B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast7-3

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 それから数時間後、学校から帰宅した隼人は夕食を終えた後、自分の部屋でBOOにログインした。仮想空間に飛び込んだ隼人は何時もとは違う表情のメンバーに気付き、電話を受けているらしい武から受話器を投げ渡された。

 

「誰からだ?」

 

「サクヤの姉御だよ」

 

「・・・分かった」

 

 半目でそう言った隼人は電話の内容がろくな事ではないと決め付けた上で電話に出た。

 

「もしもし」

 

『あ、後輩君?! よかった、緊急の依頼があるの』

 

「何だ? またPKか?」

 

『違うわ、これはあなたにも因縁のある事よ』

 

「もったいぶるな、早く言ってくれ」

 

『分かったわ。落ち着いて聞きなさい、P.C.K.T.がコウロスに侵攻。トーネードストライダは激闘の末、彼らに降伏したわ』

 

「連中はやられたのか?」

 

『分からない。この情報も有志によってもたらされた物だから、確かな情報ではないの。だから、あなた達を雇用するわケリュケイオン。あなた達は三日以内にコウロスの首都にあるトーネードストライダの本部、

ソロモンビルに赴いてこの情報の信憑性を確かめて頂戴。どんな情報も見逃さずに、何もかもを奪ってね』

 

「畑荒らしのドサクサにニンジンを盗んで来いと言う事か?」

 

 そう言う事、と返してきたサクヤに呆れた返事をした隼人は受話器を置いて通話を切った。そして、数秒の間を置いて発行された依頼をホログラムに表示させて説明を始める。

 

「仕事が舞い込んできたぞ皆、説明する。今回の依頼はここから地図で南西にあるコウロス。今回、ここにP.C.K.T.と言うグループが侵攻し、一帯を占拠したらしい。然しこの情報は信用性が低く、行動の指針とするには

いささか不安定な物であるらしい、そこで俺達が呼び出された。俺達は敵の本拠地に潜入しこれらの事実を裏付ける重要な情報を収集する」

 

「うわ・・・俺らだけでの潜入ミッションかよ、キツイな」

 

「続けるぞ。期限は三日、準備をした上でこのビルへの潜入を開始する。今日は作戦を立てるとしよう、全員いる事だしな」

 

 ホログラムを切り替え、コウロスの中心部にある本部ビルの見取り図と3Dモデルを表示した隼人は潜入任務という響きを嫌う武に苦笑しつつ話を始める。

 

「盗み出すとして、この中にどうやって入んのよ?」

 

「なるべく乗り物は使わない方がいいが・・・。サーバールームの位置データがあれば楽なんだがな」

 

「あ、そうだ。壁に張り付けば良いんじゃない?! この前テレビでやってたスパイ映画みたいに!」

 

「張り付くのは無理だな、でも良いアイデアだ」

 

「ふふーん。で、どうすんのよ。壁に貼り付ける手袋を使うの?」

 

 小首を傾げる恋歌に苦笑する隼人の隣、武が呆れた表情をしている。

 

「んなアイテムねーっつの」

 

「何よ、言ってみただけじゃない!」

 

「あー、悪かった。んで、どうすんだよ結局」

 

 そう問いかけた武に続いて恋歌も隼人の方を見る。何かのデータを探していたらしい隼人はライブラリにあったらしい探し物をホログラムに出力する。

 

「・・・? 何よこれ」

 

「おいおいこれ・・・・ジップランチャーじゃねぇか。まさかお前」

 

「そのまさかだ。今回の作戦、コイツを使う」

 

 そう言って3Dモデルの方を引っ張り出した隼人は三十階相当の超高層ビルの屋上、ヘリポートのあるそこをズームした隼人はビルの端にある地点に赤いポイントを置く。引いたモデルの外壁に赤い線が走った所で変化は止まった。

 

「説明する、これは明日にする事だ。まず、先行してコウとカナがステルス展開状態で壁面伝いに屋上を偵察。カミとリーヤ、ナツキはビル内部の偵察。但し、スキルは使うな。探知される危険性がある」

 

「屋上では何を主に見ればいいのかな?」

 

「敵の配置、監視ルート、見れるならヘリの配置も見ておいてくれ。大体二時間の監視の後、ジップランチャー用のガイドビーコンをここに設置して撤収。屋内は案内された場所だけでいい」

 

「了解、あんまり無理するなって事だね。まあ武器は持って行くけど使う事は無いかな」

 

「そうしてくれ。それはそうとコウ、お前にプレゼントだ」

 

 そう言って共用武装ロッカーからトマホークを取り出した隼人は柄を浩太郎に突き出して手渡した。黒と赤で塗装された手斧は戦闘用途に向いたタクティカルトマホークでそれを手に取った浩太郎は上下に軽く振って重心を確かめると

それを宙に放って柄を掴んだ。

 

 そうして何度も振るった浩太郎は受け取っていたシースへ刃を滑り込ませ、手斧を固定して吊り下げた。

 

「どうだ? お前の要望に合った武器と思って買ってみたんだが」

 

「ん、悪くないね。ナイフとは使い勝手が違うけど、これ位の重量があれば骨を砕ける」

 

「希望通りで良かったよ。まあ、しばらく出番は無さそうだがな」

 

 そう言った隼人に頷いた浩太郎は早速外出準備を始めている先行偵察メンバーの後を追って徒歩でウイハロ市内に向かった。Mk17バトルライフルを肩に下げた利也を先頭に歩いた五人は市内の交易所でコウロス行きのキャラバンを探しに

知り合いの交易官の元に移動する。

 

 役人というクラスに属している半狐の少女に声を掛けた利也は交易所で商売をしているらしい商人達の管理をしている彼女にコウロスに向かうキャラバンがないか聞いた。

 

「ん~、コウロス行きはないなぁ・・・近場ならこの『カリン』がケオス行きかな。聞いてみたら?」

 

「分かった、ありがとう」

 

「そう言えばコウロスには何しに行くの?」

 

「素材探しとグループからの買い付けかな。あの辺りにしかない物もあるしね」

 

「あ、じゃあいい物あったら頂戴。この情報の報酬でね」

 

「見つかったらね」

 

「えへへ、お願いね」

 

 そう言って笑う少女に苦笑を返した利也は取得したデータをHMDモードで視覚に表示、ポイントされた人物の元に単独で移動する。その間、夏輝達は商人から様々なアイテムを購入し、準備を整えていた。そして、カリンという防具商人の下に

移動した利也は気付いたらしい彼女に笑みを向けられる。

 

「いらっしゃい、何をお求め?」

 

「あ、いや。買い物じゃないんだ、その君がコウロス方面に向かうって聞いてね、これから移動だろ? その時に乗せてもらえないかと思ってさ」

 

「そう言う事なら、いいわよ。商品も底をつきかけてるし、本拠地に戻りたかったから。その代わりちゃんと護衛してね、ケリュケイオンさん」

 

「そう言う事なら構わないさ。戦闘業務中心だけど、護衛も僕らの仕事だからね、お客さんが増えるのはいい事だ」

 

「何言ってるの、タダでやってもらうわよ?」

 

「あー・・・、まあ良いか。片道分だけなら」

 

「にひひー」

 

 悪どい笑いを浮かべるカリンにため息をついた利也はちょうど買い物が終わったらしい夏輝達と合流、店仕舞いして移動用の馬車に移動したカリンに付いて行って馬車の後ろに乗り込む。馬車はウイハロの西門に向かい、それから全力で走り始めた。

 

 移動開始時刻は10時過ぎ、加奈がサブシートに乗ってヴェクターを即時射撃位置に移動させる。幌に包まれた荷台では利也がMk17を構えて後部を監視、香美は荷台の中でフィールドをスキャニングし夏輝はその情報の精査と緊急時のエンチャントに備えた準備、

浩太郎はMk23のセーフティを外して二人の護衛をしていた。

 

 モンスターに襲われる事も無くケオスまで到着した五人は馬車から降りるとカリンに別れを告げてコウロスに向かう。それぞれ武器とアイテムを満載したマジックバッグを背負い、徒歩で移動する。

 

「何で徒歩なんですか・・・。車使いましょうよ」

 

「仕方ないさ、ケオスは内乱が激しいコウロスとの交流を絶ってるし地形的に自動車類の輸送が厳しい。車も借りられるほど余ってないんだ」

 

「うぅ~・・・でも、一時間歩くのは辛いですよぉ」

 

 肩を落とす香美に苦笑した利也は前を歩く加奈に胸を叩かれ、反射的に停止した。見れば浩太郎と加奈が自身の銃にサプレッサーを取り付けている所だった。何かいる、そう判断した利也は後ろの二人にしゃがむ様にサインを出し、腰に下げていたサプレッサーを

Mk17の銃口に装着、一度スライドを引いて未使用のライフル弾を排出、マガジンをサブソニック弾をこめた物に変更してスライドをもう一度引いた。

 

 その手順を終えた利也は振り返っていた浩太郎が道路を指差した後にピースサインで目を指してから人差し指と親指を内側に折り込んだ右手を見せた後に親指だけを立てた。

 

『道路の先、目視確認大型モンスター一体』

 

 そう示すサインを受けた利也はそれに頷くと浩太郎と加奈を指差し、対岸のブロックへそれを移動させる。

 

『あそこへ移動』

 

 頷いた二人は利也のカバーを受けながら音を抑えて移動、壁から出したMk17のスコープでモンスターを捉えた利也は一度引き戻し、傍に寄せた香美に耳打ちでスキャニングを指示する。スキャニングした香美は利也の意図を汲み、感知したプレイヤーにタグをつける。

 

 採取作業中らしいプレイヤー達のいる方向にスコープを向けた利也は外見からクラスを判定、脅威ではないと判断してコウロス境界に居座るモンスターの弱点部にスコープのレティクルを合わせた。

 

「シューターよりユニット。エントリーカウント、5から開始。4、3、2、1―――GO!」

 

 瞬間、セミオートでの連射がモンスターの弱点部を穿ち、悲鳴を上げるモンスターがのた打ち回って傍のモンスターを打ち据える。その隙に接近した加奈が直立体勢からヴェクターを高速射撃して牽制、その傍を超高速で駆け抜けた浩太郎はMk23を連射して距離を詰める。

 

 Mk23をホルスターに戻した浩太郎は腰から手斧を引き抜いて構え、暴れるモンスターの尻尾を回避して乗っかる。そのままそれを足場にした浩太郎は高速で駆け抜け、モンスターの背中を逆手のナイフで切り裂く。そして、露出した背骨にトマホークを連続で砕き割り、

露見した脊髄にナイフとトマホークの刃を打ち込む。

 

 一瞬痙攣して消滅したモンスターの返り血を浴びた浩太郎は消滅分の差で落下し、着地する。残る一体に接近した浩太郎は麻痺弾を食らっていたらしいモンスターの右前側の脹脛を切り裂き、露出した神経を斧でぶつ切りにする。回復したらしいモンスターが

バランスを失って倒れこみ、その隙に加奈と浩太郎はモンスターの皮膚を切り裂きまくる。切られている間はぎゃあぎゃあと暴れるモンスターだったがやがて失血して死亡した。

 

「ファントムよりシューターへエリアクリア」

 

『シューター了解、移動する』

 

 そう言った浩太郎に加奈が頷く。血振りしたナイフとトマホークから赤みが抜け、それらをシースに収めた浩太郎は白目を剥いているモンスターが消滅したのに一息ついた。そして、離れていた浩太郎達と合流してコウロスに入った。コウロスの土地的な特徴として

内乱を勝つ為、グループごとのモンスター狩りが激しすぎてフィールドにモンスターがいない事が挙げられる。

 

 寧ろ経験値源として襲撃される危険性がある為にモンスターよりもプレイヤーの方を警戒すべきなのだ。緑が残っている土地に足を踏み入れた五人は周囲を警戒しながら奥に見える現代風建築のビルが密集する地域へと向かう。

 

「カミちゃんSPの余裕、ある?」

 

「あ、えっと・・・無いです。先輩方のお陰でレべリング出来てはいるんですけど・・・。5回までが限度で・・・」

 

「そっか、スキャニングは10にするまでは燃費悪いもんね。じゃあ、はい。マナポーション」

 

「良いんですか? ナツキ先輩、SPが重要なクラスなのに」

 

「今必要なのはカミちゃんだから。ファストルック・ファストキル。これが一番良いんだから、ね」

 

 そう言って笑った夏輝から手渡されたマナポーション五個の内、四個をマジックバックに収めた香美は一個を飲んで回復するとスキャニングを発動する。半径700mを探知するスキャニングスキルに引っ掛かる反応は無し。だが、奇襲される可能性はある。アサシン系統クラスの存在だ。

 

 探知しにくいアサシンは視界から消える光学迷彩に加えてスキャニングからの非探知状態、そして極限まで足音を消せる利点がある。つまり奇襲性が極端に高く厄介なのだ。なので、香美のスキャニングはあくまでもアサシン以外を探知する為に使用して接近を知る物だ。

 

「リーヤ先輩、十時の方向、木の陰に二人プレイヤーがいます」

 

「分かった。皆ストップ。その人達、そこでずっと止まってる?」

 

「はい、一歩も動いてません。時折探る様に影から見てますけど、位置は動いてません」

 

「うーん、待ち伏せかなぁ・・・コウ君、カナちゃん、ステルス状態で回り込んでくれる? 三人でここを進むからさ」

 

「分かった。待ち伏せなら殺害するよ?」

 

 香美の報告を受けて指示を出した利也はステルス状態で回り込もうと移動したアサシン二人を見送ると夏輝と香美を連れて歩き出す。何かしら不利な状況にされた瞬間、二人は隠れているアサシンに抹殺される。予め探知されている二人の近くに移動した三人は

木陰から出てきた彼らを警戒しつつ、目的を問いた。

 

「何ですか?」

 

「警戒するなよお兄さん、ここら辺じゃ恒例の行事だからよ」

 

「はぁ・・・バンディット、ですか」

 

「理解が早くて助かるぜお兄さん。ま、射撃クラスだって事を恨め―――」

 

 瞬間、拳銃を手にしたインファントリの少年の背後に迫っていたカナは片手に構えていたナイフを喉に突きたてる。その後ろでは浩太郎がファイターの少女の首を捻って殺害していた。瞬間、離れた位置から見ていたらしい3人ほどの仲間が駆けつけるのを

利也が確認し、香美に弾幕を張らせながら自身はMk17を構えた。

 

 5.7mmのフルオート射撃で怯んだパーティに無慈悲な一撃を加えた利也は銃声で気付かれたと想定して合図すると町に向けて走り出した。走りながら9mm口径のPx4ハンドガンを引き抜いた利也は前を走る浩太郎のカバーをしながら周囲を警戒する。

 

 漁夫の利を狙うパーティに捕まればジリ貧だ。だが都市部に飛び込めれば、他のプレイヤーの存在が抑止力となる。だから飛び込めれば何とかなる。門を越えた瞬間の背後から射撃を受けた利也は足をもつれさせた香美の方に走りながら

フルオートに変更したMk17を連射する。

 

 三人も転進し、アイテム持ちの夏輝が浩太郎にスモークグレネードをトス、ピンを抜いた直後に下手投げで門へ転がし煙幕を張ると香美の手を引いて走り出す。カバーに動く利也と加奈は追撃が無い事を確認して先行した三人の後を追う。

 

「危機一髪だったね」

 

「・・・卑怯」

 

「町に入る瞬間ってのは油断しやすいからね、射撃手からしてみたら格好の的だよ」

 

 そう言って苦笑する利也に加奈は視線を向け、納得のいかない表情で浩太郎達と合流する。安心したのか欠伸をかみ殺す香美に時刻を確認した夏輝は苦笑を浮かべてファンシアを利也に見せた。午前一時、十時半から計算すれば

移動に三時間近くも掛かった事になる。

 

 移動に集中力を使い過ぎたのか、船を漕ぎ出した香美に背を見せた浩太郎は眠気眼の彼女を背負うと隼人が確保していた宿屋に移動した。六人部屋に案内された五人はベットの一つを荷物置きにして浩太郎が香美をベットに寝かせた

 

 パーティリーダーに任命されている利也が香美のログアウト作業を行い、彼女は現実世界に戻る。香美のアバターから色が少し抜け、褪せた色合いのアバターが残る。今日は移動だけで明日から偵察だ、なるべくなら日のある内に行い、

移動する隼人達に必要な機材を持ってきてもらう手筈だ。

 

 だが、今からは休憩だ。各々好きなようにする時間でログアウトするのかと利也は思っていたが他の面々は残っていた。

 

「あれ。皆、ログアウトしないの?」

 

「連続戦闘で目が冴えてさ。暫くここでクールダウンしようと思って」

 

「んじゃ、僕も残っておこうかな。クリーニングしながらでいい?」

 

「構わないよ、僕のわがままなんだから」

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

 そう言ってMk17の整備を始めた利也の向かいに座った浩太郎は自身の隣に座った加奈の頭を撫でながら外の景色を見つめる。正面に目標となるビルが見え、それを見ながらわくわくした表情を浮かべる彼は正面で銃と格闘している利也が

隣に座る夏輝からブラシを受け取って清掃する。

 

「映画を思い出すね、ビルへの侵攻は」

 

「FPSのキャンペーンじゃたまにあったけどね、オンラインゲームでやるとは思わなかったけど」

 

「ハヤト君も凄い事考えるなぁ・・・。まあ、少数で強襲するならこれぐらいしないとダメなんだろうけど」

 

 そうして苦笑する浩太郎にため息をついた利也はマガジンを取り外しサプレッサーも外す。そうしてノーマルになったMk17を壁に立てかけた彼の腕に夏輝は凭れかかる。普段の彼女からは考えられない大胆さに驚いた利也は

半ば寝ぼけている彼女に気付いた。

 

「ナツキちゃん、無理しなくていいんだよ?」

 

「うん・・・分かってる、よ?」

 

「凄く眠そうなんだけど大丈夫?」

 

 心配そうな利也に柔和な笑みを浮かべた夏輝はそのまま彼の膝に頭を動かし、枕にした。固まった利也に苦笑した浩太郎はしきりに甘えてくる加奈を膝に座らせて全身を撫で回し、胸を重点的に弄られた彼女の体が痙攣する。

 

「ちょ、ちょっと何してるのさ!」

 

「ん? スキンシップだよ?」

 

「セクハラじゃないのかい?!」

 

「同意の上で触らせてもらってるからセーフ。胸を大きくしたいらしいし」

 

「・・・目標は夏輝」

 

「カナちゃん、それは流石にドン引きするよ。恋歌ちゃんくらいがいいと思うなぁ」

 

「・・・そう」

 

「あのさ、二人共。まさか本番してないよね?」

 

「どうかなぁ・・・」

 

「・・・秘密」

 

 驚く利也は仲良くニヤニヤと笑っている浩太郎と加奈にウンザリしたような表情を向ける。直後、夏輝に抱き付かれて豊満な胸が腰に当たる。

 

「な、夏輝ちゃん?! ログアウトしなよ!」

 

「うん・・・おやすみ」

 

「お、おやすみ」

 

 寝ぼけた彼女がログアウトしたのに安堵した利也は自身もログアウト作業を行い、ログアウトする。それを見送った浩太郎は加奈と共にログアウトし、並べて敷いた布団から体を起こすと

目元からVRモードに変形していたデバイスを取り外す。

 

 スタンバイモードになっていたそれのスイッチを切り替えた浩太郎はディスプレイモードになったそれに表示された時刻を確認して一息ついた。額に当てた手の震えに気付いた彼は

月明かりを頼りに流し場に向かい、コップに水を注いで飲み干した。

 

「はぁ・・・。こんな姿見られたら怒られそうだなぁ」

 

 ハハハ、と自嘲気味に笑った浩太郎は突然の物音に振り返る。右の逆手に菜箸を握った彼は怯える加奈に気付くと菜箸を戻す。泣き出しそうな彼女を抱きしめた浩太郎は落ち着かせる様に撫でた。

 

「ゴメン、加奈ちゃん。ビックリさせちゃって、ちょっと気が立ってたから」

 

「・・・コウ君こそ、大丈夫?」

 

「うん・・・大丈夫じゃない、かな。ちょっとショックがあるっぽくてね。しばらく寝れそうにないや」

 

「じゃあ、早く寝れる様にエッチして寝よ? ゴムの予備はまだあるし」

 

「体力使う事を選ぶね・・・。まあ、明日休日だけどさ」

 

 渋々ととした態度ながらも拒絶しない浩太郎に心なしか嬉しそうな表情を浮かべた加奈は洗面所に走っていく。彼女の背中を見送った浩太郎はもう一度水を飲むとやる気満々の彼女の後を追って

寝室に戻っていった。

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