内憂外患? いいえ、フロンティアxフロンティアです! 作:かりん2022
暑い日だった。伊丹は、新橋駅においてゆりかもめを待っていた。
時刻はもうそろそろ昼になる。今ならそう並ばずとも済むだろう。
同じくゆりかもめを待っている、1人でいるのが心配になる程小さな少女がいた。
「ふんふふーん♪ コミケコミケー」
流行りの、少女の年齢からは少し早いような気もする少年漫画のTシャツと短パン。
大人にとっては小さな、でも少女には身長に迫るほど大きなリュックを背負っての鼻歌。
1人でコミケ。大丈夫か。親御さんは。
ちょっと心配になり、声をかけるべきか悩む。
この年齢でコミケに1人で参戦とか歴戦の戦士すぎるだろ。いや、無謀である。危ない。
やはり声をかけるべきか。
そう思っていると、お揃いのピンク色のワンピースの少女達が歴戦の戦士に話しかけた。
それぞれ猫と犬を連れていて、とても可愛らしい。しかし、親御さんは。
「随分楽しそうね、夢」
「ついてきちゃいました〜」
「ひゃあああああ!!」
横から声を掛けられ、変な声を出す歴戦の戦士。
「ぼ、牡丹ちゃんと桜ちゃん!?」
「1人だけ楽しそうなのずるい! 私達も連れてきなさいよ。それにお友達を離しちゃダメだって先生言ってたでしょ」
そうして少女の手に虫かごを押し付ける。中には芋虫がウネウネしていたが、少女のペットだろうか。
少女は、「ごめん、ストロベリー」と大切に抱きかかえた。ネーミングセンス。
そこで気づいた。女の子達は、おもちゃらしき杖を腰に差している。まるで侍のようで、微笑ましい。
「普族の世界にお出かけなんて大冒険です〜」
「あ、あのそのあの」
「で、何買うの?」
まさか、この少女達も歴戦の戦士なのか。付属ってのがわからないけど。
「ふ、服かな……」
「普族の世界って可愛い服多いですよね〜」
あ、この子コミケ諦めたな。可哀想に。
でも、この子達だけで服を買いに行くつもりか?
コミケには絶対に行きたいけど、この子達も心配である。
可哀想だけど、そっと通報して親御さんを呼んだほうがいいのかもしれない。
その時だった。
突然現れた巨大な『門』。
そこから溢れ出た、異形の怪異を含む軍勢。
伊丹には瞬間的に、異世界からの侵略だとわかってしまった。
そしてこう思った。
「くそっ このままでは、夏の同人誌即売会が中止になってしまう!」
子供達も異変に気づいて騒ぎ出す。
「何あれ!?」
「こ、怖いです〜」
「通報しないと!」
そこで女の子が、リュックの中に明らかに入りきらない大きさの箒をリュックから出して、またがった。
魔女のように。
そうして箒は重力に逆らい、空を飛んだ。
「夢!!」
「夢さん!」
子供達が叫ぶ。
杖を取り出し、夢ちゃんと呼ばれた女の子は叫んだ。
「エクスペリアームズ(武装解除)!! きゃっ」
緑の光が雷のように1人にぶつかり、吹き飛ばした。剣が手をすっぽ抜けて飛んでいく。
魔女っ子。魔法。でも、一つだけ言える。
「軍勢相手に無謀だろ!!」
「あぶない夢さん! プロテゴ(守れ)! ああ!」
「桜ちゃん!!」
桜ちゃんと呼ばれた女の子が杖を振るうと、飛んだ女の子を襲った矢を防ぐ。
その代わり、桜ちゃんに飛び出したオークの棍棒が迫る。
「うおおおおおおおお!!」
俺は咄嗟に桜ちゃんを引っ張り、オークから庇っていた。
「子供が無茶しない!!」
「プロテゴ!(守れ!)」
更に追撃しようとするオークの攻撃を、牡丹ちゃんと呼ばれた女の子が防ぐ。
俺は即座に近くの敵を蹴倒して剣を奪った。
「つ、通報したわ! 逃げるわよ、夢、桜! あと、ついでにそこのお兄さんも!」
「異世界からの侵略に魔法少女かよ……! いや、こう見えても自衛官なんでね、市民を守らないと」
その言葉に、夢ちゃんは即座に反応した。
「じゃあ、自衛隊呼べる!?」
「ごめん、自衛隊は命令されないと何もできないんだ」
とにかく早く出動してもらわないと。通報はいくらなんでも誰かがしているだろう。
俺は避難を手伝わないと。
「じゃあ早く命令できる人に通報して命令してもらって!」
そんな簡単にはいかないんだが。
そこで、新たな登場人物が現れた。侍の着物とローブの中間のようなヒラヒラした服を着た者達が現れたのだ。
「そこまで。君たちはさがってなさい」
「魔侍様!!」
サムライとな!?
「これ程の犯罪、イギリスの名前を言ってはいけないあの人以上じゃないか」
いや、イギリスの名前を言ってはいけない人って誰だよ。
同じような魔侍?がたくさんやって来て、応戦していく。
すぐに乱戦になった。
とはいえ、多勢に無勢だ。
「君たちは下がって!」
声を掛けて、俺は救援に走る。
皇居に人々を避難させる。
夜になると、手伝ってくれる魔侍達は国際色豊かになった。
様々な髪、眼、言語。
「どうするんだ、とてもではないが数が足りないぞ! これは普族を守りきれん」
「なんなのだ、あの数は! お話にならないくらい大軍じゃないか!」
「どうも普族と魔法族の混合軍らしい」
「はあ!?」
「こっちも、普族の力を借りるべきなんじゃないか? そもそも普族を守るための戦いなんだし」
「自衛隊というのは政府からの命令が必要だそうだ」
「そっちも襲われているらしい」
「なら援軍に向かうか。首相を確保して操ればいいんだな?」
「ちょっと待ったぁ! 俺が説明を手伝うから、操るのはなし!」
「君は?」
魔侍達が振り向く。若干苛立っているらしいが、気圧されてはいられない。
「伊丹! 自衛隊だ! 俺が説明に行く! 指揮系統は理解してるから効率的に助けるやつを教えられる!」
「非常事態、か。力を借りよう、伊丹。私は剣山 美鷹だ」
「美鷹。よろしく。じゃあ、まず霞ヶ関と永田町の人たちの避難を手伝ってほしい」
こうして、必死に対応して、朝には無事自衛隊の出撃まで持って行けた。
自衛隊でどうにかなると知るや否や、魔侍達はあっという間に逃げていってしまった。
1人も残らず!!
そんなのありかよ、と思っていると、伊丹に連絡が入った。
どうやら、ぐったりして眠る魔法使いの女の子を発見したが、使い魔が近寄らせないらしい。
伊丹の頭に、昨日の少女達の姿が浮かぶ。
果たして、昨日の子達だった。
「ぐるぅ……!」
パチパチと紫電を散らす子犬。
俺はしゃがみ込んで話かけた。
「この子達を絶対に傷つけない。だけど、ここは危ない。安全なところで、暖かい布団で寝かせてやりたい。わかるか?」
「キューン」
真摯に話すと、ワフはおとなしくなって、運ぶのを許してくれた。
後になって知るが、ワフはちゃんと桜ちゃんを救ってくれたことを理解していたのだ。
純血の一族の令嬢である桜を救った事は、今後大いに役立つこととなる。
そんなこんなで、大勢の人を救い、魔法使いと接触があるということで、二等陸尉へ昇進。
代わりに、魔法使いのゴタゴタを一手に押し付けられる事となった。
なっちゃったのである。