ウタと機械と新時代   作:またたびライト

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第25話

 ウタとアイリスの考えた作戦は、何を置いても四皇カイドウを撃破する事を最重要視している。ウォーターセブンにやってきた海兵たちに接近し、情報収集を行った結果、その恐るべき実力の一端が明らかとなった。

 

彼は若い頃、幾度となく海軍へとたった1人で無謀な戦いを挑んでいる。

そのうち何回かは、敗れて捕まり処刑が執行されていた。

しかし、毎度彼の処刑は失敗する。すんでのところで助けが入った等では無い、単純に殺せなかったのだ。

そのあまりにも強靭すぎる肉体は、海楼石によって能力を封じられてもなお、海軍の処刑を跳ね除けてしまった。

そして、そのまま暴れて脱獄するのだ。

そんな殺そうにも殺せない相手を仕留める為に3つのプランが用意されていた。

 

そのためにもカイドウを誘き出す必要がある。

だから、まずは他の百獣海賊団の大半を無力化しつつ彼を引っ張り出すために、初手で和の国の全港湾及び船舶へ奇襲攻撃を実施し、足を奪う。更にそれを支援すべく、電子戦を仕掛け電伝虫の通信網をジャミングによって破壊する。侵入した工作部隊も蜂起し、混乱を誘う。

 

その上で、カイドウのいる鬼ヶ島へ大々的な空爆を実施し、カイドウが出てこざるを得なくし、撤退と見せかけて和の国の近海へ誘導する。

 

そこでウタの歌を聞かせて、ウタワールドに誘い込みそちらで撃破する。

それが成功したのが確認できた段階で、全面的な和の国への侵攻作戦へ移行する。

 

空中待機させておく空挺部隊を和の国へ降下させ、唯一の正規の入国手段であるリフトとその制御施設を制圧。外海へ通じる側も水上艦艇から揚陸する部隊で制圧し、輸送船団から本隊を和の国へ流し込むのだ。

また、近海に生息する巨大な魚に船を引かせて滝を遡上する方法もあるらしく、揚陸艦にワイヤーを取り付けられるように準備はしてあるが、ぶっつけ本番になるためあまり期待はしていない。

この際、火力支援と輸送のために投入される航空機1万機を超える。

また、投入される各種陸戦用無人機の総数は8万両に達する予定である。

 

しかし、これはあくまでウタウタの能力がカイドウに通用した場合の作戦である。

万が一、そうならなかった場合はプランBへと移行する。

ウタはウタウタの実の能力が世界中の人々を救うことができるものであると自信を持っていたが、それを打ち砕く存在が現れたことから油断はしていない。

 

プランBは投射可能な全核兵器による飽和攻撃を実施する。

飛行目標への射撃が可能な様に改修した30センチ砲を備えた旧式戦艦、および25.4センチ砲を備えた旧式巡洋艦の部隊を前進配置しておき、カイドウに全力で核砲弾を打ち込む。

更に、艦載攻撃機にも核弾頭搭載の空対空ロケット弾を装備させ攻撃を行い、水上と空中から低出力核によって息つく間もない連続攻撃を加えるのだ。

しかも、最大でも15キロトン程度の威力の低出力核だけでは終わらせず、最後は1万メートル以上の上空で待機させる重爆撃機から念のため、出力15メガトンの新型爆弾も投下する予定である。

 

飛行目標に対し、自由落下式の爆弾を投下する事になるが、15メガトンの威力ならば回避など意味をなさない。

それを万が一にも外れる事がないように複数発ばら撒くのである。普通の存在ならばまず間違いなく消滅する。

当然、砲撃を行う旧式戦艦、巡洋艦部隊も巻き添えになるがどうせこれ以上改修の余地もない艦なので必要な損害と割り切っている。

 

そんな大威力を達成したのは、核分裂反応だけではなく核融合反応も行わせているためである。

核融合反応とは軽い原子核に高エネルギーを与えて他の軽い原子核にぶつける事で融合させ、その際に莫大なエネルギーが解放される現象である。

この高エネルギーを与えるためにこの爆弾は核分裂反応を利用する。

核分裂反応時にX線などの形で発生する熱エネルギーを核融合燃料となる水素同位体へ与え、核融合反応を引き起こすのだ。

単純な核分裂反応は燃料となる物質の量が増えるほど不安定になるため、爆弾とした際には威力に上限が存在する。

しかし、核融合反応にはそれがなく、燃料さえ増やせば理論上、いくらでも威力を上げる事が可能となる。

そのため、爆弾のサイズさえ許容できるなら50メガトン、100メガトンといったような威力も現状でも実現できる。

今回は爆撃機で運搬可能なサイズに収めるには15メガトンが限界であったことと、和の国への影響を抑えるためにそれ以上の威力の爆弾は使用しないこととなっている。

 

ちなみにキロトンやメガトンとはトリニトロトルエンと言う、爆薬に使われる物質何トン分かを表す単位である。

つまり、単純換算すると炸薬1トンの爆弾が、1キロトンなら1000発、1メガトンなら100万発同時炸裂する威力である。1トンの爆薬でもちょっとした住宅地なら壊滅する威力があるため、そんなものが万単位で一斉起爆するなど、どれだけ恐ろしい威力なのか普通は想像もつかないものである。

しかも、爆轟時に生じる衝撃波と圧力、それによって粉砕され飛び散る爆弾の外殻を主な殺傷要因とする通常の爆弾と異なり、核爆弾は炸裂時に発生する膨大な熱によって生じる火球と呼ばれるエリアが有る。そこでは太陽表面温度ぐらいでしか自然現象ではお目にかかれない数百万℃と言う超高温で包まれる。あらゆる物質がプラズマ化し消滅するため、爆風や衝撃波には耐えられる存在でも普通は耐えられない。

さらに、15メガトンとなるとその火球は直径3kmを超えるのだ。爆弾を落とされてから避けることなど不可能で有る。

なので、常識的に対応するには何よりも炸裂前に撃ち落とすか、飛び立つ前に破壊するかする必要がある。

どちらも相応の戦力が必要で特に長距離爆撃機のような機体に積まれた場合、なまじ飛行距離が長いため、どこに飛んでくるか分からず、事前に待ち構えて迎撃するのは困難である。

それを行うには四六時中、飛んでくる可能性がある全空域を監視し、発見次第、即座に迎撃部隊を向かわせる体制を構築する必要があるが並大抵のことではない。

また、飛び立つ前に破壊と言っても遥か彼方にある、厳重に守られた出撃拠点を叩くのはかなりの出血を伴うであろう。

 

しかしながら、そんな絶対的な威力の兵器を、あの当時の爆弾は威力が低かったとはいえそれでもやはり直撃してしまえば、真っ当には防げないであろうそれを防ぐ存在にアイリスは既に遭遇してしまっている。

 

だから、もしかしたらカイドウがそれすら効かない可能性は考慮せざるを得ない。

 

だからこそのプランCである。

核爆弾ですら耐える防御力、戦艦すら圧し折るパワー、地形ごと軍勢を薙ぎ払う出力のビーム。

それを併せ持つ存在、トットムジカを召喚しカイドウと戦わせるのだ。

化け物には化け物をぶつける、単純な作戦である。

そして、和の国への侵攻作戦は放棄し、全戦力でもってカイドウを攻撃して援護する。

なりふり構わず、何がなんでもカイドウだけは倒すことを目標とするプランである。

なぜ、最初からぶつけないのかと言うと、やはりトットムジカが本当に制御できるのか不安だったためである。

ウタは、前回使用時にかろうじて制御していたが、しかし常にトットムジカから伝わる強大な負の感情に飲み込まれそうになっていたし、事実心神喪失状態とかし、トットムジカがわずかな期間だが暴走し、艦隊を壊滅させている。

そんなものを、うまく扱えればいいが、出来ずに自分たちに牙を向けられたら勝てる戦いも勝てなくなるため最終手段である。

また、ゴードンから事情を聞いたアイリスとしては、殊更頼りたくはない力であった。

だから、自身の持つ戦力で可能であれば片付けたいのだ。

 

 

そして、ヤマトにも説明し、準備を整え、ついに作戦が発動される。

だが、本当にプラン通りに行くかどうかはわからない。

古来より戦場の様相など予測しにくいものの代名詞扱いさせる。それほど予想し難いものに溢れ、ちょっとした外乱要素で結果が変わってしまうのが、戦いなのだ。

 

 

 その日、鬼ヶ島では百獣海賊団の最高幹部の1人、クイーンと呼ばれる男が部下を引き連れ、何やら兵器の組み立てを行なっていた。クイーンはこの世界でもトップレベルの優れた技術力を持つ人物の1人で、かつてはベガパンクとも共同研究していたほどである。

しかし、クイーンのこだわる科学技術は人道とは程遠い。それは細菌を用いる生物兵器である。

大勢の人々に勝手に広がり命を奪う悪魔の兵器。彼はそれを好んで開発し用いる。

ワクチンを用意する自分は安全だと高を括って。

 

しかし、その手の兵器が真に恐ろしいのはそれは絶えず変異を繰り返し続けているため、あらかじめワクチンを用意していても、いつまでも効いてくれる保証などない事である。作って使用したものすら安全とは言い難いのだ。

 

想定を超えて広がり、変異し、手に負えなくなるリスクが常に存在する危険な兵器である。

クイーンは制御不能な兵器がどれほど恐ろしいか等、気にも留めない刹那的だ考えの持ち主である。

むしろ積極的に変異させ、より強力な威力を持ったと喜ぶほどである。

 

しかしながら、今回用意したのは細菌兵器ではない。

彼は多芸な天才であり、機械兵器の開発や動物のサイボーグ化による活用も好んで行っている。

今回据付ているのはそう言った才能を活用すれば作製できるであろう自走式の高射砲である。

 

この世界の大砲は基本的に上空の目標を撃つようにはなっていない。空を飛ぶものなどほとんどいないのだから当然である。

無理矢理、何かに横たえる等して上を向かせればその限りではないが、そんな不安定な状態でただでさえ命中率の低い大砲が当たるはずもない。

なので、対空射撃を行うときは精々並べた歩兵に一斉射撃を行わせ相手を牽制する程度である。基本的には飛行目標は銃器ではなく自身も空を飛ぶか、空まで届く剣技や悪魔の実の能力で行うのが普通なのだ。

 

そんな中、この高射砲は安定して上方が狙えるような機構の砲架を持ち、砲身も高精度に作られたライフル砲で金属薬莢を用いる後装式である。自動装填装置を持ち、照準もセンサーの情報をもとに自動で行う。

この世界の並の大砲より高威力かつ高命中率、高発射レートを実現した逸品である。

それを自走式の車体に取り付けている。

それが、20台ほど組み立てられている。

 

「ムハハハ!!、これでこないだの空飛ぶデカブツが来ても返り討ちだ!」

最近襲来した飛行船への対抗のためと言う名目で、高射砲を作製したのだが、出来栄えに自信満々にそう宣言する。実際に先の飛行船の飛行高度まで砲弾が届くように設計しているのだ。あの程度の速度と、適当な狙いでも何処かにしら当たるであろう巨大なら当てるのは難しくない。

大した防御力もないことは分かっており、故に砲弾を当て続ければ撃墜は容易いと説明している。

 

「さあ、野郎ども!、とっとと組み上げて訓練を始めやがれ!」

「おい!、何してやがる?」

黒装束に身を包んだ男、同じく百獣海賊団の最高幹部の1人であるキングが声をかける。

 

「オウッ!!、誰かと思えば、間抜けにもあのデカブツからの攻撃を食らってボロボロになった役立たずじゃねえか!」

 

そう言って、キングに絡む。

キングは飛行船からの砲撃を受け、重傷を負ったものの、なんとか回復していた。

 

「……次はやられはしない」

 

そのことを指摘され不服そうに、だが言葉少なく返すし、睨みつける。

 

「フンッ!、カイドウ様を守る盾がテメェのせいで迷惑かけてちゃ世話ねぇぜ!」

 

「カイドウ()()だろう?」

そう静かに返す、キング。

ドスンと何かが彼の横に降り立つ。

「ムハハハ!!、そうだぜ!、俺はカイドウさんをそんな堅苦しい呼び方しねェのさ!!しかし、再現度の低い偽物だぜ!このあえて痩せないFUNCなボディーを全く再現できてねぇ!」

土埃を上げながら、そう言う本物のクイーン。

「テメェが、能無しだからあんな偽物が湧いて出るんだろうが」

「うるせェ!、カスみたいに叩き落とされやがって、大人しく死んどきゃいいものをよォ!」

 

もはや、取り繕えないと判断したクイーンに扮していたターミネーターが、左腕に内蔵した20mm機関砲を2人に向け発射する。

周りのターミネーター達も高射砲という名目で分解して持ち込んだ無人戦闘車の組み立てを終え、短機関銃を2人に向け連射する。

 

今回のために特別に作製した分解、組み立てが容易な高射砲型無人戦闘車も起動して発砲を開始する。

 

何も派手な空からの侵入のみが可能なルートというわけではない。

彼らは略奪のために船を出すのだから、あらかじめ出港時に問題ないと潜入済みのターミネーターからの情報で判断したそれを和の国の外で襲い、乗員とターミネーター達を入れ替えていったのだ。

 

もともと、一般の団員の入れ替わりは激しく、横の仲間意識が希薄な実力主義の傾向はいつのまにか仲間が全く違うナニカに入れ替わっても気づきにくい土壌となっていた。

そこを突き、大量のターミネーター達が短期間で和の国に展開していた。

それらが一斉に蜂起し、戦闘を開始する。

 

鬼ヶ島各地で始まる戦闘に気を取られている隙に、上空には多数の爆撃機が侵入する。

 

とっくの昔に和の国の外海に面した部分に設けられた砲台に補足されていたが、そこからの緊急連絡は、全て電伝虫の念波を対象とした電子戦によって単なるノイズとしか判別されなくなり届くことはない。

 

完全な奇襲を加えた、爆撃機隊の第一陣は巨大な6発機である新型の重爆撃機である。

高度1万2000mの高高度を時速500kmを超える速度で飛行する機体から爆弾が次々投弾される。

 

そして全弾、吸い込まれるかのように停泊する船に突っ込み吹き飛ばす。

投弾後に誘導されて目標に向かう誘導爆弾である。

それは爆弾の尾部に取り付けられたフレアの光を母機のカメラで捉えて、目標に向けて無線誘導する簡便な方式で、母機が目標と爆弾を双方カメラで捉え続ける必要があるものの、低い技術水準で実現できる。

無人の制御機構が高性能だが高級品で、割と大量生産のネックになっているため、再利用可能な兵器に使用するならともかく、弾薬に使用すると投射可能な弾薬量が大したことなくなるのだ。

爆弾など、100機の爆撃機が10発搭載し、一日3回出撃するだけで3000発も消費する大量消耗品なのである。

 

制御機構は旧アトランティスの開発したものを量産しているだけで手を加えられないため、自前で性能や量産性の改善を図れるように現在解析中である。

しかし、それとは別に爆弾用に簡易な制御機構の開発も進めており、それがとりあえずものなったのが今回投入されている誘導爆弾である。

とはいえ、それでもまだ誘導爆弾は希少なため今回は新型重爆撃機にしか搭載されていない。

それらが最も高高度から比較的安全に爆撃可能なため、一番有効に活用できると考えられたためである。

 

そして、作戦上重要な船舶の破壊に使用されて見事目的を果たした。

続いて、やや遅れて300機を超える4発重爆撃機の大編隊が侵入してくる。

爆弾倉を開けて無誘導爆弾を雨のように降らせる。

鬼ヶ島にいた民間人達はギリギリで、クイーンに扮したターミネーターの指示で和の国に脱出しており、今は百獣海賊団しかいない城にも次々に爆弾が命中し衝撃で崩れていく。

 

そんな中、瓦礫を突き破りついにカイドウが姿を表す。

龍形態で一気に高度を上げ、ホロブレスを薙ぐように打ち、数機の爆撃機を一気に爆散させる。

 

通常は爆撃の命中精度を上げるためと、迎撃機に対する防御火器の密度を上げるため密集隊形を取る爆撃機隊だが、今回は水平距離、高度ともにバラバラにして、立体的にまばらに配置されているため、薙ぎ払ったとしても大した機数を撃ち落とせない。

 

そのことに苛立ちを感じながら、速度を上げつつ離脱を始めた爆撃機隊を追ってさらに高度を上げるカイドウ。

爆撃機は接近する巨大な龍に20mm機関砲を打ち込みながら海に向かい飛び去ろうとする。

体表に無数の20mm砲弾が命中し火花を散らすのも意に介さずに突っ込んでいき、次々に撃墜する。

 

それでも機数が多いためなかなか数が減らず、戦いながら和の国の外海へ移動する。

そして、決戦のエリアに侵入することになる。

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