鈴木悟は鬼に憑かれている   作:サイドベント

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鬼、本気一歩手前までブチ切れる


※修正箇所:神の血を覚醒させた者はツアーに見られたらやばいらしいので、隊長は法国に隠れてもらうことにしました


破滅の竜王討伐編
白金の竜王vs鈴木悟 竜王の矜持と鬼の矜持


 

 

 

 

 

人類王ジルクニフは機嫌が良かった。

 

友である鈴木悟がめでたく目的を達成し、連日宴会に招待してくれることもそうだが、何より肉体的にもほぼ対等な酒飲み仲間を得た萃香が大人しいことが喜ばしかった。

 

今日も二人で部屋にこもって昼から飲んでいるし、平和で何より。

 

ジルクニフは昼の休憩がてらパンドラズアクターと茶をしばいていた。

 

 

「萃香殿は何をするにも豪快だからな……今は何とかなっているがいつ事故が起きるともわからぬ。人間種の飲み屋では萃香殿自身も窮屈に感じることもあるだろうしな。その点、悟殿なら安心して任せられる」

 

「いつも気を遣っていただいて感謝いたします。ジルクニフ殿」

 

「なに、私もあの二人の仲睦まじさは見ていて微笑ましいものがある」

 

「然り、ですね」

 

 

そんな和やかな会話の中で、部下から入室の願いがあった。

 

 

「スレイン法国からの文だと?」

 

「はい。皆で飲んでほしいと高級な酒も添えてあります」

 

「ふむ……友好の証か? 中々良いタイミングだな……測っていたか?」

 

 

ジルクニフとしては意外だった。スレイン法国が『人類至上主義』を掲げているのは周知の事実であり、明らかに人外の見た目の三人が所属する陣営とは相容れないものだと思っていた。

 

しかし、文は非常に丁寧かつ親しみを込めた文体である。内容としては『一月後に会談をしたい。もちろん降りて来た三人を含めて』というところだ。

 

これでは無碍にする訳にもいかず、ジルクニフはパンドラズアクターを見た。

 

 

「パンドラズアクター殿。どう思う? 少々御三方を神聖視し過ぎているきらいはあるが……私は受けても良いと思っている。使者の人選には要望は出すがな」

 

「そうですね。温和かつ柔軟で余計なことを言わぬ者であれば大丈夫かと。なにせ父上のお陰で本当に最近の萃香殿は大人しい」

 

「違いない。では早速返事を送ろう。土産は……本当かどうか知らんが酒好きが多いらしいから、極限まで薄めた鬼の酒でいいな」

 

「萃香殿に頼んでおきます」

 

「頼む」

 

 

こうして両国の対談の準備は進められ、場所は移動の負担を考慮してカッツェ平野周辺の最も立派な砦で行われることになった。

 

 

 

 

 

法国の使者は、神官長および漆黒聖典第八席次巨盾万壁だった。アンデッドの姿ではなくなった鈴木悟を見て困惑していたが『むしろ法国民に受け入れられやすくなった』と内心喜んだ。

 

一方の鈴木悟は第八席次の両手に盾スタイルを見て、少しだけ懐かしい気持ちになっていた。

 

 

「ぶくぶく茶釜さんみたいだなぁ……」

 

 

少しだけセンチな気持ちになりながら、既に終わったことなので切り替えて会談に臨んだ。

 

人類王側からはジルクニフとフールーダとバジウッド、鈴木悟とパンドラズアクターと萃香が出席した。

 

話はほとんどジルクニフと法国神官長の間で行われた。

 

鈴木悟ら3人はたまたまジルクニフと利害が一致しただけで特に野心は無いこと、3人の求めるものは既に手に入ったためこれまでのように積極的に人間に関わることはないことを伝えた。

 

また、過度に持ち上げられるのも苦手なのでできれば遠慮してほしいことも伝えた。

 

法国側は『神が人類の救済に積極的に動いてくれなさそう』なことには残念そうだが、同時に満足そうではあった。

 

なにせ、絶大な力を持つ神が敵対しないということは確定したのだ。懸念であった法国の"人類種以外への強い排斥思考"も、『私に向けなければ興味無い』の鬼の一声で片付けられた。

 

現在行っている竜王国でのビーストマン駆除も『好きにやれば良い』という回答だった。これで法国は積極的に戦力を亜人の撃退に回すことができ、竜王国の延命が決まった瞬間となった。

 

そのまま会談が終わりに近付いたとき、萃香が気になっていたことを聞く。その鋭敏な嗅覚は酒の匂いを捕らえていた。

 

 

「なあ、神官長殿よ。もしかしてお前さん、かなりの酒飲みなんじゃないか?」

 

「これはこれは『鬼の四天王』様が声を掛けてくださるとは。左様です。我ら神官長以上は飲める者は基本的に酒豪しかおりません。いただいたお酒もしっかりと飲みました。とても美味でしたなぁ……もちろん酔って暴れる者はおりませんとも。あっ」

 

 

神官長の目の前の鬼は『飲みまくって酔いまくって暴れる』タイプである。口を滑らせた神官長は真っ青になり、慌てて謝罪を述べようとしたが萃香に止められた。

 

 

「いいよいいよ。酒に溺れるのが鬼ってもんだ。そして人間の癖に随分酒が強いようで何よりだ。送ってくれた酒も美味かった。ちょいと薄いがな。なあ、そろそろ話は終わりにして宴会しようぜ」

 

「確かに良い機会だ。今すぐとはいかないが……1時間もあれば食事も提供できる。味は保証しよう」

 

 

ジルクニフも同意する。最初から開催するつもりだったし、法国側にとっても宴会はコミュニケーションの一つなのだと確認できたため、互いの理解を深めることができると考えたからだ。

 

 

「いいねぇ。よっしゃ悟! 早速飲もう!!」

 

「良いですね!」

 

 

鈴木悟は元来酒好きだが、半鬼化したことでそれに拍車がかかっていた。これはこれで手間がかかるかもしれない、とジルクニフが苦笑した時に、突然聞き慣れない声が響いた。

 

 

「その宴会とやら、僕も参加して良いかい?」

 

 

いきなりだった。その場に白金の鎧がいつの間にか現れていた。鎧は周囲の様々な感情を無視し、喋り続ける。

 

 

「僕の名前はリク。リク・アガネイアだ。何やら集まっていたようだから勝手に来させてもらったよ」

 

「白金の鎧……貴様、白金の竜王の手先か!!」

 

 

真っ先に反応した法国神官長が怒気を顕にする。それを無視し、鎧は話を続けた。この鎧姿の者には激昂する神官長の姿が見えていないと、それがわかる態度だった。

 

 

「仲が良いのは結構なんだけどね。君たちわかっているのかい? ここは君たちのいるべき場所じゃない。何やら人間たちの神になって良い気分になっているみたいだけど、お呼びじゃないんだ。君たちのような"力があり過ぎる"存在ははっきり言って世界の安寧のためには邪魔なんだよ」

 

 

ベラベラと自分の話だけする空気の読めない鎧に対し、周囲の悪感情が高まっていく。

 

 

「おい、鎧」

 

 

その時、突然萃香が声を発した。

 

そして隣に座っていた鈴木悟が立ち上がり身構えた。付き合いの長い鈴木悟だけ、鬼の虫の居所の悪さを感じ取ったのだ。

 

 

「『鬼の四天王』か。名前は名乗ったんだがね……なんだい?」

 

「1ヶ月も前から正式な文を送ってきた上で手土産まで持ってきたやつ。そしてみんなで仲良くお話ししてるところに突然現れて我が物顔で偉そうに意味の分からん口上を述べるやつ。果たしてどっちがお利口さんだと思う?」

 

 

痛烈な皮肉だった。神から褒められた法国の者たちは少し得意げになるが、すぐに表情を引き締めた。鬼の纏う空気が剣呑なものだと気付いたからだ。

 

 

「……それについては謝罪する。土産が欲しいなら後で持ってこよう。だから今回は勘弁してくれないかい?」

 

「嘘だな。オマエは今、微塵も申し訳ないなんて思っちゃあいない。相変わらずこの場の全員を見下してやがる」

 

「……」

 

 

今度こそ鎧は沈黙した。

 

 

「世界の安寧を保つ? 他所から来たやつは大人しくしろ? 結構じゃないか。空の鎧を通してコソコソ隠れているような臆病者が吐いた言葉じゃなかったらな。まったくデカい図体には似合わない気の小ささだぜ。所詮はサイズだけ大きくなったトカゲだな」

 

 

発する雰囲気とは裏腹に、萃香の不自然なほど陽気な声に場が沈黙を支配する。

 

 

声を掛けられた鎧、いや白金の竜王、ツァインドルクス=ヴァイシオンは密かに瞠目した。鎧の中が空だとバレた? なぜ自分の本体を知っている? 誰かが漏らした? いやそんな者はいないはずーーーー

 

 

「まさか……評議国から操っているのか。なんという範囲の広さ……これが竜王……!」

 

 

神官長の言葉にジルクニフやパンドラズアクターは確信する。この鎧の中には誰もおらず、そして操り主はかの有名な白金の竜王であると。

 

そしてこの場の誰もが確信した。最初から主導権を握っていたのは人類王でも人類の守護者でも、まして竜王でもない。

 

 

「でさぁ、オマエ。さっきのは私にも言ってるんだよな?」

 

 

凄惨な笑みを浮かべているこの鬼こそが絶対者だった。

 

 

瞬間、はるか彼方のアーグランド評議国に居る白金の竜王が身体を起こした。竜の鋭敏な知覚を通して凄まじいほどの感情が伝わってくる。これはーーーー怒気。

 

 

「オマエは鬼に、この私に命令したんだ。犬のように黙って言うことを聞け、腹を見せて服従しろってな。クソ喰らえだ。ジルクニフや悟の手前、我慢してやったが……これ以上私に巫山戯たことを抜かすなら今すぐその鎧をぶっ壊す。そしてオマエのねぐらを探し出し、ネズミみてーに隠れている臆病者をお天道様の下に引き摺り出してやる」

 

「やはり君は危険だ。この世界の安寧のためにはーーーー」

 

「馬鹿が。私の前でこれ以上嘘をつくな。オマエは世界の安寧なんぞどうでもいいと思ってる。ただ気に食わないんだろう? 私たちのような余所者がオマエの庭でデカい顔するのが。最初からそう言え」

 

 

ーーーーつべこべ言わずにさっさとやろうぜ、なぁ?

 

 

鎧はその言葉に対し沈黙を貫き、場が膠着した。

 

 

「あの、リクさん。いや、白金の竜王さんかな。いいですか?」

 

 

悟が話し出す。萃香は機嫌が悪そうだが、その話を遮ることはしない。

 

 

「とりあえず貴方の危惧するようなことは起こらないと思ってください」

 

「……それを信じろと思うのかい? 少なくとも君たちは王国を侵略するという大事を成した。その勢いのまま、この大陸を混沌の渦に落とさないと言えるのかい?」

 

 

痛いところを突いてくる。しかし、そのくらいは鈴木悟にも予想済みだった。

 

 

「それは俺たちにとって必要なことだったからです。貴方にもあるように、俺たちにも俺たちの都合がある。それがダメだって言うなら逆に聞きますけど、貴方の都合は誰が許可しているんですか?」

 

「僕はこの世界の調停者で、君たちは余所者だ。全く違う。それで良いだろう」

 

「それは違います。話していてわかりますが……俺の鬼の部分が言ってます。"貴方は強い"って。それこそこの世界においても異常なくらいに。ねえ、白金の竜王さん。貴方は、貴方たちの種族は本当にこの世界出身なんですか?」

 

「なにを……僕の先祖を愚弄するのか?」

 

 

初めて鎧が見せた感情の揺らぎ。その迫力に押されそうになった悟は傍の頼もしい存在に支えられた。

 

 

「やっと本心が出て来たな。トカゲは失礼だったか。デカい蛇くらいにしといてやろう」

 

 

獰猛に笑う鬼は、しかし優しく鈴木悟の身体を支えてくれている。それが何よりも力を与えてくれた。

 

鈴木悟は考えていた。現地人と竜王の間に存在するような不自然過ぎるほどのレベル差。六大神という助力があったとはいえ脆弱過ぎるにも関わらず生き残っている人類種の謎。様々な種の存在する大陸。

 

"ここ"はそういう場所なのではないかと。自分のたちのような"流れてきた者"の集まる場所であり、眼前の竜王の祖もかつてはそうだったのではないかと思っていた。

 

竜王はかぶりを振った後、再び口を開く。

 

 

「……すまない。冷静さを欠いていた。続けて欲しい」

 

「ありがとうございます。俺が言いたいのは……俺たちも貴方も"今ここに生きている"ことは同じなんです。だから互いに言いたいことはあるし、気に入らないこともある。でも、それは一方的に相手を自由にさせることと同義じゃない」

 

「僕に譲歩しろと。結局は君たちが都合の良いようにしたいだけじゃないのかい?」

 

「互いに歩み寄ろうと言っています。俺たちはこの世界で自由に生きたい。貴方はそれを許したくない。だったらお互いに少しずつ我慢したら良いと俺は思います。だって俺たちは皆生きていて、意志がある。それは無視されていいものじゃない」

 

「……君たちが殺した者たちにも意志はあったと思うけどね」

 

「それは貴方がこれまで殺した人たちにもあったはずです。そういう意味ではやっぱり俺たちは同じですね。それで……白金の竜王さん、提案があります」

 

 

互いに血の匂いを漂わせる者たちは、しかし冷静に言葉を交わしている。

 

 

「唐突だな。でもいいよ。言ってみなよ」

 

「これから俺たちのようにユグドラシルプレイヤーや、もしくは他の世界から来る人たちがいると思います。その人たちに対して同じように『共存しよう』と一緒に唱えてくれませんか?」

 

 

竜王は考え込んだ。言うことに一理はある。侵略者がこれからも来続ける可能性は大いにあるし、対抗戦力として鬼の戦力は特に得難いものだと。

 

 

「……妥協も必要か。いいよ。協定を結ぼう。ただし、その者たちがこの世界に仇なすと判断したら君たちがどう思おうとすぐに殺すよ。そしてその対象は君たちも例外じゃない。僕は誤魔化されない。君たちが何かしでかそうとしたときは……その時は遠慮なく殺そう」

 

「そん時は私がお前を殺すよ。しかし悟。ちっとは鬼らしくなったな。良いじゃないか。互いにワガママをぶつけ合い、ダメなら殺し合う。よっぽど健全な関係だ」

 

 

目をギラつかせながら笑う萃香に、鎧は肩をすくめる。

 

 

「鬼ってのはこんなに野蛮な種族なのかい? まったく、次に来る者は少なくとも鬼じゃないことを祈るよ」

 

「それは俺も思います。そして……本当は殺し合わなくて済むならそれが良いんですけど……俺も鬼です。黙って殺されるのはごめんです。その時は俺も全力で抵抗します」

 

「良いよ、それで。僕も全力を尽くして君たちを殺そう。そしてそれまでは良き隣人として過ごそうか」

 

「よし、決まりだ! 私たちは今まで通り自由にやる。蛇のヤローも自由にやる。なるべく互いに気を遣うが、ぶつかった時は全力で殺し合う。それでいいな!!」

 

 

ここに竜王と鬼の協定が結ばれた。やれやれ、と鎧が肩の力を抜く。そのまま鈴木悟に気軽に話しかけてきた。

 

 

「鈴木悟。君はどうやらこれまでの侵略者たちとは違うようだ。願わくば、君たちと末長く協力関係であることを望むよ。あと……そこの鬼をもう少し大人しくしてくれると助かるね」

 

 

萃香はもう興味が無くなったようで、腰の瓢箪から酒を飲み始めていた。それに鎧と鈴木悟は苦笑し、しかし鈴木悟は真面目な顔で言った。

 

 

ーーーー萃香さんはまだ本気で怒ってないですよ。

 

 

その言葉に場が震え上がる。これほどの激情を迸らせておきながらまだ上があるのか。再び鬼の恐ろしさが知れ渡ったところで、鎧はくつくつと笑った。

 

 

「ご忠告、痛み入るよ。とりあえず今日は帰った方が良さそうだ。そうだ、鈴木悟。こっちこっち」

 

 

手招きされるままに近付くと、声をひそめて鎧は言った。

 

 

「ツアーだ。僕の名前だよ。きみと鬼の彼女と……ハニワみたいな顔の男には教えて良い。だけどあっちの二人はダメだ。僕、法国嫌いなんだよね」

 

「それは本当に思っているな」

 

「うわ、萃香さん近い」

 

「おら、さっさと帰れ。飯と酒が不味くなる」

 

「ははは、まるで親猫だ。じゃあね」

 

 

その言葉を皮切りに、鎧はガシャガシャと音を鳴らしながら砦から走り去っていった。それを見送った後、その場の各々は複雑な心境はありながらも宴会を楽しんだ。

 

宴もたけなわといったところで、法国側から鈴木悟に対しておずおずと提案がなされた。

 

 

「ユグドラシルプレイヤーの遺した脅威? それがカルネ村の近くにあるのか」

 

「左様でございます。あの憎き竜王の言葉の手前、鈴木悟様には申し上げにくいのですが……何卒助力いただけないでしょうか」

 

 

早速プレイヤー関連の厄介ごとが舞い込んできた。名は破滅の竜王。法国の予知能力者がその復活を予期し、今さっき伝達してきたようだ。

 

 

「村の近くねぇ。うーん……あの、村の周辺にモンスターを置いてまして……間違って倒さないようにお願いしたいです」

 

「なるほど。後で特徴を教えていただけますか? 隊員に周知します」

 

「よろしくお願いします。ただ、同種の野生のモンスターもいるかもしれないので最悪攻撃しても構いません。アレはまた召喚したら良いので。そして破滅の竜王とやらの討伐、協力しましょう。竜王さんもプレイヤー関連なら何も言わないとのことなので」

 

「おお、なんと慈悲深い言葉……! 鈴木悟様、やはり貴方は人類の光……!!」

 

「いや、まあ好意を持ってもらえるのは嬉しいけど……なんかオーバーなんだよなぁ」

 

 

困り顔の鈴木悟に、くすくすと笑いながら萃香が話しかけてくる。

 

鬼の接近に神官長は冷や汗をかきながらもその場で直立し、表情を変えないようにじっと耐えた。鬼の持つ強い二面性に慣れるのはまだまだかかりそうだった。

 

 

「ちょうど良いじゃないか。その時はさっきのアイツも呼ぼうぜ。あの臆病者の力を見る良い機会だ。なぁに、前に持ってこなかった土産の代わりの詫びをしろって言ったらすぐ来るだろ」

 

 

来たら今度こそ死ぬんじゃない? とは誰も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間後

 

 

一同は破滅の竜王が封印されているとされるトブの大森林の深部に集合していた。そこには白金の鎧の姿もあった。

 

 

現れた竜王は開口一番に

 

 

「本当は僕たちの庭で生意気言う鬼をぶっ飛ばしてやりたいけど……流石に僕の真の姿だと迷惑がかかるからね」

 

 

と述べたが、対する萃香は笑ってこれを受け流した。

 

 

「そういうわかりやすい態度の方が私は嫌いじゃない。まあツラ見せたら遠慮なくぶん殴らせてもらうがな」

 

「やっぱり野蛮だ。まあ僕は負けないけどね」

 

「言ってろ」

 

 

そんなやり取りを終えて、一同は今一度枯れ果てた森林を見た。鋭敏な知覚を持つ竜王や鬼でなくてもわかる。強大な何かがここにいることを。

 

そしてその封印が解けるのはもうすぐだということを。竜王および鈴木悟らは余裕の様子だが、法国の面子は緊張していた。

 

そしてツアーは鈴木悟、パンドラズアクター、萃香に話しかける。相変わらず法国が嫌いらしく、彼らは少し離れた位置に陣取らされていた。

 

 

「さて、ヤツが起きたらまずは僕がいこうか。そこの鬼にも目にもの見せてやりたいし」

 

「ぬかせ。からくり程度で私を測るな。ま、好きにやれよ。どうせ今回は私の出番は無い」

 

「意外ですね萃香殿。てっきり私はいの一番に駆け出すかと……ああ、なるほど。これは私も今回は出番が無さそうだ」

 

 

パンドラズアクターの視線の先には敬愛する父親の姿があった。上半身の装備は胸の中央で紅く輝く玉と補助魔法のかかった腕輪のみ。下半身に動きやすさ重視の少し緩めのズボンを装備した男は戦意を滾らせていた。

 

 

「ツアーさんが満足したら俺が出るよ。ジルクニフさんのおかげで人払いは出来てるし……ちょっと試運転してみたいんだ。鬼の身体になってから、すこぶる調子が良い。なんだか力が漲ってくるんだ」

 

「だ、そうだ。高みの見物といこうや、パンドラズアクター」

 

「そうですね。父上、ツアー殿。破滅の竜王の頭頂には貴重な薬草が生えているそうです。そちらの回収だけさせていただきます」

 

 

応、と声が聞こえた後、地鳴りが響き始めた。

 

白金と白髪。二人の気合いに応えるように破滅の竜王、ザイトルクワエが動き出したのだ。

 

 

 

 







こいつら殺す殺す言い過ぎだろ……野蛮人かよ

※鈴木悟が置いたモンスターの影響でザイトルクワエは起きました。原作風のマッチポンプですね。すぐ死ぬところも(ネタバレ)
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