B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast8-4

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 ログインには空を飛ぶ様な浮遊感も、転送される不自然さも感じなかった。まるで今までそこにいたかの様な感覚でゲームの中に入った隼人は本拠地であるウイハロの個人部屋で目を覚ました。

 

 そして、ファンシアを開いた彼はグループメンバーの居場所を調べると一階に全員いると分かり、そこに向かった。一階に降りた彼は到着を待っていたらしい全員の視線を浴び、彼らの中心に移動するとサブリーダーの武が

最新情報が入ったファンシアを長机の中心へ滑らせる。

 

 机の中心にはめ込まれたリーダーが接触回線越しに情報を取得し、ホログラフィックで表示する。

 

「今から一時間前、P.C.K.T.がファイブフォーエバーに対して宣戦布告を行った。それで、連中の布告理由がビックリする内容だぜ。ハヤト。『自領となったトーネードストライダ本拠地への攻撃に対して報復を行う』とさ。

お前、覚えてるか、あの時のビル地震」

 

「ああ、アレか」

 

「アレの原因、こいつらが持ってる古代兵器『ロンゴミアント』大口径レールキャノンの砲撃なんだよ。アレがビルの一部をごっそり持っていったから崩落した。それがあの時起きた事らしい」

 

「ふむ・・・。リーヤ、お前はレールガンの軌跡とか見てないのか?」

 

 武の報告を受けて隼人はすぐに思いついた疑問を本人にぶつける。

 

「衝撃波で見る所じゃなかったさ。僕とナツキちゃんが見た時にはもう既にビルに大穴が開いてたのさ」

 

「だから・・・他に信じようがない、か。しかし当事者からしてみれば辻褄が合わんな。『ロンゴミアント』が撃たれた時、管理する筈のP.C.K.T.の誰もが本部ビルにいなかった。だが、P.C.K.T.は自領になった土地を攻撃されたから報復すると言っている。

管理すらしていない土地だから、損害は無かったにも関わらずだ」

 

 利也の証言を受けてそう呟き、考え込んだ隼人は補足の意見を出していた夏輝の方を見た。

 

「確かに、皆さんが見た事が正しければ妙ですよね。味方が誰ももいない場所への攻撃に報復をしようとするなんて」

 

 隼人の思いを補足する夏輝の意見に、その場にいた全員が唸り声を上げて悩む。その流れの中心で、勢力図と睨めっこをした彼は本部据付の電話の着信音で現状に引き戻される。

 

「はい、ケリュケイオン本部。はい・・・はい。ちょっと待ってくださいね。ハヤトさんちょっと。」

 

「どうした、カミ。誰からの電話だ?」

 

「えっと、サクヤと言う人からです。その人が、電話を全員と出来る様にしてほしいと」

 

「サクヤ・・・。分かった、電話の出力をこっちの机に繋げ。ウィンドウが表示されるはずだ」

 

「りょ、了解。えーっと、ここをこうして・・・そっちに繋げます」

 

 ぎこちない香美の操作を受けてテレビ電話の出力がリーダーに移る。勢力図がサイズダウンして左下に移り、代わりにフルサイズのテレビ電話画面が出てくる。そして画面に映っている扇情的な踊り子衣装に身を包んだ人間の女性を

睨んだ隼人は腕を組んで話を切り出した。

 

「用件は何だよ、サクヤ」

 

『切り出す前に聞いておくことがあるの。あなた達、P.C.K.T.の件に付いて情報は仕入れてる?』

 

「今、仕入れた所だが情報はある。まさか、連中絡みの依頼じゃないだろうな?」

 

『そのまさかよ、後輩君。先日、グローブスティンガーと同盟を組んでいるアルカンの攻略組、『ストームバンガード』の連絡員からP.C.K.T.と思わしきグループの一個中隊がアルカンの国境線に見られると言う連絡があったわ。

それも、ファイブフォーエバーへの宣戦布告の一時間前にね』

 

「俺達にそれを迎撃しろと? ムチャだ、いくら俺達でも中隊規模は・・・!」

 

『分かってるわよ、無論戦力の大半をあなた達に依存するわけじゃないの。あなた達は中隊の指揮部隊へ攻撃を仕掛けてほしいのよ』

 

「指揮官への奇襲攻撃、って事か。正面からやりあう気はない、と」

 

『ええ、ストームバンガードは事実上の零細グループ。P.C.K.T.とやり合えるだけの戦力と持久力はないわ。早期に決着する事が先決なの』

 

「分かった、善処する。で、話は変わるがアイランに行って報告してくれといっていた件、どうすればいい?」

 

『今聞いておくわ。報告お願い』

 

「P.C.K.T.とトーネードストライダの交戦を裏付ける記録はなかった。つまりあの情報は嘘だ。そして、トーネードストライダはもうコウロスにはいない。恐らく、P.C.K.T.に合流したと思われる。報告は以上だ」

 

『そう・・・。私達はあわや狂言回しに付き合わされる寸前だったって訳ね、分かったわ。じゃあ、アルカンへの移動をお願い。案内は現地要員に任せるから』

 

「アンタの部隊は、もう現地入りしてるのか?」

 

『ええ。だから、早めに行ってあげてね。それじゃ』

 

 そう言って通話は切れた。しばしの沈黙の後、隼人は武に目配せをするとその腕にガントレットを付けて移動準備を始めた。それぞれの武器を積み込み、それに遅れて弾薬やアイテムが満載されたマジックバッグが積み込まれる。

 

 いつも通り、インプレッサとハンヴィーの二台で移動する事になった彼らは周囲を警戒しながら海に面したアイラン中心部を目指す。山を越え、海が一望出来る様になった頃、ハンヴィーのルーフに膝立ちで立ち、流れる風景を見ていた浩太郎は

遥か先の一点から迸った発砲炎に気づき、反射的に引き抜いた拳銃を照準して連射した。

 

 グングンと接近する物体に彼は見覚えがあった。ダイレクトアタックモードで放たれた『FGM-148 ジャベリン』対戦車ミサイル。完全なファイア・アンド・フォーゲット(撃ちっぱなし)兵器であるそれを迎撃した彼は爆炎に包まれ、

急停車したハンヴィーから投げ出される様に降りて周囲を警戒する。

 

 銃口を巡らせ、何もないと判断した浩太郎は運転席のドアパネルを三度叩くとハンヴィーのルーフに飛び乗った。そのまま発進したハンヴィーの上で警戒していた加奈と浩太郎は合流地点にあるトヨタのピックアップトラックに気付き、

荷台に据え付けられた機銃の銃口が向いた瞬間、ルーフ据付のM2ブローニングを動かし、展開式の電磁式銃弾偏向シールドを開いて壁にした。

 

 電磁フィールドに直撃したライフル弾が火花を散らしながら彼方へ飛んでいき、機銃掃射を受けた浩太郎と加奈はインプレッサの後ろに付いたピックアップに手持ちの弾をありったけ返す。機銃の射手の頭蓋に流れ弾が直撃、脳の一部を吹っ飛ばして

力を失った体が機銃に凭れかかり、頭から垂れた血液と脳漿の混合物が機銃の機関部に垂れる。

 

「カナちゃん、トラックのフロントガラスに集中砲火!」

 

 グレネードを準備する浩太郎の指示に頷いた加奈はリロードしたヴェクターのマガジン全弾をトラックのフロントガラスに叩き込む。強化ガラスを粉々に砕いた.45ACP弾は助手席、運転席にいたプレイヤーを蜂の巣にした。そこへ、ダメ押しとばかりに

浩太郎がナパームグレネードを投擲。車が爆発し、乗っていた死体があぜ道に落下する。

 

 安心したのも束の間、ハンヴィーの脇を掠めたドス黒いビームが地面を削って破裂させる。マガジンを交換した二人が反撃しようと銃口を向け、銃口の延長線上にいるプレイヤー達を照準する。だが、引き金を引く前に彼らは撤退し、

安堵する浩太郎とは対照的に加奈はどこか悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「悔しそうだね、カナちゃん」

 

「・・・仕留められなかった」

 

「気にしちゃダメだよ。今は移動が最優先で、撃破が目的じゃないから」

 

「・・・分かってるけど、逃がしたらちょっと悔しい」

 

「気持ちは分からないでもないんだけどね」

 

 そう言って宥めた浩太郎はMk23をホルスターに収めると左手に握っていたコンバットナイフをシースに収め、警戒を解いた。そうした彼は悔しそうに俯く加奈の頭に手を置くとゆっくりと撫でた。撫でられる事に嬉しそうな反応を返した加奈は

焼けた空を虚ろな瞳で見上げる彼に首を傾げる。

 

「・・・コウ君?」

 

「え? あ、ゴメン。ボーっとしちゃってた」

 

「・・・そう」

 

 そう言って無理に顔を逸らした加奈は俯いた浩太郎の横顔に異常な物を感じ、彼女は彼の手に自分のそれを重ねた。自分を彼に縫い付ける様に、何処かに行ってしまわない様に。

 

 それから十数分後、アイランに到着した隼人達はいつも通りの風景を保っている中心部に車を入れ、備え付けの共用駐車場に車を止めると全員武装を持って降りた。ファンシアのアプリケーションで施錠を施し、

アイランの総務府《正式名称:ガバメントセンター》に移動した。

 

 依頼を遂行するに当たって情報収集を選択した彼ら、ケリュケイオンは政府機能の全てを集約しているそこに入ると外の雰囲気とはうって変わって慌しい内部に呆れつつグループリーダーのいる場所に向かった。

 

 入り口には警備役が二人おり、ガードする様に立ちはだかった彼らの視線を十人の先頭で浴びた隼人は溜め息をつきつつ手持ちのファンシアを取り出し、プロフィール画面を彼らの視線にかざした。HMDモードのファンシアが視線と連動して

隼人のプロフィール情報を読み取り、クラウドに保存されたデータと照会して表示する。

 

「あんた等のリーダーに聞きたい事があってな、通してもらえないか」

 

「身元確認の出来たあなただけなら、お通しできます」

 

「それでいい」

 

 そう言った隼人に道を明けたガードはドアを開けて彼を通すとリーダー用に設えられた執務机に座る金髪と透き通った肌が目を引くエルフの少女と向き合う。彼は再びファンシアを取り出し、彼女に見せる。個人認証を済ませた彼は

意外そうな顔をする彼女を無視して彼は執務机の前に立った。

 

「単刀直入に聞かせてもらう。俺の立場は理解しているな?」

 

「サクヤさんから聞いてるわよ、ハヤト。双葉高校最高の即応部隊とは言え、お金で動く人達は私達攻略組からしてみれば到底受け入れ難いわね」

 

「報酬の量で味方を変えるからな、俺達傭兵は。だから達成感を報酬としているお前らと相容れんのは当たり前だな。それで」

 

「分かってるわよ。さて、侵攻寸前のP.C.K.T.らしきグループはここから数キロ行った国境線で派遣した軍と睨み合ってるわ。でも一向に動く気配がないの」

 

「そうか・・・、分かった。俺達は今から戦場に向かう。向こうにいる軍に連絡を頼む」

 

「了解。戦果に期待してるわ、ケリュケイオン」

 

「報酬分は働くさ。働かざる物、食うべからずだからな」

 

 そう言ってロビーに戻ろうとした隼人は急に騒がしくなったそこへ走り、応戦しながらも次々に殺害されているストームバンガードの面々に気付いた。襲撃者の詳細は明らかになっておらず、無名の襲撃者達はそれぞれの得物でプレイヤー達を屠殺していく。

 

「クソッ、ウィドウ1よりウィドウユニット! ロビーに敵だ! 全員来れるか!?」

 

『ウィドウ2よりウィドウ1! ネガティヴ(無理だ)! こっちにも敵がいるんだ!』

 

「分かった、そっちを優先しろ。こっちは何とかする」

 

 そう言ってロビーに向かった隼人はコンディションを戦闘状態に移行させ、それに連動したファンシアがHMDモードを起動。拡張現実として武達の居場所を表示するがそれに見向きもせず彼はロビーに向けて走り出し、虐殺者達に挑みかかる。

 

「ショートカット、『鎧通し』ッ!!」

 

 飛び掛り様の初撃、渾身の右ストレートを近くにいた男人狼に叩き込む。吹き飛ぶ人狼を他所に拳を引き戻した隼人は薙刀を手に挑みかかって来たタオシーの横薙ぎを腕のバンカーで受け止める。太い鉄の杭に叩きつけられた刃から火花が散る。

 

 それを弾いた隼人はスキル無しの蹴りを繰り出し、踵部分のバンカーを連動して撃発させる。顎を穿ったバンカーにタオシーはよろけ、杭の戻った足で震脚を踏んだ彼は掌底でタオシーを吹き飛ばす。心臓を正確に穿った一撃は肺や心臓をミンチに変える。

 

 絶命した体が入り口のガラスに突っ込み、粉々に砕けたそれが死体に向けて雨の様に降り注ぐ。それを見ながら呼吸を整えた隼人は数瞬、目を閉じる。それをチャンスと踏んだのか、彼の両側から武者とリッパーが挑みかかる。それぞれが持つ刃で

隼人の体は切り刻まれる――――筈だった。

 

 瞬間、攻め手の体が吹き飛ぶ。内臓を破裂させるほどの一撃にバウンドした体から滝の様な血が吐き出される。ぴくぴくと痙攣する死体を振り返った彼らはショックコーンの残滓が周囲に見える隼人に得物を一斉に向ける。

 

「い、一斉攻撃ィイイイッ!!」

 

 声を上げ、一斉に挑みかかる虐殺者。先頭のリッパーが殴り飛ばされ、次に挑みかかるファイターの顔面に回し蹴りが叩き込まれる。一人ずつ攻め込んできていた彼らだったが次は四人がかりだった。四人一斉の構成に思わず眉を顰めてしまった隼人は

視線選択でスキルを選ぶと四人に向けて繰り出す。

 

「『インパルスナックル』」

 

 瞬間、振りぬきの速度と射出されたバンカーの衝撃が衝撃波となって四人を吹き飛ばし、襲撃者を全滅させる。ロビーにいたメンバーは既に無く、死体は物を語らず荒れ果てたロビーを後にした隼人は玄関前の通りを血染めにしていた面々と合流し、

気分が悪くなっている夏輝を後ろに全員と共に駐車場に移動した。

 

「早速出るぞ、血塗れだがな」

 

『おうよ、でもさっきの連中何もんだ? P.C.K.T.か?』

 

「分からん、だがあんな突発的な事を連中がやるとは思えない。奴等はもっと戦略的でかしこいやり方をする」

 

 そう言ってインプレッサのエンジンを始動した隼人は車内通信機で唸り声を返す武に苦笑しながらハンヴィーを先行させる。助手席の恋歌がそれを流し見て可愛く小首を傾げていた。ハンヴィーを走らせる上で話す余裕が無くなったのか武からの通話が切れ、

それをつまらなさそうにした隼人がインフォメーションパネルを操作して通話を切断する。

 

 幾分か余裕が出来た彼は既に離れているハンヴィーに追いつくべく、アクセルを踏み込んだ。クラッチを繋ぎ、エンジンを吹かした隼人は青のハッチバックを走らせる。現実では廃れかけている変速機構を操作しながら走行する彼はグングン加速する車体に

恐怖を浮かばせている恋歌をちらと見ると未舗装の道路に出たのを見計らって車体をスライドさせた。

 

「ひぃ」

 

 悲鳴を上げる恋歌。144cmの小柄な体が縮こまり、それを見てニヤッと笑った隼人は暴れようとするインプレッサの挙動をアクセルワークとハンドル操作で修正する。ドリフトでコーナーを突破したインプレッサが暫く走るとハンヴィーの後ろに付き、

その背後にピッタリと止まる。

 

「ったく、ノロノロと走りやがって。そこまで時間がないんだぞ・・・」

 

 焦りを口にしながらシフトを操作した彼の横顔を見ていた恋歌はインフォメーションパネルの発光に気付き、通話モードの起動を示すそれを彼女がタップした瞬間、車内に怒号が走った。

 

『RPG!!』

 

 武の怒号と共に脇道にロケット弾が直撃し、車体が揺れる。慌てて車体の体勢を立て直した隼人を他所にHK45を引き抜いて窓から体を出した恋歌は遠方、700m程の距離から見えたマズルフラッシュに体を引っ込める。瞬間、制圧射撃が浴びせかけられ、

アイラン防衛軍の本拠地があるであろう場所への道を進んでいたハンヴィーにライフル弾が浴びせかけられる。

 

「タケシ! プラン変更だ! 車を路肩に止めろ!」

 

『言われ無くても!!』

 

 二台が路肩に止まり、M2ブローニングで反撃する浩太郎の支援を受けながら隼人達は車から降りる。荷物は最低限に、武装優先で下ろした。隼人達がそうしている間に狙撃準備を終えた利也は制圧射撃をしているインファントリをスコープに捉え、躊躇い無く射殺した。

 

 確かな手ごたえを感じた利也はスコープの中でザクロ状に爆ぜた頭部を確認し、その隣でM4カービンを構えるインファントリに照準を向けるが引き金を引くより前に隼人から移動指示が飛び、狙撃を止めた彼は皆に続いて走り出す。

 

「睨み合ってる状態じゃないのかよ!?」

 

「知るか! とにかく今は本拠地を目指すぞ!」

 

 そう言って走り出した隼人達は銃弾飛び交う戦場の只中を駆け抜け、前に見える前線基地を目指す。ロケット弾が田畑を抉り、プラント農園は見る影もないほどに破壊されている。夜の暗さに染まった外の風景、前線基地に飛び込んだ隼人達は襲撃されている基地内に気付き、

暗がりに隠れながら様子を窺った彼らはほとぼりの冷めていない状況に全滅は避けられていると判断し、手近にいた兵士を攻撃する。

 

「俺を先頭に、前衛は後衛を守りつつ最小陣形で展開。司令部に向けて移動する。移動開始!」

 

 隼人の号令で前衛組が展開し、後衛組が彼らから離れない様について行く。急ぎ足で移動する彼らは突然止んだ銃声に違和感を感じつつ、司令部に向けて走る。と、管制塔らしき構造物からマズルフラッシュが見え、隼人の膝を穿つ。片足を吹き飛ばされた隼人が転び、

慌ててカバーに入った武がMk16でのフルオート射撃を撃ち込む。

 

 その間に利也達が物陰に隼人に引き込み、夏輝が回復用の術式をかける。武が注意を引いている間にDSR-1をゴルフバッグ型のマジックバッグから取り出した利也はバイポットを立てて狙撃手を狙う。スコープに写る狙撃手がこちらを見たのに気付いた利也は慌てて逃げる。

 

 直後、掠めたライフル弾がアスファルトを抉り、尻餅をついた体勢からDSRを構えた利也はスコープに写った狙撃手に反撃の一射を撃ち込む。揺れたスコープ内で頭を爆ぜさせた狙撃手はその場に崩れ落ちていた。死体は見たくないな、と思いながらスコープから目を離した利也は

歩ける位には回復した隼人を先行させ、狙撃に耐えていた武に回復アイテムを渡す。

 

 勢いをつけて司令部に突入しようとした隼人は入り口をスキャニングをしていた香美からの情報伝達を受けて足を止め、IED作成キットを取り出した彼女にコンカッショングレネードを手渡す。それを含めて三つのコンカッショングレネードを合成した香美は作成に成功した

コンカッションチャージャーをドアに取り付けた。

 

 長い紐を垂らしたチャージャーから距離を取った香美は周囲を囲む先輩達の視線を受けながら紐を引いた。瞬間、起爆したチャージャーから爆圧が迸り、衝撃で仕掛けられた爆弾が起爆する。吹き飛ぶドア、香美に直撃する筈だったそれは秋穂に切り裂かれる。

 

 そして、内部に突入した隼人達は静まり返っている司令部に驚愕し、血の跡が点々としているリノリュームの床に新しい死体があった。割れたガラスの破片を踏み砕き、先に進んだ彼らは自分達の物ではない足音に気付いた。全員の動きがピタリと止まり、足音の方向に全員が銃口を向ける。

 

 瞬間、彼らの前後から銃弾が飛翔する。慌てた全員がその場に伏せ、それを見計らっていたのかグレネードのピンが引き抜かれる音がする。クソ、と呟いた隼人が投げ込まれたグレネードを蹴り飛ばす。天井で炸裂した破片手榴弾が爆圧と破片をばら撒いて、室内を滅茶苦茶に破壊する。

 

「囲まれたぞハヤト!!」

 

「分かってる! クソ、どこのどいつだこいつ等!!」

 

「知らねえよ!」

 

 怒声と同時に武と隼人が反撃に転じ、正体不明の敵に突っ込む。彼らは一様に室内戦装備であり、この状況を想定していたかの様だった。この準備の良さは、と考えていた隼人は両足での飛び蹴りを女ファイターに叩き込む。蹴りと同時にバンカーが作動し、至近距離での一撃で

ファイターは肺と心臓をミンチにされながら吹き飛び、ソファーに突っ込む。

 

 宙返りで着地した隼人は着地と同時にサーベル二刀流で襲い掛かってきたリッパーの左突きを回避、そのまま懐に飛び込んでカウンター気味にショートストロークのボディブローを打ち込む。同時、射出された杭が内臓を抉る様に打撃し、吹き飛んだ体が瞬時に絶命する。

 

「こっちはクリアだ」

 

「ん、今・・・こっちもクリアだ。あれ、四人だけか?」

 

「みたいだな、さて・・・状況が状況だな」

 

「前代未聞だぜ、到着前に全滅とかよ」

 

「元々ストームバンガードは戦闘専門じゃないからな。グローブスティンガーの生産専門セクションと言った所か。独立したのは一年前ぐらいらしいからな」

 

「マジかよ・・・。ヤバイとこに来ちまったな」

 

「取り敢えず撤退だな。こんな状況じゃ介入できない。兎に角、ここを脱出する事を考え―――」

 

 そこまで言いかけた瞬間、ケリュケイオンは爆風を浴びた。猛烈に吹き荒れるそれに吹き飛ばされた全員は間髪入れず放たれたライフル弾の群れに反射的に伏せる。伏せながら移動した彼らは非常口に飛び込むと地下通路に通じているらしいそこを急いで降りる。通路を介して遺跡に飛び込んだ彼らは

地上で起きているらしい戦闘の衝撃を感じつつ、移動を始めた。

 

「あのエリアには一体幾つのグループがいるのさ・・・。確実にP.C.K.T.とストームバンガードだけじゃないよね」

 

「ああ・・・、なあおい隼人、どうなってんだよ。何でこんな乱戦なんだよ」

 

「知るか! 第一、乱戦を作ってるグループすら俺は分からないのに状況なんか判断できる訳がないだろ!」

 

 疲れ切った表情の利也と武にそう叫んだ隼人は振動する天井を忌々しげに見つめながら移動を始める。何時も通りの中で起きた予想外の事に隼人は苛立っていた。介入してきた組織に対する予測が甘かったのか、それとも―――。考えを巡らせていた隼人だったが連続した振動を受けてそれを中断した。

考えを違う物にしなければならない。何しろ、ここから自分達はアルカンに向けて脱出をしなければならないのだから。

 

「・・・とにかく、アルカンに向けて移動するぞ。ここの遺跡内の地図データはあるから何とかなる」

 

「了解。ここにいても意味ねえし、とっとと移動するか」

 

 ファンシアを操作して地図データを送った隼人を先頭に歩き出した武達は地下ドックだったらしい遺跡の全景をタラップから望む。暗視装置無しの状態なので暗い遺跡の全貌は分からないが進む事だけは出来るだろうとそう思いながら彼らは隼人の後に続いた。

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