B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》 作:Sence023
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超高速ドライビングを楽しんだ男子は目まぐるしく変わる景色でそれ所じゃなかった女子を車の傍に置いて輸送団の方に移動し、団長らしい依頼主と握手を交わした。ファンシアを取り出した依頼主に応じて隼人もファンシアを取り出す。
「早速ですが依頼の再確認を。我々、アルカン輸送団はこれからウイハロを経由してアイランへ物資を輸送します。折り返し時にはアイランの攻略組が護衛をしていただけると言うので片道分だけで十分です」
「了解した。俺達はどのポジションにいれば良い?」
「こちらに陸戦対策の緊急対応部隊が二ユニット、トラックの荷台に隠れさせていますが極力使用しなくて済む様、遊撃を宜しくお願いします」
「やれやれ。遊撃か、了解だ」
今回は積み荷の中身を悟らせない為の能動的迎撃を必要とするので遊撃を必要としていた。そのニーズに合う便利の良いグループがたまたまケリュケイオンだった。依頼の経緯がそんな所だった事に半分がっかりの隼人は陽気な港町のアルカンの風景を見ながら
名産品である森林資源を遠目から見学する。
土壌汚染の影響で緑資源が異常に成長しているという設定らしくかなり背の高い木々が窺える。森林と言うよりも塔の群れに近い光景に意識を奪われていた隼人達は出発準備を始め、現地で仕入れた武装や弾薬を積載量の多いハンヴィーに載せると
カモフラージュ用のアルカン仕様の制服を着た。
「結構設計がしっかりしているんだね。ステータス変化が無いよ」
「ああ。俺達が使っている服よりも良い服だ、惜しむらくはカモフラージュ用って所か」
「それは仕方ないね。僕らは彼らの一員の振りをする様に言われて雇われてる身だし。さて、よっこいしょと」
「利也、その銃は?」
「ああ、これ? さっき貰った銃でさ、G28だっけ。HK417ベースの狙撃銃だよ、報酬の一つらしいし」
「銃の無料提供って珍奇な報酬だな・・・。何にせよ、うちのコレクションが増えたな」
「うん。HKのM4改造シリーズはこのゲームでもマイナー過ぎて一般ガンスミスが作らないからレア銃になってるからねぇ・・・。基本オーダーメイドだから高いんだよこれ」
「そんなに珍しい銃なのか。見た限りじゃスペック低いのにな」
「銃器は見かけのスペックが重要じゃないんだよ。しっくり来るかどうか。それが一番重要さ」
そう言った利也はライフルスコープ代わりらしい低倍率ACOGスコープを調整して覗き込んだ。アメリカ軍の正式採用銃M4を改修したHK416の7.62mmモデルがHK417と言う銃であり、彼の言っていたG28と言う名称はドイツ軍が採用した際の名称である。
正面戦闘での射撃支援を主とした場合、ケリュケイオンの交戦距離の関係上反動が大きい傾向にある大口径ライフルは邪魔になりやすい。かと言って5.56mmになると貫通力と威力が激しく不足するしそもそもセミオート射撃前提なのだから
程よく反動があっても大丈夫なので遠距離狙撃にならない限りは基本的に7.62mm弾を使用するライフルを好んで使っている。
スペック的には低いHK417だが、熟練したプレイヤーからすると少し物足りない様に感じた。だが、今回利也はハンヴィーに積んでいたDSR-1しか狙撃銃を持ってきていないので自動小銃はありがたい代物だった。
因みにHK417はセミ、フル切り替えられるので区分的にアサルトライフル(口径が大きいので正しくはバトルライフルだが)になる。
確認を終えた利也の隣、同じ様に提供された拳銃を取り出して構えていた浩太郎はサンプルで提供された5-7をホルスターに収め、5-7が入っていたケースにMK23を収めた。メインアームとして使う事を前提に開発されたMK23に比して
非常に軽量に仕上がっている5-7だが逆に軽すぎて命中率に不安を覚えていた。
「5.7mmだから良いんだろうけど半分くらい軽いとちょっと不安になるなぁ・・・。サイドアームだったら良いけどね」
「と言うか普段使ってて重くねえのか、あの銃(MK23)」
「まぁ、僕の武器は基本ハンドガンとナイフだけだからね。ハンドガンが重くたって関係ないさ」
「そう言えばお前の戦闘傾向(バトルスタイル)はそう言うもんだったな」
「正直、軽い拳銃は反動制御しにくくなるから使いたくないんだよね」
そう言いながら小型、コンパクトな5-7を一回転させた浩太郎は左手にダガーナイフを引き抜くと右手にハンドガン、左手にナイフを構えたガンナイフスタイルで構えると構えを解いてフリースタイルに変えた。両手の得物をくるくる回す浩太郎は
回転させながらそれを収める。
ガンプレイが得意な浩太郎の技にニヤニヤ笑っていた武はアタッシュケースから5-7のマガジンを取り出すと浩太郎に投げ渡した。MK23の予備マガジンの代わりに5-7のマガジンをウェストバック型マジックバックに突っ込むと高速リロードの練習をした。
「相変わらずリロード早いな。何かコツでもあるのか?」
「コツなんて無いよ。ただ素早く動くだけさ、無駄無くね」
「うーん・・・そう言うもんかぁ・・・」
「さてと、話がまとまったみたいだしそろそろ出るみたいだね」
「そうみたいだな。さてと、俺もMK16のマガジンチェックしとかねえとな」
「ガンブレードは?」
「単発ライフルはお休みだ。傍に置いとくがな。それにせっかく提供してもらえるんだ、貰えるだけ貰っとこうぜ」
そう言って立てかけていたMK16を投げ上げた武はマガジンの中身をチェックすると装填し直し、スライドを引いて初弾を薬室に入れると中距離戦闘仕様のミドルバレルを装着したタイプのそれのマウントレールに装着されたリフレックスサイトを
覗き込んだ彼は照準の先にある車両のエンジンが始動したのを見て車に飛び乗った。
ハンヴィーのドライバーシートに座った武はエンジンを始動すると他の三人が乗り込むのを待ちつつ隣に駐車されているインプレッサに目を向けた。背の高いハンヴィーのシートからはインプレッサのシートは見えないが耳にかけた通信機から隼人の声が聞こえてくる。
『全員聞こえるか』
「オッケーだ」
『・・・よし、全員良いみたいだな。俺達が輸送隊に先行して移動する、サブシートは周囲に目を配れ。良いな?』
隼人に指示に全員が応答する。返答を聞いた武はバックスピンしたインプレッサに続いてハンヴィーの姿勢を変えると車列を組んで走り出す。アクセルは一定で周囲の状況を確認しつつ進んで行く武の背後で何かに気付いた利也が後ろに置いていたDSR-1を出してルーフの穴から体を出した。
刹那、ライフル弾がハンヴィーを直撃した。車体を揺らされた武は慌てて姿勢を立て直すが立て続けに放たれたロケット弾を咄嗟に回避、後方にいたロードスターが直撃を受けて大爆発を起こした。しまった、と車を軌道に戻しつつ思った武は利也からのサインでロードスターに乗っていた浩太郎と
加奈が無事である事を知り、ルーフの上にしゃがんでいる二人に挟まれた利也はロケット弾の飛来方向にスコープを向けた。
「こちらリーヤ。二時の方角、タンゴ(ターゲット)2」
『リード、了解。殺せ』
「リーヤ了解。さて、撃とうかなっと」
独自の用語を羅列して通信した利也は様子見では無く、射殺を命じた隼人に聞き返さず二脚を立てて狙撃準備を行った。スコープに移りこんだ狙撃手に引き金を引いた利也は射出されたラプアマグナムがスコープの中の人物を貫いて射殺した。
すかさずボルトを操作した利也はスコープを覗き込んで次のターゲットをランチャーを構えるインファントリに設定して射撃した。頭をぶち抜かれた兵士が額から血を噴き出して消滅、ボルトを操作した彼は何かに気付いた加奈の叫びで敵に気付いた。
「タケシ君、車止めて!! ハヤト君、敵だ。降車して対処する」
『了解した。だが、リーヤとナツキはハンヴィーに残れ。後の四人で対処しろ、こっちはアキホとカミを出す』
「分かったよ。ここから援護するね」
言いながらライフルを交換した利也はハンヴィーを出て行った武達がそれぞれの得物を構えて接近し、相手が間抜けにも顔を出した所で射撃を開始する。バリバリと雷鳴の様な発砲音と共に鉛弾が横殴りに襲い掛かる。慌てる相手が体勢を崩したのを見計らって
フラググレネードを投げた秋穂は爆発と破片を撒き散らしたそれによって消滅した複数人から得た経験値にウキウキしていた。
だが数名残っており、突然現れた護衛部隊に応戦しようとするが奇襲攻撃で完全に利を失っており、ヴェクターで射撃する加奈の後ろで5-7を連射する浩太郎はヘッドショットで一人倒すとナイフを引き抜いて振り下ろされたマチェットを受け止める。
逆手持ちのナイフから火花が散り、刃渡り的に有利なマチェットが浩太郎を押すがそれよりも早く相手を蹴り飛ばしていた彼は宙を舞った体を5.56mmライフル弾と.45ACP弾が滅多撃ちにしたのを見届けると敵に飛び込んだ秋穂と彼女の後ろをついて行く香美に
ついて行こうと走り出す。
二人の後を追う浩太郎はナイフの柄を持った状態で走り、マガジンを交換して隣に現れたファイター目掛けて腰溜め連射した。至近距離からの滅多打ちに耐え切れなかったらしいファイターが後退り、止めを楓が刺した。秋穂の後ろを走りながらハンターナイト目掛けて
P90の連射を浴びせた香美は別方向に移動していたインファントリにコンカッショングレネードを投擲、爆圧でダメージを与えつつ牽制する。
爆圧で怯んだインファントリは飛び込んできた浩太郎の膝蹴りで吹っ飛ばされ、頭への一射を横に転がる事で回避する。岩に隠れた彼は手にした軽機関銃、M249を浩太郎に向けて射撃する。ベルト給弾に裏付けられた分厚い弾幕がインファントリを狙う浩太郎達四人の進撃を阻む。
たった一人で四人を足止め出来ている辺り、元々分隊支援用に開発されているM249の牽制効果は抜群だった。雨の降る方向を真横にした様な滅多打ちに晒された岩盤を盾にしている四人は手持ちの射撃武器で牽制しつつ、散開して距離を詰めていく。
ファンシアの通信機能で浩太郎との通信を確保した武はMk16を構えつつ、後ろに待機している楓に待機維持を命じると通信を開始した。
「コウ、俺が援護するから突っ込んで注意を引いてくれるか?」
『勿論』
「よし、カエデ。お前はコウに注意が向いたら突撃だ。カナは俺と援護」
『了解』
「三秒後、フレアグレネードと共に行動開始だ。三・・・二・・・一・・・」
カウント終了と同時に赤色のフレアを投擲した武は赤色の光に一瞬気を取られたインファントリ目掛けてライフル弾をぶち込む。瞬間、風の様に飛び出した浩太郎がナイフを手にインファントリへ飛び掛る。瞬間、一閃を回避したインファントリが軽機関銃を連射して追い散らし、
追撃のグレネードを投擲した。
グレネードから逃れ、5-7を手に呼吸を整えていた浩太郎はファンシアの同期システムで楓の現在位置を把握すると牽制する。直後、倍のライフル弾が返礼で返ってきて急ぎ隠れた。元々手持ちの武器が少ない浩太郎はグレネードの類を持っていないのでグレネードへの対抗手段が無い。
だが、時間を稼ぐには十分だった。
「チェエエエエストォオオオ!」
インファントリの背後、両刀にスキルエフェクトを纏わせた楓が岩盤を切り裂きながら迫る。両刀に斬捨を発動させた一閃は岩盤をバターの様に切り裂き、楓は切断された岩壁から飛び出した。
「ショートカット『焔討』、発動!!」
返す太刀に炎を纏わせた楓は刃を赤熱させるのみならず漏れ出たフレアの本流を御しつつ、M249を捨ててナイフを引き抜こうとするインファントリに迫る。瞬間、左の太刀がM249のボックスマガジンに食い込んで炸薬に引火させる。爆発を起こしたそれから
撃発を待つばかりだったライフル弾が破片となって周囲に飛び散る。
命中するライフル弾の痛みに堪えた楓は右の太刀でインファントリのボディアーマーを切り裂くと外気に晒され白煙を上げる刀身を食い込ませようとして直撃判定で効果の切れた刃が血を零したのを見た彼女はグレネードによる自爆を目論んでいるインファントリに気付いて
刃を引こうとしたが既にナイフを捨てた手で握られていた。
「うわ、やばっ」
咄嗟に武器を放そうとした楓は吸い付いているが如く柄から離れない指に焦っていたがインファントリの手の中で炸裂寸前になっていたグレネードが弾かれ、間抜けた声を上げたお互いは落下したグレネードの炸裂を浴びてHPを減らすも即死には至らなかった。何でだろうと思うより早く、
インファントリの体が蹴飛ばされ、ライフル弾に滅多打ちにされた。
「大丈夫か、カエデ」
「うん、大丈夫。でもまあ、激しく動いたから行動資源値がピンチかなぁ~」
「ほらよ、ライトバーだ。取り敢えずこれ食って回復しろ」
マジックバッグから取り出したライトミールを投げ渡した武はそれを口に入れ始めた楓を浩太郎と共にカバーしながらハンヴィーに戻っていく。一人、秋穂達の様子を見に行った加奈は物陰に隠れてマガジンを交換しそこから二人を見ていた。
P90でハンターナイトに距離を取らせつつ、秋穂を飛び込ませた香美はハンターナイトの大剣で弾かれたアークセイバーから散った火花に目を見開くとマガジン交換を行った。一方の秋穂は右手のアークセイバーで横薙ぎに襲い掛かる大剣を往なそうとして貫通した刃に驚愕した。
両手武器が繰り出す重量任せの一閃はアークセイバーの熱線に触れても耐熱性と速度で貫けるのだ。なまじ、片手武器ならば弾ける所か刃を切断する事で無力化できるだけにそれを想定していた秋穂の驚愕は一塩だった。咄嗟に引いた彼女の防具を切っ先が掠める。
「っつぅー・・・ビームぶち抜くとか想定外だっちゅーの」
「ええい・・・素早い! 何だ貴様は・・・」
「えー・・・えっと、通りすがりの・・・なんだろね」
考えながら飛び下がった秋穂は振り上げた大剣の切っ先を向けてくるハンターナイトと距離を取ってから左にアークセイバーを引き抜いた。左のセイバーを順手から逆手に持ち替えた彼女は右の熱線を前にして走り出すと横薙ぎを跳躍して回避すると着地と同時にバックステップからの
後方逆手突きでハンターナイトを牽制する。
頬を掠った一閃に恐怖が励起したハンターナイトは小指でスイッチを切った秋穂が手の中で柄を回したのを見ながら大剣を振り回す。瞬間、側転して刃を回避した秋穂は右手のセイバーで腕を落とすと左のセイバーのスイッチを入れた。瞬間、熱線に白いエフェクトが纏わり付く。
「ショートカット! 『剣の舞』!」
両手の熱剣が超高速で振り回され、舞の如くハンターナイトの周囲を踊り切り裂く秋穂は四肢、頭を乱切りにして傷口の焼けた肉片を宙に散らしながらプラズマ刃を収めた彼女は焦げ臭い周囲に眉を顰めながら刃の無くなった柄を腰のホルスターに収めた。カシャン、と言う音を立てて
収まった柄の感触で一息ついた彼女はHK45ハンドガンを代わりに引き抜いて周囲を警戒しつつインプレッサに戻った。
加奈も追って戻り、ハンヴィーのルーフに浩太郎共々しゃがんだ彼女は強化された移動補助スキルの恩恵で走行の風圧で飛ばされる事は無く、周囲を警戒していた。念の為にラペリングをかけている彼女の隣で周囲を警戒している浩太郎は右手の5-7に左手を添えながら口を開いた。
「さっきの人達、何か妙だったね」
「そう? 盗賊にしか見えなかったけど」
「盗賊にしては、人数が少なくなかったかい?」
そう問いかけた浩太郎に首を傾げた加奈は苦笑する彼が周囲を見渡しながら言葉を続けるのを待った。
「それに最近各攻略組の動きが少ないのがちょっと気になってるんだよね・・・」
「確かに・・・。でも、今気にする事じゃないと思う」
「でもさ、さっきの人達が攻略組の人達だとしたら・・・どうする?」
「どうするって・・・倒すしかない」
「簡単に言うねぇ・・・」
そう言った瞬間、丘を越えたハンヴィーの車体が跳ねて二人がバランスを崩す。何とか立て直した二人は上を通過したヘリコプターに空を行くそれと併走して接近してくる車両に気付いて車両に銃を向けた。
ローター音と共に現れた輸送ヘリ、UH-60ブラックホークに照準した加奈と浩太郎は両手で構えた銃を発砲し牽制しようとするがチタン合金に炒り豆をぶつける様な物だった。風圧で減衰し、あっさり弾かれる拳銃弾に舌打ちした二人は側面に備えられたドアガン仕様のM249に
射手が着いたのを見て取るとハンヴィーの側面に回って掃射を凌いだ。
実質対抗手段が無い彼らはルーフを叩くライフル弾に耐えながら攻撃手段を模索していた。ヴェクターを構えた加奈は側面から射撃で足止めしろくに狙いも定めない射手を穴だらけのルーフから狙撃した利也の援護を受けつつルーフによじ登った。
浩太郎も同じ様に登ると左の手の甲に仕込んだワイヤーを射出してヘリコプターを捉えるとそれを引っ張ってヘリコプターを固定した。挙動が変化したらしいヘリコプターが上昇しようとするのに合わせて跳躍した浩太郎はヘリコプターにぶら下がるとコックピットから人員を投げ飛ばし、
副操縦士を射殺して飛び降りた。
落下から地面に接触する直前、ワイヤーを射出して半ば強引に移動した浩太郎はルーフに着地すると自分達を追う車に左手を振るった。射程距離無限のワイヤーが射手の首に巻き付き、鋭い刃の様なそれは首をいとも容易く切断して見せた。元々暗殺用の武器であるワイヤーは
シンプルさ故の万能性を見せていた。
「コウ君、凄い」
「ありがとう。でも、まだまだ用途はあるよ」
「そうなの?」
無垢な顔で聞いてくる彼女へストレートに答えようとした彼はもう一つの用途を思い出してその口を噤んだ。ワイヤーの用途は物音を立てずに殺傷する事であり、その一つに相手を吊るし上げて首の骨を折る、または切断すると言う用途がある。無論これは、浩太郎が武から借りたゲームから
ヒントを得て考案した暗殺方法であるが実践で使用したら予想以上にえげつなかったので止めた。
後ろめたい事があったのでそこで言及を止めた彼に助け舟を出すが如くもう一台の車がハンヴィーに激突した。危うく落ちそうになった加奈を引き上げた浩太郎はピックアップタイプらしいトラックの二台に座る二人のプレイヤーに気付いて5-7を引き抜いた。瞬間、飛び移ってきた少年の蹴りで弾かれ、
得物を失った彼は防具でもある衣服の袖から遭遇戦用に仕込んでいたM9バヨネットを引き出すとローキックを構えていた少年の軸足を突き刺した。
激痛で力が抜けたらしい少年は膝を折ったがバヨネットを振り上げて迫る浩太郎に気づいて両手で短剣を受け止め、得物を投げ捨てると残っていた足で浩太郎の足を刈った。荷台に陣取る少女が投擲した瞬間回復型の傷薬で負傷箇所を直した少年はハンドスプリングで起き上がりながら立っていた
浩太郎の頭にドロップキックを放った。
寸での所で受け止めた浩太郎は足の裏を押し返すと起き上がった少年の拳を往なし、腰から引き抜いたクナイを腕に突き立てるとそのまま顎に一撃入れた。ふらついた彼を掴んだ浩太郎は荷台からアサルトライフルを向けてくる少女に気付いて咄嗟に少年を盾にし、ライフル弾を防いだ。
大幅にHPの減った少年の首を捻って折った浩太郎は死体を投げ捨てると荷台に飛び掛り、少女をワイヤーで絞殺するとハンヴィーに戻ってM2ブローニング重機関銃を運転席めがけて発砲した。穴開きチーズの様になった車は乗り手を失い、壁に激突して黒煙を上げた。
過ぎていく車を見送った加奈はヴェクターでの射撃戦が基本の自分とは異なり、暗器やその場にある道具を用いたアウトローな近接戦を得意とする浩太郎がした結果に少しだけ、恐怖心を抱いていた。一方の浩太郎は半分近くまで削れているHPを戻すべく回復薬を使っていた。
「ん? どうかした? 加奈ちゃん」
「さっきの戦い方、凄いね」
「ああ、あれかぁ・・・。原型はお爺ちゃんから習ったんだよね、何でもお爺ちゃんのご先祖様がそう言う事をする専門の人だったらしくってさ。一族の教えでずっと伝わって、出兵してた曾お爺ちゃんを守ったんだって」
「そう言う事って・・・コウ君のご先祖様は暗殺者・・・忍者だったって事?」
「ま、そうだね。今でこそ古流剣術とかって言う体勢を取ってるけど本質的には暗殺術に近いよ。その場にある物を利用するとか、無手で相手取るとかね」
そう言って苦笑した彼の顔は少しだけ、曇って見えた。戦った後、隼人がする顔と同じだ。だけど、加奈にはその意味があまり分からなかった。どんな事に苦悩しているか、分からなかったから。
「コウ君、どうしたの?」
「え? あ、いや・・・。何でも無いよ」
「そう、分かった」
そう言った加奈はウイハロへの入り口に差し掛かったのに気分を高揚させ、それでも冷静な浩太郎はクナイとダガーを引き抜いて周囲を警戒していた。その後、一団は無事ウイハロに到着しぼろぼろの車から降りたケリュケイオンの面々は輸送トラックがガレージに移動したのを見届けると
輸送団を宿が密集する通りに案内した。
案内を終えた彼らは大きく伸びをしながら一度本部に戻る算段を付けていた。だが、それを阻むが如く怪しい一団が彼らの前に立った。一団を率いるハンターナイトを一度見た隼人はその鎧に描かれたエンブレムを見て取るや状況を理解した。
「なるほど・・・さっきからちょっかいを出しているのはお前等だったか、『P.C.K.T.』。領土保有面積一位の癖してこそこそ野盗の真似事か?」
「ちょっかい? 夜盗の真似事だと? 何の事だ、『サイファー』。リーダーからは貴様らの排除しか言い渡されていない。それでは覚悟してもらおうか」
「な・・・チッ、面倒だな。行くぞ、お前ら」
そう言って構えた隼人に続いたケリュケイオンとP.C.K.T.は臨戦状態にあった。パーティ人数は互角。故に、ケリュケイオンの不安要素である秋穂と香美がハンデとして重くのしかかる。如何にプレイヤースキルが重視されるBOOにおいても
レベルに二十以上の開きのある状態では流石に勝ちにくい。
特に戦闘系ではない香美にはかなりキツいレベル差だ。それも含めて二人一組での行動を指示した隼人はそれぞれ散らばって街中に逃げ、後を追ったP.C.K.T.のプレイヤー達はそれぞれに分かれて索敵を始めた。レベル的に中堅どころになるプレイヤー達はそれぞれの得物を持って
辺りを探し回った。だが、固まって探していたのが不味かった。
「いない・・・?!」
周囲を探すスカウトがスキャニングをかけるが高レベルのそれには何も反応が無い。映らないからどこにもいない、と言う訳ではないがイニシアチブを掴めない歯痒さが彼らにはあった。どこに行った、と捜索していたスカウトはその瞬間本能的な恐怖を励起させる浮遊感に襲われ、
一瞬でHPを失い、そのままログアウトとなった。
索敵を失ったグループはそれでも冷静に周囲を窺っていたが索敵を失った事が痛手となった。右側を警戒していたファイターは瞬間、現れた拳に殴り飛ばされた。拳の直撃を受けた体がゴム鞠の様に跳ね、壁に叩きつけられる。それを見て一瞬で強襲と理解して行動する辺り、
彼らも慣れていると言えるがそれでは彼らの相手には不足だった。
ステルスエンチャント状態で強襲してきた隼人目掛けて軽機関銃を構えた有翼族のインファントリはマニュアルエイムで彼に照準する。間髪入れずトリガーを引いた彼は弾道を見切って横ロールで回避した隼人に驚愕し、足払いで体勢を崩された。隼人の背後を取ったハンターナイトが
両手で構えたハンマーを振り下ろすが直前で右に往なされ、顔面への左裏拳で怯ませられる。
その隙を逃さず右ストレートを顔面に叩き込んだ彼は立ち上がったインファントリの頭目掛けてコンボを放つ。滅多打ちにされた彼が後ろによろけるとそれを待ち構えていたかの様にナイフを構えた加奈が心臓を一刺ししてその場に捨てていた。消滅したインファントリの残滓を浴びた加奈は
その手に構えたクリス・ヴェクターでファイターの一閃を受け止め逸らした。
耐久値を減らさない限りの使い方で往なした彼女は自身の体を狙う片手剣を屈んで回避すると返された切っ先をナイフで逸らし、ヴェクターの銃身で顔面を殴った。そして、腹に蹴りを入れた彼女は痛みから復帰した直後に逆襲しようとしたファイターをフルオートで射殺した。
「これで三つ」
消滅する際のエフェクトを浴びた加奈が呟いた死の宣告は着実な殲滅を意味していた。残りは七人。と、ここで敵のリーダー格は思い出す。こと市街地や洞窟と言った閉所戦闘に置いてケリュケイオンは相手にしてはいけない程の実力を持っていると彼らの上司から聞いていた。
つまり、町にいる限り、ここは彼らの得意な場所と言う事になる。既に姿を現している二人に構わず、有利な場所への移動を行おうとしたリーダーは真横からの狙撃でこめかみを打ち抜かれ、一瞬で消滅した。そのあまりの呆気なさにパーティの動きが一瞬止まり、直後強襲してきた恋歌と楓に
戦列を瓦解させられた。
初手を貰った恋歌が右足での飛び蹴りでタオシーを蹴り飛ばし、着地までの隙を埋めるが如く楓が居合いでの抜き打ちを放つ。射程の延びた一発が恋歌を狙おうとした武者の刀を弾き飛ばして阻害する。直後、武者の胸部に恋歌の左ソバットが突き刺さって吹き飛ばす。
「ショートカット、『鎧通し』ッ!!」
それに合わせて武者に右ストレートを叩き込んで前方に吹き飛ばした隼人は加奈が放った無数の拳銃弾に嬲られたそれが消滅したのをエフェクトで確認しながら下段に構えた拳を楓と恋歌を狙う女ハンターナイトに向けて放つ。フィジカル系アクティブスキル『ブリッツスマッシュ』が
反応したナイトのシールドに突き刺さる。
激しいノックバックで弾かれたシールドだったが隼人の次撃は無かった。その隙を潰すが如くコンパクトな片手剣の振りが彼を襲い、それを前ロールで回避した彼はワンアクションでナイトの腕に密着したシールドに攻撃を躊躇した。一瞬でHPを突破する程のダメージでないと通らないが故に
彼は戸惑い、故に隙が出来ていた。
隙を狙った刺突をバックステップで回避した隼人は掌底で剣の腹を叩いて逸らすと左の蹴りで牽制し、回避したハンターナイトに震脚を踏みながら距離を詰めて指先を丸めた掌打を叩き込む。体の芯に響く筈のそれだがシールドで防がれ、ダメージにならない。瞬間、タオシーが気孔弾を放って
隼人を吹き飛ばし、叩きつけられた彼が膝を折って喀血する。
普通なら内臓破裂していてもおかしくない程の威力に致死の錯覚を得ていた隼人は加奈をシールドバッシュで弾き飛ばしたハンターナイトの接近とタオシーの気孔術で分断された恋歌達に絶体絶命を悟った。が、それを裏切るように上方からの奇襲攻撃がハンターナイトの命を容赦なく刈り取っていた。
シールドが効果を発揮しない上面から脳天に突き刺さるダガーの一閃。刃に刺さった頭を押し潰す様に着地した浩太郎は引き抜いたダガーを血払いすると左のクナイをタオシーに投擲する。敢え無く長槍で弾かれたがその隙を逃さないとばかりに現れた武のフルオート射撃が一人残ったタオシーのHPを削る。
痛覚でタオシーの行動が鈍ったのを見逃さなかった隼人と恋歌は飛び掛るとそれぞれの得手を構えた。隼人はフックに構えた拳を、恋歌は両足を合わせたドロップキックを。それぞれ構えた彼らはタオシーを挟撃する様にそれらを発射した。攻撃力の高い一撃が突き刺さり、消滅したタオシーを最後に
相手パーティはファイター一人を残して全滅した。
隼人の傍に移動した浩太郎はファイターの両足に拳銃弾を撃ち込んだ。喉から絶叫を迸らせたそれの襟首を掴んで壁に叩き付けた隼人は香美にデータを読み取らせ、彼女がそれを終えるのを見届けてから至近距離からの一撃を加えた。壁に挟まれる形で受けさせられた一発は
ファイターのHPを刈り取り、消滅させた。
殴り消した隼人は拳をスナップしながら解くと残心の呼気と共に上げていた腕を下ろした。そして、ケリュケイオン共々ホームに戻ってログアウトした。