鈴木悟は鬼に憑かれている   作:サイドベント

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時系列は、ザイトルクワエをバラバラにした後、鈴木悟と萃香がのんびりお散歩しながら帰ってるあたりです。




蒼の薔薇の小さな春(章末)

 

 

 

 

 

アダマンタイト級冒険者 蒼の薔薇

 

鈴木悟らが異世界転移してくるまで、元王国貴族であるリーダーのラキュースを筆頭に、彼女らは王国のトップランクの冒険者として激動の日々を過ごしていた。

 

しかしいざ王国併合が行われた際、彼女たちはその一切に関わっていない。

 

蒼の薔薇は王国外での長期間の任務を受けており、無事に任務完了して拠点の王都に帰って来てみれば、祖国は帝国に併合されていたのだ。

 

当時の蒼の薔薇が受けた衝撃は強く、旧王国領に帰国してからも数日の間は信じられなかったが、王都の冒険者組合や駐留する帝国軍騎士たちから情報提供を受けたことでようやく現実のものとして受け入れた。

 

しかし、考えてみれば悪いことばかりではないのだ。

 

犯罪組織との癒着、違法な奴隷の所有等の悪行を働いていた貴族たちは軒並み斬首された。そして幸いなことにラキュースの出奔したアインドラ家は普通の貴族であり、特に取り潰されることは無かった。

 

併合後は貴族というだけで肩身の狭い思いをしているようだが、命あっての物種である。

 

 

「地下組織八本指のリーダー格たちも全員自首。確かに平和になったんだけど……やっぱり慣れないわね」

 

 

いつの間にか祖国が地図上から消えていた衝撃は未だ消えない。一応、人類王ジルクニフの配慮によって各都市の名前や王族の名はそのまま残されていたが、それでも緩やかに王国の名残は消えていくのだろう。

 

それに寂しさを覚えつつ、しっかり前を向かないと! と自分に言い聞かせるラキュースだった。

 

 

「それにしても……暇ね。ラナーからの依頼もこのところ無いし、モンスターの討伐任務も新帝国騎士団が主導してるから中々無いし……」

 

「ウチらの商売、上がったり」

 

「もう荷運びの仕事でもするしかない。鬼リーダー、何とかして」

 

「そうは言ってもねぇ……ほんと、平和が何よりだわ」

 

「だけどよぉ。こうも暇だと腕が鈍っちまうぜ」

 

「フン。神とやらは気に入らんが……腕は確かなようだな。気味が悪いくらい順調だ」

 

 

メンバーから口々に不平は出るが、全員現状が悪いと思っている訳ではない。仮面の少女イビルアイの言う通りむしろ良過ぎるくらいだった。

 

帝国に降臨した人類に味方する三人の神。そして辣腕を発揮しつつも確かな人情を見せる人類王の見事な政治手腕。急激な変化についていけない者たちの小規模なトラブルこそあるが、街中は以前と比べても圧倒的に平和だった。

 

しかし、そんな時に待ち望んだ依頼が舞い込んだ。蒼の薔薇は勇んで依頼者の元へ向かった。

 

 

 

旧王城の一室にて。

 

元第三王女のラナーとラキュースが話をしている。

 

 

「王都の地下に謎の遺跡? 本当なの、ラナー」

 

「はい。八本指の潜伏施設を探すために帝国騎士団が捜索していた際に見つけたそうなの。把握できた空間の広さだけでもかなり大きくて、もしかしたら何らかの魔法による拡張が行われているかもしれないって」

 

「それは……相当な厄ネタね。もし何かが潜んでいたとしたら、王都に住む人たちが危ないわ」

 

「ええ。わたくしも人類王と特別にコンタクトが取れたから知った話だけれど……くれぐれも外部に漏らしてはダメよ、ラキュース」

 

 

自分たちの住む足元に空間があり、未知の何かが蠢いているかもしれない。その情報は住民のパニックを誘発するには十分だろう。

 

ラキュースはそんなラナーの民を思う気持ちを尊重し、またその黄金の精神を尊敬した。

 

 

「わかっているわ。それで……私たちはその遺跡を調べれば良いのね」

 

「そう。帝国騎士団は閉所の探索には向いてないし、旧帝国内では冒険者の地位が低かったから冒険者の数も少なく、アダマンタイト級も運が悪いことに長期任務でいない。だから蒼の薔薇に白羽が立ったの。一応、降りて来られた神々にもお聞きしたんですけど……皆さん一様に『知らない』とのことです」

 

 

正確にはジルクニフが窓口となり、パンドラズ・アクターがまとめた三人の意見をラナーに伝えていた。

 

鈴木悟は王女様と直接会話するのは慣れていないし、萃香とラナーの相性は最悪である。

 

ジルクニフはそもそもラナーと関わりたくないと思っているので、義理として窓口は務めたが対応の中身はこれ幸いとパンドラズ・アクターに投げていた。

 

なお王国併合後、普段ジルクニフは三人に政治的な話を持ちかけることは無かったがそれでもラナー関連だけは別だった。如何に苦手かが分かる。

 

自分の親友が他人から蛇蝎の如く嫌われている。そんなことは露とも知らず、ラキュースは強く決心した。必ず親友の"民を思う気持ち"を形にしてみせると。

 

 

「わかった。これは王国の一大事。すぐにでも出立します」

 

「お願いします。ラキュース。貴方は私の親友よ。無理しないでね」

 

「ありがとうラナー。貴女も苦労してない? 何かあったら遠慮無く言うのよ。攫ってあげることくらいはできるわ」

 

「ありがとう。でも大丈夫よ。皆さんよくしてくださるし、何よりわたくしにはクライムがいるもの」

 

 

花のような可憐な笑顔を見せる親友にラキュースは安心した。そして顔を引き締めた。

 

 

 

蒼の薔薇は早晩、地下にあるという遺跡の前に来ていた。ジメジメした地下通路を抜けると一気に広がった空間は、なるほど違和感がある。壁の材質まで違うようだ。

 

 

「本当にあった……皆、少し探索したらすぐここまで戻るわよ。何があるか全くわからない。これを繰り返して慎重に中の様子を探っていくわ」

 

「おう。こんだけ雰囲気が違うとやべー奴が潜んでいそうだ。慎重になるに越したことはねぇ」

 

「了解、鬼リーダー」

 

「何かあったら逃げるから、任せて」

 

「いや、逃げるな」

 

 

イビルアイのツッコミを華麗にスルーし、忍者の二人が先行する。

 

この先には十中八九罠がある。罠の探知と解除に定評のある彼女らに先行させることで引っ掛かるリスクを減らすのだ。

 

少しして二人が戻って来た。見たところ罠は無いが"嫌な雰囲気がある"ということだった。

 

 

「二人の勘にはいつも助けられて来たわ。みんな油断せずに行くわよ」

 

 

応、と声を出し陣形を保ったまま一行は進む。薄暗い通路ではあるが等間隔に灯りが設置してあるため歩きにくくは無かった。

 

そうしてしばらく進んでは引き返し、時折休憩を挟んでは探索を進めること2時間。

 

 

「こりゃあ……相当広いな。もしかして王都の地下全域に広がってるんじゃないのか?」

 

「かもしれないわね……これは私たちだけでは手に負えないかも」

 

 

ガガーランの言葉にラキュースが同意する。いくら優秀な冒険者とはいえ終わりの見えない作業には疲労感を覚えた。この状況で未知のモンスターに囲まれでもしたらひとたまりもない。

 

やむなく今日の捜索は中止し、ラナーと再び対応を練ろう。ラキュースはそう提案しようとしてーーーー気付いた。

 

今いる空間は広めの部屋になっていて、四方に穴が開くような形で道が続いている。ラキュースたちはどの穴から敵が来ても良いように散開していたが、その穴が全て静かに下りる壁によって音も無く閉じようとしていた。

 

 

「みんな! 走って!! できるだけ隣の人と一緒の道に入って!!」

 

 

リーダーの怒号に四人はそれぞれ近くの道に脇目も振らず走り出す。閉じ込められるとマズイ!! その一心で全員は飛び込んだ。

 

 

「くっ……何とか間に合ったけど……失敗だったかしら。全員であの場で固まれば……いや、考えても遅いわ。とにかく合流しないと」

 

 

あの場で待っていれば一網打尽だったかもしれない。そして今は各個撃破の危機が存在している。早くしなければ。

 

 

「多分、ティアとティナはそれぞれ一人。ガガーランとイビルアイは一緒に入った……はず。なんてこと、私が一番危ないじゃない」

 

 

索敵のできる忍者の二人はそれぞれ脅威から身を隠すことは得意だ。前衛と後衛の揃っている二人も生存の可能性は高い。

 

しかしラキュースは一人だった。戦闘力には自信があるが、忍者や狩人が持つような探索系のスキルも持たない自分はかなり危機的状況に置かれていた。

 

 

「動いていた壁は……ダメね。びくともしない。破壊したら……いや、通路の崩落に巻き込まれるかもしれない。進むしかない、か」

 

 

ラキュースは後退を諦めて進むことにした。ひとまずは合流を目指し、二、三歩歩き始めたところで、カチリと足元から音が鳴る。

 

 

「ッ!! やっぱり罠ーーーー」

 

 

慌てて飛びのこうとした時には遅し、ラキュースの身体はその場から掻き消えていた。

 

 

 

 

 

「ーーーー転移の罠……? どこかしら。まだ地下、みたいね」

 

 

ラキュースは先程と同じような材質の壁を視認し、現在地を把握した。いきなり断崖に放り出されなかっただけでも幸いだが、絶望的な状況は続いている。

 

そして気付いた。部屋の中に何かがいる。

 

ラキュースは背の浮遊する剣を展開し、また魔剣キリネイラムに手をかけた。いつでも飛び掛かれる準備をしながら叫ぶ。

 

 

「誰!? 出て来なさい!!」

 

「……見つからなければお互いのためになったと思うのですが……少々探索に夢中になり過ぎましたか。いやはや、私もまだまだです」

 

 

出てきた男はのっぺりとした顔をしていた。ラキュースは一層警戒して今にも剣を振りかぶらんとして、ギリギリでその特徴的な顔と衣服に心当たりがあることに気付いた。

 

ハニワのような顔。黄色い特徴的な襟付きの服。そんな奇抜な格好をした人外の話を最近よく耳にしている。

 

 

「あ……もしかして、帝国の神、さま……?」

 

「恐れ多くもそれは私には不適格です。私の名前はパンドラズアクター。偉大なる父上からいただいた名です。以後お見知り置きを、可憐なお嬢さん」

 

 

未だ剣を振り上げたままのラキュースに対し、パンドラズ・アクターがそれはそれは丁寧な礼を披露した。

 

 

 

 

 

 

 

10分後

 

 

「それじゃ、ガガーランたちは心配無いのね……良かった」

 

 

安心したように呟くラキュース。パンドラズ・アクターとの会話で以下の事実が判明したからだ。

 

 

1.ここは緊急避難用の通路と推察される。王都の至る所に出入り口が用意されていて非常に広い。それでも今の王都よりは小さいので建国当時の規模かと予想される。おそらくは王族用だが、ラナー元王妃が知らないならずっと昔に使われなくなったのかもしれない。

 

2.壁はモンスター除けの魔法が掛けてありモンスターの発生と侵入を防ぐため、仲間が襲われる心配はない。当然デストラップもない。

 

3.壁が動いたのは、一定時間ごとに通路の形を変えて追手を撒く機能の影響。ラキュースが転移させられた罠も追手を撒くための仕組みの一つ。

 

 

これらの情報はラキュースとパンドラズ・アクター両者の持つ情報から得られたが、殆どがパンドラズ・アクターが集めたものであった。

 

ラキュースは自分が殆ど情報を提供できないことに気付き、最初はパンドラズ・アクターに対して聞きたいことも遠慮していた。

 

しかしパンドラズ・アクターが『せっかくの機会だから』と快く答えてくれたためラキュースの態度は軟化していた。それでも敬語は使おうとしたが、やんわりと断られてしまった。

 

一方のパンドラズ・アクターは、回答に対して時折小声で独り言を言うラキュースを疑問に思ったが、そういう年頃なのだろうと余裕の態度でスルーした。

 

 

『亡国の王と謎めいたその息子……使えるわね』や『闇に堕ちてしまったけど、妻の愛の力で真の姿を取り戻した夫……イイ』という呟きは妙に耳についたが、努めて無視した。触れてはいけない気がしたからだ。

 

 

「さて、大体分かりましたね。では今度は私が質問しましょう。そもそもラキュース殿はどうしてこのような場所に? 私は存在を知らされていた上にたまたま近くに来たこともあって興味本位でここまで真っ直ぐ来ましたが……」

 

「王都の地下の謎の空間の調査依頼があったの。それで踏み込んだのは良いものの仲間たちとはぐれてしまって……しかも転移の罠まで踏んでしまうなんて。アダマンタイト級冒険者として恥ずかしい限りだわ」

 

「気に病むことはありません。誰しも苦手なことはあるものです。かく言う私も敬愛する父上の伴侶の機嫌を取ることは中々出来ておりませんよ」

 

「気を遣わせてしまったかしら……でも、ありがとう。やっぱりパンドラズアクターさんは良い人ね。貴方のような息子を持てて御二方はきっととても幸せだわ」

 

 

ラキュースは三人の幸せな光景を幻視して微笑んだ。その微笑みには嘘は無く、パンドラズ・アクターもまた微笑んだ。

 

 

「ラキュース殿こそ、私のような得体の知れない者にも忌憚なく声を掛けてくださる。美徳だと思いますよ」

 

「ありがとう。それにしてもパンドラズアクターさんのお陰で調査が終わってしまったわ。また別の日に転移罠や動く通路を踏まえて再調査は行われるだろうけど……ねえ、せっかくだからもう少しお話ししませんか?」

 

「構いませんよ。美しきマドモアゼル」

 

「もう、お上手ね」

 

 

くすくすと笑い合う。質問タイムの後はラキュースとパンドラズ・アクターは普通に会話していた。

 

元より亜人種の保護のために戦うような義に溢れたラキュースと、基本的に物腰が柔らかく人畜無害のパンドラズ・アクターの相性は良かった。

 

また、別の部分でも二人の親和性は高かった。

 

 

 

 

 

それからさらに10分後

 

 

「さて、パンドラズアクターさん。お邪魔してごめんなさい。そして色々とありがとう。危険が無いとはいえ、私は仲間たちと合流しなくてはならない。寂しいけど……行かなくては、ならないの……!」

 

 

少々芝居がかった仕草で立ち上がったラキュースに対し、何かを察したパンドラズ・アクターが立ち上がり少し顔を寄せる。

 

 

「可憐な乙女をエスコートするのは紳士の役目。是非とも私に貴女を守る役目を任せていただきたい。私という剣は貴女の足元を照らし、そして貴女に降り掛かる露を払うでしょう」

 

「ありがとう。パンドラズアクターさん。いや、私の騎士……かしら? 頼もしいわ」

 

「Yes,your highness (我が姫の望むままに)」

 

 

パンドラズ・アクターはその場で跪き、ラキュースの手の甲にキスを落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー唐突だが、説明しよう。

 

 

なぜかクサイ演技になっているのは理由がある。

 

パンドラズ・アクターは目の前の対象の表層的思考を読むことができる。つまりラキュースが何を考えているか読める。そして空気も読める。

 

一方のラキュースは厨二病であり、自分の武器に闇の力が宿っていることにして、無自覚ではあるが度々仲間の前ですら架空の闇の人格を出現させるくらいにはどっぷりハマっている。カッコいい名前の必殺技だって持っている。

 

遭遇こそ突然だったが、常に紳士的な態度をとる謎多き男パンドラズ・アクター。力を持ちながら物腰が柔らかく、驕らない。

 

簡素な顔面はともかく、どことなく高貴な振る舞いを見せる彼に対しラキュースは"陰のある訳あり王子……イイ"とときめいていた。

 

そしてパンドラズ・アクターも自分に流れる元厨二病の父親の血が騒いでいた。奇跡的な配合で二人だけにしか理解できない空気感がここに形成されている。

 

 

要するに、二人ともノリが良いのだ。

 

 

 

 

 

二人はここから大冒険に身を投じた。

 

 

 

 

 

 

 

突然動き出した通路に足を取られ、ぽっかりと空いた穴に落ちそうになったラキュースの手を握るパンドラズ・アクター。

 

意外と強い力で引き上げられ、図らずも恋人繋ぎのようになったそれを見てラキュースが赤面する。

 

 

「あ、ありがとう……パンドラズアクターさんの指って4本なのね」

 

「いけませんか?」

 

「いいえ。とても素敵だわ」

 

 

 

 

 

 

転移罠を踏めば、アゼルリシア山脈の中腹に飛ばされ、雪の降りしきる中二人で体を寄せ合い温め合った。凍えるラキュースの身体を後ろから抱き締めるパンドラズ・アクターは、はたと気付いて身体を離す。

 

 

「すみません。私の体は熱を持たない……抱き締めれば貴女を冷やしてしまう」

 

「ううん、いいの。貴方の"私を想う心"が温かいの。抱きしめて……」

 

 

 

 

 

 

再び転移した先で遭遇した恐ろしいモンスター。その前にパンドラズ・アクターが果敢に躍り出てその攻撃をしのぐ。ラキュースは魔剣キリネイラムに秘められた力を解放した。

 

 

「ラキュース殿、今です!!」

 

「暗黒刃超弩級衝撃波!! ダークブレードメガインパクト!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

幾多の冒険を経て絆を深めた二人は、図らずも地下通路の入口まで戻ってきていた。

 

 

「ありがとう、私の騎士さん。おかげで戻ってこれたわ。皆はまだいないみたいだけれど……」

 

「私の美しき姫。悲しんではいけません。私と貴女は本来出会うことの無い身……別れの時はもうすぐ、そこ」

 

「……パンドラズアクターさん。私、私……! あっ……」

 

 

瞳に涙を浮かべ、何かを言おうとしたラキュースの桜色の唇にそっと指が添えられる。

 

 

「それは口に出してはいけません。ですが……私の心は常に貴女と共にあると。それだけは覚えていていただきたい」

 

「もうっ……カッコつけなんだから……」

 

 

パンドラズ・アクターは静かに去った。ラキュースは涙を拭い、背筋をまっすぐに伸ばして仲間たちの到着を待った。

 

 

やがてガヤガヤとした声が聞こえてくる。

 

 

「やれやれ……おちびのお守りは大変だぜ」

 

「何を言うガガーラン。穴に落ちそうになったお前を運んだのは誰だと思ってる? もう少し痩せたらどうだ?」

 

「おーおー、おちびが何か言ってら。あたしみたいな豊満ボディに嫉妬してんのかねぇ」

 

「貴様……!」

 

「ガガーラン! イビルアイ!! 無事だったのね。良かった」

 

「私たちもいる」

 

「鬼リーダー、心配性」

 

「ティア、ティナ……! 良かった、皆無事ね」

 

 

ラキュースはメンバーに対して地下通路の概要を掻い摘んで説明し、ひとまず撤退して後日また準備をしてから来ることを提案した。

 

 

「「異議なし」」

 

「なるほどねぇ。言われてみれば明かりは等間隔に付いてるし王様たちが使っていても不思議じゃねぇな」

 

「私も存在を知らなかった……果たしていつからあるのやら」

 

 

それぞれ意見があるようだが、皆撤退に同意した。

 

すぐに蒼の薔薇は撤退し、ラナーに報告した。戦闘のリスクが少ないということで別日に罠探知に特化した冒険者チームに再度依頼されるらしい。

 

蒼の薔薇の暇な日常はこうして取り戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ。どこにいらっしゃるのかしら……」

 

 

あの日以来、物憂げにため息を吐いては虚空を見つめるリーダー、ラキュースの姿を除いて蒼の薔薇はいつも通りだった。

 

それを見てメンバーはひそひそと会話する。

 

 

「なあ、うちのリーダーはどうしちまったんだ? また例の魔剣の囁きか?」

 

「知らん。魔剣の悪の性質に乗っ取られるならまだしも、少々ボーッとするだけなら放っておけ」

 

「つれねぇなぁおちびは。まあ、確かに放っておけばいいか」

 

「「……信じられない」」

 

「お? 忍者のお二人は何か知っているのか?」

 

「あれは、恋」

 

「鬼リーダー、青春真っ盛り」

 

「はぁ!? うちのリーダーに限って……いや、そろそろ二十になるし……ツラも器量も悪くねえ。不思議でも無い、のか……?」

 

「問題は『誰なのか』というところだ。ロクでもない男に引っかかっていなければいいが……」

 

 

ざわめくメンバーたちの喧騒を他所に、ラキュースは再び呟いた。

 

 

「私の騎士さん……早くまた会えないかしら」

 

 

 

 

 

 

 





Q. 至高の41人に変身して罠解除したらよくね?
Q. モンスターいないんじゃなかったの?
Q. 寒いなら魔法使えば?
Q. そもそも転移門使えばよかったのでは?
 
 
A. ロマンってのはな……理屈じゃねぇんだ
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