B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》 作:Sence023
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エリア移動用の駅で降り、シュウ達と別れた隼人達は事務所に戻ると待ちわびていたらしい青年に半目を向けられた。依頼を終えてから帰ってこない事を心配していたらしい彼は隼人に伝票を手渡した。
「約束通りの品、用意しておいたぞ」
「ジップランチャー、ロープ・・・・良し。必要なものは揃ってる、サンキューな」
「おうよ、大事なタダ働き口だもんよ。その分の仕事はちゃんとやらないとな」
「後はこれを向こうのサーバーに持っていくだけだな。時間もちょうどいいし、これを受け取ってログアウトとしよう」
そう言ってアタッシュケース入りのジップランチャーを受け取った隼人は残りの荷物を手に取った武達を見回すと青年に一礼して事務所を去った。頃合のいい所でログアウトした隼人は自宅のベットで目を覚まし、11時45分を指すデジタル時計を見ると
一階に降りて台所に移動する。
乾麺のうどんを取り出し、鍋に湯を沸かすと昼食を作り始めた。湯が沸くまで、携帯端末を弄っていた隼人は遅れて降りてきた秋穂に水を渡すとデバイス経由でSNLにアクセスした端末が受信したメールを開いた。
『リーヤ:巡回完了。屋上の見張りは夕方5時から五人に変わる。暗殺に手間取る可能性がある為、早期開始を進言』
『ハヤト:そいつは無理だ。季節設定はまだ春だからまだ日が出ている。夕暮れですらない見えやすさだから危険だ』
『リーヤ:了解。して、決行時刻は?』
『ハヤト:午後九時。だが、先行して作戦説明があるので午後八時からのログインが望ましいな』
『リーヤ:分かった、皆に伝えとくね』
そう言ってメール画面が消える。どうやらゲームの中らしい彼は必要事項を伝え終えたと判断してログアウトしたらしい。沸騰したお湯に乾麺を投入した隼人は端末を傍らに置いて茹でていた。
「秋穂、お前何うどんがいい?」
「えー、カマタマ~」
「分かった、だったら俺もカマタマにしよう。お前、今日夜に予定あるか?」
「ないけど~?」
「俺は午後八時からログインするが、お前はどうする?」
「八時かぁ・・・ちょっとする事あるから遅れるかも」
「分かった。よし、出来たぞ」
三玉のうどんがそれぞれ入ったどんぶり二つを持った隼人は食い盛りの自身と妹、それぞれの席にそれを置くと自分の分の箸を持ってきて早速食べ始めた。膨れっ面の秋穂もそれに続き、卵の絡んだ麺を啜った。
卵の自然な甘味に大きなどんぶり一回り分のしょう油の塩気がアクセントとして効いており、手抜き料理としては意外な美味しさだったが既に食い飽きている二人は大した感想も無く無言で啜っていた。
「ねぇ、兄ちゃん」
「ん?」
「そう言えばさ、この前兄ちゃん達殴り合いしたんでしょ? 逮捕沙汰になったアレ、先生達は兄ちゃん達が悪いって言ってたけど本当はどうなの?」
「あれか・・・教師の言葉をあまり真に受けるなよ、真実じゃない」
「ふーん、相手の人から仕掛けてきたんだ。やるね、その人。命知らずも程ほどにって言うけどさ」
「そうならざるを得ないだろうな、何せ理性が無かったからな」
「え? どう言う事?」
「明らかに様子がおかしかったんだよ、襲われた時。多分、ドラッグの禁断症状が起きていたんだと思う」
「まさか・・・そんな事ある訳ないじゃん、だって私ら学生だよ? 学生が、ドラッグとか・・・ありえないでしょ・・・」
箸を取り落とした秋穂に首を横に振った隼人は俯いた妹から視線を逸らしてうどんを啜る。秋穂にとって、その無言が答えだった。父や母から聞かされていた夢物語の様な事件の数々、その内の一つが現実味を持って
自分の傍に現れている事に、彼女は恐怖していた。
「兄ちゃんは・・・怖くないの?」
「怖くない、むしろまだ気が楽だ。敵は、見ず知らずの人間なんだからな」
「え・・・?」
「あ、いや。何でもない。忘れてくれ」
「う、うん・・・。ゴメン」
怯えた表情の秋穂を置いて隼人は無表情で流しにどんぶりを置いて二階に上がる。それから彼女に隼人が口を利いたのは二時間後、BOOへログインした後の事だった。