B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast8-2

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 翌日の昼休憩、怪我と精神的なダメージで弁当を作る気になれなかった隼人は購買でパンを買った帰り道、隣のクラスが騒がしいのに気付いた。気になった彼がクラスを覗いてみると取調べをした書記が囲まれている所だった。

 

「この前の名簿盗難、あんたがやったんでしょ?!」

 

 リーダー格らしい少女がそう叫んだのに隼人は驚いた。何で情報が漏れてるんだ、と。思わず教室に踏み入った隼人は囲みを押し退けて少女の前に顔を出した。話を聞いていた隼人の存在に気付いたらしい少女が、アッと言った顔で隼人に目を向け、

彼の腕を引っ張って書記の前に持ってくる。

 

「ねえ、五十嵐君。この子捕まえてよ、名簿盗んだ犯人だよ!」

 

 隼人の様子など気にせず、そう言った少女は怪しげに疑ってくる表情の彼に首を傾げた。

 

「五十嵐君?」

 

「一つ、聞いていいか? 証拠は?」

 

「え、えっと・・・このつぶやきだよ」

 

 そう言って見せられた携帯端末の画面には生徒会会計が書記が犯人だと仄めかす書き込みが映っていた。二度目の驚愕、その画面を手に取った隼人は俯く書記を攻め立てようとする少女を止めた。

 

「何よ」

 

「止めろ、こんな馬鹿の悪戯レベルの書き込みが証拠になる訳ないだろ」

 

 そう言って少女に端末を突き返した隼人は書記と目線を合わせ、自分に注目を向けると囲みを追い払い、書記を彼らから離した。

 

「何でよ・・・何でそいつが犯人じゃないのよ!」

 

「何?」

 

「そんな根暗で陰気な子、犯人になればいいのよ! 私達に合わせないくせに、自分は仲間みたいに振舞って!」

 

「もう一度言ってみろ。もう一度言ってみろ!!」

 

「犯人はその子よ、そうならなきゃ駄目なの!」

 

 瞬間、少女の体が吹き飛んだ。拳を上げ、荒く息をついた隼人はざわつく教室の面々を睨んで少女を見下ろした。

 

「何するのよ! 男が女に手を出して良いと思ってんの?! タダじゃ済まさないから! 覚えて―――」

 

 瞬間、少女の襟首を掴んだ隼人は彼女を廊下に投げ飛ばす。廊下を歩いていた数名を薙ぎ倒した少女に立ち歩きしていた生徒が何事かと彼女に注視する。少女の目の前、攻撃しようとしていた取り巻きを薙ぎ倒して

廊下に出てきた隼人が修羅の形相で拳を握っていた。

 

「おい、何してんだバカ!」

 

 騒動に気付いた武達が隼人を押さえ込みに走る。男三人のタックルで隼人を倒した武は慌てて逃げようとする少女に気付いたが興奮している隼人を押さえ込むのが先だった。

 

「落ち着け!」

 

 思わずストレートを打ち込んでいた武は頭が冷えたらしい隼人が大人しくなったのにホッとしつつ、隣の教室の惨状を見て頭を掻いていた。

 

「おうおう、派手に暴れたなぁ。こりゃ怒られるな」

 

「悪い・・・。その、カッとなって」

 

「見りゃ分かるっつの。んで? 何でカッカしてたんだよ?」

 

「あそこにいる書記さんが、苛められていた。それだけだ」

 

「あー、そっか。お前そう言うの許さねえもんな、昔から」

 

 そう言って苦笑した武は頭を掻いていた手を止めて立ち上がっていた隼人の方を振り返る。恨みがましげなクラスの連中に一瞥くれてやった武は書記の手を引いて隼人の所に持っていく。驚く利也達を他所に書記の肩を叩いた武は

気まずそうな隼人の肩に手を置いた。

 

「ほら、本来やる事をやって来い。それから説教な?」

 

 そう言って笑った武に頷いた隼人は書記を連れて探偵部室に向かった。その背中を見送った武は浩太郎に視線を向けると頷きを返した彼にアイコンタクトで指示を飛ばした。瞬間、窓から飛び降りた浩太郎に周囲がざわつき、

それを放置して武は取り巻きの襟首を掴んで持ち上げた。

 

「失礼、お休みのとこ悪いけど事情徴収に協力してくんね?」

 

 そう言って笑う武の目は笑っていなかった。

 

 場面は変わって部室に移動した隼人は部室で書記の子と詳しい話をしていた。書記の子が犯人ではないのではという事も含めて。

 

「私が実行犯だって気付いたんですね」

 

「いや、あれ気付かないバカはいないと思うが・・・まあいい。とりあえず話してくれないか、その、君を脅した犯人を」

 

「それが、私もあった事がないんです」

 

「え」

 

「いきなりメールで脅迫文を送ってきて・・・。返信しても返事が返ってこないんです。脅迫されたくなかったからそれで仕方なく・・・」

 

「盗んだ、と。止むを得ないとは言え許されざる行為だな。ただ、相談も出来なかったんだろ?」

 

「送られてきたネタがネタだったので・・・」

 

 そう言って気まずそうにモジモジする書記にため息をついた隼人は頭の中で事件の構図を考えつつ、見えない犯人の候補を脳内に浮かべようとする。そこで隼人は書き込みをしていた会計を思い出す。不自然な書き込みをしていた彼に

聞けば何か分かるかもしれない、そう思った隼人は鳴ったチャイムに悔しそうにした。

 

「すまない、時間を取らせてしまって」

 

「いえ、その・・・分かってくれて嬉しかったです。それで、その・・・」

 

「分かってる。俺達が犯人を捕まえるまで自首は止めておいてくれ」

 

「あ、はい。分かりました」

 

「取り敢えず、ありがとうな。話してくれて」

 

 そう言った隼人は照れ臭そうに頭を掻き、それを見た書記が楽しそうに苦笑する。彼女を教室まで送った隼人は険悪なムードの教室を見回してから自分の教室に戻った。それから暫くして放課後、生徒会室を訪れた探偵部は会長への挨拶も

そこそこに会計の姿を探していたがどこにもいなかった。それどころか書記の姿すらない。

 

「あれ、姉御。書記と会計は?」

 

「ん~? まだ来てないわねぇ。どうしたの? 二人に用事?」

 

「ちょっと聞きたい事があってな。いないなら・・・いいや。俺らで探すよ」

 

 そう言った武の言葉を聴きながら隼人は廊下に出る。体に感じる嫌な予感、それに突き動かされた隼人はこちらを注視する武と利也を他所に二年生の教室がある階層に行く。書記のいた教室を覗いた隼人は誰もいない室内に更に不安を加速させた。

 

 廊下の端にある階段に移動した隼人はそのまま一階に降り、校舎の外に出た。校舎裏を徹底的に探していた隼人は体育館からの叫び声に気付いてそちらに向かった。体育館の裏に回った彼は血の気を引かせている女子生徒の前にいる書記に気付いて走った。

 

「どうした!?」

 

「こ、この子から血が・・・血が出て・・・。う・・・っ」

 

「分かった。誰か、救急車を呼んでくれ!」

 

 そう呼びかけた隼人は口から吐血し、腹を刺されている書記の傷跡を確かめて圧迫止血を試みる。だが、血は止まらず既に相当な量が出ていた。草むらに広がる血の池に舌打ちした隼人は突然鳴った端末に血だらけの片手で出た。

 

「誰だ!」

 

『ど、どうしたんだよ隼人。つかお前どこにいるんだよ』

 

「体育館裏だ! 来るなら早く来てくれ!」

 

『いや、コウが会計見つけたってさ・・・何か女の子達といるっぽいけど。書記さん見つかったか?』

 

「ああ、今目の前で血だらけになってる。クソ・・・血が止まらない」

 

『マジかよ。分かった、利也と一緒にそっちにいくわ』

 

「ああ、早めにな」

 

 そう言って通話を切った隼人は到着した救急隊員に彼女を引き渡し、血だらけの全身はそのままにただ呆然と救急車を見送っていた。それから武達が到着し、血だらけの隼人を見て驚いていた。

 

「おい、隼人! 書記さんは?!」

 

「分からない、相当弱ってた。刺されて放置されていたんだろう」

 

「マジかよ・・・。学校で傷害事件とか洒落になんねぇ」

 

 青くなる武を他所に手についた血を水道で流した隼人は血だらけのブレザーを脱いで肩からかける。

 

「それで、コウの方は?」

 

「リアルタイムの状況はわかんねえけどさっき聞いた分には会計一人らしい」

 

「どこにいる?」

 

「何でも中庭とかでさ。一人でベンチにいるらしいぞ? 渡り廊下の屋上から見てるコウがそう言ってた」

 

「・・・分かった」

 

 そう言って血だらけの携帯端末を取り出した隼人は赤黒いそれを見下ろすとその様子を見ていた利也に端末を取られ、彼が持っていたハンカチで血が拭われた。それを付き返した利也の表情から少しばかり嫌悪感が滲み出ており、

それに気づいた隼人は端末を受け取ると足早にその場を去った。

 

 血を見る事に嫌悪感を抱くのは誰だってそうだろう、と隼人は思う。ただ、自分にはそれがない。感情を無くした訳ではない、情緒も失った訳じゃない。ただ、人の生き死に慣れてしまった。あり得ない現実じゃなくて

自分の隣に常にあると思ってしまったからだ。

 

 血を流せば死ぬという事が現実に起きたからこそ、隼人の感覚は狂った。空想性を持たなくなった。ゲームも、そんなにしないのはあの世界の死が自分にとって現実味を持ち過ぎてるからだ。そんな嫌悪感を懐きつつ、隼人は電話する。

 

「コウ、今どこだ」

 

『屋上。会計さんの監視中だけど状況が変わったよ』

 

「どうした?」

 

『女の子達がいる。それも三人、全員様子がおかしい感じだ』

 

「分かった、行って見る。一応監視は続けておいてくれ」

 

 そう言って通話を切った隼人は浩太郎をカバーに置きつつ、会計のいる所に移動した。気を引き締めながら接近した隼人は彼と話しているらしい三人の姿格好を目に入れ、昼間の女子達であると理解して会計の前に立った。意外そうな顔で会計は隼人を見ると

小馬鹿にした様な口調で話を切り出した。

 

「おや、五十嵐君。どうかしましたか?」

 

「あんたに聞きたい事が二つある。まず一つはこいつ等とどこで知り合った」

 

「ああ、彼女達ですか。何かお困りの様だったので生徒会の義務として手助けしただけですよ」

 

「じゃあ二つ目だ。お前、どうやってあいつの犯行を知った」

 

 眼つきを変えた隼人の言葉。それにただならぬ物を感じ取った会計は後ずさろうとして隼人に襟首を掴まれた。逃がさぬと言う意思を見せる隼人に気圧されていた会計は懐に手を回し、隠し持っていたナイフを引き抜いて隼人の腕へ振るう。

 

 慌てて手を離した隼人は逃走していく会計を追いかけようとして女子三人に阻まれた。彼女らの目はいずれも異常さを帯びており、まるで生気がなかった。また薬物か、と身構えた隼人はそうではない事にすぐに気付いた。

 

「邪魔しないでよ五十嵐君、あの人は私の復讐を完璧にしてくれる。救世主なのよ?」

 

「生憎な、俺はお前らと遊んでる暇はないんだよ。そこをどけッ!」

 

 言い様飛び出した隼人は逆手持ちで引き抜かれたメスの切っ先をギリギリで避け、ロールで起き上がると会計の逃走経路へ走った。それを逃さんとばかりにメスを投擲した少女は空中で打ち落とされたそれに驚き、隼人と少女の間に割って入る様に着地した浩太郎が

やれやれと言いたげな風で少女達に手にしたガスガンの銃口を向ける。

 

「邪魔しないでもらえるかな」

 

「それはこっちの台詞よ、岬君。何で五十嵐君を庇うの? 正義の味方を気取りたい訳?」

 

「ハハハ、正義なんてやさしい物の為じゃないさ。僕らはただ、真実を追っているだけ。事件の真実を知りたいだけだ。だからこそ、障害は全力で排除する」

 

 そう言って浩太郎は腰のホルダーから伸縮式の警棒を左手に引き抜き、Mk23を模したガスガンと併せて構えた。BOOと同じガンナイフスタイル、ゲームとの違いは殺傷性と周囲の倫理観だけだ。瞬間、三人が分かれて浩太郎に襲い掛かり、それを跳躍で回避した彼は

右から来る長身の少女へ牽制射撃を放ち、左側の女子からの一閃を警棒で受ける。

 

 薙ぎ払う様に弾いた浩太郎は正面からの攻撃をメスを持つ手の蹴り上げで防ぐとサマーソルト体勢の彼は一回転して着地する。あまりの身体能力に圧倒されている左の少女の顔面にハイキックを叩き込んだ浩太郎はメスを取り出そうと下がった正面の少女に銃口を向けるが

それよりも数瞬早く右の少女が動いた。

 

 少女の持つカッターがMk23の金属部分に当たり、束の間彼女との鍔迫り合いを展開した浩太郎は正面の少女が迫ってきているのに気づき、目の前の少女の軸足を刈ってMk23をフリーにすると射撃した。メスを狙った彼の射撃は射撃体勢が悪かったのか外れた。

 

「ッ!!」

 

 間に合わないと判断した彼の体が少女を蹴り飛ばす。腹を蹴られ、そのまま飛んだ彼女を追わず浩太郎は復帰しようとするもう一人の横薙ぎを避けながら先ほど打撃した足に警棒を叩きつける。衝撃が突き抜け、少女の細い足が動きを止めた。その隙を逃さず浩太郎は

グリップで顎を穿ち、アッパーカットの一撃で脳を揺らした少女の体はその場に崩れた。

 

 少女三人を仕留めた浩太郎は騒ぎにならない内に退散し、確保したと連絡を入れてきた隼人の後を追った。

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