B.O.O.《ブラストオフ・オンライン》 作:Sence023
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昼過ぎ、波乱を生みながら昼食を取った二人は隼人の部屋のベットで並んで寝転がって一緒の本を読んでいた。意外とオタク趣味の恋歌は隼人が読んでいるマンガのコマを逐一指しながら嬉々として喋っていた。
マンガを読むのに飽きた隼人は自室のテレビで録画していたロボットアニメを見始めた。意外とロボットアニメ好きの隼人は並んで見ている恋歌が目を輝かせて見ているのを見下ろしながらアニメに集中した。
録画した回が運の良い事に新しい主人公機の登場回で、隼人や恋歌の食いつきも上々のものであった。新たに登場した機体が次々に敵を倒して行き、敵軍を圧倒するのに目を輝かせる恋歌はカットインとして
挿入された背面の翼を大きく広げる演出に興奮した。
「見て見て隼人っ超カッコいい!!」
「そうだな、カッコいいな」
「どうしよう、フィギュア買おっかなぁ・・・えへへ」
フィギュア販売のCMを見て頬を綻ばせる恋歌を見下ろしながらすっかり武の影響が出ている彼女を半目で見た隼人は嬉しそうに笑っている彼女を見た安心感からふっと頬を綻ばせていた。
そんな彼を見上げた恋歌は不思議そうに見つめ、そっぽを向いた隼人が恥ずかしそうに頬を染めたのを見て笑っていた。笑われてムッとしていた彼は不意に抱き付いて来た彼女に表情を崩した。
やけに優しい微笑み。ゆっくりとした動きで顔を寄せた彼女は体を引いている彼の耳元に唇を寄せ、甘く囁いた。
「―――良いよ」
「なっ、何がだ」
「さっきの続き、しても良いよ?」
「さっきって・・・・」
「股開かせたじゃないのよバカッ覚えてないの!?」
「それは覚えてたけど女が股って言うんじゃねえッ!! 大体ありゃ事故だ、俺は意図してやらせた訳じゃねぇ」
「せっ、責任問題があるでしょ?! あんな辱めを与えておいて言い逃れる気?!」
「お前が足絡めてただけだろうが! 大体、今の俺にそんな気はねえよッ!」
「何でよこのバカッ」
むーっと膨れっ面になる恋歌が睨み付けて来るのにも構わず顔を背け続ける隼人は見上げる彼女の目尻にじんわりと涙が浮かんでくるのに慌てた。
「な、何で泣くんだよっ」
「そんな気無いの?」
「ねえよ」
「本当に?」
「本当だ」
「ここで私が脱いでも?」
「あぁっ?! 馬鹿野郎、ここで脱ぐな! 止めろっ!」
慌てて恋歌の胸元を押さえる隼人は嫌がる彼女を抑え付ける為に押し倒して力を出しにくくさせるとそのままマウントポジションで押さえていた。
と、その時背後の扉が開き、好物のロリポップを咥えて入ってきた秋穂がその光景を目撃し、ぎこちない動きで手に持っていた書類を机の上に置くと素早く去って行った。
「おい、恋歌。お前のせいで俺の変態度が上昇してるぞどうしてくれる」
「じゃ、じゃあ責任取って私が隼人の貞操を───」
「そう言う事じゃないっつの! 大体お前が食ったら責任取るの俺なんだって!!」
「食うって隼人・・・えっち」
「だぁ────ッ! お前誤解を解きに行け! 俺が行ったら何て言われるか分からねぇからさ・・・」
弱々しい隼人の表情に哀愁を感じた恋歌は彼の話もそこそこに彼の表情に萌えて胸を打たれていた。そんな表情に呆れていた隼人は恋歌から離れ、彼女の隣で膝立ちになって
額を押さえていた。
とその時、扉が開き、母親と秋穂が青ざめた表情で隼人を見た。
「隼人アンタ自分の過ちに気付いたのね!」
「過ちって・・・何の事だよ」
「アンタに眠る野獣の本能が爆発して恋歌ちゃんを手篭めに・・・」
「だからしてねえって言ってんだろうが!!」
「え・・・アンタ達、事後じゃないの?」
事後じゃねえと母親にキレた隼人は随伴していた秋穂がサムズアップしてくるのに苛立ってドアを締めると施錠して一息ついた。思春期か、と内心で突っ込んだ彼は気分を変えようと
ディスプレイモードにしたデバイスでメールを確認した。
ダイブを昼頃といったが具体的に何時にしようか悩む彼はベットの上で落ち着きなく体を動かしている恋歌がチラチラ見てくるのに耐え切れず彼女に布団を被せて作業を続けた。
そうすると今度はごそごそと物音を立て始め、半目の隼人がそちらを向くと布団の隙間から彼を見る恋歌の姿があり、興味深そうに見てくる彼女の視界に分厚いゲームの攻略本を置いて
視界を塞ぐとメールを開いた。
メールの送り主は情報屋の一面を持つハッカーだ。頼んでいた仕事をこなして情報を集めてくれていたらしい彼は隼人宛のメールにデータファイルを添付していた。データの中身は伯爵と名乗った
キャラクターデータとパーティ情報、そして過去に彼の主導で繰り広げられた集団PK戦闘のデータがあった。
(堅実な包囲射撃型戦術を中心に、護衛の近接職が数名。射撃型の中に一人スカウトがいるとなると、アサシンは発見される可能性がある・・・と。無理矢理突破しようにもこの数の遠距離職じゃあ
攻撃を届かせる前にHPが尽きてしまう。じゃあ、どうすれば・・・)
思い詰める隼人の隣、ベットの上でソワソワと正座している恋歌はデバイスを弄る彼が一度見てきたのに表情を変えると構ってほしいと言わんばかりにアピールした。
「何か用か恋歌」
「えっ・・・べ、別に何でも無いわよ?!」
「そうか、分かった」
平然を保ちつつ、そう言った隼人は頭を抱えてゴロゴロと転がる恋歌に胸を打たれ、高鳴る胸を押さえつつメールを確認していった。相も変わらず何もないメールボックスに確認の手を止めて
デバイスの電源を落とした。
「おい、落ち着け恋歌。埃が立つだろ」
「あぅうううううう」
「言いたい事があるんならはっきり言え馬鹿野郎」
「え・・・と、一緒に寝よ?」
「・・・十五分だけな」
「短い! 短いわよ馬鹿ァ!! せめて1時間にしなさいよ恋愛チキン野郎!!」
「やかましい、ここまで来てこれ以上のリスク負いたくねーんだよッ!!」
そう怒鳴った隼人だったが段々と語尾が萎んでいき、最終的には蚊の鳴く様な声になって聞こえなくなった。不満タラタラの恋歌は真っ赤になって俯く彼を睨み付け、
目を逸らし続ける彼の頭に軽い一発を入れた。
「何だよ・・・」
「何でも良いから、一緒に寝るわよ馬鹿」
「・・・武たちに連絡入れてからだ。だからもうちょっとだけ、待ってろ」
赤くなりながらそう言った隼人に恥ずかしくなってきた恋歌は掛け布団で体を包むと顔から上を出してディスプレイモードで無線キーボードを叩く彼を見ていた。
メールを打っている彼の表情を横目に嬉しそうに口元を緩ませた恋歌は送信し終わった隼人がベットに乗ってきたのに驚き、仏頂面でも頬が赤い彼の顔が息遣いすら
聞こえるほどの距離にあるのに頭を真っ白にした。
「おい、恋歌。大丈夫かよ」
「へぇッ!? だだだ、大丈夫よ!」
「で、添い寝で良いんだっけか?」
「う、うん。あ、後ね。腕枕してくれたら、嬉しいなって・・・」
「・・・ほら、腕枕してやるからとっとと寝ろ」
「えへへ~ありがと、隼人」
言われて恥ずかしそうに顔を背けた隼人に満面の笑みを向けた恋歌は彼の左腕に頭を乗せると頬に感じる暖かな人肌に安堵感を懐いた。自然と緩む頬、そして眠気が襲い掛かり、
可愛げのある寝息を立てながら眠った。
寝入る速度だけは速い恋歌に苦笑した隼人は彼女を包む様に抱き締め、自身も目を閉じて眠りに入ろうとして鼻腔をくすぐる恋歌の髪の匂いに存在を意識をしてしまい、寝入ろうにも寝れなかった。
子どもの様なあどけなさがある恋歌の顔を見て昔の事を思い出していた隼人は根の性格が変わっていない彼女の甘え癖に内心嬉しく思っていた。無論恥ずかしくてそんな事を言えないが。
(つーか、何でこんなにも可愛いんだよコイツは・・・胸もあるし)
「むにゃ・・・隼人・・・」
真っ赤になった隼人は寝息を立てる恋歌の顔を見ながら彼女の背を撫でた。浩太郎と加奈は毎晩こんな事をしているのだろうかと考えていた彼は首に手を回してきた彼女に驚き、体を硬直させた。
顔を近づける恋歌から顔を背けた隼人は首元に顔を突っ込んできた彼女に変な声を出しかけていた。咄嗟に口を噤んだ隼人は顔だけ起こしてドアの方を見ると安堵の息をついて寝転がった。
「あなたぁ・・・」
(どんな夢見てるんだよ・・・誰かと結婚した夢か・・・?)
「うへへへ・・・」
嬉しそうな恋歌の表情に胸の中にこみ上げてくる苛立ちを吐息として吐き出した隼人は胸に抱いた嫉妬の感情にさらに苛立っていた。
(何苛立ってんだよ・・・俺は)
「隼人ぉ・・・えへへ、子どもの名前何にする?」
突拍子の無い爆弾発言に何かを噴き出した隼人は満足そうな笑みを浮かべている恋歌を見ると腹を撫でているらしい彼女の動きに冷や汗が止まらなくなり、更にさっきまでの事柄が自分の事だった事に
気付いて顔が真っ赤になった。
遠い将来の夢を見る彼女の幸せそうな顔に安堵しつつもそこそこのボリュームで繰り出される恥ずかしい言葉に耐えられない彼は身長の低い彼女の顔を布団で覆って声を遮った。と、同時にドアが開いて
テキストを片手に持った秋穂が顔の赤い兄を不審そうに見ていた。
「兄ちゃん布団に入って何してんの?」
「え?! ね、眠いからちょっと昼寝しようと思ってな。それで、勉強か? 秋穂」
「お母さんが署に戻る前、学力上げるのに止めて残った塾のテキストやれって言ってたから」
「で、分からないと」
「うん。教えて」
不審がっていた秋穂だが炬燵机にテキストを置くと隼人がすんなり降りてきたことに一応疑いを持たず、兄へ勉強を教えて貰おうと隼人の隣に座った。
「で、ここなんだけどさぁ」
「・・・また計算かよ、いい加減慣れろよ」
「ったってさー勉強嫌いだからしょーがないじゃん」
「お前ホントに集中力割り振れないよなぁ・・・集中したら凄いのに」
「だーって私そんな器用な人間じゃないもーん。私、兄ちゃんが本当に羨ましいよ」
唇を尖がらせてそう言う秋穂に半目を向けた隼人は手癖の悪さを露呈しながら計算問題の解き方を教えていると背にしていたベットから物音が聞こえて冷や汗をかいた。
「・・・兄ちゃん、あのさぁ」
「分かってる、分かってるから俺に何も言わないでくれ」
「布団捲っていい?」
「アイツが起きるから止めろ」
「あ、ゴメンめくっちゃった。つーかホントにちっちゃくて可愛いね恋姐。兄ちゃんの好みでしょ」
にひひと笑う秋穂の視線から逃げる様に視線を逸らした隼人は子どもの様な寝姿の恋歌をちらと見てさっきの言葉を思い出し、顔を一気に赤くした。
「お、俺は・・・その。ロリコン、じゃねえよ」
「何でそんな途切れ途切れなのさ」
「う、うるせえ! 兎に角、俺はそんなに恋歌へ思い入れしてねえっ」
「ふぅーん、そうなんだぁ。でもさ、その割には恋姐には優しいよね兄ちゃんって」
「うっ・・・・」
言葉に詰まった隼人を見てニヤニヤ笑っている秋穂は彼の叫びで起きた恋歌にその笑みを向け、寝ぼけている彼女は何の事か分からずに隼人の方に張って移動する。
「恋姐、起きなよ~兄ちゃん困ってるよ~?」
「ん・・・すぅ・・・」
「ありゃりゃぁ、寝ちゃったね恋姐。って兄ちゃんどうしたの? 顔真っ赤だよ?」
思わず半目になる秋穂の視線の先、恋歌に抱き付かれて硬直している隼人は寝入る彼女を如何にか移動させて根性で講義を続けた。
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それから一時間後、テキストのページを解き終えた秋穂は予想以上に消耗していた隼人の姿にぎょっとなると同時、暗くなった外の様子と彼の膝の上で起きた恋歌の姿を見て彼女に泊まってもらう事を提案した。
と言う事で恋歌が着替えを受け取りに一時帰宅し、その間隼人と一緒に台所で調理をしていた。急いで帰ってくる両親の帰宅に間に合う様に一人分多い夕食を作っていた。
台所で二人並んで調理する兄妹、兄が主導で妹はその補助と言う分担で進められているその最中で隼人は不意に口を開いた。
「悪かったな、秋穂」
「何がさ」
「いや、その色々とな。勉強の事とかお前の事なのに後半は恋歌にかかりっきりになっちまった」
「え? いやいや、あの時は粗方教えてもらってたから自力解決タイムだったはずっしょ? 何で謝るのさ」
「まぁ、そこは兄としてのけじめみたいな物かな」
「ふぅん、めんどくさいね」
「それくらい許してくれよ」
苦笑しながら肉に下味を付けている隼人の横顔を見た秋穂は納得している素振りをしながらキャベツを切り終えた。持て余した時間、兄の横顔を前にした彼女は口ごもりながら一つの問いを投げた。
「兄ちゃんは、さ。本当は恋姐の事、どう思ってるの? 好き? 嫌い?」
「どっちかって言うと、好きなんだろうな。アイツから好意を向けられることは恥ずかしくあっても嫌じゃない」
「・・・やっぱり兄ちゃんってお父さんとかお爺ちゃんに似て面倒臭い性格だよね」
「そうか? 親父とか爺さんよりはマシだと思うけど」
「えー、そう思ってるの兄ちゃんだけだよ?」
ケラケラ笑う秋穂に若干むくれながら作業を続ける隼人は帰ってきたらしい恋歌の応対に向かった妹を横目で追ってから秋穂が止めた分の下ごしらえを続けた。玄関先での仲睦ましそうな声に
自然と気持ちが曇って行くのを自覚した。
「えへへ、恋姐早くぅ」
「ま、待ちなさいってば。私荷物とかあるのよ?」
「まあまあそれはそこに置いといて、その可愛い姿を兄ちゃんに見てもらおうよ」
「え、隼人そこにいるの?」
「うん、晩御飯作ってるよ?」
さも当たり前げに言う秋穂の声とそれを受けて慌てる恋歌の声を少し開いたドアから聞きながら下ごしらえを続ける。恋歌が可愛いのは普段からだ、そう言い掛けて柄にも無いとにやけ掛けた口をキュッと締めた。
姦しい声に段々と気になりだした隼人は作業の手を止めて愛用している黒と赤のエプロン姿のまま玄関の方に移動する。
「何してんだよお前等、さっさと・・・・」
入れ、と言いかけて隼人の動きが止まった。彼の視線の先、浅く体を抱いていた恋歌はフリルがかなり入ったゴスロリ衣装を着ていた。
「れ、恋歌、何だよその格好は」
「た、武に貰ったのよ・・・楓とかには似合わないからお前が着ろって・・・」
「またアイツかよ・・・」
「似合う・・・?」
「に、似合ってんじゃねえのか? ま、まあお前がそう言う格好好きなら・・・い、良いんじゃねえか? つーかさ、そんな大事なもの着て飯はキツくないか?」
「え、う・・・うん」
「上は俺のシャツ貸してやるよ。下は秋穂の半パンで良いか・・・待っててくれ取ってくるから」
そう言って二階に上がった隼人の背中を見送った恋歌は服から上部分だけ出ている胸を見て頬を赤く染め、体を浅く抱いた。見られたのだろう、と考えていた彼女をニヤニヤしながら見ている秋穂は腕で隠れていない胸に苦笑していた。
「恋姐、胸隠れてないよ? むしろ潰れてエロいエロい」
「う、五月蝿いわねっ! 恥ずかしいじゃないのよっ」
「えー、恥ずかしがるんだったら止めれば良いのに」
隼人の為だと分かっててそう言った秋穂は苦笑して恥ずかしそうな恋歌を見た。そうこうしている間に隼人が下りて来て言った通りの着替えを恋歌に渡した。
「あれ、兄ちゃん。その半パン小学校の時の・・・」
「何でか知らないがあったの見てたんだよ。何だよその目」
「いや、兄ちゃん優しいなって」
目を逸らしながら笑いを堪える秋穂に半目を向けた隼人は胸を浅く抱いている恋歌に目をやり、潰れている胸に意識が映りかけて慌てて目を逸らした。
「何処見てんのよスケベ!!」
「ぐっ、うるせえっ。第一恥ずかしいならそんな格好するなよ!」
「・・・アンタ、妹と同じ事言うのね」
「え?」
「あ、いや、何でもないわよっさっさと着替えよこしなさいっ!」
「ほらよ、脱衣場で着替えて来い」
「ふ、ふんっ分かってるわよっ」
ふいっと膨れっ面のまま脱衣場へ向かった恋歌の背を目で追った隼人は熱っぽい溜め息を吐いてから秋穂と共に台所に戻っていく。
「所で兄ちゃん、恋姐のあの格好どうだった?」
「似合ってる、と思うぞ」
「で、何でそれを恋姐に言ってあげないの?」
「言っただろ? おい、何だよその目は」
「やっぱり兄ちゃんめんどくさいねぇ」
気恥ずかしさから苦笑する秋穂と視線を合わせずにいた隼人は先の可愛げのある姿とは一変してラフな格好に変わった恋歌の姿に安堵の息をつき、小首を傾げている彼女の頭に手を置いた。
「何よ」
不機嫌そうな目を向けてくる恋歌に気づいた彼は慌てて下がった。
「わ、悪い」
「別に嫌じゃないわよ・・・むしろ」
「むしろ?」
「な、何でもないわよ!! ご、ゴハンできてるの?!」
「まだ出来てねえよ、もうちょっとだ。あ、そう言えば親父も帰ってくるけど大丈夫か?」
「大丈夫。たまにはおじさんにも顔見せないとね」
「俺にはなんか嫌な響きに聞こえるぞ、それ・・・」
調理しながらそう言った隼人はその隣で苦笑している秋穂に調理を任せると恥ずかしそうにしている恋歌が手に持っている服を受け取り、それを綺麗に畳んで衣装鞄に入れた。
何か言いたげな恋歌を視線で制した彼は普段着に使ってるカーゴパンツのポケットからスマートフォンを取り出すと手馴れた操作で親に電話をかけた。
「あ、もしもし親父? 今仕事中か? そうじゃないのか、でさ今日うちで恋歌が飯を・・・あ? 作ってねえよ、俺が作ったんだようるせえな張り倒すぞ。で、話戻すけどうちに恋歌が泊まるから
一緒に飯食う事になるんだけど良いか? ・・・うん、分かった。伝えとく」
通話を切った隼人はソワソワしている恋歌の頭に手刀を置くと軽く微笑んだ。
「オッケーだってよ。ま、何時も通りだし当たり前だよな」
「そ、そうなんだ・・・」
「あ・・・悪い。ついつい、な」
なるべく目を逸らさず軽めに謝った隼人は一気に赤くなった恋歌に恥ずかしくなってお互いに視線を逸らした。
「(二人ともめんどくさいなぁ・・・)兄ちゃん変わってー」
面倒臭い二人に呆れながら半ばで火を止めた秋穂は鍋を隼人に任せて恋歌に抱き付き、そのままソファーに押し倒した。黄色い悲鳴と共に姦しい声がリビングダイニングに響き渡り、それをBGMに鍋を振るう隼人は
取っ手が変形する位の力で握りそうになって何とか堪え、鍋を止めた
味見をしてもらおうとしていたのだが二人が仲良くしているのなら仕方ないと心の中で諦めを付けて味見用の小皿にキャベツ一切れと肉一切れを置いた隼人は匂いに釣られたのかソファーからじっと見てくる二人に
ふっと頬を綻ばせた。
「ほれ、味見。してくれよ」
『はーい』
「一人、キャベツと肉一つずつな。調味料自分で調合したからバランス見てくれ」
「んふふ、おいひい」
「そうか・・・良かった。変な味だったらどうしようかと思ったぜ」
ほっと胸を撫で下ろす隼人に満面の笑みを見せる恋歌は口に広がる味わいに秋穂共々頬を綻ばせていた。
「兄ちゃん調味料調合する時一回味見てなかったっけ」
「食材と混ぜたら味の濃さ変わって薄く感じるかもしれないからな、あと分量とか」
「そっかー。兄ちゃんの料理で恋姐すんごく喜んでるね・・・」
「立場逆な気がすんだけどな。まぁ秋穂、回鍋肉美味しいか?」
「え、あ、うん。おいしいよ」
戸惑いがちな秋穂の言葉に笑った隼人はとても嬉しそうな表情で取り皿を受け取り、流し台に置いた。両親が帰るまでに時間があったので三人でリビングのテレビを見る事にして二時間後、午後九時前。
「ただいま~ごめんね、遅くなっちゃって・・・ってあれ?」
「お、おかえり二人とも」
「あらあら秋穂と恋ちゃん寝ちゃってるの? ご飯は?」
「お袋達が帰るまで待ってたから食ってねえよ」
「あらっ、じゃあ準備しなきゃね。ほら、手伝って」
「そうしてぇけどこいつ等がさ・・・膝の上乗ってっから身動き取れねえんだよ」
「あんた、膝枕できたんだ」
お母さんビックリ、と呟いた母親に俺もだよ、と返した隼人はゴツイ筋肉質な膝枕をえらく気に入っている二人を見下ろし、どうしようと迷っていたがその間に準備をしていた父親にサムズアップをされて
行動の迷いを断ち切ると二人を起こした。
「んにゃ?」
「親父達帰ってきたから、さっさと飯食おうぜ」
「お腹減った・・・」
寝ぼける恋歌を介抱しながらダイニングテーブルに座った隼人はうつらうつらとしている恋歌を横目に飯を食い始めた。
「美味しいじゃないの隼人、腕上げたわね」
「あ、ありがとう」
「うふふ、この調子だと恋歌ちゃんと暮らしても大丈夫そうね」
「ちょっ、お袋! そんな事の為にやってんじゃねえよ!」
「あらぁ? 恋歌ちゃんに教える為に頑張ってるって聞いた様な気がするなぁ、お母さん」
「ちっちげえよ! おい、恋歌、勘違いするなよ!?」
「寝てるわよ?」
からかう様な笑みを浮かべた母親の指す先、凭れ掛かってきた恋歌に怯んだ隼人は目を覚ました彼女に恥ずかしくなりながら黙々と飯を食った。そんな彼を寝ぼけ眼で見ていた恋歌は頬の赤い彼に可愛く首を傾げていた。