内憂外患? いいえ、フロンティアxフロンティアです!   作:かりん2022

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その頃のアメリカ

アメリカ合衆国ホワイトハウス

 

大統領ディレルは苛立たしく告げた。

 

「まだ魔法使いは名乗りでないのかね」

 

なんと、ファンタジーはあったらしい。それも、国内に!

しかも、それはかつて政府とのパイプラインを持っていた。

魔法使いが撤退する時に、記憶を消していったという。

なんと非人道的な振る舞いであることか!!

 

他にも、魔法使いの子供を攫い、非魔法使いの子供を押し付けるなどとんでもない事である。

いや、子供はすべからず大切にするべき存在であって、非魔法使いの子供を受け入れるに否やはもちろんない。当たり前だ。非魔法使いが世の中の99.9999%なのだし。

ただ、非魔法使いの子供は魔法使いの血筋ではあるので、魔法使いを産む可能性は高くなる。そうすれば、その子供はまた誘拐される……。

捨て子と誘拐の連鎖を思うと、ディレルの心は痛んだ。

 

ディレルなら。ディレルならば、もっといいシステムを作らせる。

魔法使いの親と子供に文通をさせ、たまに会話させるなどとケチくさいことは言わない。

魔法使いと非魔法使いを家族として生活させてみせる。

教育が問題なら、学校を変えればいいだけなのだ。

機械が駄目なら、機械のない特区を制定してもいい。

もちろん、いろいろなケアは必要だろう。魔法使いに対する理解も必要だ。

だが、問題はそれだけだ。それだけなのだ。解決できない問題ではない。

 

魔法使いの最先端の戦闘は見せてもらった。

会議も何度もした。

その上で、銃で勝てると大統領たちは結論を出した。

舐めているわけではない。記憶を消され、完封されていた事は厳粛に受け止めよう。

だが、だがである。それでも、全く手も足も出ないわけではない。日本と同じだ。

奇襲されてばかりだから対応ができなかった。

実際、魔法使いが苦戦した異形の軍団を自衛隊は追い返している。

一般人を相手にされるのと軍人で抵抗するのは全く別の話というだけの話。

 

魔法は脅威たりえない。だが、利益は途方もなく提供してくれる。

あの素敵な芋虫、ストロベリーのように。

 

魔力のあるなしは、差別問題を訴えかけるかもしれないが、それも自由の国アメリカなら飲み込めるとディレルは信じていた。

 

魔法使いに対する政策案も発表した。

あとは相手に言葉を届かせる、それだけなのである。

 

「いかんせん、そもそもネット環境がないらしく……大統領の声が届いていないのではと」

「なんてことだ、2000年のこの時代だぞ! 夢少女経由ではどうだ」

 

 アメリカ人の橋渡しについて、日本人に聞かねばならないなんて!!

 ディレルは叫び出したかった。だが、大統領なのでもちろんそんな事はしない。

 

「珍しく日本がガードしていて、難しいです。ですが、アメリカ人の魔法使いに関しては、至急パイプを用意させます。特に非魔法使いの子供の感知システムあたりについては、絶対に物申して見せます」

 

 補佐官は断言する。忌々しく思っているのはディレルだけではないのだ。

 なにせ、子供の誘拐が関わっている。米国は子供の誘拐を認めない。それを防がんとする正義の人も多く、魔法使いの公的機関が組織だって誘拐をしていると言う事に激昂している者も多くいた。絶対にこの問題だけでも解決すると、補佐官は燃えていた。例えば、学者の子供の夢は、中世クラスの環境にあって、学者になれたという。それだけの頭脳が中世レベルの生活をしているなど、シンプルに損失だった。

 アメリカだったらギフテッドとして英才教育を受けさせ、若くして特許を取ってもらって国益に寄与してもらって……。そういった幸せと栄光を得るべきだった子供から、親と教育を奪うのはやはり良くない事であるとディレルも補佐官も思うのだ。

 

 夢の親の学者は今すぐ魔法使いをぶん殴って夢を取り返していいぐらいである。

 学校の先生をやっているが、まだ7歳だぞ。

 小学校に入った年齢だぞ。

 

 そして、アメリカも他人事ではなく、不思議な事が起こった後に誘拐された子供がいる、という証言は広い世代、層にいるので深刻な問題だった。

 特に大企業や要人の対象っぽい子供を持つ親が、愛する子供を取り戻さんと政府に圧力を掛けてきている。夢は2歳という早い段階で魔法使いと分かったし、そもそもマホウトコロは判定が早いというが、一般的に、アメリカで言えばノーマジの子が魔法を発現して魔法使いと発覚するのは7歳から8歳なので、怒り狂う親御さんと嘆き悲しむお子さんの気持ちは察してあまりある。

 

「特地についてはどうだ」

「今はサポートに徹するべきでしょう。ただ、状況は常に注視し、問題があれば即座に口を挟む形です」

 

 見据えるのは、現地の魔法学校である。

 実際、才能がないと使えない魔法より、魔法生物飼育学の方がよっぽど有用で垂涎の的だ。

 端的に言って、ストロベリーの大量飼育を成功させるだけで医療が最低でも100年は進化する。

 フロンティアも大事だが、足場を固める事がより大事。

 

 ディレル大統領の優先順位としては、まず子供の安全、ついでアメリカ魔法使いに対して政府の支配を浸透させる事、最後に特地での権益である。

 

 どれも高い優先順位ではあるし、全て達成するつもりではあるが、順番を間違えないディレル大統領なのであった。

 

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