だから攻撃はマスタリー強化に依存するな。まあそこら辺は個人の采配だ」

 

 広場に集まり、ファンシアを用いてスキル設定を行っている二人にそうアドバイスした隼人は設定を終えたらしい彼女らに目配せするとようやっとフィールドに出て戦闘する事に変な緊張が解けるのを感じた。

 

 そんな事を抱きながら先行する兄達の苦労も気付かず、ピクニック気分で荒野のフィールドに出た秋穂は活気に溢れ、和の雰囲気があった町とはうって変わって正常な生命の気配を感じられない荒れ果てた土地を前にゲームだと言う事を忘れて呆然としていた。

 

「びっくりしてるか?」

 

「うん・・・。町の外ってこんな感じになってたんだ」

 

「このゲームの無制限フィールドはどこもこんな感じだ。じゃあ、モンスター狩りに行くか」

 

「も、モンスター? モンスターいるの?!」

 

「このゲームRPGだぞ? 普通にいるっての」

 

 呆れ半分の隼人を他所に荒野を見回した秋穂はモンスターらしき影が見当たらないのにいると言う事に驚きつつ、先を行く隼人達を追っていく。左手には緊急対応用の拳銃が握られ、右手には分割したアークセイバーの柄が握られている。

 

 シームレスに戦闘が起こるフィールドを行く隼人達はそれぞれの武器を構えながら進んで行き、現れたゴブリンモンスターがこん棒を振りかざして香美に迫る。明らかに動きが早いそれに対応し切れなかった香美を庇おうと動いた秋穂はアークセイバーの刃でゴブリンを切り裂くとエフェクトと共に消滅したそれから経験値を獲得した。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「ん? へーきへーき。大丈夫、つか結構あっさりしてるね」

 

「まあ、モンスター戦とかは基本一撃決着だからな、強い武器の一撃とか急所とか狙ったらすぐ終わる。ただ、条件はこっちも一緒だ。もしこん棒が頭部に直撃してたら瀕死になってただろうな、お前」

 

「り、リアルだね・・・・」

 

「そうだ。だから、このゲームで生き残るには臆病も必要だぞ?」

 

 そうアドバイスする隼人に頷いた秋穂だったがモンスターの集団に牽制射撃をしているらしい香美に気付くや射撃を任せて両の手にそれぞれアークセイバーの柄を持ち、モンスターに突撃した。彼女らの後ろで待機しているケリュケイオンの面々はあわよくばエリアに沸いた中ボスクラスを討伐しようと周囲を警戒していた。

 

 実質彼女らにぴったりついているのは回復役の夏輝くらいな物だった。それは経験値を奪わない様に極力介入を避け、危険になった時のみ介入するのが初心者随伴の鉄則である為だ。購入したばかりのP90で弾幕を張る香美は自動でHMDモードに移行したファンシアのメニュー画面からスキルを選択した。

 

 瞬間、香美の周囲にいるモンスターとそのHPが透過して表示され、正確な位置と数を把握した彼女は通信機越しに突貫する秋穂に指示を出しながら自身も移動した。P90で牽制しつつ、マチェットを片手に抜いた彼女は奥にいるらしいゴブリンのボスの姿を捉えるとこの場にいる初心者で一番突破力のある秋穂に指示を出すべく、ボスをスポットした。

 

「アキちゃん!」

 

 物怖じしない辺りゲームと割り切れているのだろうな、と思いながら射撃する香美はゴブリンを薙ぎ倒す秋穂が見せる回避と攻撃の動きに驚きを隠せなかった。大鉈を横薙ぎに振るったゴブリンの頭上を飛び越えつつ、頭を狩った秋穂は着地と同時の回転斬りで二体を倒すとブルライドゴブリンの重突進を横ロールで回避、連結したダブルブレードアークセイバーの回転連撃で乱切りにしてボスに突貫する。

 

 その間、マチェットとP90でゴブリン一体を相手にするのが手一杯の香美は脳天を狙ったこん棒の縦振りに恐怖が励起して足を竦ませてしまった。

 

 刹那、脳天をぶち抜かれたゴブリンが消滅し、呆気に取られた彼女が弾の飛来方向を見ればMk17のスコープから目を離した利也が軽く片手を上げていた。

 

 距離にして500mほど。そこから撃ち込んだ利也に手を上げ返した香美はスキャンスキルで探知した敵の数が殆ど無い事に安堵しつつボスの方に向かっていった。

 

 そこでは巨大な戦斧を振るう身長3mほどのゴブリンと二刀のアークセイバーを振るう秋穂が激戦を繰り広げており、分厚い鉄板に近い防具に接触したアークセイバーから散ったプラズマの光が周囲を照らす。

 

 奮戦する秋穂が放つ光の剣戟を防具の分厚さ任せで無視したボスゴブリンはその手に持った巨大な斧を振り下ろし、荒野の大地に地割れを起こす。

 

 が、直前で回避していた秋穂は連結状態にしたアークセイバーを右手に持って空いた左手にサイドアームのHK45拳銃を引き抜き、牽制の射撃を叩きつける。だが、左腕の小手で弾かれ有効打を与えられない。

 

 強い、そう思った秋穂はボスゴブリンのレベルをスキャンすると五十近いレベル差があった。勝てない、そう思った彼女は後方待機の隼人達に連絡を送ると応対に出た夏輝に状況を知らせた。

 

『ボスゴブリンって事はここもしかしたらイベントエリアかも』

 

「い、イベント?」

 

『稀にモンスターの襲撃イベントがあってねー、決まってボスがいるんだよ』

 

「つまり、私達が突っ込んだ所ってそのイベントのエリアってことですか?」

 

『多分ね』

 

 のんびりした夏輝との通信を切った香美は前線で戦っている秋穂に撤退指示を出しながら、援護射撃を始めた。レベル差の大きいボスは二人ががりで倒すには明らかに相手が悪い。そう判断したが故だったが逆に闘争心に火がついたらしい秋穂は凄まじい熱量を放つアークセイバーと打ち合った斧を弾いた。

 

 気合一閃、脛に連撃を叩き込んだ秋穂だったが防具に阻まれてダメージにならなかった。バックステップに距離をとろうとした彼女だったがその前に斧の横薙ぎからのパンチを食らって吹っ飛んでいく。瀕死寸前にまでHPが削られた彼女は緩和無しの痛みから力を入れられずにもがいていた。

 

「アキちゃん!」

 

 叫び、駆け寄りながらP90を射撃した香美だったが防具に弾かれて有効打を与えられなかった。守る事しか出来ない状況下でパニックにならない様に努めていた香美は残りマガジンが無い事に気づき、サイドアームのPx4を引き抜いて引き金に指を当てた。

 

 その刹那、彼女とボスゴブリンの間で眩い閃光と爆音が迸り、一時的な失明状態に陥ったボスゴブリンが錯乱状態に陥って暴れる。何事、と思った二人は防具の無い膝関節を切断されたボスゴブリンが絶叫を上げながら崩れ折るのに呆然としていると駆け寄ってきた利也と夏輝にその理由に思い至った。

 

「助けに来てくれたんだ?!」

 

「そりゃ護衛するって言っちゃったしね。二人とも、異常状態は無いかい? よし。ナツキちゃん、回復お願い。終わったらここから退避しよう」

 

「うんっ」

 

 治療術を受けている秋穂の返事に微笑を返した利也は不安そうな香美の頭を撫でて慰めるとライフルを構えて周囲を警戒していた。一方、ボスの周囲を取り囲む武達は暴れるボスゴブリンが撒き散らす砂煙で視界を塞がれていた。視界不良の中、お互いがどこにいるのか分からない為に迂闊に銃が抜けない状況になっていた。

 

 瞬間、ボスゴブリンの拳が呆然としていた武を襲い、慌てて逃げた彼が引いていく拳に照準するが砂埃の濃さに発砲を躊躇した。フレンドリファイアが常時オンになっているBOOにおいて視界不良状態での発砲は同士討ちによる味方のキルに繋がってしまう。

 

 故に視界不良状態では身動きが取れない状態にあった。砂煙から一歩引いた地点にいるはずの利也に通信しようとした武は通信不良のアイコンを見るや周辺地域のECM濃度を確認、彼の懸念は必中しECMがジャミング可能な濃度に散布されていた。

 

「こんな時にお客さんかよ!」

 

 熱心な初心者狩りか、弱ったゴブリンを横取りしに来た馬鹿か。どちらにせよ、別集団が用いた通信遮断と言う手段は賢いがそうする為に用いたのがECMと言うのが不味かった。砂煙による視界不良の上に通信遮断が無差別に引き起こされるECMはスキャニングの精度を低下させる一面も持っていた。

 

 こんな状態ではまともに戦闘できる訳が無い。そう判断した武はとにかく砂煙から抜ける事を考え、ガンブレードを構えたまま利也のシグナルが見える方向へ走り出した。今は視界を確保する事を優先し、仕掛けてきたグループの様子を見る事にした武は利也に襲い掛かっているプレイヤーを見つけるや否やガンブレードで背後から攻撃した。

 

 突きからの射撃で大穴を変えられたプレイヤーが消滅し、デジタルの血糊を払った武は連射の利くサイドアームであるG18を引き抜いて別方向から射撃しているプレイヤーを牽制する。その間に防衛に専念して消耗している利也がフルオートに切り替えたMk17のマガジンを交換し、武が狙っていたプレイヤーを射撃した。

 

 ちゃっかりパーティ経由で経験値を貰い、10くらいまでレベルアップしていた秋穂の回復も済み、同じくレベルアップがなされていた香美がPx4で牽制射をする中で隼人達がまだ出てきていない事に気づいた。まだ砂煙の中にいるのか、と思った武は不意に消えたゴブリンの鳴き声と砂煙に気付いた。

 

「何だ?!」

 

 驚く武を他所に現れた相手プレイヤー達が彼らに殺到する。迎撃しようと身構えた彼らはゴブリンがいた辺りから猪突してきた五人ほどのプレイヤーに体制を崩された。挟み撃ちする格好になった間で前後から攻められるプレイヤー達はそれぞれ分かれようとしたが後ろの五人の侵攻速度が速かったが為に総崩しにされた。

 

 通り魔的な攻撃を行う彼らは唯一サブマシンガンを携行している加奈に射撃支援を任せて走り抜けると武がいる地点で停止した。

 

「大体数は減らせたな。これ以上戦う必要は無い、退くぞ」

 

「あいよ。了解だぜ、リーダー」

 

 そう言って走り出した隼人に頷いた武は恋歌と秋穂、香美を彼に続く様に行かせるとガンブレードで射撃して牽制。瓦解させられた相手グループが引きの姿勢を見せた所で残る面々と共に町へ撤退していった。

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