B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast7-4

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 翌日、午前十時。一般サーバー内セントラルシティ自由貿易市場内、とある商会の事務所。

 

「相変わらず無茶苦茶言うなお前さん。ジップランチャー1基、ラペリングロープ6本、EMPチャージャー3基に殺傷、非殺傷型グレネードが多数。弾薬、ランチャーだけでもどんだけ売るの大変だと思ってるんだ」

 

「どうせ余ってるんだろ? 発注品はどれもPvP(対人戦闘)用の用品だ。ジップランチャーなんかは使い捨てだから組み立て据え置き型の旧式が良いんだよ。遺跡探索用とかの小型品はいらない」

 

「またなんか企んでんのかよ。取り敢えず受注だ、何か追加するもんとかは無いか?」

 

「あれば12.7mmの爆破弾を。対車両用に使える物で」

 

「物騒な物頼むなぁ、あいよ了解。じゃあ、その間料金帳消しの為にこれを頼んどこうかね」

 

 そう言ってファンシア対応のARカードを投げた半狐の青年は事務所の奥に引っ込んでいく。ファンシア生体同期型HUDをARモードにした隼人はカードのバーコードをスキャンしてデータを取得する。依頼内容は自由貿易市場の

近辺に陣取るPKの排除だった。貿易の邪魔になる為、排除が望ましかったらしい彼らを捜索しに隼人達は普段の格好で存在が確認される地域に移動し、捜索を始めた。

 

 ものの数分で発見した隼人達はそれぞれ武器を構えるまで待ち、投擲力のある隼人が商団を襲う盗賊目掛けてパルスグレネードを投擲。暴徒鎮圧用という名目の非殺傷性グレネードから頭痛を引き起こすほどの大音量が

放たれて盗賊団は襲撃対象の商団諸共、足を止められた。

 

 その隙に武の射撃である程度数を引いて突撃、近接職が大半を占める現在ではその戦術が最も有効だった。二人がウィンチェスターマグナムによるヘッドショットで消滅し、残る五人に近接職が雪崩れ込む様に襲い掛かる。

 

「う、うわぁあああ?!」

 

 恐怖に飲まれた五人は呆気無く消え、呆然としていた商団に近付いた隼人はリーダーらしい青年の太ももを叩いて行かせた。自分は味方だとは告げずにその場を離れた彼は依頼完了のウィンドウを見てホッと一息ついていた。

 

 どうやらこれでタダ働きは終わりらしい。何時もの金銭的取引を基にした関係に戻るのだろうと思いながら市場に引き返そうとした隼人は背後から迸った殺気に気付いてその場から飛び退く。目の前を走った銀閃を回避した隼人は

槍であるそれを掴み取って引くと持ち主目がけてローキックを放つ。だが、槍の持ち主は寸での所で回避する。

 

「あっぶね。流石ハヤトだな!」

 

 そう言って豪快に笑う槍使いのハンターナイトを見て、隼人は下らなさそうに息を吐く

 

「シュンか・・・。ん、お前だけか?」

 

「いんや、『アルファチーム』のメンバーもいるぜ?」

 

「置いてきたのか?」

 

「おうよ、あいつ等チンタラ歩いてるからな! んで? 何でお前らがここにいるんだよ?」

 

「買い物だ。今度のクエストで使う物のな、今いないメンバーは下見に行ってる」

 

「リーヤ達が? 大丈夫なのかよ」

 

「大丈夫だ、ステルスが重要だから遠距離監視を徹底させている。それに、今回は新メンバーがいるしな」

 

「新メンバー? 何だよ、お前らんとこ誰か入ったのかよ」

 

「探偵部の部員二人がな。っと、タケシ達が来た」

 

 そう言った隼人の視線の先、帰って来ない事に心配になったらしい武達がファンシアのリンク機能で位置確認し、追いかけてきたらしい。それぞれ遠距離武器を構えながら歩み寄ってきた四人の内二年生は、シュンの存在に気付いて

一様に目を見開いた。

 

「久しぶりだなタケシ!」

 

「おう。こっちじゃ何時振りだ? 共同作戦の時以来か?」

 

「そうだな。お、シュウ達が来た」

 

 その言葉に遅れて少年一人少女二人がシュンの隣に並ぶ。シュンの右側に黒のポニーテールに結った人狼の少女、左側に『レミントンACR』5.56mmアサルトライフルを下げたメガネの少年、彼の左側に『HK417』7.62mmバトルライフルを担いだ

少女が種族的な特徴である猫耳を動かしていた。

 

「久しぶりだな、ハヤト。そっちの青髪の子は?」

 

「こっちじゃ新顔だけど中身は見知った顔だ。エルフ・バードのアキホだ」

 

「ほう、アキホと言う事はお前の妹か。アキホ、俺はシュウ。現実で見知った顔らしいがこっちでは初めましてだな。種族は人間、クラスはインファントリーだ。宜しく」

 

 そう言ったメガネの少年、シュウは自分のファンシアを身分証明証の様に秋穂へ見せた。双葉西高校サーバー所属『ユニウス』、第一班『アルファチーム』。秋穂にとっては初めての他校サーバーのグループだった。

 

 そして、秋穂はシュンの隣にいる少女にも目を向ける。もしかして、と彼女は口を開いた。

 

「ポニテのワンちゃんってシグ姐?」

 

「そうよ、アキホ。って撫でないのっ! やぁあああ! 止めなさいっ!」

 

「あはは~カワイ~。似合ってるよシグ姐! アバターが犬だから雰囲気に合ってるよ!」

 

「犬じゃなくて狼よっ!! 第一雰囲気って何よ雰囲気って!」

 

「シグ姐っていっつもシュン兄にくっ付いてるもん。わんわん! わんわん!」

 

 頭の上に手を耳の様に置いてからかう秋穂に威嚇する狼宜しく牙を剥いた時雨が吠え掛かる。からかいが数分続き、秋穂の頭を叩いて止めた隼人はタイミングを計りかねていた小柄な少女の方へ妹の頭を向けた。

 

「え、えっと。向こうじゃネギだけどこっちではハナって呼んでね。種族は半猫族、クラスはスカウト」

 

「宜しくね、ハナ姐」

 

「アキちゃんバードなんだよね、じゃあまだ一次職なのかぁ。メインアームは何?」

 

「ん~? ああ、アークセイバーだよん。ダブルタイプって奴」

 

「へぇ~! アークセイバーって扱い難しいのに! ダブルタイプって事は連結式?!」

 

「え、う、うん。まぁ、そんなとこ・・・かな」

 

「サイドアームは? あ、HK45なんだ! レンちゃんと同じだね! 使って見てどう?」

 

「べ、別に何とも・・・」

 

 詰め寄られる秋穂が怯んだのも構わずハナはグイグイと距離を詰めていく。後ずさる秋穂に苦笑した隼人は見かねて止めに入ったシュウが秋穂に視線を向けているのに気付いた。

 

「・・・シュウ?」

 

「ハヤト、今時間あるか?」

 

「あるかって・・・。発注したのに連絡無いから多分あるが、何する気だ?」

 

「実はこっちで大型モンスターの討伐をやる予定でな。それに付き合ってもらいたいんだ、この子の実力を見てみたい」

 

「実力試しか・・・。別に良いが大型モンスターって事はPvM(対モンスター戦)だろ? PvPメインの俺らはお前らほど対モンスター戦闘のノウハウはないぞ?」

 

「大丈夫だ。不足分のノウハウを俺らが伝えればいい。今回はボスドロップ素材狙いで巡回してるモンスターだからある程度セオリーが出来てる。取り敢えず狩場に移動しよう」

 

「アイテム補充は良いのか? シュンがこっちに来たのも補充の為だろう?」

 

「いや、この馬鹿がお前等の所に移動したのはお前らに会う為だ。狩りにも行ってない」

 

「そうだったのか・・・。大変だな」

 

「何、何時もの事だ。さてと説明に入ろう、今回狩るのは旧関東オーヴォルト・横須賀ベイエリア機械兵研究所のキングタイタン級重火力ドローン。周辺巡回に一機、研究所入り口に一機、

出口側に一機の計三機が配備されている。だが、狩るのは敷地と入り口だけだ」

 

「何でだ?」

 

「別のパーティが来るかもしれないからだ。一機残しておけば乱獲扱いされない。俺たちが一機分割合が大きいだけのことだ」

 

「お、思ってたより悪どいな・・・。まあ、そう言うプランなら了解だ。それで、敵について何かあるか?」

 

「タイタン級は多脚戦車として設計されている為に総じて火力が高く、射程が長い。キングとなれば尚更だ。奴は、こちらが攻撃可能な距離に入る前にドローンで有効射程内を偵察し、発見すると

隠れている場所ごと主砲でぶち抜く。主砲の200mm電磁砲は射程が長い上に直撃所か至近弾で致命傷になる可能性があるから回避の際は気をつける様にな」

 

「主砲の有効射程は?」

 

「敵を中心に半径2km。こちらの射程に入る前に発見されれば一方的に攻撃されるからドローンに見つからない様にな」

 

「了解だ、細かい動きはそちらに任せる。こっちは臨時の指揮に徹する、指揮権はお前に委譲するぞシュウ」

 

 そう言って移動用の装甲列車に乗る。エリア移動用の乗り物で、自動運転で任意の場所に移動する優れ物だ。それで目標となるエリアに移動した九人は土砂降りの雨の中、随分と寂れた駅で降りると

階段を使って所々浸水している横須賀ベイエリアの大地に足をつけた。

 

 埋立地であるそこは激闘で生じた振動で液状化現象を起こしているらしく、湧き出た水が溜まりとなっており道端には浮き上がったマンホールの存在もあった。水に沈んだ地下道の入り口には

膨れ上がった死体があったが、隼人達はそれを無視して進んだ。

 

 ベイエリアの駅から研究所までは直線距離で1.2km、道なりに進めば1.5kmほどの距離になる。その道中にタウンは無く、避難シェルターらしき場所を中心としたテントの群れがあるだけだ。

 

 無論、モンスターは襲ってくる。然し、モンスターとの戦闘は必然的に周囲の目を引きやすく、キングタイタン級が打ち出した偵察用ドローンが寄って来る可能性だってある。出来るだけ避けたい彼らは

草むらに身を潜めて進んでいた。

 

 ベイエリア全体を常に覆っている雨雲からの土砂降りでモンスターには匂い、音、どちらからも探知されず、ドローンも降りしきる雨で周囲の気温が下がっておりサーマルの機能が正常に働いていなかった。

 

 だが、悪い効果もある。

 

「・・・ウィドウ1(ハヤト)よりユニオン1(シュウ)

 

「どうしたウィドウ1、トラブルか」

 

「ああ、ウィドウ4(カエデ)ユニオン5(シグ)行動資源値(ワークポイント)があやしい。別ルートを取れないか?」

 

 そう言った隼人が振り返れば武にカバーされながら低くしゃがんだ体勢でゆっくり苦しそうに歩く楓とシグの姿があった。人狼族である彼女らのキャラクターはデフォルトでの消耗速度が速く、加えて低体温状態になる雨天時などは

消耗速度が種族に合わせて増える。現に隼人達も苦しい状態だが二人ほどではない。

 

 通信を聞きながらパーティを止めたシュウだったが一度を空を見上げ、周囲を見回してから首を横に振った。

 

ネガティヴ(無理だ)。屋根のある場所に移動すればたちまちドローンに熱探知される。ウィドウ4、ユニオン5の消耗速度は?」

 

「毎分8ポイント。下限値まで5分しか保たない」

 

コピー(了解した)、急ごう」

 

 そう言って銃を構えたシュウが歩き出し、パーティもそれに続く。隼人は遅れている二人に行動資源回復値の高い携行食を渡すと武と共に列の後ろで周囲を警戒する。それから小一時間、雨に打たれながら移動したパーティは

目標まで700m程の場所に接近していた。

 

 一度廃ビルの中に消耗の激しい二人を入れた隼人と武は遅れて来たシュンと共にその場に待機し、残る面々は対岸のビルで待機して通信越しに作戦概要を再確認する。

 

『まず、入り口のキングタイタン『ターゲットA』を狙う。アキホが主導となって一撃で仕留めてくれ、キングタイタンの装甲はエネルギー属性に耐性は無い筈だ。『ターゲットB』にはこちらから監視を付ける』

 

「ウィドウ1コピー(了解)

 

『皆、準備はいいな? それじゃあ、ショウタイム(戦闘開始)と行こうか』

 

 シュウの号令に従って立ち上がった隼人は同じ様に立った武とシュンを連れてビルを出る。瞬間、熱探知したらしいドローンからけたたましい警報が鳴り、舌打ちしながら走り抜けようとした三人は壁を破って現れたタイタン型ドローンの

機銃掃射を飛んで回避する。

 

 20mm弾が地面を抉り、寸での所でダメージを免れた三人は通行規制用に用意されていたらしいブロックに飛び込むが生物である以上、サーマルから逃れられる筈が無く隠れようとした壁は20mm弾に崩された。

 

「ビルに逃げろ!」

 

 隼人が叫び、それに従って二人が飛び込む。唸りを上げるガトリングの連射が三人を襲う中、タイタンの真横に位置する廃ビルから飛び出した秋穂は右手のアークセイバーで一機の左前足を刈って転倒させるとシュウから受け取っていたセムテックスを

底に貼り付けて研究所の方に走り出す。

 

 走りながら爆破スイッチを押した彼女は起動したらしいキングタイタンに向かって突進する。瞬間、キングタイタンの肩に当たる部分から長方形の物体が起立する。赤いレーザーが秋穂を照準する中、腰のホルスターからHK45を引き抜いた彼女は

牽制目的で闇雲に連射する。

 

 だが、多脚戦車の名に恥じない強固な装甲に弾かれ、赤外線でロックオンされた秋穂に片側八発、計十六発のATGM(対戦車誘導ミサイル)が放たれる。肩のランチャーセルから放たれたそれが秋穂目掛けて殺到し、風化していた中庭を破壊する。

カバーに入ったシュウがACRでミサイルを数発撃ち落とすとEMPグレネードを準備する。

 

 リロードに入ったらしいキングタイタンから腕に当たる銃身が伸びる。左腕には多数の弾種を切り替え、高速連射する60mmリヴォルヴァーカノンが伸縮式の銃身を延ばし、右手には『GAU-12』25mm《イコライザ》五銃身ガトリング砲が搭載されている。

 

 全高6mもあるキングタイタンでも目を引く重武装。瞬間、初動の早いリヴォルヴァーカノンから榴弾が放たれる。対処しきれない数の攻撃に舌打ちしたシュウの横を四つの影が通り過ぎる。隼人を初めとする前衛組だ。

 

「各自散開だ! 秋穂の狙いをこっちに引け!」

 

『了解ッ!』

 

 号令一下、散らばったそれぞれが攻撃を加えてキングタイタンの注意を引く。大したダメージにならない攻撃に反応したそれが両腕の武器を乱射して牽制する。放たれた榴弾がボロボロの石畳を粉砕して跳ね上げ、25mmのヘヴィ弾が噴水を粉砕し藻が繁殖し

ボウフラの湧いた汚水が辺りにぶちまけられる。

 

 悪臭を放つ水から逃げる様に走ったシュンは茂みに飛び込むと右手の長槍『ドラゴンフライ』を左手に持ち変えると右手にHK・P30を引き抜いて射撃した。キングタイタンの装甲に当たった9mm弾が弾かれ、注意を向けたそれが左のリヴォルヴァーカノンを

シュンに向ける。

 

 瞬間、その場を飛びすがったシュンにAP弾が浴びせられ、根こそぎ吹っ飛んだ茂みが緑と茶色のコントラストを散らす。ローリングで立ち上がったシュンは下がりながら9mm弾を発砲、ガトリングが向いたのを確認するとその場から逃走しようと走るが

弾着の衝撃波に煽られて転倒、滅多打ちにされる前にシュウが噴水跡に引き込んで難を逃れた。

 

「無事か!?」

 

「なんとかな!」

 

 セミオートのACRで牽制しつつ、そう問うたシュウに笑い掛けながら答えたシュンは槍を置いてリロードしたP30をホルスターに戻すと右手に槍を取る。5.56mmがセンサーに当たったらしいキングタイタンが一瞬よろけ、その隙にシュンは接近する。

 

 隼人達共々接近したシュンは右前足の間接に槍をぶち込み、ドローンの神経である伝達ケーブルを切断する。隼人と恋歌がそこへ蹴りを叩き込んで足払いし、真横を向いた脛部に爆破物をセットしていた武を足場に秋穂が跳躍する。

 

「やぁあああああっ!!」

 

 分厚い装甲をぶち抜くアークセイバーの刃、バチバチと火花を散らしながら溶断するそれを振り抜いた秋穂は左手にもう一振り引き抜き、起立した右ランチャーの根元を切り裂く。足元のセンサーを踏み砕き、中央に位置するレールガンの砲身を

切り裂いた彼女は破壊の限りを尽くし、切り開いた制御部にグレネードを投げ込んで飛び降りた。

 

 直後、キングタイタンの四肢と心臓部は大爆発を起こす。制御系の破壊に合わせて武が仕掛けたセムテックスを爆破したのだ。ざくろの様に内からかち上げられる様に裂けた胴体の装甲と四肢の内部から部品が飛び散り、研究所の外壁に高速で激突する。

 

「危ない!」

 

 恋歌の声と共に襟を引かれた秋穂は自身のいた場所に落下した巨大なコンクリートの破片に血の気を引かせ、慌ててその場を離れる。直後、通信にハナの声が響き渡る。

 

『シュウ君、ターゲットBがこっちに来る!』

 

『何!? 予定より早いぞ?!』

 

 ハナの報告に焦るシュウ。そのやり取りを聞いていた刹那、研究所をぶち抜く様に青白い光が迸って衝撃波が突風の様に全てを吹き飛ばす。踏ん張る間などないまま中庭の外壁に叩きつけられた秋穂と恋歌は真っ二つに割れた施設から現れたキングタイタンに

血の気を引かせる。

 

「シュウ! ターゲットCが! シュウ!?」

 

 拳銃を引き抜き、現れた三機目のキングタイタン、ターゲットCを狙いながらそう言った恋歌だったが彼女に返ってきたのは耳障りなノイズだけだった。通信動作をしたまま秋穂の方を向いた彼女は首を振った後輩に舌打ちし、その場からの逃走を図る。

 

「何で通信が使えないのよ?!」

 

「どーすんのレン姉。多分兄ちゃん達、ターゲットBと戦ってるよ?」

 

「分かっててもアイツがいるんじゃ動けないわよ!」

 

「・・・でもさ、アレ。さっきから動いてないじゃん?」

 

 そう言う秋穂が指す先、伏せているターゲットCは動く気配がない。レールガンはおろか、リヴォルヴァーカノンやガトリングすら展開していない。一しきり警戒していた恋歌は動かないと見るや移動を始め、銃声が鳴り響く路地に出る。路地に出ると通信が戻り、

しきりに呼びかけていたらしい隼人の声が鼓膜を震わせる。

 

『レンレン! アキホ! 応答しろ!』

 

「聞こえるわようっさいわね!! アキホもいるわよ!!」

 

『良かった、間違えてスイッチ切ったかと思ったぜ。今どこだ?』

 

「今? 路地よ、銃声のする方に移動中」

 

『ターゲットCは?』

 

「動いてないわよ、伏せたまんま」

 

『そうか・・・そのエリアには暫く近づけないな。よし、そのままこっちに来てくれ。早めにな』

 

 了解、と隼人に返した恋歌は秋穂を連れて彼が出したポイントに向かって移動する。不意の接敵を警戒しつつ、移動した二人はキングタイタン・ターゲットBと戦闘している隼人達と合流する。ハナの姿は見えないが復帰した楓とシグが加わっており、火力は増していた。

 

 だが物理防御力が高いキングタイタンにはあまり効果が無く、加えて狭い路地であるが故にリヴォルヴァーカノンとガトリングの効果が向上している事が彼らを苦しめていた。直後、放たれた榴弾とヘヴィ弾が廃屋の柱を破壊する。押し潰さんばかりの大質量から逃げた恋歌と秋穂は

離れて位置で隠れていた隼人達と合流する。

 

「何してんのよアンタ達」

 

「連射武器ってのは狭い場所だと有利なんだよ。それよりお前等、アイテム回収できたか?」

 

「出来る訳無いじゃないのよ! それよりもアンタ、さっきの通信障害に心当たりがあったみたいだけど」

 

「ああ、レールガンの影響だな。経年劣化で発砲時、電磁場が漏れるんだよ。だからレールガンを撃つと電子機器は全部ダウンする。暫くあのエリアには近づかない方がいい」

 

「そう言う事なら了解よ。それで、これからはどうするの?」

 

「アイツを仕留める。だが、その為には―――」

 

「両腕の機関砲を黙らせなきゃいけないんでしょ? 策はあるの?」

 

「博打だが一応ある。一点掛けの大穴場だ。外すと痛いぞ」

 

「男って賭け事好きよね。ま、面白いからいいけど」

 

 そう言ってHK45を構えて笑った恋歌に苦笑を返した隼人は武とシュウ、そしてタブレット端末を手にしているハナを見てニヤリと笑った。笑い返した彼らを見回した恋歌は背後からの発砲音に驚き、その場で飛び上がった。

 

 見れば何もない空間から発砲炎が迸っており、凄まじい音量の発砲音がそれに先行して響く。

 

「な、何?! 何よ?! ってドローン?!」

 

 光子を散らしながら光学迷彩を解除したツインローターのドローンに慌てる恋歌は落ち着いている隼人に視線を向けた。問いかける様な視線に気付いた彼は苦笑混じりにハナを指差し、口を開いた。

 

「アレはハナが所有しているアイテムだ。俺らに危害は加えないから安心しろ」

 

 瞬間、ドローンの底部に備えられた対物銃から12.7mmが放たれ、中心部に直撃を受けたガトリングが花開く様に四散する。すかさず、シュウがXM25グレネードランチャーをリヴォルヴァーカノンに撃ち込み、爆発四散させて

次の行動の為に武共々その場を離れる。

 

 シュウ達をカバーする役目を終えたドローンは主の元に戻り、しゃがんでいるハナの傍に垂直着陸する。底部からランディングギアを展開して着陸したドローンのウィングローターを両手で折りたたんだハナは不思議そうに見てくる恋歌に苦笑した。

 

「レンちゃん、アクちゃんの事気になる?」

 

「アクちゃん?」

 

ドローン(この子)の名前。『AQ-01』だからアクちゃん」

 

「そ、そう・・・。でもドローンなんて初めて見るわね、どうやって手に入れたの?」

 

「設計図を持って、生産工場跡地の生産設備で作ったんだよ? 鞄の中には後二機あるんだ~」

 

「二機・・・って事は予備の機体?」

 

「ううん、それぞれ装備が違うの。ここにあるミドルバレル型のアンチマテリアルライフルを装備してるのがA型で、グレネードランチャーを装備しているのがB型、それでこのパルスガンを装備しているのがC型」

 

「け、結構あるわね・・・。それで、使い分ける為に三機もあるって訳なのね?」

 

「そう言う事! えへへ~」

 

 元々機械オタクの気があるらしいハナが取り出して並べていたドローンを前に若干引き気味の恋歌はリュックサック型のマジックバッグに収められたそれらの脅威を感覚で悟ると武器を失ったキングタイタンへ突進する。

 

 射撃武器を剥いてしまえば後は近接職の出番となる。秋穂や隼人達と接近した恋歌は右足間接の裏を狙った回し蹴りを叩き込み、膝を落としたキングタイタンの足元が大きく崩れる。位置の低くなった胴体に隼人がストレートをぶち込み、

大きくへこんだそこにシュンの槍とシグのククリナイフが突き刺さり、二人は開いた手に引き抜いた拳銃を突っ込んで連射。

 

 制御盤を破壊しつつナイフを手放したシグは開いた手に高周波振動の刃を束ねたバトルファンを取り出して装甲を滅多切りにする。だが、キングタイタンは体勢を立て直し、前足で器用に蹴るとその場で戦車形態に変形した。

 

「させるかッ!!」

 

 瞬間、前脚部に取り付いた隼人とシュンは後方役に突進しようとするキングタイタンを押し返そうと足を踏ん張るが質量と馬力で負けている為に徐々に押されていっていた。恋歌達も加勢するがそれでも焼け石に水だった。

 

「クソッ、シュン! ブラストオフモードを俺に合わせて起動しろ! 押し返すぞ!」

 

「おう! 任せとけ!」

 

「いくぞ、3、2、1―――」

 

 そう叫んだ隼人はシュンと共に息を吸い、ファンシアに向けて叫んだ。

 

『Blast Offッ!!』

 

《Voice Command:B.L.A.S.T.O.F.F. Mode:Ignition》

 

《Blaine

 Lead

 Assist

 Support

 Transcend》

 

《Overed

 Fanshia

 Follower》

 

《All Systems:B.L.A.S.T.O.F.F. Mode:Complete》

 

 

 瞬間、二人の体が仄かな色味を持って発光し始め、強制起動のHMDモードに走るラインウィンドウが起動したモードを表示する。『ブラストオフモード《B.L.A.S.T.O.F.F. Mode》』、ブラストオフオンラインに実装されている強化モードであり、

プレイヤー全員に残された最後の切り札である。

 

 全スペックが3倍になり、再使用時間も大幅に短縮される。故に、拮抗していた押し合いも隼人達が押し返し始め、空転したキャタピラが風化しているアスファルトをめくれ上がらせる。その隙にシュウ達がセンサーを狙って射撃し、

感覚器を失ったキングタイタンが闇雲な出力で突進しようとする。

 

「クソッ、ブラストオフモードでもダメか!?」

 

 ジリジリと押され、再び地面に足がめり込んでいく感触を味わう隼人達四人は陰った地面に気付き、揃って空を見上げた。瞬間、壁蹴りで上部に取り付いた秋穂が左手にアークセイバーを引き抜いて振り上げる。突き刺さった刃から火花が散り、

液化した強化チタン合金がお湯の如く沸騰する。

 

 基部に接触した熱線が基盤ごと溶かし切り、制御系がめちゃくちゃになったキングタイタンが急激に出力を弱める。伏せの体制になろうとしたキングタイタンに好機を見た四人は近接攻撃のスキルを発動させて前足に叩き込んだ。爆発した前足から

破片が散り、レールガンの砲身をへし折らせた機体から咆哮にも似た軋みが聞こえる。

 

「よっしゃあ! キングタイタン撃墜だぜ!! ・・・っと」

 

「モードの反動が・・・」

 

 尻餅をついたシュンと隼人は力の入らない全身を地面に横たわらせ、土砂降りの雨に打たれる。それを遮る様に恋歌とシグがサバイバルグッズの保温シーツをテントの様に広げた。倒れた二人が起動させたブラストオフモードにはきちんと弱点がある。

 

 ブラストオフモードは180s(セコンド:秒)、つまり3分しか保たない制限があり制限時間が過ぎると30s動けず、そこから600s(十分)間プレイヤーの能力値が3分の2にまで減少する弱点が存在する。つまり、使用のメリットよりも使用後のデメリットの方が大きいので

本当に不味くなった時しか使用しない、正真正銘の切り札である。

 

「動けるか?」

 

「硬直はおさまったから大丈夫だ、それよりアイテム回収は良いのか?」

 

「一つは回収済みだ。少し・・・破損してはいるがな」

 

「何だそれは・・・?」

 

「ドローンの内部にしかない希少金属、レアアースだ」

 

 そう言ってソケットの様な部品をキングタイタンの装甲から取り出したシュウはそれを興味深げに見てくる恋歌と武に苦笑した

 

「レアアースっつーと、精密機械の材料になる奴か。そう言えば相場が良い値段するんだよなアレ」

 

「え、何々? ガッポリ儲けられるって事?」

 

「端的にはそうだな。ほら、ファンシアの相場情報とかにも書いてあるぜ、えーっと今は全身剥いて50万ってとこかね。前足吹っ飛んでっから20万くらいに下がるだろうけど」

 

「え、それマジ!? 20万も貰えるの?!」

 

「全部のレアアースを剥ぎ取って売っ払ったらだけどな。あ、乱暴に剥いだら価値下がるぞ」

 

 そう武が言った瞬間、ボッキンと音を立てて基盤がへし折れる。一気に青くなった恋歌の表情を見てシグが大爆笑する。元々プロポーションの差で若干コンプレックスがあるらしいシグは恨みたっぷりの表情で恋歌を笑っていたがレールガンの取り外しに

手間取っていたハナが手を滑らせてシグの方に砲身を投げてしまう。

 

「キャアアアアッ?! ちょ、重ッ!」

 

「あわわわわ・・・シグちゃん大丈夫? どうしよう・・・」

 

「て、手伝って・・・潰れるぅうううう!」

 

 重みに負けてシグが膝を折った直後、男子総出でレールガンを持ち上げ傍らに投げた。ガシャンと音を立てて砂煙を撒き上げたそれが経年劣化の痕跡も痛々しい基部を露にする。一息つく男子陣を他所に上部から滑り降りてきたハナは

分解用の工具で基部と砲身に二分し、マジックバッグに収めていく。

 

 二つ目の部品回収を終えたらしいハナが立ち上がり、それに続いてシュウも立ち上がる。ACRのマガジンを交換しながら移動を始めた彼は目の前に現れた戦車形態のキングタイタンに目を見開いた。ターゲットCと名付けられていた三体目、

レールガン発砲の電磁波でダウンしていた筈の機体だった。

 

「ハナ!」

 

 変形したキングタイタンが巨大な前足を持ち上げ、戦闘を歩いていたハナを押し潰そうとする。誰も間に合わない、叫び走り出していたシュウだったが誰よりも状況を理解していた。前足が振り下ろされる直前、キングタイタンの体が

横方向からの強い衝撃によって逸れる。

 

「何ッ!?」

 

 見れば、ギリースーツを纏い、二振りの長剣を持った人狼族が飛び蹴りを叩き込んでいた。強力な一撃に揺れたキングタイタンは肩のランチャーを起動してレーザーポインタを照射する。キングタイタンの機体が揺れ発射かと思った瞬間、横合いからの機銃掃射が叩き込まれる。

 

 ハリウッド映画宜しく片手で反動制御しているハゲマッチョのアバターが肩にSMAWロケットランチャーを構え、キングタイタンにロケット弾を撃ち込んでいた。ダメ押しと言わんばかりにレーザービームの様な魔法が撃ち込まれ、装甲が融解する。

 

「ぶち殺せ!!」

 

 ハゲマッチョの叫びに頷いた人狼族が長剣二本にスキル強化の光を宿し、高速で振り回した。目で終えないほどの速度で振り回された刃がキングタイタンを滅茶苦茶に破壊し、物の数分で終了した戦闘に息をついた人狼族は逆手に変えた長剣を両腰の鞘に収めた。

 

「・・・状況終了、だ。ん? お前等・・・先客か?」

 

「あ、いや・・・違う。俺らはこっちを狩っていただけだ。そっちの獲物が乱入して来ただけだ」

 

「そうか、それはすまなかったな。落ち着いて物色も出来なかったろう」

 

 そう言った人狼の後ろ、死体漁りをしている面々が気になったシュウは苦笑している人狼に気付き、慌てて佇まいを直した。仲間の手伝いに行くらしい人狼と片手を上げて分かれた後、ハナからスキャンデータが送られ、シュウはそれを閲覧した。

 

「『ゲネシス旅団』、リーダーは人狼リッパーの『山田ジャピオ』・・・。変わった名前だな」

 

『というか・・・外見に似合わない名前だよね』

 

「まあな・・・。っと、ボーっとしている暇はないな、帰ろう」

 

 一通り読み終えたシュウは合流してきたハナと一緒にシュン達を待って駅に戻っていった。




ゲームやってるだけだコレー!

今回は3話登場のニシコー組との共同戦闘です。彼らは予定では外伝の登場人物です。なので、この話の裏はいずれ書くつもりです。

何時の事かは分かりませんがね! それでは!
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