B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast1-3

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「と言う訳で、飯を食いながら作戦会議だ」

 

 そう宣言した隼人に一人頷いたのは手作りの弁当を開けた浩太郎で、その隣、嬉しそうにしている加奈は同じ構成の弁当を咀嚼していた。

 

 その様子を見ていた隼人は少しばかり嫌そうな顔をしており、それを見た恋歌は彼にこう聞いた。

 

「そんなに大事なの?」

 

「いや・・・そんなに詰まった内容じゃないが・・・」

 

「じゃ、リラックスしてて良いのね?」

 

「・・・ああ、楽にしててくれ。食事時だしな」

 

 試す様な恋歌の物言いに少し不貞腐れ気味の隼人は、悪戯を成功させた子どもの様な無邪気な笑みを浮かべた恋歌に覗き込まれ、ばつが悪そうに顔を背ける。

 

 目を合わせない彼に悪そうな笑みを浮かべた恋歌は、彼の顔を追いながら追い討ちをかける様に話し始めた。

 

「アンタ、皆が真面目に聞いてくれるか心配なんでしょ?」

 

「そうじゃねぇよ」

 

「じゃあ何?」

 

「相変わらずだなって思ってただけだ」

 

「ふーん、羨ましいんだ」

 

「別に、そうは思ってねえよっ。お前こそどうなんだよ、同居っつうのは」

 

「い、良いと思う・・わよ? ずっと一緒って楽しいと思うし・・・・」

 

「そ、そうなのか・・・。さ、参考になるな・・・」

 

 最終的にお互いの手の内を探る様な微妙な会話に行き着いてしまった二人を苦笑交じりに見ていた浩太郎は、

隣で赤くなる加奈の頭を撫で、縮こまった彼女に更に明るい笑みを浮かべた。

 

「おーい、砂糖吐くよーな会話はそこまでで良いか? お二人さんよ」

 

「あ、ああ・・・。すまん」

 

「別に良いけどよ、時と次第を考えろよ? んで、作戦つーと?」

 

「作戦、と言っても単なる役割分担だ」

 

「おー、まぁそう言う事なら良いぜ?」

 

 微笑する武に内心感謝した隼人は作戦ノートと記された冊子を取り出し、授業中に考えていた役割分担を部室にある大きなホワイトボードに書き始めた。

 

 流石に全員が関わる事なので食事の手を止めた皆は書き終わった隼人が振り返るまで待ち、部長としての顔を見せ始めた彼に向き合った。

 

「さて、役割についてだが、俺と恋歌に武と楓、浩太郎と加奈はアイラン領地内で聞き込みつつ警邏。発見次第、各自で連絡する。

残る二人の内、利也は時計台の上からスナイパーライフルを用いて領内監視、怪しい場所があれば逐一連絡する事。

で、夏輝。お前はグローブスティンガーのギルドホールに行ってある程度の情報を貰っておいてくれ」

 

「了解です。それでその後は―――」

 

「ああ、尋問と聞き込み、警邏と情報で得たデータを纏めて報告書を作成。場合によっては印刷して生徒会に提出する」

 

「分かりました~。あ、お茶いります?」

 

「え、あ、ああ。貰おう」

 

 毒気を抜かれた隼人に苦笑した夏輝は彼に続く様に手を上げた全員の分を用意し、茶葉が広がるまで待ちながら食事に戻った。

 

「追加だがポイントと警邏については各人の判断を優先する。が、新米等に状況を悟られない様にな」

 

「了解、了解。まぁよっぽどのヘマしなきゃサクヤ達がカバーしてくれるだろうさ」

 

「そうだな。それで、今日は早めに帰ろうと思う。帰宅後は各自の家でログインし、行動に移ろう」

 

 部長としての顔を見せる隼人に表情を引き締め、無言で頷いた武達は夏輝から渡されたお茶を飲みながら各自の作業に移った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 放課後。予定通り、早めに部活動を切り上げ解散させた隼人は自宅で作戦を考えていると不意にインターホンが鳴り、

一階に降りた隼人は勝手に家に入ってきた恋歌に半目を向けた。

 

「お前か・・・」

 

「何よその目はっ! 家に来ちゃ駄目なの?!」

 

「いや、別に・・・来ても良いけどよ。あー・・・分かった。上に上がってろ」

 

「はいはい」

 

 飲み物を取りに行った隼人は少し嬉しそうな恋歌の声色にほんの少しだけ頬を緩ませ、自分の分も注いだコップ二つと

お菓子を入れた皿をトレーの上に置いて二階へ上がった。

 

「おーい、飲み物だ。ラムネードサイダーで良かったよな?」

 

 ドアを蹴り開けた隼人に頷いた恋歌は嬉しげな表情で彼のベットの上に寝転がり、掛け布団を巻き込んでくるまった。

そんな様子の彼女を見た隼人は気にせず作戦の考案を続けていた。

 

 探索ポイントの絞り込みを何度も行ない、その度に考えられる事を書き出していた彼はちょうど後ろ、ベットの方から聞こえる寝息に振り返ると

布団にくるまって眠っている恋歌が年不相応の可愛らしさを見せていた。

 

 たった数分で眠っている辺り相当疲れていたのだろう、と考えた隼人はサイダーを一口飲むと途端五月蝿くなった一階に疑問を浮かべ、ドアに耳を押し付けた。

 

『姉ちゃんお帰り~。あ、宮坂さんこんにちわぁ』

 

『こんにちわ、秋穂ちゃん。これ、おみやげ。お兄さんと一緒に食べてよ』

 

『スティックケーキですか?! ありがとうございます!』

 

 一階の会話を盗み聞き、カレンダーを見た隼人は今日が木曜日である事を確認して小首を傾げていた。姉と姉の同期が家に帰ってくるのは決まって週末だ。

 

 そうこうしていると姉と同期が話しながら上がってくるのに気付き、慌てた隼人は布団で寝ている恋歌を思い出し、どうしようか悩んだ挙げ句、

ベットの上で雑誌を読んでいるふりをした。

 

「隼人~入るわよ~」

 

「ん? お帰り姉ちゃん。どうも宮坂さん」

 

「何してたの?」

 

「部活の事してて、一段落したから模型雑誌読んでる」

 

「部活の事、ねぇ・・・今何調べてんの?」

 

「違反PK。取り決め外のプレイヤーキルしてる連中だ」

 

「ふぅん・・・ねぇ宮坂、もしかしたらだと思うから隼人にあれ見せてあげて」

 

 背後に侍っていた同期にそう指示を出した姉の姿にただならぬ物を感じた隼人は、跳ね起きた自身の目に飛び込んできた書類を受け取り、その全てに目を通し始めた。

 

「全国各地でそう言った学生を狙ったPKによる被害が出てるの。サイバー法が施行されてるとは言え介入しにくいのが現状なの」

 

 真剣みを帯びた姉の言葉が目の前にある極秘の捜査資料に書いてある事が紛れも無い事実である事を伝えてくる。

 

「何てこった、全国ネタかよ・・・」

 

「それで隼人、あなた何か掴んでない?」

 

「こっちも一昨日から調べだしてるんだ、提供出来るネタは何も無ぇ」

 

「あー・・・・そう、それならこの事は保留。何か分かったら連絡ちょうだい」

 

「了解。守秘義務は守るよ、姉ちゃん、宮坂さん」

 

 そう言った隼人は自身の隣で寝返りをうち、着衣を乱し汗まみれで出てきた恋歌に真っ白になって姉達の方を見ると、同様に白くなっていた彼女達に

言い訳を頭で考え始めた直後、寝ぼけた恋歌が隼人に密着した。

 

「隼人・・・・アンタ、大人に・・・」

 

「待て姉ちゃん! 違うんだ!」

 

 どん引きする姉達に言い訳しようとした隼人は腰に抱きついた恋歌に圧し掛かられ、一瞬バランスを崩す。が、何も無かったかの様に体勢を立て直した隼人は、

背中に当たる胸の感触に頬を赤く染めた。

 

「おい弟、何考えてるのよッ!」

 

「痛ェ! 何しやがるクソ姉貴!!」

 

「五月蝿いわスケベ! 何女子の胸に当たって鼻下伸ばしとんじゃい! 捕るぞゴラァ!」

 

 身長差のある自分の襟首を掴んで軽く持ち上げた姉に内心驚きながら腕を外そうと彼女の腕を掴む。一触即発の状況で割って入った宮坂が二人を諌めた。

 

「ま、まぁ・・・そう言う事だから。隼人君、何かあったら連絡を」

 

「分かりました・・・宮坂さん、姉ちゃんを早く連れて帰ってくれ」

 

「あ、あはは・・・それじゃ」

 

 苦笑を浮かべ、吼える姉を引っ張って退室していく宮坂に目つきの悪い眼を向けた隼人は、ベットに腰掛けると背負ったままの恋歌をベッドに寝かせ、

掴まれた所をさすった。

 

「ッたく、何したら女であんな怪力出るんだよ・・・」

 

 そう言いながら眠る恋歌を見た隼人は小柄な彼女の身に何とも言えない安心感を覚え、思わず頬を撫でた。いきなり触られて身を竦ませた恋歌が目を覚まし、

不機嫌そうな、それでいてまんざらでもなさそうな目で彼を見た。

 

「何、してんのよ」

 

「いや・・・その、すまん」

 

「な、何でいきなり謝るのよっ! こ、困るじゃないっ」

 

 真っ赤になって身を捩る恋歌と頭の中が真っ白になっている隼人の間に、気まずいだけの時が流れ、その後話を切り出そうとした隼人は、警戒心を抱いた目を

向けてくる恋歌に溜め息をついた。

 

「お前の頬を撫でてた」

 

「何でよっ」

 

「え、えっと、触りたかったから・・・・だ」

 

「エッチ! セクハラ!」

 

「んなんじゃねぇ!」

 

「じゃ、じゃあ・・・何?」

 

「そ、その・・・ち、ちっちぇから・・・?」

 

 正直に話してしまってから隼人は自分の失言に気付いた。外見はツンとしている恋歌だが、その実、凄く繊細で傷つきやすい。あまり身体の事を言うべきでは無いと

考えていた隼人は予想外に嬉しそうな彼女に肩透かしを喰らった。

 

「え、あれ?!」

 

「ん? 何よ」

 

「お前。怒って、ねぇのか?」

 

「怒ってないわよっ」

 

「おぉ、そうか・・・・」

 

 引き気味の返事をする隼人を睨んだ恋歌は頬を膨らませて彼に詰め寄り、気まずそうな表情を浮かべた隼人に一変した無邪気な笑みを向けた。

 

「な、何だよ恋歌」

 

「・・・甘えて、良い?」

 

「そんな事、お前の好きにしろよ」

 

 恥ずかしさからぶっきらぼうな物言いになってしまった隼人は、嬉しそうに笑う恋歌が背中に抱き付いたのを感じて身を強張らせ、

背筋に当たる胸の感触に途端落ち着かなくなった。

 

「えへへ~」

 

「急に機嫌良くなったな、お前。何でだ?」

 

「秘密っ」

 

 機嫌の良い恋歌が膝の上へ移動したのに顔を赤くした隼人は背中を預けてくる彼女に頬を緩ませていたが、手持ちの端末に送られてきたメールを見て顔を青くした。

 

「? 隼人?」

 

「忘れてた・・・ダイブしなきゃいけなかった・・・!!」

 

「あ」

 

 間抜け面の恋歌が慌てて端末を用意するのに合わせて隼人も準備をし、二人は慌ててダイブした。

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