内憂外患? いいえ、フロンティアxフロンティアです! 作:かりん2022
自衛隊はあっという間に押し寄せた異世界侵略者を駆逐した。
帰ってきたヴォルデモート作戦は、その駆逐を目の当たりにしてあっという間に魔法族に受け入れられていった。
そうよな。魔法族は普族の強さを知るべきよな。
そんなこんなで、私が書いた普族関係の本が売れているそうだ。
誤った知識の拡散が怖い。テレビ、ネットは普族にも脅威だからな……。
魔法使いの情報取得手段は未だに新聞とラジオのみである。
ラジオがハイカラまである。
魔法を感知するシステムの構築は滅茶苦茶高度なのだし、魔法技術は科学技術に比類すると思うのだが。
とにかく、私は特地……異世界に行くことになった。
魔法使い達が扉を調べに行くので、その橋渡しである。
魔法使いは自衛隊の大活躍の前に腰が引け気味なので、盾役を頑張ろうかと思う。
幼い子の背に隠れて情けない……とは思わない。
むしろ変なことせずに存分に頼ってくれ。
「未来 夢です。よろしくお願いします」
「夢ちゃん、改めてよろしくね。後ろの人達も……って随分国際色豊かだね」
「イギリスの魔法界が一番進んでいるので、そこから赴任して来てます」
プイッとよそを向いたままの魔法族にペコリと頭を下げる魔法族。
「魔法界は国境ないの?」
「ありますが交流は盛んです」
「日本の魔法界はどんな立ち位置か聞いていい?」
「マジックアニマル学以外は遅れてますね。ど田舎です。あと独自路線も突き進んでましたが、イギリス魔法使いとの交流が深まるにつれ、イギリス魔法が深く浸透してきています。魔法の敷物しかなかったのが、今だと魔法の箒が3割くらいに上がってきてます。あと、魔素が電波を邪魔して科学設備が使えない関係で魔法界自体が中世から一部進んでいる、かなり独自の文明を築いてます。日本はまだ武士制度あります」
「それって切腹とかもあるって事?」
「流石にそれはもうないですが、代わりに試合で負けたりすると使用した箒が燃やされたりします。ちなみに箒はイギリスでは主人の意思に応えてくれるパートナー的なものだったりするので、イギリスからは問題視されてます」
「試合って魔法勝負とか?」
「クィディッチっていう西洋発祥の魔法界独自のスポーツです。素晴らしい私の発明品により、なんと録画映像があります! 魔法界にはありのままを記録する装置はなかったから、素晴らしい事なのよ! それ以外では一々記憶を投影する魔法や過去を見る魔法が必要だったの。写真は被写体が意思を持って動き出してしまうし」
「難易度逆じゃない?」
「得手不得手ってあるよね。というわけで、今夜の親睦会ではクィディッチの試合を流しながらにしようかと思います。魔法使いの出席率が上がるので」
背後でざわりと空気が揺れ動く。
親睦会出ない予定だったんだが、どうしよう、出ようかな的な会話がボソボソとされる。
「人気のスポーツなんですね」
「魔法使いと話したければ、特にイギリス魔法使いと話したければクィディッチの話題ができればオールOKです。世界共通の人気スポーツと言ってもいいでしょうね。どの国の魔法使いも大体知ってます」
「それは凄いですね。俺たちも出来ますか?」
「無理かな! 魔法を駆使するスポーツだから。話が長くなっちゃったわね。それぞれの仕事をしましょう」
ということで、扉を調べつつ、親睦会の時間となった。
クィディッチ世界大会の立体映像が流れる。
魔法使い達はそうでもないが、むしろ自衛隊の人たちがいっぱい褒めてくれた。
事前にクィディッチの手作り冊子を配っていた私に隙はない。
みんな、事前に読んできてくれているようだし、後は簡単な解説をすればいいだろう。
ということで、日本で開催されたクィディッチ世界大会について解説した。
「我が国の魔法使いは、練習場が自衛隊の基地の近くにあってね。自衛隊の目を欺き続けて鍛え上げた飛行魔法が目玉なの!」
「それって技術力でどうにかなるものなの?」
「なってたわ!」
「ちょっと具申しておくか……」
私が得意顔で解説すると、すぐに魔法使いから物言いが入った。
イギリスではルールはこうだとか、イギリスの方が強いとか、どの選手がどうだとか、だがそれが狙いだ。
喧々轟々、ワーワーと話している間に、魔法使い達は自衛隊の皆さんと打ち解けた。
そして、親睦会の中。
自衛隊側で扉を調べる科学者の中に、本当のパパを見つけた。
パパは私に話しかける。
「夢……さん。貴方は、本当の家に戻る事は望んでないですか?」
「だって、魔法使いがいると、機械が動かなくなっちゃうもの」
「家からは機械を排除するなり、やりようはあると思いますが」
「だって、魔法使いなんて、怖がられるわ。……怖がってたもの」
「説明と選択の機会は与えられるべきだったと思いますよ。双方にね」
「だって、今さら帰れないわよ」
「ご両親は、いつだって貴方を歓迎してくれますよ」
「何故?」
「娘を愛しているから。魔法使いだなんて、最高の未知を抱えた娘を、愛さないはずがない」
「それでも、魔法族と非魔法族は一緒にはいられない」
「そんなこと、わからない」
「全てを捨てて、全てを賭けて魔法族になる覚悟もないのに、期待させるような事は言わないで」
「え、なれるんですか?」
視線が集まる。
「現代社会のあらゆる利点を捨てるのよ? 純魔法族と違って不便だって沢山ある。出来損ないって馬鹿にされる」
「説明と選択の機会がもらえるのならば、私はきっと君のいる道を選択しますよ。妻もね」
「そうでした〜。伊丹さんに〜。私の命を救っていただいた御礼として、魔法学校の試験の推薦はどうかという話が出ているのでした〜」
「魔力がなくとも、マジックアニマル科なら入れるのよ。さすがに試験は免除出来ないけど、貴族2人と博士号持った人の推薦で試験自体は受けられるわ。魔力を目覚めさせる薬もあるけど、これは危険が大きいとされてるわね。成功したら魔法界に来ないとだし、どちらにしろ茨の道よ」
「是非ともさせてほしい」
「是非試させてください。薬の実験体でも試験勉強でもなんでもさせます」
返事をしたのは伊丹ではなく、パパと伊丹の上司だった。