B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast8-5

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 それから一時間後、どうにかアルカンに戻った隼人達は遅れてきたグローブスティンガーの派遣部隊と合流し、前線の状況を伝えた。二勢力による対称戦だとばかり思っていた彼らにとって別勢力がいる事は想定外だったらしく、動揺が垣間見えた。

 

「クソ、押し返しは無理なんじゃないのか?」

 

「いや、人数さえ足りてれば何とかなる。制圧し返すんならな、そっちの人数は?」

 

「射撃クラスが10、近接20、魔法が10ある。10人編成の規模で大体4分隊だな。足りるか?」

 

「十分だ。俺達ケリュケイオンはこれより奪還任務遂行の為、そちらに合流する」

 

「歓迎するぜ。よし、早速移動しよう。あんた等徒歩だろ、こっちの車両を利用してくれ」

 

 そう言って機銃付きのハンヴィーに乗り込んだ派遣部隊のリーダーに頷いた隼人は全員にグラップルグローブを装着させ、ハンヴィーのルーフに付いているグリップを掴んだ。そうして移動を開始したケリュケイオンと派遣部隊は共通の通信帯を用いて作戦会議を行っていた。

 

「戦場についてだが近接職の積極的運用は避けたほうがいいだろう。射撃武装があるならそれを主として敵の数を間引き、それらの締めとして前衛を飛び込ませる方が被害が少なくてすむように思える」

 

『珍しいな。アンタがそんな消極的な作戦を進言するなんて』

 

「それだけ向こうが異常なんだよ。何時ものセオリーが通用する様な戦場じゃない」

 

『そこまで言うんなら了解だ、その作戦を採用しよう。だがアンタはどうするんだ、ハヤト。射撃武器のないアンタはしばらくお留守番だぜ?』

 

「大人しく観測スコープでスポットするさ。っと、ここで止めてくれ。リーヤ、周辺の観測を頼む。他にスナイパーはいるか? いたら基地周辺の敵の捕捉を頼む」

 

 そう言ってマジックバックからスコープを取り出した隼人は前線基地に居座っているグループを捕捉する。彼らには装備に統一感がなく、統率を大切にする傾向のP.C.K.T.とは考えにくかったがそれでも油断せず隼人はグループ全員をスポットする。そして、基地全体を見回すとスコープから目を離す。

 

 利也も含めたスナイパーの方もスポットを終えたらしく、スナイパー達は一様に隼人の方を見る。派遣部隊の隊長を一度見た彼は戦闘用のコールサインを使用してスナイパースポットを示す緑色の枠組みで囲まれた敵のスポット番号を指定する。

 

「ウィドウ8、G-1を狙え。イカロス1-4はG-3、イカロス2-3はG-2を。イカロス3-4はG-4を狙え。同時射撃だ、タイミングを合わせろ」

 

「ウィドウ8、オンターゲット」

 

「イカロス1-4、オンターゲット」

 

「イカロス2-3、オンターゲット」

 

「イカロス3-4、オンターゲット」

 

 捕捉確定を示す赤線をスコープに見て取った隼人はマイクのスイッチを入れる。

 

「了解。オールシューター《全射手》、オープンファイア《発砲許可》」

 

 瞬間放たれたライフル弾が捕捉したプレイヤーを穿ち、衝撃で転倒した彼らが麦畑に倒れる。サプレッサー無しの発砲音で気付いた哨戒がこちらに銃口を向けてきたのを見た隼人はスコープから目を離すと全員に隠れる様に指示して遮蔽物に隠れた。瞬間、飛んできたライフル弾がシールドにしたハンヴィーを嬲る。

 

 相手はどうやらライトマシンガンを使っているらしく、絶え間ないフルオート射撃がハンヴィーを襲う。その合間に得物を構えた射撃クラスが一斉射撃を敢行、その際別方向に他のプレイヤーを発見し数名がそちらへ射撃した。一方拳銃という射程の短い射撃武器を持つ近接職は射程距離ギリギリに移動して発砲する。

 

 辺り一帯にばら撒かれる弾丸に怯んだのか接近しようとしていたファイターが逃げ出し、追撃しようと恋歌と秋穂を含めた数名が追いかける。それを静止した隼人だったがいつの間にか接近していたアサシンの攻撃を回避する。暗殺を使われていたら問答無用で即死していた事に内心焦った隼人は命令を守っている残りのメンバーからのカバーを受けた。

 

「くっ、ヤバイな。このままじゃ乱戦に持ち込まれるぞ」

 

「分かってる! イカロスユニット、密集隊形を取れ!」

 

「そっちは任せた、俺達は前に出る。ケリュケイオン、前進するぞ!」

 

 そう言って前に出た瞬間、隼人の右腕が吹き飛び、衝撃で倒れた彼の口から苦悶が吐き出され、慌ててカバーに入った武が隼人の襟首を掴んで安全な場所に移し、夏輝に引き渡した。そして、ゴルフバッグ型のマジックバッグからバレットを取り出して利也に投げ渡す。

 

 銃を受け取った利也は翼を寝かせた匍匐体勢で草むらに紛れながら折り畳まれているバイポットを起こす。地面にバイポットのスパイクを食い込ませ、高倍率スコープの保護部分を外して覗いた彼はスコープ内に見えるスナイパーに照準を合わせようと銃身を動かす。

 

 トリガーに指をかけた彼は軽い機械音を鳴らして十字の中心より僅かに下側へ頭部を捉える。狙い撃とうとした瞬間、放たれたライフル弾が草むらを掠める。一瞬の出来事、それに集中力を奪われた利也はスナイパーから逸れた位置に対物弾を撃ち込む。

 

「く、外したッ!」

 

「リーヤ! 一時の方向、LMG! 距離300m!」

 

 草むらに撃ち込まれた制圧射撃に追い散らされた利也をカバーした武は壁にしたハンヴィーを掠めたライフル弾に舌打ちし、足止めを食らう近接職を振り返った。一瞬の迷いの後にスモークグレネードを取り出した彼は草むらから飛び出してきた武者に驚愕し、振り上げられた刀で斬られた。

 

 反撃の蹴りを叩き込んだ武はMk16アサルトライフルを武者に投げつけると腰に下げていたガンブレードを手に取る。横一線にライフルが切り裂かれ、その間に距離を詰めていた武が分厚い刃で刀を叩き折ると武者を押さえ込む。

 

「行け!」

 

 武の号令と共に前衛が走り出し、彼らは無理矢理草むらを突っ切る。高い移動速度に物を言わせて弾幕を張っている機銃手を真っ先に捉えた浩太郎は拳銃を引き抜いて連射、闇雲な射撃だが動揺させるのに一役買っていた。腰からナイフを引き抜いて跳躍した彼は小手を掠めたライフル弾に冷や汗を掻きつつ、直下のインファントリの脳髄に刃を突き立てた。

 

「マシンガン排除!」

 

 ナイフを払ってそう叫んだ浩太郎は殺気を感じて電磁フィールドを起動させた小手を眼前にかざした。瞬間、直撃したライフル弾が電磁フィールドの持つローレンツ力で偏向され、ヘッドショットを免れた浩太郎は反動を受け流すと機銃手が持っていたM60E4軽機関銃を手に取り、手招きしている武のほうに走っていく。

 

 浩太郎がハンヴィーに隠れた所でM60を投げ渡された武は残弾数を確認しながら威嚇射撃を繰り返している香美の隣に立ち、腰溜めで発砲。けたたましい銃声と共にライフル弾が飛散するが数秒撃っていると突然M60が作動が停止した。

 

「な・・・クソ、こんな時に弾詰まり《ジャム》かよ!」

 

 悪態をつきながら機関銃を投げ捨てた武と入れ替わりに飛び出した香美がリロードしたP90を連射する。その間にターゲッティングを終えた利也はスコープ内部に映るL115A3を構えたスナイパーを狙撃する。強烈な反動と共に放たれた12.7mm弾はスナイパーの頭部に直撃した瞬間、スナイパーの上半身を吹き飛ばした。

 

 肉片が辺りに散らばり、スナイパーの血液が霧と化す。スコープから目を離した利也は目頭を揉みながら通信機のスイッチを入れる。

 

「こちらシューター。スナイパーを排除、遠距離からの脅威は今の所認められず」

 

『リード了解。引き続き、こちらの援護を頼む』

 

「了解」

 

 そう言ってバレットを収めた利也はハンヴィーのホイールに立てかけていたDSR-1を手に取るとボルトを操作。装填されていた弾丸が落下するが利也はそんな事に頓着せず、装填動作を行う。安全装置を解除して周囲を探っていた利也は遠距離スキャンを行っていた香美が何かを感知して声を漏らした事を見逃さず、周囲に目を向けた。

 

 何かいる。敢えて声に出さずハンドサインでその場にいる全員に伝えた利也は空間の揺らぎ、肌に感じた大気と草むらに穿たれた足跡の圧縮位置から何かの位置を割り出し、腰の『Px4』9mm拳銃を引き抜いて発砲した。トリガーに指をかけると同時の三連射で太もも、腹、胸にそれぞれ直撃させた利也は初級の光学ステルスで接近していたらしいハンターナイトに銃口を向ける。

 

 プレートアーマーから剥がれて粒子となって散っていくステルス術式の魔力。ベールの様なそれが全身装甲のハンターナイトの姿を露わにすると同時に利也は腰溜めに構えたDSR-1のトリガーを引く。強烈な反動と共に放たれたライフル弾はプレートアーマーの胸部を狙う。

 

 音速のライフル弾の至近射撃ではシールドは構えられない。直撃だ、そう考えた利也は着弾直前で爆発した装甲に歯噛みしながらPx4を構えた利也は全身装甲の中でただ一つ隠されていない目元が僅かに笑ったのを皮切りに目元目掛けて三連射する。だが。

 

「防いだ!?」

 

 目を狙う軌道に乗っていた9mm弾三発がシールドで弾かれる。火花を散らして飛んでいったそれに目を見開いた利也はハンターナイトがランスを振り上げたのに反応してバックステップ。振り下ろされたランスが土砂を跳ね飛ばし、距離を取った利也の隣で香美がマチェットを引き抜いた。

 

 ハンターナイトと距離を取る彼らを他所に曇天から豪雨が降り始める。雨による視界不良の状況で、睨み合う彼等を嘲笑し、ランスを構えたハンターナイトにP90のフルオート射撃を叩き込んだ香美は爆発で弾かれた弾丸に驚愕した。

 

「爆風で弾丸が・・・!」

 

「チッ、RPAか・・・。つー事はだ」

 

 そう言ってガンブレードで射撃した武は吹き飛んだ頭部アーマーから露見した顔を睨み付けた。

 

「サイトさん・・・!」

 

「敬語はよせ、リーヤ。それに今俺達は敵対関係だ、今更そんな仲に戻る事など出来まいよ」

 

「ならここで、あなたを殺します。サイトさん」

 

 そう言ってライフルを構えた利也に龍人のハンターナイト、サイトは微笑を浮かべ、口を開いた。

 

「相変わらず、詰めが甘いなお前らは」

 

「何!?」

 

「対等にやり合う訳がないだろう?」

 

 そう言ってサイトは指を鳴らす。瞬間、車の上に複数のプレイヤーが現れ、彼らを包囲する。ランスとシールドを下ろしたサイトは安堵の息をつき、利也達の方に歩み寄ろうとしてその足を止めた。

 

 瞬間、ハンヴィーが真横に吹き飛んでサイトに迫る。だが、直前でシールドを構えた彼は軽いショックを感じただけでそれらしいダメージを負っていなかった。突然の事に眉をひそめた彼の上方、円筒状の物体が落下してくる。

 

「な、フラッシュバン!? 退避! 退避!」

 

 サイトの護衛隊長らしいスナイパーが慌てて指示を出した。が、直後にグレネードは炸裂、あたり一面に閃光が撒き散らされてスナイパー共々包囲していた部隊がスタン状態に陥る。スタンの影響が少なかったサイトが視界を確保した時には包囲していた部隊は全員射殺されていた。

 

 拳銃を手に着地した五人を見ながら武器を構えたサイトは左のシルドバッシュで手近にいた武を夏輝の方に跳ね飛ばし、右のランスで拳銃を向けて来た浩太郎を薙ぎ払った。ハンヴィーに叩きつけられた浩太郎はMk23をサイトの頭部に向ける。

 

 トリガーを引く直前にランスが突き出され、身を捻って回避した浩太郎は左手にナイフを引き抜いて前に出る。ポールウェポンの類に入るランスはリーチの関係上至近距離では威力を発揮しない。故に、サイトの懐に入り込めればリーチの長いランスは脅威となりえない。

 

 だが、浩太郎は判断を誤った。それは武装の選択ではなく、サイトの装備構成を忘れ、『暗殺』スキルを作動させていなかった事だった。激突する刃、プレートアーマーに直撃したナイフの切っ先は利也ごとアーマーからの爆風で吹き飛ばされる。

 

「くぅっ・・・!」

 

「終わりだ、コウ」

 

 ランスの切っ先が浩太郎を笑う様にきらめく。仰向けに吹き飛ぶ彼の上方、入れ替わる様に跳躍しているのは回し蹴りの体勢に移行している恋歌だった。彼女の姿を認めた瞬間、サイトはシールドを上げて蹴りを防ぐ。

 

 シールドで片足を止められてバランスを崩した彼女は片手に持っていたHk45を照準し、闇雲に連射する。ろくに当たらない射撃だったが逃げるまでの時間を稼ぐのには好都合だった。一マガジン撃ち切った恋歌は後ろ回りに転がりながらリロード。

 

 その後を追うサイトに加奈と楓が飛び込む。シールドとランスで二人の攻撃を受け止めた彼はニヤリと笑いながらそれを弾き、彼女らが繋げた次撃をアーマーで受け止めた。瞬間、アーマーから途轍もない爆風が生じ、二人の体が藁の如く吹き飛ばされる。

 

「がはっ」

 

 加奈は車両の外壁に叩きつけられ、楓は勢いそのままに地面に引き摺り倒される。あまりの衝撃で行動できない彼女らを嘲笑いながらサイトは恋歌に向けて歩みを進める。それをさせじと秋穂が香美の射撃と同時に飛び込み、アークセイバーを振るう。

 

 生産可能な物では最高クラスの性能を持つサイトのシールドは分割されたアークセイバー二本を受け止め、その光景に秋穂は驚愕する。エネルギーコートで部分強化しているらしいシールドとの間に火花が散り、バッシュで弾いたサイトは距離を取る秋穂に興味を含んだ目を向け、その背後で銃を構える恋歌と香美にも視線を向ける。

 

 視線が逸れたと同時に秋穂は左のアークセイバーを突き出す。実力の差を埋める為の不意打ち、身の程を弁えた上での行為にサイトは内心嬉しく思いつつ、彼はランスの一突きを返した。それを秋穂はセイバーを連結しながら仰向けに倒れて回避し、更にランスを持つ腕に組み付いて奪い取る。

 

 一方の恋歌と香美は得物を奪われたサイトが地面に倒れた秋穂へ重量級のストンプを落とす前に一斉射撃を敢行。銃身が焼け付く寸前まで連射した彼女らを忌々しげに睨みつつ、彼はシールドで全弾弾く。ランスを投げ捨てた秋穂が起き上がり様にサイトへドロップキックをぶち込むべくハンドスプリングで跳躍する。

 

 その瞬間、三つの出来事が起きた。一つはサイトの振り下ろしが秋穂を打ち据えた事、もう一つはサイトの背後から利也の援護を受けた隼人が突撃してきた事、そして、彼らに向けて猛烈な弾雨が放たれた事だ。

 

「ッ?!」

 

 ライフル弾の雨あられに全員の動きが止まり、ライフル弾に反応したサイトの装甲が爆発を生み、隼人達を巻き込んで吹き飛ばす。爆発で押し退けられたケリュケイオンは中心に立つサイトを睨みながら遮蔽物を探し、通信の安全を何とか確保する。

 

「ウィドウ1よりイカロス1-1!」

 

『どうしたウィドウ1?!』

 

「何者かから銃撃を受けている! 援護できないか!?」

 

『無理だ、こちらも足止めを食らっている! 救援は要請したが到着は5分後だ!』

 

「了解した! クソッ、期待通りだ」

 

 悪態をつく隼人の横顔を窺った利也は手にしたDSR-1のグリップを握り締め、サイトの方を見る。忌々しげな表情を浮かべる彼がランスを拾い上げてこちらに来る事に気付いた利也はリロードしていたPx4を引き抜いた。

 

 その様子を見ていた隼人がPx4を下ろさせ、驚く利也を他所に彼はサイトを睨みつけながら手招きをした。隼人の隣に屈んだサイトは警戒する利也達を他所に会話を切り出した。

 

「それで、お前達はどうするんだ? 逃げる算段はついてるのか?」

 

「そんな事を言う為にこっちに来たのか?」

 

「フン、こんな状況でもそんな口を聞けるなら十分だな。どれ、今回は共闘するか」

 

 そう言ってサイトはファンシアと通信機のスイッチを入れる。ファンシアがホログラフィックで周辺の地形を映し出し、サイトはそれを見ながら通信機に指示を吹き込む。

 

「アーバレスト2-1、こちらラプターリードだ。プランB始動、敵性勢力を薙ぎ払え」

 

『アーバレスト2-1よりラプターリード、ご命令はあなた以外を薙ぎ払えばいいので?』

 

「いいや、狙うのはイエローターゲット《所属不明》だけだ。それ以外は狙うな」

 

『2-1了解。掃射開始します。巻き込まれないでくださいよ』

 

「ああ、派手にやってくれ」

 

 ニヤニヤと笑うサイトがそう言った直後、上空より飛来したヘリコプター『AH-64D アパッチ・ロングボウ』が『ハイドラ70』70mmロケットランチャーと『M230』30mmチェーンガンを連射しながらアンノウンを掃討する。

 

 瞬く間に消滅したアンノウンの反応に一息ついたサイトは隼人の方を振り返る。遠く、迎えに来たらしい『MH-6 リトルバード』が旋回して着陸態勢に入ろうとしていた。

 

「これが、最後のチャンスだ。ハヤト、P.C.K.T.に帰ってこないか?」

 

「止めておく。もうあんた等とは敵対する関係になっちまったからな」

 

「そうか、俺としてはお前の様な奴を手放すのは気が気じゃないんだが、もう、無理だったな」

 

「ああ、だから共闘ももうこれっきりだ。あんた等と俺達じゃもう価値観が違う」

 

「分かった。じゃあな、後輩」

 

 そう言って着陸したリトルバードに乗り込んだサイトを睨んだ隼人は一息ついてその場に座り込んだ。その周囲、同様に力が抜けたらしい面々がその場にへたり込んで焼け野原と化したフィールドを見回す。

 

「任務失敗だな・・・こりゃ」

 

 そう武が呟くと同時、ケリュケイオンの回収に現れたグローブスティンガー所有の『UH-60 ブラックホーク』が空中で旋回し、昇降用のロープを下ろす。それにカラピナを引っ掛けた隼人達は順々に乗り込んでアイランヘ帰還して宿を取り、彼らはログアウトしていった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 その翌日、朝のニュース番組を見ていた隼人はテレビの前で固まる事になった。昨日見たアヴァロンというサイトに付いての事だった。

 

『たった今入ってきましたニュースです。『アヴァロン』と名乗るサイバーテロ集団がSNL利用のネットワークゲーム、『ブラストオフオンライン』へのサイバー攻撃を宣言しました。同集団は攻撃は準備段階にあると供述しており、

サイバー安全局では同ゲームの一時的な利用停止などを検討しています。然し、同ゲーム停止に伴う社会的影響も少なくなく、慎重な行動が求められています』

 

 動悸が止まらなかった。自分が、自分達が踏み入れた場所の危険さを今になって知った。自分は、テロ組織の行動に一枚噛んでいたのだ。だとすれば今までの事が全部、準備段階の出来事であれば――――。

 

 そこまで考えた所で電話が鳴った。武からだった。震える手で受話器を取った彼は震えを抑えながら声を出した。

 

「もしもし」

 

『・・・隼人か?』

 

「ああ、そうだ。どうした? 武、こんな朝早くから」

 

『朝のニュース、何だけどよ』

 

「・・・どうかしたのか?」

 

『あの、アヴァロンとかいう名前。誰もいないコウロスに拠点を置き始めてるグループの名前だって、思い出してさ』

 

「コウロスの・・・? 待て、武。コウロスにはもうグループが居座っていたのか?」

 

『ああ・・・だが俺はさほど脅威じゃないって判断して黙ってたんだよ。後から話せばいいって、さ。だから、その・・・』

 

「いや、いい。大丈夫だ、そんなに慌てる事じゃない。それよりも、報告ありがとうな、武」

 

『え、あ・・・ああ。どういたしまして』

 

「じゃあ、切るぞ」

 

 そう言って手早く受話器を置いた隼人はソファーに身を沈めた。まずい事になった、と呟いた彼は入れたてのコーヒーを啜ると深いため息をついてその場を離れた。

 

 

――――そして、この日から

 

――――日本は、混沌に走り出すのである。

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