B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》 作:Sence023
Blast2『I do not seek, I find.《私は捜し求めない。見出すのだ。》』
ダイブから一時間、アイラン領内を警邏していた隼人は、後ろに付いてくる恋歌の方を一度見ると、興味深げに周囲を見ている彼女がよそに移動していったのに気付いた。
一度立ち止まった彼は、食料品を売っている出店の方に移動していた彼女の後を追い、屋台の方に顔を見せると店番の少年が恋歌に商品であるベビーカステラを手渡していた。
「おい、恋歌。寄り道している場合じゃないだろ」
「良いじゃないのよ、活動資源(BOOで設定されている生理的機能を表したパラメーター。下限値を超えると行動不能になる)減らさない為だもん」
「相変わらず、ああ言えばこう言いだな・・・ったく、そんなもん食べながら歩いてたら気が散るだろ」
「ふんだ、そんな事言うんだったらあげないわよ頑固」
「誰が頑固だ、真面目にやってるだけだろ」
半目を向けた隼人に頬を膨らませた恋歌は、不機嫌そうな表情のまま歩き出し、自棄食い気味にベビーカステラを食べていた。
「おい、待てよ恋歌」
その後を追った彼は、カウンターで口に突っ込まれたカステラを食べ、悪戯が成功した子どもの様な表情を浮かべている恋歌にため息を一つ落とし、彼女から貰ったカステラを食べながら周囲を探り始めた。
通り過ぎる者達に目を向けた隼人は、中央広場で勧誘営業を行っているグローブスティンガーのメンバーに気付き、軽く手を挙げて挨拶しながら彼らの元に歩み寄った。
「よぉ、ケリュケイオンのリーダーさん」
「グループ名で呼ぶなよ。プレイヤー名で呼べ」
「はいはい、分かってますってハヤトさんよ」
「どうだよ調子は」
「入学シーズン真っ只中だから好調好調。ただまあ、最近は友達と動くって奴も多いからなぁ・・・」
「ここはあくまでも活動拠点って事か、俺達の頃じゃ考えられない事だな」
「そうさなぁ、ただまあそれだけプレイスタイルが変わってきてるって事なんだろうな」
立ち話をしている隼人とメンバーの横、周囲を見回していた恋歌は、背後から抱き付かれた。
人見知りの気がある彼女は殆ど無意識的に暴れ始め、拘束を振り解いて隼人の背後に逃げ込んだ。
「あーん、何で逃げるのぉ?」
「何で抱き付いてくるのよ!?」
「えー、良いじゃん別にぃ~。ご奉仕ご奉仕ぃ」
「私にはアンタ達に奉仕しなきゃいけない義務なんか無いでしょうが!!」
「良いでしょ~? ね、ハヤトくん」
勧誘メンバーに入っていた女子から話を振られ、背後を振り返った恋歌の泣き出しそうな表情に困惑した隼人は天を仰いで考えると、怯える彼女の背を押して女子に引き渡した。
「ぎゃあああああ! ハヤトの鬼! 悪魔ー!」
「フン、何とでも言えよ」
悲鳴を上げ、暴れる恋歌が連行される様を半目と溜め息で送った隼人は、含み笑いを浮かべている男子の方に振り返った。
「さて、話を変えるか。勧誘時、怪しい奴を見かけなかったか。活動を遠目から見ている様な奴とか」
「いたなぁ、二人一組で。俺らが声かけたら移動してったけどさ」
「二人一組・・・。それ以外に何か分かる事はあるか」
「女二人、クラスがアサシンとファイターだったって事ぐらいか。あと、そいつらはどっちも無所属だったぞ」
「どちらも無所属・・・分かった、ありがとう。その他、気になってる事はあるか?」
「気になっている事・・・特にゃねえな。それに、お前らPKだけでいっぱいいっぱいだろ? 雑事は他の連中にも頼めるしな」
「そうか、分かった。すまなかったな、つまらない話に付き合わせてしまって」
「良いって事よ。俺達の事を守ってくれてるんだ、これ位しないで何するってんだ」
そう言って隼人に笑いかけた男子は、彼の肩を二、三度軽く叩き、勧誘の流れに戻っていった。
それを片手を挙げて見送った隼人は、個人間通信起動を示す仕草を行った。そして、教会の鐘の塔で狙撃銃による監視任務についている利也を網膜に表示されたウィンドウで呼び出し、聞き込みで得た情報を流した。
「そう言う訳だリーヤ」
『二人組の女の子だね、了解。探してみるけど、こっちからもお願いがあるんだ』
「何だ?」
『そっちの方に怪しい雰囲気のパーティが移動してるんだ。多分、PK目的だと思うんだ』
「どうしたら良い」
『様子を見てPKの兆候を見せたら攻撃を開始して』
「了解」
そう言って恋歌の傍に寄った隼人は、むくれる彼女の背を引き、女子達に断りを入れてから連れて行く。
揉みくちゃにされた事を根に持って拗ねている彼女にため息をついた彼は、チャットで状況を知らせると、近場の軽食屋のテラス席に席を取った。
「やれやれ・・・よもやゲームの中でこんな事をするとは」
「わ、悪くはないわね」
「・・・今度、どこか行くか?」
「ホント?!」
「まあ、出かけられる様な休みがあればな」
そう言って広場に目を向けた隼人は、サーブされたコーヒーを受け取り、紅茶とケーキを受け取った恋歌が伝票を差し出してくるのに半目を向けながらそれを引っ手繰った。
「と言うかさっきカステラ食って活動資源十分だろ、お前。ケーキなんか食べやがって」
「うるさいわね。嗜みみたいな物よ」
「・・・ケーキぐらい俺んちに食べに来ればいいのによ」
「何か言った?」
「何でもねーよ」
不機嫌そうに口を尖らせた隼人に小首を傾げた恋歌は、大きな音を立てて飲んでいる彼を見て何かしたのでは、と泣き出しそうになっていた。
「ね、ねえ・・・私、何か悪い事でもした・・・?」
「あ?」
「ほ、ほら、ハヤト怒ってる、し・・・」
「怒ってねーよ」
「大きな音立てて飲んでるじゃん! 怒ってる!」
「怒ってねーって。・・・戦闘になるかも知れねえから、ちょっと気が立ってるだけだっての。お前が気にする様な事じゃない」
「そ、そうなんだ」
子ウサギの様に怯えている恋歌の頭を乱暴に撫でた隼人は、周囲を見張り、怪しい人物がいないか、気付かれてはいないかと考えながらコーヒーを啜っていた。
中身を半ばまで残してコーヒーカップを置いた彼は、自分達と合流しに来た武達に目をやり、視線を外した。
「ハヤト、来たわよ?」
「無闇に視線をやるな、怪しまれるぞ」
「あ、そっか。そうだよね」
「さて、リーヤの報告によればそろそろだが・・・」
「来た」
ぞろぞろと冒険前のパーティメンバーの様にやって来たターゲット達に少しだけ視線をやった隼人は、ケーキを食べている恋歌を見るふりをしながらコーヒーカップをスプーンで叩き、モールス信号で隣に座る武達に自分が移動する事を伝えた。
そして、恋歌の傍にコーヒーの代金を置き、彼は広場の方に移動を始めた。
ポケットに手を突っ込み、パーティの傍に近づいた隼人にパーティの内の一人が気付くと同時、戦闘の火蓋が切られた。
先ほど話していた少年が切りつけられ、大パニックになった広間でフォーメーション展開したパーティに隼人が突っ込む。
全力で走りながら彼はマジックバック代わりに使っているポケットからフラッシュグレネードを取り出し、警戒していた男スカウトの目前へ投げる。
「ッ!!」
炸裂した光に目を細めたスカウトは一時的なスタン状態から回復した視界に飛び込んできた隼人の拳によって殴り飛ばされ、ゴキリという不快音を首から発しつつバウンドし、噴水に飛び込んで即死した。
一連の攻撃で隼人の存在に気がついたファイターが片手構えのロングソードを振り上げて接近してくる。
だが、それよりも早く懐に潜り込んだ彼はファイターの鳩尾へ肘打ちを叩き込み、一瞬動きが止まった彼の腕を掴んで投げ飛ばした。
「クソ、先にこのモンクを始末するぞ!!」
そう叫んだリーダーらしいインファントリの少年が手にしたアサルトライフル、SCAR-Lを構えて隼人を射撃する。
高速のライフル弾を前に両手での防御を行った隼人は“射撃武器が使えない”自身を恨みつつ、数多の情報が表示された視界の中で隠れる場所を探した。
「ははは! この密度の弾幕! 易々と突破できると思ったか! ソロプレイヤー!!」
「―――って、思うじゃん?」
「何!?」
掛けられた声に驚愕し、SCAR-Lでの射撃を止めた少年が声の方に視線を向ける。
そこではM60E4軽機関銃で分厚い弾幕を張っていた味方のインファントリが紫色のエフェクトを纏わせた一突きで仕留められている光景だった。
少年は銃口を向け、口元を布で覆った浩太郎がニヤリと笑ったのを皮切りに発砲した。
然し、浩太郎の持つアサシンの機動力に照準が翻弄され、ライフル弾は当たらない。
ライフル弾命中の為、安定性重視で、移動するべき足を止めて狙い撃つ少年を逆に狙い、投擲用のダガーに黄色のエフェクトを載せてそれを投じた浩太郎は少年の腕に刺さったそれが彼の動きを止めているのを確認する。
刃に付加した麻痺効果で動きを止められた少年の頭上、軽く飛び越えた浩太郎はただ一人、隼人への射撃を続けているインファントリを確認して腰から消音機付きの拳銃を引き抜いた。
「この野郎ッ!!」
視線に気付いたインファントリが罵倒と共に浩太郎へ向けた『コルト・
M4A1』アサルトカービンと『Mk23』拳銃から放たれた交錯し、ライフル弾が浩太郎の頬を掠める。一方の拳銃弾は致命箇所に直撃させたが対飛び道具用防具に設定されているケブラー繊維製ボディアーマーに阻まれて有効打になりえない。
だが、それと同時にアーマーの耐久値が僅かに削れる。舌打ちした両者は連射を続け、滞空から着地した浩太郎は短剣を収めた手に収まる様に腰からあらかじめ先端に即死級の猛毒が付加されているダーツを取り出し、インファントリ目掛けて投擲する。
遠距離武器に対しての防御性に優れたアーマーがダーツの貫通を防いだ為に突き刺さりはしなかったが元々遠距離武器ではないダガーの直撃は耐久値を大きく削る。
弾倉を交換したMk23拳銃を連射して牽制した浩太郎は、敵味方、無関係者を表示するIFFで位置を確認しつつ、タイミングを計って次のダガーを投擲する。
「カエデッ!!」
なけなしの一本を投擲した彼は叫び、その場を飛び退く。そこ目がけて猪突する楓は低く姿勢を落とした体勢から、鍔を指で押し上げせり上がった柄を握ってインファントリを見据える。緑色のサークルで表示された待機状態のスキル有効範囲に相手が入った瞬間、彼女は腰に下げた刃を高速で放つ。
鞘をレールに銀の半円を描いて射出された斬撃が、それまで銃撃していたインファントリを重い強烈さを持って襲う。放たれる直前、咄嗟に盾にしたM4A1が元々少ない耐久値を一瞬で散らし、消失する。
インファントリは斬撃からの圧で弾き飛ばされ、地面を転がりながら腰から補助武装のMP7短機関銃を引き抜いて発砲する。
だが、獣の如き速度で接近する楓に照準は追い付けない。指切りで掠めさせるのがせいぜいで、相手の殺傷範囲に入ったと自覚した瞬間、音速の五連撃が彼の目の前を薙ぎ払う。
避けられたのか、と疑問した彼は一拍遅れたバックステップからの着地でその答えを得る。身に着けていたアーマーが破裂し、五連撃の残滓がアーマーを構成するケブラー繊維を爆裂させていた。
それは、武者固有の初級風属性アクティブスキル、“天斬”にスキル連射を可能とする“ラピッドスキル”を付加して打ち込んだ結果だった。
再使用時間の延長を代償に五連撃化させた攻撃はリーチ延長の追加効果を以って近接武器に弱いケブラー繊維製ボディアーマーを引き裂いていた。
だが高レベルとは言えど、初級スキルが掠めた位でやられる様な相手でも無い。腰からナイフを引き抜いていた彼は、腰から抜いた勢いでの薙ぎ払いから逆手の刺突に繋げて仕止めようとしていたが逆に楓に腕を取られ、そのまま彼女の背後に流された。
「ッ!」
追撃の蹴りでバランスを崩されたインファントリは地面に伏させられ、起き上がろうとしたが顔を上げた先にあった二つ並びの銃口に頭部を吹き飛ばされた。
銃口から硝煙を立ち上らせる水平二連ショットガンをその場で回した武は隣に着地した加奈に手にしたショットガンを投げ渡した。
それを受け取った彼女は小さく頷いて残像を残さぬ程の速度でその場を走り去った。それと代わる様に飛び込んだ恋歌を見送った彼は、周囲を見回し、援軍を警戒していた。
背後を振り返った瞬間に放たれた半猫女武者の一閃を、手にしたガンブレードで受け、何度も振られる太刀筋を捌き、一瞬の隙を見計らって射撃した。
だが、素早い身のこなしで回避され、それと同時の蹴りで銃口を逸らされた武は横一閃を屈んで回避すると膝を狙った肘打ちで怯ませた。そして回し蹴りを叩き込み、彼女を吹っ飛ばした。
一息つきながらガンブレードを一回転させた武は、二人掛かりで楓に挑んでいるファイターとインファントリに視線をやり、フッと意地の悪い笑みを浮かべていた。
(良いのかよ、近接職はそいつだけじゃねェぞ?)
刹那、ファイターの姿が消え、インファントリが空中で何度も嬲られる。
吹き飛んだファイターの姿は近場の倉に激突してエフェクトと共に消滅し、インファントリは腹蹴りからの踵落としによって撃墜され、消滅する。
一体何が起きたのか分からず、パニックを起こしていた筈の民衆までもが逃走の足を止めてファイターに加わった一撃の余波で吹っ飛んでいた楓の前、攻撃の型を構えたまま二人並ぶ少年少女の姿が彼等の目に飛び込む。
「さっすが瞬間火力最強ペア! 助けにきてくれると信じてたよぉ~」
「だからって抱き付く必要ないでしょうが!! 放しなさいよッ!!」
「えぇ~良いじゃん、これはほんの感謝の気持ちだよぅ~・・・」
うへへ、と笑いながら抱き締めてくる楓から逃れようと、暴れる恋歌を横目に武と合流した隼人は、何時の間にかパーティの一人を捕らえていた加奈と浩太郎に視線をやり、場所を変える様に指示した直後、逃走を計った捕縛者が二人の手を逃れて逃走する。
だが、200m程行った所で彼の足へ遠方の利也が放った狙撃が刺さり、そのまま倒れ込んだ。血だらけの左足はそのままに、這いつくばった彼の傍に歩み寄った加奈は組み伏せた上で消音器付きの拳銃を背中に突き付けた。
「動かないで。動いたら撃つ」
「な・・・こ、殺せ!! 貴様ら領地警備隊だろう?!」
冷たく殺気を含んだ加奈の視線に怯える少年の傍に音も無く歩み寄った浩太郎は腰から捕縛用ロープを取り出し、手をきつく縛ると立ち上がらせて連行し始めた。
「生憎だったな、俺達はそんな優しい組織じゃないぞ」
「ど・・・どう言う事だ?! 何者なんだお前等?!」
民衆からガードする様に立った隼人の言葉を受けて狼狽した少年は路地裏に連れ込まれ、六人ほどいる戦闘職を前にして血の気を引かせていた。
その中でニヤニヤと笑いながら腰のホルスターに挿していた『G18』9mm自動拳銃を引き抜いた武はうろたえる少年をコンクリートに座らせて尋問し始めた。
「さーて、と。洗いざらい吐いてもらおうかねぇ。お前等、何処のグループだ?」
「は、話す訳無いだろ?! こんな方法、非合法過ぎる! お前等、利用条約に違反するぞ!」
「あ? 何寝言抜かしてんだよ。そっちだって、非戦闘状態プレイヤーのキルって言う利用条約違反をやってんだ。そう言う事言えた口かよ」
「ひ・・・。た、助け・・・そ、そうだログアウト! あ、あれ?! ログアウトが・・・!」
「悪ぃな、こっちが使ってる拘束用ロープには、一定時間内のログアウトを阻害する効果がある。尋問用だからな」
本来なら攻略組の主要メンバークラスにのみ持つことを許されているアイテムを、名も知らぬ者達が有している事に恐怖を覚えた少年は、本当に身動きできない体へサプレッサー付きの拳銃が突きつけられている事実に頬を引き攣らせた。
当然だが、ゲーム中のダメージはそのまま痛覚としてプレイヤーに襲い掛かる。BOOの戦闘システムを複雑化させている一要因であり、銃痕などの目に見えて分かるほどの大きなダメージは痛覚が毒の様にプレイヤーを蝕む。
「さーて、と。もう一度聞くぞ? お前を含めたさっきの連中、何処のグループだ?」
「し、知らない! 俺は何も―――」
武からの質問に首を振った少年は、撃発した拳銃から放たれた拳銃弾が自らの右太股を穿ったのを走った激痛で知り、再現された流血が目の前に飛び散る。
本能的な叫びの後、血だらけの太股を見下ろした少年は、左太股に突きつけられた銃口に彼らが本気であると悟るとこの場からの脱出を考えていた。
「じゃあ何でお前はPKを行ったんだ?」
「た、単なるうさ晴らしで参加しただけで・・・一緒にやってたあいつ等とは初対面だ!」
「ふーん、なるほどなぁ・・・・。で、どうするよ」
頷きながら拳銃を上げた武は隣に立つ隼人に視線を流し、少年の処分を視線で窺うと殺害のハンドサインを出した隼人へ頷きを返して拳銃を少年の額に向け、トリガーを引いた。
減速された拳銃弾が頭蓋を穿ち、花咲いた血液が壁に広がる。ぐったりとした死体を見た武は役目を終えた拳銃をホルスターに収め、隼人に判断を請う。
「今吐かせた奴。お前はどう見るよ、リーダー」
「悔しいが、アイツはシロ(無罪)だな。クソ、俺達はハズレくじを引かされたらしい」
アイテム保管用のポーチにロープを収めた武の問いに、悔しげな表情を見せた隼人は路地の壁に寄りかかった。無関係者をパーティに絡めると言う見破る方からすれば面倒な手段に出た相手の策略を鑑みながら今後の動きについて思案した。
だが、それでも無関係者と関係者を判別できる様な上手い手段は思いつかない。当然だ、プライバシー意識の高いこの時代において、そこら辺を歩いているプレイヤーの情報は閲覧できる範囲がかなり狭く設定されている。プレイヤー同士の対戦も、相手の事を何も知らずに決着が着く事もざらにあるほどだ。
そんな中で無関係な奴と関係者を選り分けて殺せとなれば、彼らのアバターに目印でもない限り困難だ。万が一にも間違えて殺害した事を恨んだ無関係者によってこちらの素性がバレでもすれば、こちらの行動は全て無に返る。
自分達のグループ、ケリュケイオンはとある事情により、隠密行動が基本となっていた。自分達の事で騒がれるのは彼らにとって第一に避けたい事であるのだ。
それは末端のプレイヤーの勝手な行動を避けると言う目先の理由では無く、彼らがケリュケイオンと言うグループを作った事その物に起因しているのだが、その事については追々語られる事になる。
「取り敢えず、この場は解散だ。自由行動は認めるが、あくまでも穏便にな」
活動資源と言う時間概念が存在するこのゲームにおいて、自分の思案で無駄な時間を浪費する事を避ける為、隼人はその時間を消耗の補填に回そうと各人に行動を促し、自身も薄暗い路地を出て消耗アイテムの補充に向かった。