B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》   作:Sence023

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Blast2-3

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 その十数分前、単身ログインしていた隼人はスラムエリアであての無い調査を続け、伯爵なる人物であると思われるプレイヤーの割り出しに尽力していた。

 

 無論、何もなかったと言えば嘘になるが、それでも何もしないよりもずっと多くの情報を得ることが出来ていた。

 

「で、えっと・・・このデュークってプレイヤーの情報で最後か。グループには・・・所属してない。フリーランサーか」

 

 手持ち無沙汰になった隼人は取り敢えず酒場へ移動することにした。元々パーティ編集用の施設である酒場ならフリーランスのプレイヤー情報が集まりやすいのだ。

 

 その道すがら。隼人はずっと背後に感じていた気配に振り返った。そこでは自分を尾行していたらしい二人組が動揺していた。バレバレの尾行、日常的に行っている自分達からしてみれば児戯に等しいそれは見破るに難くなかった。

 

「お前等、俺に何か用か」

 

 彼らに凄んで見せた隼人はハンターナイトとスカウトで構成された尾行ペアの内、盾と片手剣を装備したハンターナイト一人だけが残って戦闘状態に移行したのを見ると拳を構えた。そして、スキルを発動、一息に距離を詰めた。

 

 移動系アクティブスキル『ラピッドステップ』。攻撃性は無い代わりに通常よりも遥かに早く距離を詰められる奇襲用スキルだ。死角外からの攻撃も可能とする為、ガードの固い相手にはかなり重宝する。

 

 ステップと言うよりも超高速の低空ジャンプに近いそれで接近した隼人は『鎧通し』をハンターナイトに叩き込む。

 

 直前で発動した盾系中級アクティブスキル『タワーブロッキング』を併発したシールドバッシュが強化された拳を弾き返す。

 

 ノックバックで大きく後退した隼人は再使用待機状態にあるラピッドステップを確認。回復に5秒の間を必要とするそれの解放を待ちながら相手の様子を窺った。

 

(チッ・・・やっぱり硬ぇな)

 

 ファイターの上級職ハンターナイトは基本的に防御力に重点を置いたステータス構成になっている。なので、生半可な攻撃ではHPを削るどころか個別に耐久値が設定されているシールドを破壊し、防御を突破する事すら叶わない。

 

 特に隼人が所属するモンク、その上級職であるインファイターは手数を重視する特性上ハンターナイトとは相性が悪く鉄壁の防御を中々突破できない。

 

 だが、多くはないがそれらへの対処法は存在する。その一つがこのラピッドステップによる俊敏性を行かした奇襲攻撃だ。

 

「ショートカット、『ラピッドステップ』!!」

 

 叫ぶと同時、先とは違った多角的な軌道で接近した隼人は対応しきれない彼の背に一撃叩き込んだ。重量級のアーマーが隼人の拳を重く受け止め、逆に弾かれた彼はその勢いでバックステップ。それと同時に薙がれた刃を回避する。

 

 回避から飛びかかった彼はカウンターで叩き込まれた刃によって吹き飛び、HPも二割ほどを吹き飛ばしていた。そして、エフェクトの血を拭いながら構えを直した隼人は、シールドを構えたハンターナイトへ接近し、シールドへミドルキックを叩き込んだ。

 

 重厚な音と共に止まった足に驚愕した隼人は突きの動きに構えられた切っ先を捉えて仰向けに体を倒した。

 

 構えられた剣に宿るスキルはエフェクトの色からして初級剣系アクティブスキル『イヴルストライク』で、直撃すればマスタリースキルで高められた通常攻撃の最大六倍ものダメージを受けることになる。

 

 元々回避力重視で防御力自体が高くないクラスであるモンクが当たれば無事ではすまないスキルだ。当然の様に回避した隼人は上げた上体に迫る盾の直撃を受けて大きく吹き飛ばされた。

 

「クソ、本命は盾か・・・ッ」

 

 伏させられた地面から上体を起こした隼人は、鈍重な動きで迫るハンターナイトの縦斬りを回りこむ様な横ロールで回避、そのまま立ち上がってナイトの背中にタックルを叩き込む。

 

 背後からの衝撃によって前に重心が偏っていたナイトは転倒し、無防備を晒す。しまった、と彼が気付いた直後、マウントポジションを取った隼人が兜を被った頭を滅多打ちにしていた。

 

 視界が揺らされ、身動きが取れないナイトのHPはどんどん減っていく。ナイトのHPが五割を割る直前、彼は隼人を振り落とし、襲いかかる拳を盾で防ぐと剣を振る。

 

 闇雲なそれに追い散らされた隼人は回復したラピッドステップで瞬時に距離を詰める。だが、先んじて盾を構えていたナイトはシールドに体を隠した。

 

 超高速で迫っていた隼人の動きがナイトの姿を見失った事で一瞬止まり、直後シールドバッシュで隼人の総身が弾き飛ばされる。盾での殴打はステータス強化の対象外だったが接近時の速度も相乗されて大きなダメージになった。

 

「クソがッ!!」

 

 毒突き、脚部のパイルで勢いを増して跳躍した隼人はクロスカウンターで放たれた突きを左脇に通し、反転。そのまま右脇と右腕で挟む様にしてナイトの右腕を締め上げ、地面に叩きつけた。攻撃を封じた上で至近距離でのスキル発動。

 

 視線選択でセレクト、発動した『鎧通し』が握った右拳に派手なエフェクトを加える。脆い関節を狙い、右腕だけを叩き潰した隼人は絶叫と共に右腕が分離したナイトの拘束を解除し、シールドを取り落とした左腕を取って投げ飛ばす。

 

 システム的には可能な部位破壊だがあまりに悲惨な行為であるのでほとんど行われない。実際よりも少しだけ弱い痛みに絶叫を発し続けるナイトに邪険な表情を浮かべた隼人は胸部へのストンプでトドメを刺し、消滅させた。

 

 痛覚減衰の効果はあっても感じる痛みは現実と殆ど変わらないBOOだがログアウトし、現実に戻れば嘘のように感じなくなる。馴れないプレイヤーはそう言った現象に適応できずに軽度の感覚障害を起こす。

 

 先ほどログアウトしたナイトがそう言った事を起こさないのを祈ってハーブ味の回復剤を取り出した。

 

 錠剤型のそれを一息に飲み込んだ隼人は常備しているミネラルウォーターを喉に通す。BOOの回復薬には様々な形態のものが存在し、飲料型回復薬であるポーションも存在するのだが隼人はポーションと言うものが好きではなかった。

 

 理由は口腔洗浄液や歯磨き粉の様な味がポーションの味だからだ。五感もゲームシステムに組み込まれているBOOにおいて味と言うのはかなり重要な所だ。加えて回復量も他の回復薬と変わらないので隼人は使わないのである(余談だがBOOでは同じ効果でも形が違うと別のアイテムと判断されるので探索などを頻繁に行っていると同じ効果を持つアイテムが何個もストックされる事がある)。

 

「あ、そう言えばもう一人・・・どこ言ったんだアイツ」

 

 同行していたスカウトを思い出した隼人は戦闘にかかった時間を考えて追うのを止めると戦闘ログを保存してその場を立ち去ろうとした。と、その時、背後からのロックオン反応が隼人の視界に浮かび、背後に視界をやった彼はオペラ座の怪人と同デザインの仮面を被った黒ずくめの男に目を見開いた。

 

 ご丁寧な正装にシルクハットを被ったその姿は脱帽しての丁寧な礼を隼人に送り、くつくつと肩を震わせた。

 

「やあ、ご機嫌よう。コードネーム『ブラックウィドウ(セアカコケグモ)』、ケリュケイオンのリーダー君、仲間との集団行動が常の君が一人でいるとは珍しいじゃないか」

 

「随分とご存知だな、どこの誰だか知らないが。お前の口ぶりからして、俺を殺しにきたのか。なるほどな」

 

「ハハハ、勘がいいな。そうだとも! 君は、君たちは! 私の、いや我々の目的には邪魔なのだよケリュケイオン! 崇高なる目的を抱く我々にとってはなぁ!」

 

 芝居がかった台詞で煽ってくる男の言葉から大体を察した隼人は涼しげな風を装って男の方に向き直った。

 

「そうか・・・お前、PKグループの召集スレッドを立てた『伯爵』だな?」

 

「ほぅ、私の顔の一つを知っているのか」

 

「有名だからな、知ってるさそれくらい」

 

「流石情報組。いや、処刑組とでも言うべきかな」

 

「呼び方はお前の好きに任せる。どちらにせよ、ここで会ったんだ。タダで帰れると思うなよ」

 

 言いながら拳を構えた隼人はスキルを用いず、距離を詰めにかかった。と言うのも会話中、相手のクラスを観察する間が無かったので相手のクラスが分からなかった。

 

 マントで体も武器も隠され、外見から一体どんな事をしてくるのか検討がつかなければ対策の取りようも無いので通常技で初撃を入れざるを得なかった。

 

「ほぅ、これが噂に聞く行動速度か。確かに素晴らしい速度だ」

 

(な、コイツ近接職よりも初動が早い!? まさか?!)

 

「だが、この愛銃達の前では無意味だ」

 

 ククク、と笑った男が大仰に翻したマントの下、着込まれた特殊繊維製対物理アーマーに備えられたホルスターから『ミニUZI』小型短機関銃を引き抜かれ、仮面の目が隼人を捉える。

 

「さあ、踊れ!! 銃声の旋律と共に!!」

 

 相手は隼人の苦手とする遠距離職の銃撃手(ガンナー)系。それもかなり苦手な中距離から手数で押してくるタイプのプレイヤーだ。男の手に収まった二丁が火を吹く前に射線を回避した隼人は集弾率の悪い短銃身(ショートバレル)とは思えないほどの集弾率の射撃に戦慄した。

 

 ガンナー系には射撃時のブレ補正スキルが存在するとは聞いていた隼人だったが先の射撃はかなりの集弾率だった。だが、高すぎる集弾率は機関銃の利点を一つ潰してしまう。

 

 弾がバラけにくくなる為、射撃による制圧効果が減少してしまうのだ。但し、その制圧効果に意味があるのは多人数戦の時のみである。

 

(クソッ、接近できない!!)

 

 プレイヤースキルの関係上銃器が“使えない”隼人は遠距離からの接近手段がラピッドステップしか持っていない。故に弾幕を張られると途端接近できなくなってしまう。

 

「ハハハ、隠れていないで出てきたらどうだ!」

 

「じゃあ撃つのを止めろよッ!! その間にブチのめしてやるからよ!!」

 

「出来ない相談だ、私は君を殺すのが目的なのだからね」

 

 男が発する挑発的な声に苛立ちを隠しきれない隼人は手元にあった木箱を拾い上げ、男めがけて投げ飛ばす。無残にも撃ち抜かれた木箱は木片に変わるが、無駄弾を撃たせる事には成功していた。その隙に接近した隼人は飛び蹴りで耐久力の無いミニUZIの片方を粉砕する。

 

「ショートカット、『ストライクキック』!」

 

 返す足にスキル強化を宿らせ、脇腹に強烈な踵蹴りを打ち込んだ隼人は、吹っ飛んでいく男にダメージの兆候が無いことを確認するとそのまま後を追った。

 

「ショートカット、『鎧通し』ッ!!」

 

 牽制射撃を回避し、着地点予測からの正拳突きで追撃した隼人は着地点に達する直前、ニヤリと笑う男の表情を見た。何かしてくる。そう直感がつげた直後、脇を通す様に構えられたM870の銃口が無情にも隼人を捉えていた。

 

「クソッ!!」

 

 放たれた散弾が至近で拡散し、スキルを中断させた隼人が咄嗟に防御するが残ったUZIが隼人の左足を狙い撃ちし、千切れた激痛が隼人を襲う。絶叫を殺し、口を噤んだ隼人は優越感に浸る男を見上げ、可笑しそうに肩を震わせる彼が律儀にショットガンをコッキングして隼人に銃口を向ける。

 

「どうだ、片足をもがれた気分は! 痛いか、悔しいか? ハハハ! コソコソ嗅ぎ回る鼠の分際で俺に逆らおうなんて数年早いんだよ!」

 

 化けの皮が剥がれ始めた男を他所に全員のログインを確認した隼人は救難の空メールを一斉送信。それまでの時間稼ぎを行おうと片手で這う。

 

「おいおい、逃げるってのか。そのなりでよ!」

 

 純粋なアサシンの浩太朗でも到着までには30秒以上はかかる。利也が良い狙撃位置から射撃できれば話は別だがそれにも時間がかかる。だから逃げるふりだけでもするのだ。

 

「ハ、往生際が悪いねぇ! 今楽にしてやるから、大人しくしてろよ!」

 

 ジャキ、とショットガンが凶暴な音を立てて照準される。死の宣告に等しいそれを前にした隼人だったが、接近する反応にむしろ笑った。予想よりも、早い到着だった、と。

 

「ショートカット、『ストライクキック』!!」

 

 重量級の飛び蹴り、当たればタダではすまない威力のそれを鳩尾に受けた男は突如として現れた援軍に驚愕し、後追いできた男女のアサシンが手にしたサプレッサー付き拳銃を照準して射撃してきた事に形成逆転を悟った。

 

「く、ここは撤退させてもらおう。さらばだ」

 

 言いながらフラッシュバンのピンを抜いた男はそれを地面の落とすとそのまま逃走に移り、頭に血が上っているのかそれに気付かずその後を追おうとした恋歌は目の前で炸裂した閃光で目と耳をやられた。

 

「恋歌! 恋歌!!」

 

 思わず実名で叫んでしまった隼人は片足を失った状態で、気絶している恋歌の元に寄るとだらりと四肢を垂らした彼女をあぐらの上に置いて容体を確認、何事もないと知るや安心してその場で大の字になった。

 

「間に合って良かった、ハヤト。大丈夫かい?」

 

「片足をやられた。身動きが取れねぇ。回復薬、あるか?」

 

「そのHPだと治癒魔法の方が良いんじゃないかな。ナツキもそろそろ着くし」

 

「分かった。しかし、どうやってきたんだ?」

 

「僕等がレンレンを引っ張って、着く直前にもう一度加速。その勢いを使って彼女は飛び蹴りさ」

 

 そう言ってはにかんだ浩太朗から目を逸らし、恋歌に一度視線を落とした隼人は男が逃げて言った先に目を向けるとぽつりと呟いた。

 

「『伯爵』だ」

 

「え?」

 

「今いた奴が、『伯爵』だ。あいつがこの事件の黒幕だ」

 

「・・・どうするつもりだい」

 

「捕まえるぞ、アイツを。奴は、サイバー法に違反している。身元を割り出して流すぞ」

 

 殺気に満ちた隼人に恐怖を覚えた浩太朗は周囲の調査を行っている加奈に一度視線をやると、彼の隣にしゃがみ込んだ。

 

「逮捕って・・・またお姉さんからの依頼かい? そんな大掛かりな事でもないのに?」

 

「いや、そうでもないんだ。知り合いに聞けば、これと似たような事件が別の高校サーバーでも起きてる。偶然とは思うが、それにしてはあまりにも不自然だ」

 

「ハヤト・・・君はこれが、この事件が、このサーバーだけに終始する問題ではないと、そう思っているのかい?」

 

「ああ、俺はそう思っている。そして恐らく、現実でも同じ問題は起きるだろう」

 

「・・・宣戦布告、と言う訳だね」

 

 大体を察した浩太朗に頷いた隼人はようやく追いついてきた武達に手を上げ、怪我の度合いに驚いている彼らに苦笑しながら浩太朗に恋歌を預けた。

 

「オイオイ、どうしたんだよその怪我! 片足ぶっ飛んでんじゃねえか!」

 

「まあな、探してた人物に撃たれちまって」

 

「探して・・・ってまさか『伯爵』?! あいつと接触して無事だったのかお前!」

 

「・・・どう言う意味だよ」

 

「どうもこうもねえよ、さっき一人凄腕がキルされたのが『伯爵』を名乗る人物からアップされた公開ログで分かっだんだ! そんな奴と戦って無事なら普通驚くっつの!」

 

 驚愕を浮かべる武が治癒魔法をかける夏輝にSP回復薬を渡しながらそう言うと、公開された戦闘ログを満身創痍の隼人に見せた。

 

 そして、その内容を見た隼人もその異常な強さを先ほどの人物であると一致させ、数分で終了した戦闘ログを消させた。

 

「・・・戦闘ログから察するに相手は中距離戦を最も得意とするみたいだな。お前とは相性が悪かったろ」

 

「ああ、ほぼ防戦しか出来なかった。常にサブで弾幕を張って戦闘していた。そして迂闊に接近すればショットガンでズドン、だ」

 

「野郎は完全な近接職殺しか、タイマンだと厄介だな・・・。だけどよ、遠距離ならどうだ? 倒せると思わねえか?」

 

「奴一人ならな。だが、今日のこの件は単なる挨拶だろ。リーダーの俺が襲撃され、最大HPの7割を奪われたとなれば危機感を覚えた俺達はグループで潰しにかかる。そこまで織り込んで動けるならば次に接敵した際、奴はパーティで攻めてくるだろう」

 

「スナイパーが対複数戦苦手なのはもはやセオリーだからな・・・それくらいしてくるか。まあさらに厄介なのはこっちはその対複数戦に有効な範囲攻撃を一切持っていないって事だ」

 

 悩む武を見ながら治癒魔法で再生される足にも視線をやった隼人はグループリーダーの特権として付与されている所属メンバーの閲覧可能な所有武装を見ると利也の物に記されたM107『バレット』対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル)のスペックを確認した。

 

 射出する弾体が重い故に有効射程距離が長く、威力が高いバレットは、その高威力さと射出弾の殺傷範囲の広さから犯人確保も有り得るケリュケイオンの活動では出番が少なく購入して放置されている状態だった。

 

 だが、その威力と貫通力は対人用狙撃銃の比では無く、対人狙撃銃なら大幅な威力減衰が発生する1km先からでもハンターナイトのシールドを貫通させる事も可能だ。

 

「・・・リーヤ、バレットは使えるか」

 

「使えるけど、あれはまだ未調整だよ? カスタマイズも行ってないし」

 

「そうか、わかった。じゃあ、もしかしたら必要になるかもしれないから準備しておいてくれるか」

 

「了解だよ、リーダー」

 

「久しぶりの超遠距離狙撃だ、気を抜くなよ」

 

 治療を終えた隼人の言葉に苦笑した利也は下げていたMk17ライフルで周囲を見回すと不意に動きを止めた。そして、ハンドサインで遮蔽物への移動を指示すると自身も物陰に隠れた。

 

 ステルス用に使っている個人間ボイスチャットに切り替えた隼人は同様の処置を取った全員と会話を再開し、銃器を持つ面々が銃口に消音器を装着するのも見た。

 

『どうした、リーヤ』

 

『準戦闘態勢の集団が四名、前後二名ずつで接近中。どうする?』

 

『四名か・・・。コウ、接近中の連中のクラスは分かるか?』

 

『全員インファントリでメインに突撃銃、バックアップに拳銃。ランチャー装備はなし』

 

『四名ならどうとでもできるが奴等にバックアップがいたら面倒だな、よし連中の目を掻い潜って逃げるぞ』

 

 ボイスチャットを開いたまま、それぞれ別れた隼人達はステルスでのスラムエリア脱出を実行、見つからないように暗い所を縫って動く。五人、三人で別れた隼人達はそれぞれ別ルートで合流を目指していく。

 

 薄暗い物陰に隠れた隼人達に先ほど探知した四人とは別の、準戦闘状態に移行したプレイヤーが接近する。拳を構えた隼人を押さえた武が体を横に倒して拳銃を構え、消音された銃声と共に拳銃弾を射出させる。

 

 正確な狙いでヘッドショットが決まり、巡回していたプレイヤーが即死する。無論チャットログで彼の死亡が知らされるがその前にこの場を離れてしまえば良い。

 

 急ぎ移動した隼人達は後方を警戒しつつ、前方に見えるスラム街の出口である朝顔のアーチを目指す。だが、アーチの前に二人のインファントリが陣取り、進路妨害をしていた。

 

『奴等が邪魔だ、どうする?』

 

『ナインバンカー(九連発閃光手榴弾)からの強行突入(ダイナミックエントリー)で行こう。俺と楓で突入、武、お前は援護だ。アキンボ(二丁拳銃)出来るか?』

 

『無理だ、一丁でやる。カウントと投擲は俺がやる。三秒だ、準備しろ。三、二、一』

 

 カウントと同時、ピンを抜いた手榴弾を投擲した武は地面を転がったそれの音に驚いたプレイヤー達の喧騒とその後に聞こえた九連発の爆音と閃光が喧騒をかき消し、その隙に拳銃を構えた。

 

 同時、飛び出した隼人と楓は拳銃の射撃でHPを磨り減らされたインファントリを一撃で倒し、アーチを確保した。それと同時、けたましい銃声と共にこちらへ走ってきた利也達が高レートの射撃から逃げていた。

 

 何事だと思った隼人は爆音と共に現出したインファントリの大男が持つ『M134』大型ガトリング砲に目を見開いた。7.62mmライフル弾を毎分2000発以上の高レートで射出する狂気の兵器。

 

 本来なら車両やヘリコプターに搭載する代物だが、携行使用モデルとして特別に用意されたオリジナルモデルを彼は持っている。

 

 牽制射撃を行う利也の後を追う様に放たれたライフル弾が土剥き出しの道路を抉り、弾幕から逃れた利也を土蔵の壁に引き込んだ隼人は消音器を外した拳銃で応戦している武達の視線の先を追い、拳銃弾を弾く男の姿を見た。

 

「クソ、硬ェ! 拳銃じゃダメだ、ダメージソースにならん! グレネードを使う!」

 

 言いながらピンを引き抜いた武は投げずに転がして炸裂させるが、爆発の規模に対して与えたダメージは薄かった。爆炎を乗り越えて多身砲をぶっ放す大男に舌打ちした武は、自身の隣で拳銃を撃っている浩太朗にハンドサインを送って姿を消させると隼人にも近接攻撃のサインを送った。

 

 そして、マジックパックからツイスト式起爆のフラッシュパラライズグレネードを引き抜いて投擲、炸裂と同時に撒き散らされたスパークを浴びた大男は体を痙攣させる。その隙に接近した隼人はアッパーカットで吹き飛ばす。

 

 顎を穿てばスタン状態になるがそれは数秒しか保たない。だが、彼らに取ってはそれで充分だった。

 

「コウ! やれッ!!」

 

 叫んだ直後、大ぶりのコンバットナイフが凶暴な牙となって大男の胸に突き刺さり、ごぼりと血を吐かせて殺害した。アサシンの特技『暗殺』、再使用時間が長い代わりに隙が少なく、どこにでも当たれば一撃と言う物だ。

 

「グッジョブ、良いタイミングだった」

 

「まさか、ハヤトの援護が無ければ上手く行かなかったよ」

 

 ハイタッチしあった二人を他所に大男のスペックデータを見ていた武は小さく舌打ちして隼人の側に走り寄った。

 

「ハヤト、これを見ろ」

 

「・・・さっきの奴の装備データか、どうした」

 

「あいつの防具、ケブラー・EOD(対爆スーツ)複合型のハイブリッドジャケットだ。こいつはバージョンアップで追加された新レシピだが、防弾ジャケットのストレージ(携行量)を大幅に食っちまう特性があって殆ど使われてない代物だ。だが、奴の様な重火力武装一択の場合、関係は無いだろうな」

 

「・・・実質近接攻撃でしか有効打を与えられない防具か。確かに、距離を詰めにくい連射重火力型の武装と組み合わされると厄介だな」

 

「対策を練る必要がありそうだな、リーダー」

 

 ニヤニヤと笑いながら言う武に頷いた隼人は加奈に守られていた恋歌が、ふらつきながらも歩み寄ってくるのに気づき、自分の目の前で倒れそうになった彼女を抱き止めた。

 

「お、おい大丈夫かよ」

 

 慌てた武に苦笑を返した隼人は彼女を抱えたまま立ち上がり、アーチを潜って撤収した。




と言う訳でBOO第二話お届けいたしました。
一応密度濃く設定は練っているのですが生かし切れてない部分も多々あるかも・・・
一話や二話に限らず今後読んでて分からない場面や説明が無くて理解できない用語があったらぜひ聞いてください。
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