B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast9-4

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 一方その頃、武と合流した隼人は周囲の敵を掃討し、利也達と合流しようと移動し始めていた。前を歩く隼人の後ろ、背面にKSGショットガンを背負う武は腰にガンブレードを下げ、手に鹵獲したAK-74を持っていた。

 

「しかし災難だったな、武。まさか、降下中にライフルを落とすとは」

 

「全くだぜ・・・。ああ、俺のMk16ちゃん・・・」

 

「諦めろ。まあ取り敢えず、合流だな。シグナルから察するに皆合流できたみたいだな」

 

「おう、そうみたいだな。しかし・・・姉御たちは大丈夫かね?」

 

「大丈夫だろう。それよりも移動を優先しなければな、まだ仕事は残ってる」

 

 そう言って歩く隼人について行く武は時折後方を確認する。誰もいない事を確認した武は曲がり角で一旦止まった隼人に頷くとクリアリングを済ませた彼に続いた。

 

 壁沿いに歩いていた隼人はふと何かに気づき、武を止まらせた。不審そうにしている彼を他所にレンガ造りのアパートに近付いた隼人はドアから聞こえてくる声に少し考えると武に手招きし、ハンドサインで指示を出す。

 

《ナックルブリーチ》

 

 指示に頷いた武がAKと残弾を確認したG18を構え、準備完了の指示を出す。頷きと共にスキルを宿らせた拳をドアに叩きつけた隼人は作動したパイルバンカーの補助でドアを破砕する。

 

 そして、AKとG18を構えた武が飛び込み、室内にいたプレイヤー達に叫ぶ。

 

「全員、武器を捨てろ! さもなくば射殺する!」

 

 武はマニュアルロックに切り替えていた両銃でプレイヤー達を牽制する。大人しく武装解除したプレイヤー達を見回した武は遅れて入ってきた隼人にその場を譲ると後方警戒に当たる。

 

「お前ら、ファンシアの所属表を見せろ。応じなければ殺害する」

 

 脅しながら所属を見た隼人は敵ではない事を確認すると彼らの平均レベルを聞き出し、そして何故ここにいるかを聞いた。

 

「なるほどな、お前らは初心者で襲撃に際して逃げてきたのか」

 

 そう言って頷いた隼人はファンシアを返すとパイルバンカーの状態を見て外に出る。周囲を見回した隼人は誰もいない事を確認すると建物に戻る。

 

「俺達はこれからガバメントセンターの方に移動する。ついて来るか?」

 

 隼人の問いかけに初心者達は頷く。それを見て頷き返した隼人は向かいの路地でシグナルを送ってきた利也の反応に気付き、通信機のスイッチを入れた。

 

「リードよりシューター。現ポイントで索敵待機、繰り返す現ポイントで索敵待機」

 

『シューター了解。現ポイントで索敵待機する』

 

「リード、命令伝達確認」

 

 そう言ってスイッチを切った隼人は室内を見回して編成を軽く確認する。

 

「よし、お前ら。移動するぞ、そう言えばお前ら、コールサインはあるか」

 

「そんな物はない」

 

「了解した。8人編成のお前らを『ペトロナス+数字』で呼ぶ事にしよう。リーダー格が1番、サブリーダーが2番だ」

 

「分かった、割り振るから待っててくれ」

 

「早めにな」

 

 そう言って隼人は武と共に入り口で周囲を警戒する。と、ここで隼人宛に通信が入り、警戒を武に任せて隼人は通信を受ける。

 

「こちらウィドウ1」

 

「私よ、後輩君。そっちの様子はどう?」

 

「粗方殲滅した。今、生き残りを保護してそちらに合流しようと思っていた所だ」

 

「そう、こちらもゼルリットと合流したわ。じゃあその子達を連れてきてちょうだいな」

 

「了解した。周囲の状況も良好みたいだから、今から向かう」

 

 そう言って通話を切った隼人は武の方を振り返ると通信バンドをケリュケイオン専用の物に切り替える。

 

「ウィドウチーム全員に通達、移動開始」

 

 そう言ってペトロナスチームの方を振り返った隼人は頷く彼らを先に通し、後ろを武と共に走る。

 

 刹那、大通り正面からの銃撃が浴びせられ、思わず足を止めたペトロナスチームを二人は利也達の方に押しやる。

 

 戸惑うペトロナスチームを裏路地に行かせると射撃を続ける利也達に撤収のハンドサインを送る。

 

「残存兵力が集結してきてるのか?!」

 

「クソ、止まるな! ゴーゴーゴー!」

 

 驚く武を他所にペトロナスチームを走らせる隼人は表通りに出るとそのまま裏路地を避けて走る。

 

 大人数移動の時はむしろ広い場所を通った方が詰まらずスムーズに動ける。

 

「うわあ、敵だ!」

 

「チィ! 路地に入れ! タケシ、カナ! 連中のカバーを頼む!」

 

 前に出た隼人は接近してきたファイターの攻撃をバンカーで受け止め、ローキックで転倒させる。

 

 その間に裏路地に逃げ込んだペトロナスチームをカバーする武と加奈は前後に分かれて路地を進む。

 

「くッ、数が多い!」

 

 追って来る利也達の苦言も他所にファイターを仕留めた隼人は真横に着弾したロケット弾の爆風で吹き飛ばされ、ショーウィンドウに突っ込んだ。

 

「がっは」

 

 吐血し、体力を確認した隼人はカバーに来たらしい恋歌と秋穂、香美に支えられて立ち上がる。

 

 回復アイテムを口にした彼は武達と交信を図ろうと通信機のスイッチに手を伸ばしかけて人影に気づき、三人を物陰に隠れさせた。

 

「どうだ?」

 

「誰もいないぞ」

 

「吹っ飛んだんじゃねえの? だって、ロケット弾だぜ?」

 

 踏み込んできた二人組が周囲を見回しながら隼人たちの隠れている場所に近づく。

 

「バカ、油断するなって。天下のアヴァロンが、クリアリングミスでキルされるって目も当てられないぞ」

 

「へーいへい。お前は慎重だなぁ」

 

「ったく、お前が大雑把なだけだ」

 

 そう言いながら一人が元々洋服店だったらしい廃墟の店内を『キャレコ・M900』サブマシンガンを構えて歩き回る。

 

 無事だったカウンターの裏でじっと息を殺していた隼人と香美は動きたくてウズウズしている恋歌と秋穂にギョッとなった。

 

 直後。

 

『こちらウィドウ2、ウィドウ1応答してくれ』

 

 つけっ放しだった秋穂の通信機から武の声が響く。

 

 目を見開いた隼人と香美が慌てる足音に振り返った直後、フルオートで放たれた9㎜弾がカウンターをぶち抜く。

 

「にゃあああ?!」

 

 慌てる香美を引っ張って離脱した隼人は敵へ猪突していく秋穂と恋歌に気づき、舌打ちして香美を次の物陰に隠す。

 

「カミ。アキホ達に援護射撃を。相手を攪乱するだけでもいい」

 

「りょ、了解です!」

 

 力強く頷いた香美にその場を任せ、通信機のスイッチを入れた隼人は物陰から銃撃戦を繰り広げる相手の様子を窺いつつ、武と通信した。

 

「ウィドウ1よりウィドウ2。こちらは突撃バカ共のせいで立て込んでる。お前らは先に行け」

 

『お、おう。分かった。ウィドウ2アウト!』

 

 通信が切断され、香美の方を見た隼人はタップ撃ちで牽制している彼女に半ば強引に接近しようとしているハンターナイトに気付いた。

 

「クソッ、させるか!」

 

 タックルで重装備のナイトを突き飛ばそうとした隼人は思いの外飛ばなかった彼に驚き、大剣の横薙ぎを屈んで回避する。

 

 そのまま懐に飛び込んでジャブを打った隼人は持ち前のタフさにものを言わせた強引な縦下ろしを回避、剣を裏拳で弾き飛ばす。

 

「ショートカット、『スタンインパルス』!」

 

 肝臓狙いのフックを衝撃をもろに伝えるスキル付きで打ち込んだ隼人は鋼鉄製の特殊メットにハンマーブロウを打ち下ろし、ハンターナイトの顔面を地面に叩き付ける。

 

「ショートカット『ストライクキック』!」

 

 そのまま更に肝臓の辺りを蹴り飛ばした隼人は激戦区となっている店舗の方に向かった。

 

「アキホ! レンレン! 退くぞ!」

 

 香美の援護射撃を受けて全滅させんばかりの勢いで戦闘している二人を呼んだ隼人は増援らしき足音に気付いた。

 

「おい!」

 

 呼び止めた瞬間、増援に捕捉された隼人はライフル弾の掃射を受け、近くの家屋に逃げ込む。一人逃げた彼に向けて間髪入れず、40㎜グレネード弾の大群が押し寄せる。

 

「なんだよこの連射性能! グレネードマシンガンか!?」

 

 言った直後、衝撃に負けたアパートの入り口が崩れ、慌てて裏口に飛び出した隼人は崩落したアパートから走って店舗の裏口に向かう。

 

「ウィドウ1よりウィドウ2可能なら応答しろ!」

 

『どうした?!』

 

「首都ガバメントセンターの奪還状況は?!」

 

『奪還は完了した! センター周辺のインフラも回復済み!』

 

「ヘリは出せるか?!」

 

 裏口で待機しながらそう告げた隼人は黙した武の返答を待つ。

 

『ああ、出せるぞ! CAS(近接攻撃支援)要請だな!? 姉御に聞いてみる!』

 

「急いでくれ、おそらく敗走した部隊がこちらに来ている。まともな戦力は確認できるだけでも俺達だけだ」

 

『分かった。連絡だ、先行してコウとカナがそっちに行った。合流できるなら合流してくれ』

 

「了解した。それまで保たせて見せる」

 

 そう言った隼人は裏口のドアを拳で破壊すると驚くインファントリの襟首を掴み上げてその場の壁に叩き付ける。

 

「く、くそ――――」

 

 悪態をついたインファントリの頭蓋目がけて蹴りを繰り出した隼人はぐしゃりと潰れた頭部から足を離す。

 

「き、貴様!」

 

 カバー役だったらしい『PP-19 ビゾン』サブマシンガンを構えたインファントリが隼人目がけてフルオート射撃を撃ち込む。

 

 弾幕に襲われるより早くカウンターを足場に跳躍、天井部分が開いた壁を乗り越えて退避した彼はハンターナイトの頭を脚部パイルで貫きつつ、恋歌達と合流。

 

「遅かったわね」

 

「誰のせいでこうなったと思ってる。とにかく、蹴散らすぞ」

 

「了解!」

 

 言い様、両腕を広げた隼人は左右から迫っていたファイター達の腹を貫く。瞬間、跳躍した恋歌がカウンターの天板を撃ち抜きながらパイルを起動。

 

 加速の勢いそのままに膝蹴りを正面にいた武者の顔面に打ち込む。のけぞる武者を他所に後方へ縦回転を入れながら跳躍した彼女は着地と同時に後方ロールを行う。

 

「ええい、ちょこまかと!」

 

 ロールの終わりと同時に足払いされたリッパーが顔面狙いの回し蹴りを防ぎつつ、長剣を恋歌に突き出す。

 

 のけぞって回避した恋歌は足元狙いのローキックをバンカーの加速で強制的に跳躍して回避。

 

 倒れる様な着地、リッパーが接近するより早く拳銃を抜いた恋歌は至近で連射し、キルする。

 

「な、何とかなったわね……」

 

 倒れたリッパーの死体を見ながら起き上がった恋歌は店舗にいた敵を全滅させた事を確認すると、スライドオープンしていたHk45に新たなマガジンを挿入してロックを解除した。

 

「それで、どうすんのよ」

 

「コウ達がこちらに来るらしい。取り敢えず、合流を図る」

 

「りょーかい」

 

 そう言ってホルスターに拳銃を収めた恋歌は隼人に続いて裏口から店舗を出る。

 

 殿に香美を置いた編成で移動する彼らはHMDモードに切り替わったファンシアに驚き、位置指定での警告が入った通りの方を振り向いた。

 

 直後、道路の舗装を剥がす弾雨が彼らの目に飛び込み、弾着に遅れて天空から銃声と低速ジェットエンジンの爆音が轟く。

 

「うわぁ、『A-10 サンダーボルトⅡ』……」

 

 BOOではあんまり使われない類の攻撃機カテゴリに入るアメリカ軍の航空機『A-10』が二機、空中旋回に入る様子を見ながらいろいろ調べているらしい香美がドン引きの声を上げる。

 

「相変わらずエグイ威力だな。跡形もないだろう」

 

「ですねぇ……」

 

 砂煙立ち込める空間に二人が呆れ、その間に浩太郎と加奈がアパートの屋上から光学迷彩を解除しつつ降下してくる。

 

「お待たせ、待った?」

 

「いいや、今合流しようとしていた所だ」

 

「なら良かった。サクヤさんから伝言があるんだ。通信出てくれなかったみたいだからね」

 

「ずっとグループ限定バンドに設定していたからな……。内容は?」

 

 一しきり周囲を警戒して、回復アイテムと携行食料で一服入れた隼人は壁に背を預け、顔だけ浩太郎に向ける。

 

 表通りに通ずる入口を視界に入れつつ、浩太郎は腕のファンシアからサクヤから受け取った指令書を隼人に送信する。

 

「僕達ケリュケイオンはこのままケロスに向かえ、ってさ。CASからの歩兵掃討が終了次第、グローブスティンガー通信バンド、コード6620で連絡してくれって。迎えを出すんだって」

 

「シグナル見る限り……全員こっち向かってるのか。到着は五分後、車両使用で車種はストライカー装甲車……。中古か、まあいい。コウ、作戦指示書を見る限りA-10はドローンだな?」

 

「うん、ファンシアで目標指示できるはず」

 

 浩太郎の言葉を聞きながら、腕に取り付けたファンシアをターゲッティングモードに切り替えた隼人は連動するインターフェイスから加害範囲を確認すると通信に切り替える。

 

「敵残存勢力はA-10ドローン経由によればおよそ50、やれない事は無いがこの後を考えればなるべくワンサイドがいいが、まあ、ガチでやるか。

大柄で目立つストライカーはドローンモードにしてA-1と一緒に囮として使う」

 

『ガチっつったって乱しに乱しまくって大型火器でトドメか、相変わらずえげつねぇな』

 

「作戦エリア侵入次第、作戦開始する。無人機のコントロールを、カミ、ナツキの両名に譲渡」

 

『作戦エリア侵入! ストライカードローンモード移行!』

 

 武の叫びと同時にストライカーが急停止する音が聞こえ、十秒の間を置いてソフトターゲット用のコンポジットウェポンが火を噴く音が響く。ミニガンとM2ブローニングが

撤退していたプレイヤーを殲滅するが、即座に反撃のロケット弾が飛んでくる。

 

 ロケット弾の直撃を受けて吹っ飛ばされたストライカーが路上を炎上しながら跳ね転がる。

 

 炎をまとった残骸は大通りに出ようとした秋穂の鼻先を掠めて過ぎ、たたらを踏みながら下がった彼女はアークセイバーを連結させて背後の恋歌と加奈にアイコンタクトを送る。

 

 頷いた二人に歯を見せて笑った秋穂は網膜に映るインターフェイスからスキル『クイックステップ』を選択し、発動して飛び出した。

 

「敵襲! ガンナーは撃ちまくれ!」

 

 飛び出しと同時に弾幕に晒された秋穂はニヤリと笑いながらアークセイバーのスイッチを入れる。

 

「行くよ、レン姉! カナ姉!」

 

 叫びながら、両刃のセイバーで直撃弾を弾いた秋穂はやれやれといった風体の二人を守りながら敵陣に向けて突貫していく。

 

 縦横無尽に振るわれる光刃が弾幕に穴をあけ、二人が斬り込む隙を作っていく。その後ろ、楓と武、隼人がそれに紛れて突撃。

 

 突っ込みの際に姿勢を低くした三人の後ろ、アパートの一室からDSR-1による狙撃体勢に移行した利也がスキャニングを起動した香美のスポッティングで優先ターゲットの頭部に狙いをつける。

 

「セイバーの熱量で風が出てます。下右巻き、上左巻きの微風、射線スポット二番が開いてます。そちらを一番に変更、一番を二番に下げます」

 

「了解。オンターゲット、レディ」

 

「オープン」

 

 スポッターの香美からの言葉を受けた利也が引き金を引き、重厚な発砲音と共に弾丸が飛んでターゲットにされていた軽機関銃を扱うプレイヤーの頭蓋が爆ぜる。

 

「命中。次ターゲット、距離600、射線クリア。シューターセット」

 

「オンターゲット、レディ」

 

「オープン」

 

 香美の言葉と共に二人目が倒され、顔を上げた利也は香美に先導されながらすぐに射点から退避する。その屋上、大乱戦になった戦場を見守る浩太郎は、頃合いと見て飛び降りる。

 

「ショートカット『暗殺』」

 

 静かに呟き、リーダー格らしい少年の頭蓋をかち割って着地した浩太郎は血振りしながらバックステップ。チェイングレネードを斬りかかろうとしたハンターナイトに巻きつけ、起爆ワイヤを引いた。

 

 焼夷グレネードを鈴生りにつけたそれは起爆と同時に鎧騎士を火だるまに変え、強固な防御力を誇るはずの彼は一瞬で焼死体となって路上に倒れ込む。

 

 その間に着地した浩太郎は後方からの斬撃を屈んで回避、足払いしつつ起き上がると同時に手の甲のバリアガントレットを起動。ショットガンの弾丸を防ぐとガントレットから仕込み武器の毒針を射出する。

 

「このォ!」

 

 気合を込めた叫びで武者に気づいた浩太郎は腰からトマホークを引き抜き、反り返しで刀を受け流す。

 

 開いた左手に逆手でダガーを引き抜いてトマホークの補助とした彼は体勢を戻し、横薙ぎに斬りかかってくる武者の一閃をロールを入れながらの跳躍で回避する。

 

「バカめ!」

 

 突進しながらスキルの光を刃に纏わせた武者は宙に身を投げた浩太郎を嘲笑い、その刃を振るう。

 

「ッ!」

 

 ギリギリの所でダガーが刃を犠牲に威力を殺し、その隙に武者の頬を蹴った浩太郎はダガーを手放した左手にクナイを引き抜いて投擲。

 

 頭部に直撃したそれが武者の命を奪い、糸の切れた人形の様に倒れた武者を他所にその場を離れた浩太郎はライフルで射撃してくるインファントリに右手から移動用の太いワイヤーを放ち、首に巻き付ける。

 

 首を締め上げながらMk23を逆手で引き抜いた彼は別方向からの射撃に気付き、ワイヤーを巻き上げてインファントリを引き倒しながら射撃が飛来した方向に向けてMk23を放つ。

 

「くっ、不味い」

 

 撃たれている浩太郎のHPがぐんぐん減っていき、Mk23の残弾が切れる。

 

「しまった!」

 

 攻撃手段を失った浩太郎は手元まで巻き戻ったワイヤーに絡まって絶命しているインファントリを盾に、後退を始める。

 

『援護するよ』

 

 その言葉と同時にライフル弾が正面のスカウトを直撃する。吹っ飛ぶそれを他所にワイヤーを切断した浩太郎は回復アイテムを服用して逃走、光学迷彩を展開して雪の残る外壁を駆け上る。

 

 一方の利也はDSRのスコープで周囲を見回し、顔を上げる。持ち上げたライフルをマジックバッグに収めた彼はバッグを背負い、スリングでMk17を下げると腰から拳銃を引き抜いた。

 

「シューター移動開始。リコン、オフィサー、今どこ?」

 

『アパートの屋上です。どうしましょうか?』

 

「僕がそっちに行くよ。二人は監視しながら待ってて」

 

『リコン、了解です』

 

 そう言って通信を切った利也は拳銃を構えつつ階段を上った。慎重にクリアリングしながら上がる彼は屋上で待機していた香美と夏輝の姿を見つけると後ろを警戒しながら屋上に上がる。

 

「あとちょっとかな。まぁここから狙撃するのも有りだけどリスクがあるかな、ここで監視しようか」

 

「了解です。それにしても、どうして敵はここを狙ってきたのでしょう……」

 

「んー、防御に固い土地だからじゃないかな。ここ、凄く攻め辛い土地だから補給経路が何とかなれば無敵の要塞だよ。ここを押さえられれば、殆どのグループは手が出せなくなる」

 

 スキルで遠距離を観察しながら利也は香美のいる方へモウロの地形図を表示する。地形図では山岳のように横たわっており、非破壊オブジェクトである事も相まって長距離砲撃を完全に無効化する構図になっている。

 

 加えて、ヘリでは突破困難な山岳の高度と自然環境の影響で侵攻には大きな不利を強いられる。無論、正攻法での話だが。

 

 と、そこまで理解して香美は次なる疑問を利也にぶつけた。

 

「でも、ゼルリットがここを押さえている事が許容されているのは何故です? 押さえるのであれば、自分の領土にするべきでは?」

 

「サクヤさんの考えは分からないからなぁ。生産土地も手放して同盟って事にしちゃったし。まぁ、理由らしいものをつけると、管理が複雑になるからじゃないかな」

 

「複雑?」

 

「そう。一組織が広い範囲を管理しようとしたらどうしても上役に現地の状況が伝わりにくい。そうなると現場レベルでは好き放題出来てしまうから敢えて分けてるんじゃないかな」

 

「なるほど……。あ、敵性勢力の消滅確認」

 

 スキャンをした香美がそう告げるのに反応して立ち上がった利也は周辺を目視で探ると、香美と共に夏輝を持ち上げて背中の翼を広げた。

 

「降りるよ。せーの」

 

 掛け声とともに飛び降りた三人は減速しながら降下し、地面に足をつけると香美を先頭に移動を始める。

 

 クリアリングしながら歩いていた三人はボロボロの店先で一服している隼人たちと合流する。

 

「の、のん気だね皆。ま、僕らも疲れたし、休憩しようかなぁ……」

 

「そうしとけ、まだ第二ラウンドがあるんだからな」

 

「あー、そうだったね。連絡は?」

 

「もうしてある。あと五分で来るそうだ」

 

「了解だよ」

 

 そう言って地面に座った利也は傍らにライフルを立てて置くと夏輝からホットココアを受け取る。

 

「はー・・・。体冷えてたんだなぁ。ココアが熱く感じる」

 

「はっはっは、アドレナリンと防寒作用でそこそこ押さえてたからそりゃ気付かないだろう」

 

「改めて見るとやっぱりここは雪国なんだなぁって感じるよ」

 

 ココアを啜る利也に頷いた武は冷たさを感じにくい全身の装備を点検していると上空に『V-22 オスプレイ』がホバリングしながら降りてくるのに気付いた。

 

「うぉっ」

 

 ゆっくりではあるが降下地点と居場所が重なる事を悟り、慌てて避けた武は自動で開いた昇降口に近付き、様子を見た。

 

「お待たせしました。ケリュケイオンの皆さん」

 

「おう、オスプレイたぁロマンある選択じゃねぇか」

 

「あいにくヘリは出払ってまして、これしかなかったんです。でも、対地攻撃能力付加型ですので援護できますよ!」

 

「ん―まあ、そりゃ嬉しいんだけどよ。俺ら、一応隠密強襲するつもりでいるからさ」

 

 そう言って苦笑する武はオスプレイに乗り込むと座席を引き出し、ガンキャリアーから『レミントン・ACR』アサルトライフルと弾薬を手に取り、アーマーに装備。

 

 そして、鹵獲していたAK-74をガンキャリアーに立てて置く。腰のマウントラッチに下げていたKSGもリロードし、予備のリムをアーマーに装着。

 

 座席に戻った彼は隣に座る利也と同様にライフルの銃口にサプレッサーを取り付けていた。そんな彼らを他所に隼人は全員いる事を確認して出発の合図を送る。

 

「さて、ブリーフィングを始めるか」

 

 閉じたドアを見て仲間の方を振り返った隼人は、そう言うとファンシアをディスプレイモードにして話し始めた。




これにてBlast9完結です! 次はいよいよ、ケロス奪還作戦です!

波乱間違いなしの次回をお楽しみに!
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