B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》 作:Sence023
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翌日、朝からログインしていた彼らは輸送隊を護衛しつつ荒れ道を進んでいた。違うのは車からバイクに乗り換えている事だった。秋穂がライダーとなり、緑と黒の配色が特徴的な海外モデルのカワサキ・Z250を譲り受けて走らせていた。後ろに香美を乗せ、走る彼女はシステムからのアシストで
ストリートファイターを走行させていた。
始め操縦するバイクに緊張しっ放しの秋穂とそれを後ろから見守っている香美より先行している隼人達二年生は昨日襲撃してきたグループについてそれぞれの意見を出し合って考察していた。道中遭遇した車群と街中で遭遇したパーティの所属が共通しているのか、それが彼らには気になっていた。
『仮に昨日の車両部隊がP.C.K.T.だとすれば昨日の部隊は後詰になる。けど、それだと彼らが知らなかった事が引っかかるよね』
『確かに後詰なら連携を取る為に襲撃の概要は言い渡される筈だよなぁ・・・』
「いや、アイツなら・・・P.C.K.T.のリーダーなら、メンバーを使い捨てる。俺達を排除する事を前提とせずに俺達の動向を探りにきたのだろう」
『何の為に?』
「双葉高校サーバーで攻略組が動く時、一番邪魔になるのは俺達だ。いや、言い換えよう。特定のグループの味方になった俺達だ」
『確かに・・・俺達は傭兵だから攻略組の戦力に匹敵するグループが金で買える事になる。連中からしてみれば厄介だよな』
納得する武は何か考えがあるらしい隼人が黙っているのが気になっていた。通信回線は女子とも繋がっている。だが、そう言った入り組んだ事情に詳しい訳ではないのでケリュケイオン全員が一様に意見できる訳ではなかった。
確かに武の意見は今までであれば素直に納得できる。だが、攻略組所属プレイヤーを狙った集団的なPKを行う謎のグループと言う異分子(イレギュラー)がいる状況では納得しかねる意見であった。普通自らの領土を荒らされている状況で
他の領土に攻め入ろうとは思わないからだ。
『もしかして・・・ハヤト君、君は異分子がいる状況だからこそP.C.K.T.は僕らを探りに来たと考えているのか?』
「・・・俺でもそうする。リスクはあるが誰も動きたがらず尚且つ戦力が分散する絶好の状況だからな」
『なるほどね・・・。君が裏をかけない唯一の相手だけはある』
「敵の肩を持つな、利也。何にせよ、攻略組が活発になっていない今、積極的に動くのは良くない。動向がハッキリするまで、グループを食い繋げるだけの小事をこなそう」
『そう言う方針なら了解だよ、リーダー。所詮僕らは総数十人の小規模グループ、大規模な攻略組の規模には対抗できないからね』
懸命な利也に感謝しつつ方針をその様に決めた隼人は押し黙る全員から了承を得ると無言でバイクを走らせる。と、彼らの行く手を阻む様にヘリコプターがホバリングし、ロープから数名が降下してくる。更にヘリコプター三台が現れ、
順次降下して行く手を封じる様に銃器を構えた。
「移動を停止しろ! 停止しなければ発砲する」
お決まりの言葉だが、隼人はそれとは別の所を見ていた。上空に四台が存在するヘリコプター、盗賊如きが凡そ運用できる代物ではないそれを凝視した彼は敵の正体を推察しつつ、バイクを停車。バックシートから降りながら拳銃を構える恋歌を抑え、
武器を構える部隊の前に身を晒した。
ヘルメットを取りながら彼らのリーダーらしい男に話しかけようとした彼は足元に打ち込まれた一発に反射的に足を止めた。
「そこから動くな、ケリュケイオンのリーダー。動けば射殺する」
先頭の隼人にそう言い放った男は手にしたMP5Kを持ち上げるとフォアグリップを握って構えた。一台につき四人ほど、それが四台と言う事は相手には16人いる。彼我の戦力差は覆せないレベルではないが秋穂と香美がついて来れるかどうかだ。
それに、もしかすれば伏兵がいるかもしれない。自分達が戦っている間に積荷を調べられでもすればその時点でアウトだ。自分達の任務は積荷の護衛、一度でも危害が加われば信用に関わる。それだけは何としてでも避けたい。
だが、迂闊な行動は射撃を誘い開戦を起こしてしまうだろう。慎重を期すなら、どうすれば良いのか。その答えは既に出ていた。隼人の背後、重なる様にして駐車していたCBの運転席でDSR-1を構えた利也はリーダー目掛けて射撃した。
頭部を撃ち抜かれ、一撃死したリーダーが消滅し慌てた敵グループに向けて突撃した隼人は銃を構えた敵に向けて飛び込み、手前にいたファイターをバイクの方に投げ飛ばす。敵陣に突っ込む形になった隼人は向けられた銃口を蹴って弾くと
そのままソバットで女ダンサーの腹部を貫く。
貫いた衝撃で吹っ飛ばされた女ダンサーが仲間を薙ぎ倒す様を見ながらインファイターの拳を上に弾いた隼人はインファイターに加えてハンターナイトとリッパーの連続攻撃を同時に捌き切るとリッパーにフック二連発、インファイターに膝蹴りを入れて
防御力の高いハンターナイトから距離を取り、狙撃に処理を任せた。
「クソ、こいつ等乱戦狙いだ! 距離を取り、統率の維持を最優先して攻撃せよ!」
そう叫んだサブリーダーだったがそれ故に背後への警戒が疎かになった。瞬間、剥がれた光学迷彩はそれが包んでいた一人の少年の周囲に光塵として散り、少年は花吹雪の様なそれを周囲に置きながら引き抜いていた厚刃のダガーをサブリーダーの胸に突き立てた。
血色に近い赤紫のエフェクトと共に突き刺さったダガーはすぐさま心臓に到達し、サブリーダーの体力を奪い取って消滅させた。アサシンの固有スキル『暗殺』。防御、干渉無効化の一撃死攻撃だが再使用までが長く使い所が難しい欠点がある。だが、この状況下では
指示を出せる人間を潰す事が優先となっていた。
指揮系統を壊滅させ、各個での攻撃に移らせた後に統率の取れないグループを火力で叩き潰す手筈だ。だから、体勢を立て直せる指揮者を最優先に潰す。血払いする様にダガーを振った浩太郎は手元に戻したMk23の銃口を背後に向けると引き金を引いた。
拳銃の威力で怯んだ相手に回し蹴りを叩き込んだ浩太郎はそのまま逃走すると腰の鞄から円形の物体を取り出して逃走経路にばら撒く。瞬間、作動した爆破トラップが鉄の子弾を追いかけるプレイヤーに浴びせた。大ダメージに怯んだプレイヤーは飛び込んできたラプアマグナム弾に
残るHPを消し飛ばされた。
消滅した追っ手も見ず駆け抜ける浩太郎は指定ポイントに指示された罠を固有スキルの恩恵もあって高速で仕掛け終え、光学ステルスを作動させて風景に消えていった。一方の近接戦闘系は敵の中心で大暴れしていた。そして、隼人が投げ飛ばした先、浩太郎が仕掛けた罠が作動。
爆発と共に電撃が散る。
作動したのは威力としては最大級のエネルギー地雷、アークマイン。一つ辺りの値段が高い代わりに作動と同時に周辺に強力な電磁パルスを撒き散らし、レーダー機能と通信障害、一部種族特性の使用不可能を引き起こす効果がある。それ故に戦闘地域の通信に強烈なノイズが混じり、
スキャニングの補助がなければ敵味方の区別も付けられない状況になっていた。
香美と共にヴェクターで護衛をしている加奈はバイクにバイポットを立てて狙撃している利也とその傍で戦闘管制を行っている夏輝の様子を窺いつつ、常時スキャンをしている香美から情報を受け取って接近する敵がいないか監視していた。今回は一人だけで間に合っているので
加奈は撃ち漏らしの処理と敵の動きの監視を任されていた。
「流石に皆、腕は良い・・・。撃ち漏らしが殆どない」
そう呟いた加奈の方に来る敵プレイヤーは殆ど無く、仮に彼女が接近する者にヴェクターを向けた時には利也が既に頭を穿っている状態だった。仕事が無いのはあまり良い気分ではない加奈だったがそれで役目を守らないのでは本末転倒だと思って行動の手を止めた。
そして、結果的にその行動がケリュケイオンと輸送団を救う結果となった。手持ち無沙汰になってふと視線を左に向けた加奈は何か嫌な感覚を胸に懐かせ、ガンナイフスタイルで構え直しそちらに銃口を向けた。レーダーと合わせて確認しようとした彼女は低レベル光学迷彩が持つ
空間の揺らぎに気付いて腰からスモークグレネードを取り出して投擲する。
炸裂したグレネードに撒かれた空間から人型が浮かび上がり、戸惑うそれに向けてフルオート射撃を撃ち込みながら接近した彼女は順手に直したナイフを突き出す。瞬間、切っ先が弾かれナイフが宙を舞う。人型が浮かんでも像が結ばれていないのでどんな姿格好なのか、
武器の種別やリーチがどれ位なのか、推し量る事が出来ずにいた。
故に、得物を弾かれても加奈にはヴェクターに頼るしか次の手が無く、クイックリロードで交換した彼女は引き撃ちで距離を取りながら周囲にも意識を配った。低レベルの光学迷彩と言う事は低レベルのステルスエンチャント術式によるエンチャント状態だと加奈は推測していた。
だから、不可視型のステルスを纏う敵プレイヤーに囲まれる事だけは回避しようと立ち回る加奈だったが既に背後に回られており、不可視の攻撃で吹き飛ばされた。攻撃の勢いで地面を転がり、HPの6割を飛ばされた大激痛に立ち上がる事すらままならない状態の彼女は
周囲を囲む透明人間に死を覚悟した。
その瞬間、光学迷彩に隠されていた一人の肩から血が吹き出、剥がれた光学迷彩から現れ肩を抑えて悶絶するファイターに彼女は目を見開いた。何が起きたのかを理解するより早く荷台から現れた味方がそれぞれの得物を手に攻撃を始める。
「マジックサポーターがいるはずだ! C隊はマジックサポーターの捜索を優先! A隊、B隊でケリュケイオンに加勢する! 良いな!」
『了解!』
「よし、行け! ゴーゴーゴー!」
そう言ってマウントレールにアンダーバレルグレネードを装着したSCAR-Lを手に走り出した護衛部隊の総隊長に助け起こされた加奈は統制部隊らしいD隊のマジックサポーターに回復術をかけられ、その周囲を隊の面々が囲って固める。銃や剣とバラバラの武器だが、統一された意思は
流石攻略組と賞賛するしかなかった。
「どうして・・・?」
「君達の危機にいても立ってもいられなくてな・・・。無理を言って出てきたんだ」
「そう・・・感謝するわ」
そう言いながらも加奈の内心では彼らが出てきたのは自分達の手で襲撃者を撃退したと言う事実を持ち帰りたいと言う実利目的ではないのか、と疑いの感情が芽生えていた。とある事情から軽い人間不信に陥っている彼女の疑りは正解だった。今回手柄に焦る気持ちが致命傷とならなかったのは
単なる偶然であり、繰り返せば致命傷となるのは目に見える結果だと言える。
実利とリスクが吊り合っていない行動をしながら撃退していく輸送護衛部隊の面々は敵のインファントリが担いでいたランチャーの一撃で吹き飛ばされ、数名が消滅した。更にM249軽機関銃の制圧射撃が襲い掛かり、運悪く頭に直撃したプレイヤー数名が消滅。瞬時に瓦解した戦線に舌打ちしながら
入れ替わったケリュケイオンは現れた伏兵の伏兵に向かっていき、射撃武器を連射する。
だが、丘の上に陣取るプレイヤーはM249軽機関銃で弾幕を張って隼人達を近づけさせない。一発一発が侮れない威力の弾幕で牽制された彼らは岩場に隠れてやり過ごそうとしており、その間に輸送団を逃がす。当然ランチャーが構えられるがそれを狙い済ました狙撃が脳髄を穿つ事で阻止し、
輸送団は無事逃げおおせる事が出来ていた。
一方、M249に加えて新たにセミオート射撃を行ってくるMk17の存在が明らかになった前衛側では迂闊に顔を出さず遠目に見ていた味方の視覚情報で遮蔽物への移動タイミングを図っていた。遠く、移動の意図を読んだ加奈と香美が短機関銃で射撃手を牽制し、利也もDSR-1で嫌がらせ射撃を行っていた。
「今だ!」
姿勢を低く、突っ走った隼人は背後に付く恋歌と共に移動し岩盤に背中を押し付ける様にして隠れる。瞬間通信回線が開き、通信を開始する。
『どうするんだ、こっから!』
「さあな。なる様になれ、だ!」
『お前、意外とテキトーだよな!』
通信帯でそう叫んだ武に苦笑を漏らした隼人は対岸の二人が拳銃を連射し、背後の恋歌も片手で拳銃を連射しながら開いた手で隼人の背中をタップする。瞬間、彼は飛び出してインファントリ目掛けて走り出す。M249を構えるインファントリが隼人に照準するがその時既に隼人は跳躍していた。
「ショートカット、『インパルスナックル』!! ズェアアアアアアアアアッ!!」
ランチャーを構えたインファントリが弾幕に晒される中、M249の弾幕が隼人を襲おうとする。瞬間、打ち下ろしの拳が軽機関銃の銃口と錯綜し、インファントリを穿つ。地面に叩きつけられた射手の背後、貫通した衝撃波がクレーターを形成する。インパルスナックルの効果の一つ、衝撃貫通が生み出した効果である。
刹那、バヨネット付きのMK17を構えたインファントリが槍の如き一閃を拳を上げた隼人に繰り出す。視覚外からの攻撃に一瞬反応が遅れた彼は目の前に迫る切っ先に反応したがそれよりも早くインファントリの体が真後ろに攫われた。円弧を描いた軌道で地面に引き倒されたインファントリは後頭部を強打しながらバウンドし、
そのまま消滅した。その残滓を背後に着地した恋歌と拳を軽く打ち合わせた隼人は敵の全滅を確認するとその場を後にし、輸送部隊を送り届けた。
6-3話を読んでいただきありがとうございます、センスです。
基本的に戦闘しかしていない今回の話でしたが次回からいよいよ本番です。
気になる所や誤字等ありましたら教えてくださいまし。
それでは次回お会いしましょう!