B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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六話です。まだまだ皆のんびりしてます


Blast6-1

第6話『Change before you have to.《変革せよ。変革を迫られる前に。》』

 

 翌日の放課後、自宅に戻った隼人は自室のベットでログインし、ケリュケイオン本部である古家のベットで目を覚ます形でゲームの世界に飛び込んだ。自室に割り当てられたベットで体を起こした隼人は身に着けている布製の防具を確認すると

武器を入れているロッカーからパイルバンカー付のガントレットを取り出すと腕に装着し、装填機構のスライドを引く。

 

 装填音と共にじんわりと作動し始めた身体強化を体感しつつ、露出した手にハードタイププロテクター付きのオープンフィンガーグローブを着けた隼人は黒いブーツを履くと脛にバンカーユニット付のプロテクターを装着した。これで格闘戦では万全の体制を取れる。

 

 そのまま、外に出ようとドアの方に移動した隼人は狭い廊下を通ろうとしていたらしい人物にドアを当ててしまい、謝りながら覗き込むと怯えた様子の香美が隼人の仏頂面を見るや後退りながら謝っていた。それに慌てた彼はどうしようと思いながら取り敢えず部屋から出た。

 

 意外と言えば意外だが、隼人は香美の様な大人しい子が苦手だった。それ故にどう対応して良いか分からず取り敢えず降りる事にした彼はちょこちょこと後を追ってきた香美の方を少しだけ見るとコーヒーを淹れ始めた。我ながら自分勝手だ、と思いながら一瞬で淹れられたコーヒーを持って、仕事机に移動する。

 

「あ、あのっ」

 

「ん?」

 

「昨日のご飯、美味しかったです。すぐに言えなくて・・・」

 

「ああ、なら良かった」

 

「あ、あの・・・それでもし良かったら今度私にも料理を教えてくれませんか?!」

 

「教える位なら別に構わないが、何が良い?」

 

「和食で!」

 

「分かった、考えとくよ」

 

 そう言うやり取りをした隼人はゆっくりコーヒーを飲みながらクエストを確認していると応接用兼休憩用のソファーに座っている香美が手持ち無沙汰でいるのを見て立ち上がり、コーヒーの隣にある紅茶を取り出して淹れると彼女の目の前に置いた。

 

 おっかなびっくり受け取った香美は、ゲーム内の物に味を感じる事に驚いていた。食いついたな、と思いながら席に戻ってコーヒーのカップを持って席を動いた彼は香美の前に座って話を切り出した。

 

「どうだ?」

 

「味が、ある・・・何でですか?!」

 

「えーっとだな、五感に干渉する様にデバイスの方に細工がしてあるらしい。ここで言う五感って言うのは触覚、視覚、聴覚、味覚、後なんだ・・・?」

 

「触覚、視覚、聴覚、味覚・・・嗅覚ですか?」

 

「あってる。忘れてたよ。やはりカミは色んな事に詳しいな、その外見通りだ」

 

「止めてくださいよ、この外見のせいで理系女子って思われてるんですから・・・」

 

「ほー、じゃあカミは文系か」

 

「いえ・・・私はオールマイティです」

 

「じゃあ何で理系女子って言われるの嫌なんだよ・・・」

 

 利也、夏輝と喋っている感覚の隼人は柔和な性格特有の天然オーラを発する香美にため息をつきながらコーヒーのカップを置く。探偵部に下級生はいなかったからか、全員が秋穂と香美を甘やかす傾向にあった。

 

「さて、俺はウォームアップでもしてくるかな。あ、武達が合流してくるからレンレンとアキホが降りてきたらそう言っておいてくれ」

 

「え、あ・・・あの。私、見学しても良いですか?」

 

「構わないが・・・何でだ?」

 

「秋ちゃんが、自分のお兄さんの事すごく強いって言ってたので一度で良いから見てみたいなぁ・・と」

 

「アイツ・・・。まあ、そう言う事なら一緒に来い」

 

 いつもの慣習でコーヒーのカップを流しに置いた隼人は同様にした香美に武器を持たせると彼女を連れて古家の裏に備えた練習場に移動すると練習台であるオートボットを起動させた。自立駆動したそれの不意打ちを

回避した隼人はリズムを取りながらボットを睨む。

 

 ジョンと名付けられたボットは比較的スタンダードなガンナイフスタイルで隼人に攻めかかる。学習したロジックから拳銃を連射して接近したジョンだったが気配から射線を読んでいた隼人に拳銃弾を回避され、距離を詰められた。

 

 苛烈な戦闘を見学している香美はウォームアップとは思えないレベルの戦闘を頑張って追っていた。そして、隼人が近距離に入り込んだのを見た彼女は拳を振り上げる直前に回避運動を取った彼に疑問を抱いた直後に

外に振る動きで銀孤が走った。直後、その下を潜った彼が倒れながら身を捻ってジョンの顔面に回し蹴りを叩き込んで吹っ飛ばす。

 

 受身を取った隼人はハンドスプリングで起き上がると順手に持ち帰られたナイフを手の甲で弾き、向けられた拳銃も裏拳でギリギリのラインまで弾くと激発したそれの衝撃波で聴覚を一時封じられた。だが、開いた腹部に連続で拳を叩き込んで怯ませると後ずさったジョンが拳銃を向ける前に隼人は飛び上がっていた。

 

 唐突なジャンプにジョンが戸惑う間、宙で足を引いて溜めていた彼は自分の体が落下を始め、ジョンが照準する瞬間に気合の叫びと同時、エフェクトを纏いながら足を伸ばした。ちょうど落下点にジョンの頭が来て額に蹴りを食らった彼の頭から嫌な音が鳴って練習用の機械人形が吹っ飛んでいく。

 

 片膝を突きながら着地した彼は派手な爆発エフェクトと共に機能停止したジョンに一息つきながら払う様に掌を叩いて立ち上がった。一息ついた隼人は唖然としている香美に苦笑し、彼女の方に戻ると修復されたジョンに軽く手を上げて立ち去った。

 

「どうだった、香美。噂の真相は」

 

「正直言うと何も言えない、と言った感じです。あれでウォームアップなんですか?」

 

「うちがやり合う連中は皆あんな感じだ。って言ったらどうする?」

 

「大人しく離れた所で見る事にします」

 

「秋穂は突っ込むぞ、そう言う連中がいる所」

 

 そう言って苦笑した隼人は心当たりがあるのか嫌な顔をする香美にお互い大変だな、と声をかけていた。そうしていると秋穂と恋歌が二人並んで歩いているのに出くわした。二人から立ち上る闘気に気付いた隼人は矛先が自分に向かない様に気をつけながら二人に話しかけた。

 

「お前ら、どうしたんだ?」

 

「ん? ちょっと恋姉と模擬戦をねー」

 

「レベル10前後のペーペーがよく言うわね。ま、ちょちょいとのしてあげるから」

 

「あっれ、タケ兄が前に言ってたけどこのゲームレベルとかが重要じゃないってさー」

 

「・・・とっととやるわよ」

 

 そのまま練習場に移動した二人は険悪なムードのまま向き合うとお互いに構えていた。両手のアークセイバーの柄を手にした秋穂はスイッチに手をかけて一歩前に足を出している恋歌の様子を窺うと進行役の隼人の合図を待った。

 

「始め」

 

 一言を終えるより早く左のアークセイバーを起動した秋穂はリーチを利用した突きで恋歌に対して先手を取ろうとしたがそれよりも早く動いていた恋歌が熱線ギリギリを通って秋穂の懐に飛び込む。瞬間、二本目が起動し恋歌の進攻軌道を遮る。

 

 ターンでその勢いを殺した恋歌は薙がれた刃を回避するとローキックを秋穂の足元に叩き込んで転ばせようとするが蹴られる瞬間に跳躍した彼女が側転を入れながら蹴りを避け、二刀流で追い散らしたのに反応した恋歌が大きく距離を取って拳銃を構える。

 

 牽制目的か、と意図を読んだ隼人は拳銃を放った恋歌の表情が変わるのに気付くと弾道を薙ぎ払った熱線に気づいて表情を同じにした。それに少し遅れて香美も秋穂が偶然した事を理解した。アークセイバーの莫大な熱量で持って弾丸を偏向した。

 

「すごい・・・秋ちゃん!」

 

 香美の声も他所にすかさず柄を連結した秋穂はリーチの長いそれを振り回して恋歌を牽制する。開いた片手に拳銃を引き抜いた彼女は連射する。瞬間、跳躍した恋歌は空中で一回転するとエフェクトを纏った足を突き出す。

 

「やあぁああああああああああッ!!」

 

 形的にラ○ダーキックみたいな恋歌の飛び蹴りだったがお約束なんて何のそのの秋穂の熱線に薙ぎ払われて吹っ飛んだ。そのまま壁に激突した恋歌は伏せたままだった。心配になる隼人が彼女の体を動かすと泣いていた。

 

「な、何で泣いてるんだよ・・・」

 

「だって秋穂が・・・」

 

「何の策も無く空中に飛んだら迎撃するのは当たり前だろ・・・・」

 

「でも、でも・・・武の時は」

 

「アイツはその、空気読みすぎっつうか・・・とにかく、タイマンで飛び蹴りはやるな」

 

 そう言った隼人は年長とは思えないほど子供っぽい泣き方をしている恋歌を慰めつつダブルブレードアークセイバーを振り回す秋穂の方に移動すると喧嘩の原因を聞いた。

 

「それは兄ちゃんの事をどっちが分かっているのかで・・・」

 

「だったら決闘するなよ! 話し合えや!」

 

「えー、だって兄ちゃんまともに決めてくれないじゃん」

 

「・・・お前にしか分かっていない所もあるし恋歌にしか分からない事もある。それじゃ駄目か?」

 

「まあ・・・それでも良いけど・・・」

 

 恥ずかしそうに頬を赤らめる秋穂に一息ついた隼人は泣いてしまうと幼児退行する癖がある恋歌を抱き上げて家に戻るが抱き上げられている事が嬉しかったらしい恋歌の感情に応じた尻尾が大事な所を直撃したのに膝を突いた隼人は無駄に再現されているVRゲームを恨んだ。

 

「ハヤトさん?! どうしたんですか!?」

 

「タマチン打ったの兄ちゃん」

 

「タッ・・・・」

 

 下ネタに耐性が無いのか真っ赤になる香美を他所に無言で膝を突く隼人の傍に移動した秋穂は物を撫でる尻尾を引っ張り出して握り締めると激痛があるらしい恋歌が飛び起きた。立ち上がる力が無いのに物が起立した状態の隼人はパンツ丸出しの恋歌に何かを噴出した。

 

「兄ちゃん大丈夫?」

 

「今目の前にある光景が大丈夫じゃないわッ!!」

 

「あ、気にしないでただのお尻だから。ほーいすぱんきーん」

 

「止めんか!! 恋歌の尻を叩くな!!」

 

「じゃあ、兄ちゃん調教してあげなよ、ほい」

 

 そう言って恋歌の尻を前に担いだ秋穂は鼓か何かの様にスパンキングして隼人に滅茶苦茶怒られていた。顔を真っ赤にしている香美がその様子を見ていて恋歌のスカートを戻した隼人が優しい手付きで恋歌を抱え、その場に下ろす。

 

 その光景に見とれていた香美はダブルキックでぶっ飛ばされる秋穂に引きつり笑いを浮かべるとお互いに顔を背けた二人に笑っていた。仲が良いんだろうか、と思っていた香美は秋穂に回復アイテムを使いながら小競り合いを始めた二人にそうでもないのかも、とも思っていた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 暫くして合流した武達が隼人以外寝ている有様を見て首を傾げていた。ソファーで横倒しになっている三人の一番下、小柄な恋歌がうんうん唸っている中を普通に作業していたらしい隼人は大きく伸びをすると待機している六人に目を向けた。

 

「皆揃ったな、じゃあ出るかぁ・・・」

 

「三名寝てんだけどよ・・・と言うか今回車三台なんだろ?」

 

「ロードスター、インプレッサとハンヴィーな、インプレッサは前に停めてたろ?」

 

「ああ、あの邪魔臭い奴か・・・ま、良いや出るかね。じゃあ俺らは居眠りを運ぶかね」

 

「スマンな。そいつらはインプレッサに乗せてくれ。ロードスターは・・・ああ、浩太郎と加奈か」

 

 割り当てを確認した七人は居眠りしている三人をインプレッサに乗せるとエンジンをかけ、お世辞にも舗装されたとは言えない一本の獣道を無視して野原を小さく回ったシルバーのNC型ロードスターと大きく回ったハンヴィーを見送るとインプレッサのコックピットに乗り込んでアクセルを全開にした。

 

 器用にゲートを駆け抜けたそれをウイハロの町まで走らせた隼人はスピードを落としながら構内に入ると目的地の方向に移動し、門を抜ける。かなり広い谷道に出た彼は通り過ぎる馬車群を連れた商人団とすれ違う。そのまま山道を登る車列から距離を置いた彼は恋歌達が寝ている事を確認してシフトギアをセカンドからサードに入れた。

 

 同時に加速したインプレッサは山道を駆け上り、先行するハンヴィーを追いかける。ジャンプポイントだったらしい頂上から車体を飛ばしたインプレッサはハンヴィーとの距離を詰める。同時、スタンドに置いていたファンシアを通話モードにして煽りの言葉を放った。

 

「オラ、行かねえとケツ突くぞ!!」

 

『うっせえ、そっちがその気ならやってやるよ!!』

 

『こっちもだ!』

 

 先頭集団が加速したのを見た隼人はギアをフォースに入れるとアクセルを踏んだ。そして、S字コーナーの前でブレーキング、ダートコンディションを考慮して早めにハンドルを切りながらシフトをセカンドまで下げた。

 

 瞬間、ギアがロックして車体が急激に横を向く。ドリフト状態になった車体をアクセルだけで操作した隼人は迫るコーナーに反対側へハンドルを切った。瞬間インプレッサの鼻っ面が反対側に向いて難なくコーナーを抜ける。

 

 端から見ればド派手なドリフトだが舗装路では抵抗が大きい為、遅い走り方になる。しかし、ダートコンディションではハンドル操作でのコーナリングに回転数を極端に落とさなければならない為、加速が鈍ってしまう。

 

「よっと」

 

 今、武達と競争しているので回転数を落とさぬ様にドリフトで走っている隼人はコーナーに差し掛かってドリフトに入った所で凄まじいエンジン音で起きたらしい三人がすっ飛んでいく車体に慌てているのを見ながらコントロールをしていた。

 

 大きく笑いながら大慌てする三人を見ていた隼人は姿勢を崩さない様、ハンドルは動かさずにアクセルワークだけで車のコントロールをしていた。コーナーを突破し、ハンドルを戻した隼人はのろまなハンヴィーの後ろにつくと並んでドリフトを始めた。

 

「うわああああ! ちょっ、兄ちゃん! 近いよぉ!?」

 

「はっははは、大丈夫だ。ま、ちょっとフレンチキスでもすっかな。ほれ」

 

「ぎゃあ! 怖いっての! ほら! カミちゃんとレン姐死にかけてんじゃん!」

 

 そう言う秋穂が指す先、後部座席で顔面蒼白になっている二人にニヤニヤと笑っている隼人は余所見をしながらもハンドルとシートから伝わる振動と衝撃でコンディションを計るとコーナーを抜けると同時のシフトアップで加速させた。

 

 ゲームセンターとバイク運転で鍛えた運転感覚で走らせる隼人はハンヴィーの後ろを追いながら山道を降りて野原に出るとハンヴィーを抜いてロードスターに追いついた。後ろを追うインプレッサに気付いたらしい浩太郎はにやっと笑うとシフトギアを操作してあぜ道に飛び込んだ。

 

 野原が道の後半とは言えどアルカンまではまだある。人っ子一人いないのが幸いして暴走行為で怒られる事は無い彼らは男子の笑い声と女子の悲鳴のセッションをBGMに爆走していた。

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