鈴木悟は鬼に憑かれている   作:サイドベント

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萃香の提案でツアーが来るの分かってたので法国は世界級アイテム持ってきてません。

※修正箇所:神の血を覚醒させた者はツアーに見られたらやばいらしいので、隊長は法国に隠れてもらうことにしました


破滅の竜王死す

 

 

 

 

地鳴りを上げながら立ち上がった破滅の竜王ザイトルクワエに向かってリク・アガネイア改めツアーは駆け出した。

 

爆発的な加速。踏み出す一歩一歩の反動で地面が爆発したように弾ける。その勢いのままツアーはザイトルクワエの元へ殺到し、ハンマーのような武装を本体に叩き付けた。

 

固い物が割れるような音を出しながら、せっかく立ち上がったザイトルクワエの身体が倒れる。100メートルを超えるその巨体と比べれば豆粒のような大きさだというのに、まるで何でもないかのようにツアーはザイトルクワエとの力の差を一撃で証明した。

 

 

ーーーー何という重い一撃だ。

 

 

戦況を見守る法国の者たちは白金の鎧の戦闘力に戦慄した。

 

巨体が倒れる余波に巻き込まれぬよう、一足で萃香たちの近くに飛んで戻ってきたツアーは振り返らずに言う。

 

 

「どうだい。これでもまだ僕をデカいだけの蛇扱いするかな?」

 

「中々やるじゃないか。だが私なら今の一撃であの木偶の坊を真っ二つにへし折ってたね」

 

「鬼ってのは口も達者なのかい? 嫌になるねぇ!!」

 

 

突如振ってきた巨大な触腕を避けながら、ツアーが斜めに高く跳躍する。少々ダメージを受けて苛立ったザイトルクワエが六本の触腕を展開し、次々にツアーへと襲い掛からせたのだ。

 

ツアーはまるで軽業師のような身のこなしで次々と襲い来る触腕を避け、時に触腕の上を走りザイトルクワエ本体に接近していく。

 

ツアーはヒットアンドアウェイでザイトルクワエの本体に打撃を与えては触腕を躱し、大きな隙が生じれば大剣で触腕を切り飛ばした。その後も全く被弾することなくザイトルクワエの生命力を削っていく。

 

 

 

「鎧のツアー殿は完全な前衛タイプですね。80〜90レベル相当のタンクでしょうか。しかし身軽かつ攻撃方法が多彩だ。最初に展開したハンマーの使い方もそうですが、状況に応じて次々と切り替える手数の多さで確実に破滅の竜王の生命力を削いでいます。アレはかなり戦い慣れていますね」

 

「そうだな。武器は使わないけど、俺も最近近接戦闘が出来るようになったしあの動きは参考になるな」

 

 

パンドラズ・アクターと鈴木悟がツアーの戦闘を観察する。誰でも簡単PK術の基本は『情報の収集と蓄積』である。使うかどうかは別として、潜在的な敵の情報収集はもはや癖だった。

 

 

「ま、お前にはまだ早いよ悟。私には全く及ばんが、アイツもやっぱり化け物だ。鬼になりたて"ひよっこ"のお前があの軌道を真似すればあっという間に地面に突き刺さるだろうよ」

 

「ですよねぇ……とりあえず鬼の力はトドメで使います。ちょっとバフ掛けますね」

 

「お、予告か? 楽しみにしとくよ」

 

 

萃香の期待を嬉しく思いつつ、鈴木悟は次々と自分にバフ魔法を掛けていく。今の自分は下級種族とはいえ、鬼特有の高い身体能力を持ちながら魔法詠唱者としての能力も有している。ユグドラシル時代なら"反則"扱いだろう。

 

 

「ーーーーよし。一時的だけど最低限の前衛職としてのステータスにはなったかな。つくづく世界級アイテム様々だ」

 

「父上、萃香殿。そろそろ破滅の竜王の生命力が半分になります。おそらくですが……変わるでしょう」

 

「レイドボスあるあるだ。第二形態とか最終形態とかあるやつ。んでこっちのHPを一度1とかにしてくるんだよなぁ」

 

 

嫌な記憶を思い出していると、鬼の感覚が高速で飛来する何かを捉えた。

 

 

「父上。ツアー殿がきます。"交代"のようです」

 

「よし。いきます!!」

 

 

パンドラズ・アクターの隣に降り立つ白金の鎧と入れ替わりになるように鈴木悟が飛び出して行った。

 

ツアーほどではないが高速でザイトルクワエに接近していく。高度な思考能力は無いのか、接近する相手の種別が変わってもザイトルクワエは相変わらず触腕を振り下ろしてきた。

 

 

「きっちり半分の三本に減ってる……! 律儀だな!! 魔法最大化・リアリティ・スラッシュ!!」

 

 

第十位階の刃が一本の触腕に飛んで行き、あっけないほどに簡単に切り飛ばした。本体は別として、体力は高いが防御力はそこまででも無さそうだ。触腕は明後日の方向に飛んで行く。

 

つんざくような悲鳴を上げるザイトルクワエは、残りの二本の触腕を左右から鈴木悟に向けて振り払う。同時に本体が膨らんだと思えば、一気に大量の何かを射出してきた。

 

 

「フライ!! 数……多すぎ……ぐぉっ!?」

 

 

何かが腹部に直撃し、鈴木悟は吹き飛ばされた。そのまま周辺の木々を薙ぎ倒しながら100メートルは進む。

 

ザイトルクワエは無数の種子を放出していた。触腕で回避方向を限定させ、ショットガンのように広範囲に種子をばら撒くことで鈴木悟の逃げ道を見事に塞いでみせたのだ。

 

なお、ばら撒かれた種子は地面に着弾する前に萃香の能力によって残らず集められ、潰された。放っておけば方角的にカルネ村まで飛んでいきかねなかったし、また同じものが育っても面倒だっただからだ。

 

 

「いってー……まあ上位物理無効化くらい貫通するよなぁ……うわ!!」

 

 

触腕の追撃を紙一重で躱し、鈴木悟は再び空中に躍り出る。先ほど唱えたフライの効果時間はまだ継続している。

 

 

「ちょっと……距離が、遠いな……タイムストップ!! よし、時間停止対策は無いみたいだな」

 

 

ザイトルクワエの触腕は長い。彼我の距離が広いほど好きに攻撃されるのは明らかであったため、鈴木悟はザイトルクワエの近くまで飛行した。

 

そのまま大規模な攻撃魔法と遅延魔法化の組み合わせで一気に削ろうとした時、未だ時間停止中であるにも拘らずザイトルクワエが突如動き出した。

 

 

「うお! あぶな!! どっちだよ、もう!!」

 

 

悪態を吐きながらも触腕を躱す。鈴木悟の鬼の目はザイトルクワエの動きを既に捉えていた。これだけ長い時間触腕を回避し続けることもアンデッドの体ではできなかっただろう。

 

加えて鬼特有のセンサーでもあるのか、ザイトルクワエの次の動きが何となく読めることに鈴木悟は気付いた。触腕を避ける動きが段々と小さくなる。最小限の動きで躱すことが出来るようになる。

 

 

「悟のやつ分かってきたな。そうそう、私じゃないんだから攻撃は無駄に受けるな。そして馬鹿みたいに飛ぶんじゃない。動きは最小限だ。そうしたら……ほら、隙ができる」

 

 

中々攻撃が当たらないことに苛ついたのか、ザイトルクワエが大振りの攻撃を繰り出す。それを再び髪の毛一本分横に躱した悟は、ガラ空きとなったザイトルクワエの本体に魔法を叩き込んだ。

 

 

「魔法最大化・リアリティ・スラッシュ!! 流石に本体は固いな……だけど、お前の攻撃はもう当たらない」

 

 

あとはもう作業ゲーだった。鬼の性質のオートリジェネもあってこちらはほとんどダメージが残っていないのに対し、生命力が残り僅かとなったザイトルクワエはその動きを鈍らせていた。

 

 

「生命力がゼロになる少し前からバッドステータスが現れるのは同じか。お前の場合は疲労か? 動きが鈍いぞ」

 

 

爆炎の魔法を叩き込めば、ザイトルクワエの動きがより緩慢になった。そうして鈴木悟は準備を整える。鬼の力でトドメを刺す準備を。

 

 

「終わりにしよう……<<絶望のオーラ レベルⅢ>> 効果は"混乱"だ」

 

 

突如襲い掛かった混乱にザイトルクワエは自分が瀕死なことも忘れて暴れ出したが、もはや失った触腕を振り回そうとしたり、残弾の無い種子を放出しようとしたりするのみで、そのいずれもが鈴木悟の障害とはなり得ない。

 

その場でジタバタとするだけとなったザイトルクワエの前で鈴木悟が腰だめに拳を構える。

 

ギシギシと握り締めた拳から音が鳴る。混乱の中でも生命の危機を感じ取ったのかザイトルクワエはより一層激しく動き、土砂が鈴木悟に降り掛かるが、その一切は鈴木悟の集中を乱すことはできず。

 

鈴木悟が鬼として未熟故に集中を必要とするが、その分威力は絶大。混乱が解けたザイトルクワエが牙を剥き、鈴木悟に襲いかかった瞬間その一撃は放たれた。

 

 

<<鬼の一撃>>

 

 

ボッ!! と拳が放たれる音と共に、あれほど頑強だったザイトルクワエの本体に拳が突き刺さる。瞬間、拳の突き立った箇所を起点にザイトルクワエが爆散した。

 

周辺にザイトルクワエだったものの破片が散らばるが、パンドラズ・アクターはめざとくザイトルクワエの頭頂部付近のパーツを見つけ、薬草ごとこれを回収した。

 

 

「おー。ちょいと不恰好だが宣言通りだな。これでようやく悟も胸張って鬼を名乗れるってやつだ。ま、尻拭いを私にさせるあたりまだまだだがな」

 

「ありがとうございます萃香殿。そしておめでとうございます父上。さて、破滅の竜王は死亡。薬草も無事のようですし、任務完了ですね」

 

「ふむ……『鬼の四天王』が闘うところが見れなかったのは残念だけど、一応鬼の力の一端は見れたかな」

 

「おお……神よ……いや、鈴木悟様……竜王の存在は忌々しいが、貴方様はやはり人類の光!!!」

 

 

様々な評価を手に、鈴木悟は帰還した。

 

 

「よお悟。初めてはどうだった?」

 

「萃香さん言い方!! まあ良かったです。やっぱり鬼の高速思考のおかげで魔法詠唱者としての動きにも迷いが少なくなりましたし、近接戦闘の状況判断も早くなる感じがありました。達人みたいな避け方もできましたし。あとは物理系スキルの威力の高さですね。弱っていたとはいえレイドボス並みの相手を一撃で粉砕は爽快でしたね」

 

「うむうむ。鬼の良さがわかったろう。特にさっきの無駄の無い動き、覚えとけよ」

 

「まるで師と弟子ですねぇ。私も弟子、探しましょうかね」

 

 

パンドラズ・アクターが少し羨ましそうな視線を送ってくるが、悟はそれに笑顔で応えた。

 

 

「お前、帝国魔法学院でめちゃくちゃ人気らしいじゃないか。もう立派なお師匠様だよ」

 

「それだな。よっ! お師匠様!! 夜の課外授業!!!」

 

「萃香さん、なんかオッサンみたいになってません……? まあ、いいか」

 

 

和気藹々としながら一向はその場を後にした。法国の面々は、破滅の竜王の残り香に誘われて空いたスペースに押し寄せてくるモンスターたちを牽制するために少し残るようだった。

 

ツアーも用は無くなったため、簡素な挨拶を済ませるとすぐに去っていった。あの会談の後知ったことだが、アーグランド評議国の永久評議員をやっているらしく結構忙しい身のようだ。

 

 

「ツアーさんも苦労してるんだなぁ……今度お酒送ってあげよう。飲むのかわかんないけど」

 

「まあ飲むんじゃないか? 昔から図体がデカいやつは酒飲みだと相場が決まっている」

 

「そうなんだ……あ! カルネ村いきましょうよ。俺この姿になってからンフィーレアくんとかエンリさんたちに挨拶してないし」

 

「そうですね。では向かいましょうか」

 

 

鈴木悟ら三人はカルネ村に向かう道中、デカいハムスターと遭遇しこれを調伏(話しかける前に萃香の姿を見て平伏した)、ついでにカルネ村に連れて行くことにした。

 

 

「某は聞いたことがあるでござる! 可憐な少女の見た目をした角の生えた鬼という種族のことを。そして見ただけでわかったでござるよ! 萃香殿は強い!!」

 

「おーよしよし。可愛いなこいつめ。私はお利口な動物は好きだ」

 

「俺もこのモフモフは癖になりそう……あー、連れて帰っちゃダメかなぁ」

 

「推定レベル30を超えていますし、ここ一帯の何らかの主の可能性は高いです。カルネ村への影響を考えると……断念するべきかと」

 

「だよなぁ。とりあえず村の人たちに聞いてみてからにするか。えーっと……名前あるのかこいつ」

 

「某は『森の賢王』を名乗っているでござる! 昔人間が付けた名前でござるが……結構気に入っているでござる!」

 

「おお、良い名前じゃないか。しかし『鬼の四天王』みたいで少し大袈裟じゃあないか? 悟、なんかもう少し可愛いの付けてやれよ。もちろん『森の賢王』はそのままで良いが、親しき者だけに明かす名があっても良いだろう」

 

「あー、萃香さん好きですもんね。それじゃあ……ハムスケ」

 

「おお! 悟殿に名付けてもらえるとは……某の真の名はハムスケ!! 力ある者には名乗ることにするでござる!」

 

「やったなハムスケ。お、村だ」

 

 

カルネ村の住人は萃香の姿を見て歓待し、ハムスケの姿を見て慌てふためいた。パンドラズ・アクターの見事な説明のおかげで騒ぎはすぐに落ち着いたが、やはりハムスケを連れて帰ることは出来なさそうだった。

 

村長は申し訳なさそうな表情で述べた。

 

 

「カルネ村は比較的大人しい森の賢王の縄張りであるが故に平和が保たれていますので……」

 

「そうだよなぁ。俺の置いたモンスターもいちいちゴブリンとか相手に出動してたら世話無いし。残念だけど置いていくか。ありがとうございます、村長さん。ハムスケも暇になったら村に出て来ていいよ。村長さんに言ってくれたら様子見に行くからさ」

 

「悟殿……! 某はいつでも歓迎するでござる! そしてこの村の平和の維持も任せるでござる!!」

 

「頼もしい限りだ。いい子にしてるんだぞ」

 

 

そう言って優しくハムスケを撫でる萃香の笑顔を見て、鈴木悟は『優しい表情の萃香さんも良いなぁ』なんて思っていたし、それを見たパンドラズ・アクターが『父上は早く押し倒されたら良いのに』と思っていたりした。

 

村長はおずおずと話しかけてくる。

 

 

「あの……鈴木悟様。貴方の置いてくださったモンスターはすっかり村の者たちの人気者となっておりまして。本当に感謝申し上げます」

 

「それは良かったです。ンフィーレアくんにも挨拶したいんですけど、どちらにいらっしゃいますか?」

 

「ンフィーレアはエンリの家に居ると思います。研究をしていてこもっていることが多いので……呼んできましょうか」

 

「ああ、良いんです。こっちから向かいますから。あれ?萃香さんどうしました」

 

「いや? ちょっと耳をすませてみたらな。悟。そうだな……5分くらい待ってから行こうぜ」

 

「??? まあ、良いですけど」

 

 

パンドラズ・アクターは得心がいったようだった。

 

 

「なるほどなるほど……ンフィーレア殿はスピードは獣並み、と。父上、念のため10分待ってから行きましょうか」

 

 

それから10分後、エンリの家を訪れた三人はなぜか少し着衣が乱れて顔を赤く染めたンフィーレアとエンリに迎えられた。鈴木悟だけは『急に来て急がせちゃったかなぁ申し訳ないなぁ』なんて考えていた。

 

 

「ンフィーレアくん、村での生活には慣れたかな」

 

「はい。お陰様でバッチリです。悟さんの提供してくださった赤いポーションのおかげでお婆ちゃんもとっても元気に研究してますし、充実しています。本当にありがとうございます」

 

 

鈴木悟はユグドラシル産の赤いポーションを『量産ができたら嬉しいなぁ』と気軽な気持ちでンフィーレアに幾つかサンプルとして渡していた。

 

今となっては鬼の身体は勝手に回復するので別に成果が出なくても構わないが、ンフィーレアが熱心に研究をしているため渡して良かったと思っている。

 

 

「やはりこの辺りの材料だけで再現するのは難しく……最近やっとこのポーションが出来ました」

 

「おお? 紫色だ。なるほど、赤色と青色の中間な訳だ。すごいじゃないかンフィーレアくん。あんまり材料は持ってないけど何か必要そうなら言ってね」

 

「ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします」

 

 

二人は笑顔で握手した。ンフィーレアはすっかり姿が変わった鈴木悟の姿を見つめた。萃香がからかうように言う。

 

 

「どうした? ンフィーレア。悟の肉体美にでも惚れたか?」

 

「あ……いえいえ! でも、その……やっぱり逞しい方が良いのかなぁって」

 

「私はそっちの方が好きだが、エンリはどうかな? そろそろ茶の準備も出来たようだし、聞いてみれば良いじゃないか」

 

「そ、そうですね……」

 

 

そこへ茶を盆に乗せたパンドラズ・アクターとその後ろを申し訳なさそうについてくるエンリが現れた。

 

客人に仕事はさせられないと断るエンリと、"とある理由"でエンリを安静にさせたかったパンドラズ・アクターの小さな争いの結果だった。

 

 

「あ、エンリ! その……聞きたいことがあるんだ」

 

「なぁに? ンフィーレア。あと私も言いたいことがあるんだけど……」

 

「"おめでた"か。なんだ、研究ばかりやっているのかと思ったがちゃんとソッチもやってるんじゃないか。まあ昼間からはやめといた方がいいかもな」

 

「「え?」」

 

 

萃香の声に鈴木悟とンフィーレアの疑問の声が重なる。萃香はニヤニヤと笑うばかりなので、パンドラズ・アクターが後を引き継いだ。

 

 

「落ち着いて聞いてくださいね、ンフィーレア殿。エンリ殿は妊娠しておられます」

 

「え……ええ!! あ、すみません大きな声出して……そ、そうなんだ。やった……やったね! エンリ!! おめでとう!!」

 

「やだ、お客様たちの前で……でも私も嬉しい」

 

「おお、これは……良いな。パンドラズアクター。頑なに茶を淹れたがったのはこういうことか。お前は本当にできた息子だなぁ」

 

 

パンドラズ・アクターは鈴木悟の賛辞に体を震わせ黙礼した。

 

その後、三人は邪魔をしては悪いということで早々にエンリの家を出た。

 

鈴木悟は妊婦さんの身体に良いとされるグッズを沢山送ることを約束し、萃香は構ってもらえなくて拗ね気味のネムと一緒に遊んでやり、パンドラズ・アクターは村の運営について村長に的確なアドバイスと引き続きの支援を約束した。

 

そして用が無くなり、帰る段となったところで。

 

 

「父上、萃香殿。私はこのまま旧王国領にて野暮用がありますので先に戻られてください」

 

「おお、お前のことだから大丈夫だろうけど気をつけるんだぞ。何かあったら遠慮なく言ってくれよ」

 

「ありがとうございます。必ずそのように致します。では」

 

 

パンドラズ・アクターは颯爽と去っていった。それを見届けた二人は少しだけ沈黙する。少しして鈴木悟が口を開いた。

 

 

「転移門は……やめとくか。萃香さん。やることも無いし……せっかくだから歩いて帰りませんか。もちろん飽きたら転移門使いますけど」

 

「良いぞ。歩いて帰ろう。夜には月を見ながら一緒に酒を飲もう。なぁに、まだまだ先は長い。のんびり行こうや」

 

「そうですね。のんびり二人で行きましょう」

 

 

それから二人はたっぷり一週間かけて帝都に戻った。帰って来た二人はより一層仲良くなったようで、それを迎えたジルクニフは満足気に『おかえり』と言った。

 

二人は声を揃えて言うのだった。

 

 

 

 

『ただいま』

 

 

 

 






一区切り付いたかなって感じです。

短編の用意はある。面白い話を思い付くように自分で願ってます。
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