鈴木悟は鬼に憑かれている   作:サイドベント

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新章です。
 
 
アンケート回答ありがとうございます。いっぱい答えてもらえて嬉しいです。
 
『うるさい』に入れた三人、覚えてろよ(暗黒微笑)
 
冗談です。ネタに乗ってくれてありがとう。
 
長さはいつも通りにしました。更新頻度は気まぐれです。




竜王国修行編
遠方よりの救難信号 竜王国を救え


 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜王国 首都 女王ドラウディロン・オーリウクルスの私室にて

 

 

 

「鈴木悟って神、ロリコンじゃね?」

 

「……女王陛下、少し疲れているようですね。幼女の演技がこれほど精神に悪影響を及ぼすとは……おいたわしや。セラブレイトの謁見も少し延期しましょう。ささ、寝室へ」

 

「聞けよ。『鬼の四天王』ってやつの見た目、めっちゃ幼いらしいじゃないか。じゃあ私もいけるだろ。あと最近骸骨じゃ無くなって筋肉質で若めのイケメンになったらしいし。私、若いイケメン好きだし」

 

「聞き間違いであって欲しかったですね……あと大人形態で『若いのが好き』とか言われると少し嫌ですね」

 

「形態言うな。コレが私の真の姿なんだから」

 

 

竜王国の女王は真なる竜王の血が8分の1入っており、姿の変化という特殊能力を持っている。劣勢の兵士たちの士気を上げるため、宰相のアイデアでここ最近は専ら万人受けのする幼女の姿を取っていた。

 

その幼女の姿の女王は上述のセラブレイトに狙われている。肉体的に。

 

気苦労の絶えない女王は、しかし今は休憩中なので元の大人の姿でだらしなくソファに寝転んでいる。宰相はもはや見慣れた光景なので何も言わない。

 

 

「失礼しました。最近は幼女の姿の方を見慣れてしまいまして、つい」

 

「誰のせいでそうなっていると思っているんだ。アイツの視線は"ねっちょり"してて悪寒が走るんだぞ。まったく……いやな? 最近法国も前よりちょーっと少ないが援軍は送ってくれてるし、だいぶ助かっている。しかし……やはりビーストマンの数が多すぎる」

 

「援軍に加え、陛下の愛らしい幼女然とした振る舞いのおかげで一部の者たちの士気は異常に高まっていますが、確かに劣勢なのは変わりませんね」

 

 

一時期何故か少なくなった法国からの援軍もここ最近はほぼ元通りで、戦線の維持の役に立っていることは確かだ。自国のアダマンタイト級冒険者セラブレイトと併せて強力な戦力である。

 

しかし、そもそも竜王国ではビーストマンによる大攻勢がずーっと続いており、兵は必死で戦っているものの前線は押し上げられ、都市が既に三つ陥落。住人は全員ビーストマンの腹の中という中々悲惨な状態である。

 

国土が現在進行形で脅かされ、自国民の暮らしのための生産すらままならない。この状況で法国に対して少なくない"寄付"も行っている。ジリ貧も良いとこであり、多少法国や現状に対して文句が出るのもしょうがないだろう。

 

 

「まあ我が竜王国だけで解決すべきと言われたらそうなんだがな……でも仕方ないだろ。ビーストマン共の個々の戦闘力はこちらの10倍だぞ10倍。リーダー格に至ってはそれ以上だ。それがいーっぱい攻めてくるんだ。どうしろと」

 

 

女王が投げやりになっても仕方がない状況ではある。そもそもこの態度は見かけだけで、人民の犠牲と竜王国の暗い未来を女王が本気で憂いていることは明らかだ。

 

それは宰相も重々承知である。それを知ってか女王ドラウディロンは好き勝手に発言する。

 

 

「法国も鈴木悟について"神は慈悲深き存在であり、弱き者を助け驕り高ぶった者を切り捨てる"って公式に発表してるじゃないか。ほら、弱者の私と民たちがここにいるから助けてもらおう」

 

「同時に人類王から"神は忙しいからそっとしておいてあげてほしい"という通達が出ているのを忘れましたか? まあ一応人類王に文は出しますが……期待しない方が良いと思いますけどね」

 

「そうそう人類王。アイツ私のことを若造りババアとか言っておきながら、自分は無駄にカッコいい名前名乗りやがって……あー、思い出したら腹が立ってきた。酒飲もうかな」

 

「でしたら、前線の兵士たちに送る手紙を30ほど書いていただきましょうか。素面では書けないでしょうから丁度いいですね」

 

「……とびきり強いのを持って来い。まーじでアレはキツいんだ……私は幼女、私は幼女……わーい⭐︎みんな、がんばれー!! キッツ!!!」

 

「……女王陛下が驕り高ぶった者として切られないか心配ですよ私は」

 

 

猫撫で声を出したり突如発狂したり、果ては虚ろな目でブツブツと呟く女王を、屠殺場に送られる豚か何かを見るような目で宰相は見つめていた。

 

 

 

 

この2週間後、人類王ジルクニフの元へ手紙が届けられるが、当の本人は再び政務にかかりきりであったため一旦放置された。

 

先の王国併合自体は滞りなく進んだが、今後の健全な国家運営において問題は山積みだった。

 

本来ならジルクニフが動かずとも国家の運営ができるようなシステムは既に形成している。しかしそれは帝国のようなマトモな国の話で、要するに王国の現状はマトモではなかった。

 

結局、迅速な意思決定のためにジルクニフとフールーダはもうずっと机に座りっぱなしである。

 

 

「古くなった街道の整備。辺境の地に住む村人たちの人口調査および租税の調整。そもそも旧王都ですら大通り以外はロクな道が敷かれていない。その大通りも石畳の老朽化が激しく張替えは急務……いやはや、思っていた以上に王国は腐っていたらしい」

 

「ほっほ。何やら徴収した税の額を誤魔化すことも当たり前に行われておったようじゃ。そして一部を除いて自領の領民の総数すら把握していない貴族の方が当たり前で、対する住人の方も税の額を誤魔化しておる。賄賂は横行し、本来これを管理する地方役人の数も全く足りぬ。カカシでも立てておいた方が有用じゃの」

 

「まったくもって頭が痛い。とりあえず貴族どもから徴収した金銀宝物は全て換金して公共事業に回す。役人については監督役を帝国側から回すが……優先順位をつけるしかないな。本当に人が足りない」

 

 

いくら処理能力の高いジルクニフといえど、王国が200年の歴史で積み上げてきた負の遺産を崩すのは容易ではない。

 

この状態で竜王国になど構っていられるわけも無く。しかし一応は隣国なのだから手紙をこのまま無視する訳にもいかない。

 

 

「はぁ……とりあえず手紙の内容だけは確認するか。じい。粗方の方針はまとめたから後はそちらで進めておいてくれ」

 

「ほっほ。かしこまりました」

 

 

ジルクニフは立ち上がり、しかし歩き出さずにそのまま立ち止まった。フールーダはそれを見て首を傾げる。

 

 

「じい。悟殿が竜王に切った啖呵、みごとだったな。少々強引だったが自らの要求を飲ませてみせた。あの竜王相手にだ。もちろん萃香殿の存在やタイミングも良かった。しかし彼にはそれだけでない何かがある。まったく……あのような友を得られて私は幸せだな」

 

「左様ですな。悟殿のような者がいれば帝国、ひいては人類は安泰でしょう。もっとも最近は萃香殿と酒浸りでほとんど隠居なされているようですがな」

 

 

ほっほ、と笑うフールーダをジルクニフが真剣な目で見つめている。

 

 

「……じい。"ユグドラシル"や"別の世界"から来る絶大な強者の存在について、どう思う」

 

「そうじゃのぉ。以前のワシであれば何を馬鹿な、と切り捨てていたでしょうが……御三方、特に萃香殿の姿を見た後では軽々しくは言えませんのぉ」

 

 

先日の竜王との会談で明かされた"いつか来る未知の侵略者"という情報は、ジルクニフやフールーダに少なからず衝撃を与えていた。

 

曲がりなりにも人類を導く立場にある二人にとっては、ある日突然『君たちは頑張って人々の生活を良くしようとしているけど、定期的に別の世界から凄い力を持った奴らが来て掻き回していくよ』と宣告されたに等しい。

 

 

「この大陸の真の祖は我々のような人間種だったのかもしれないな。そして次々と別世界から訪れる強者たちに押され、こうして大陸の端に押し込められたのかもしれない」

 

「まるで御伽噺ですが……否定はできませんな。しかしジルよ、世の中には考えても世話の無いこともある」

 

「わかっている。だが考えずにはいられぬ。六大神、八欲王、十三英雄、そして悟殿。ここまで来ればわかる。特に強大な、歴史に名を残すような者たちは百年か二百年の周期でやってきている」

 

「そのようですな。ワシも長いこと生きておるが……彼らのような"突如出現する強者"はそうそう見るものではない。彼らに遠く及ばないが、逸脱者と言われるワシですら珍しいくらいじゃ」

 

「じいは齢二百を超えているな。だが並の人は百年も生きぬ。だからこそ次の世代へと生を繋ぐ。我が帝国もそうやって歴史を紡いできた。今代も悟殿という善性の者が現れたおかげでそれは続くだろう。だが……次の百年はどうだ?」

 

「……滅ぼされるかもしれませんな。それこそ人類と言わず、この大陸の全てを壊すような者が現れてもおかしくはあるまい」

 

「そうだ。ならば我々が今やっていることに意味はあるのか? 旧王国領を建て直し、帝国をより強固なものとする。いずれは法国や竜王国、聖王国とも結束を固くし人類の繁栄に踏み出す。悟殿の協力で評議国とすら足並みを揃えられるかもしれん。だが、そうしたところで……ある日突然理不尽にも踏み潰されるかもしれぬ。私はそれが恐ろしい。ひどく、恐ろしい」

 

 

ジルクニフは知らず、拳を握りしめていた。その理不尽に対し怒りを感じずにいられなかった。

 

だが、フッと手から力を抜く。目の前のフールーダがとても優しい表情をしていて、それに目を奪われたからだ。

 

 

「ジル。お前は優秀じゃ。代々優秀な帝国皇帝の中でも群を抜いてな。そしてお前はその優秀さに加えて優しさまで備えておる。まさに王の器じゃ。やはり人類を率いるのはお前以外にはおるまい。ワシはお前のような孫を持ち、その覇道を共に歩むことができて幸福じゃ」

 

「じい……だが、私が率いたところで……」

 

「じゃが、まだ頭がちょいと固いな。そして真面目過ぎる」

 

 

ジルクニフの言葉をフールーダが遮る。そして続けた。

 

 

「お主は優秀故に全てを抱え込もうとする。今まではそれで良かったかもしれん。事実、帝国はそれで大きくなった。しかし、何事にも適材適所というものがある」

 

「じい……」

 

「お主に萃香殿の相手が務まるか? 竜王と協定を結べるか? 一撃で全てを破壊することができるか? ワシに魔法の深淵へのヒントを渡すことができるか? できんじゃろう。それはできる者へ任せれば良い。そして世界を変えるほどの力を持つ者が現れた時は皆で力を合わせて戦えば良い」

 

「……それで、敵わなかった場合は?」

 

「その時はその時じゃ。なに、諦めなければ何とかなる。それはワシが保証しよう。なにせワシは魔法の深淵が見たくて見たくてこんな歳まで生にしがみついてしまった。すると見てみるが良い。こうして思わぬヒントを手に入れた。深淵にもすぐ辿り着くだろうよ」

 

 

フールーダはにんまりと笑いながら、懐から黒い書物を取り出した。

 

それをしばらく見つめた後、ジルクニフは笑った。

 

 

「結局は運任せではないか……だが、そうだな。いささかマイナスに考え過ぎていたらしい。私には頼りになる友と師がいる。その尊さを忘れていたようだ。感謝するぞ、じい」

 

「まだまだワシはお前の師でいられそうで安心じゃ」

 

 

ははは、と今度は声を上げて二人で笑った。

 

 

 

 

ジルクニフは改めて、竜王国からの手紙を持ちつつ私室に引き上げた。あの若造りババアからの文を読む姿など、しかめ面過ぎて周りに見せられたものではないからだ。

 

 

「拝啓、人類王殿。遅ればせながらーーーー」

 

 

できるだけ素早く読んでいけば、内容は以下のようだった。

 

 

『王国併合おめでとう。色々大変だろうけどこちらも大変です』

 

『法国と少し仲良くなったんだって? おめでとう。こちらも援軍は貰ってるけど全然足りなくて相変わらず大変です』

 

『神が降臨したんだって? おめでとう。こちらにも降臨してくだされば良いのに。ああ、大変だなぁ』

 

 

「どれだけ大変なんだ竜王国……そしてわかりやす過ぎるぞ。援軍をよこせ、か……まったく、こちらとて治安維持用の帝国騎士たちを最小限残して後は出払っている。そちらに回す余裕など無いと言うのに」

 

 

いや、待てよ。

 

 

ジルクニフの脳裏には早速三人の友の姿が浮かんだ。戦力としては申し分無いことは確かだ。しかし問題もある。

 

 

「義理も何も無い者たちのために我が友たちは動くだろうか? 否だな。そもそも白金の竜王とやらも彼らの大規模な力の発露は望んでいない様子だった。いや、『極力気にしない』のだったか? しかし異種族……それも王族の言葉をそのまま受け取るのは危険か」

 

 

ジルクニフは目の前で行われた竜王と鬼の『火花どころか火炎撒き散らす』やり取りのことを思い出していた。

 

 

ーーーーいっそ白金の竜王と鬼を竜王国に派遣したら喧嘩の余波でビーストマン程度なら絶滅するのではないか。

 

 

そんな野蛮な考えに自分で少し笑い、しかし悪くないかもしれないと思った。柔軟な思考とはこういうものだろうか、とも思った。

 

そんな益体も無いことを考えながらぐるぐると思考を巡らせる。

 

 

「よし。十分に考えたが結論は出ない。悩んでいても仕方が無い。友を頼ろう。私の仕事は隣国の義理で紹介をすることだな」

 

 

ジルクニフは鈴木悟の私室に向けて歩き出した。頼りになる友に、たまには面と向かって感謝でも伝えようかとワクワクしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘技、ろくろ首〜」

 

「おおー萃香さんすごい! 伸びては無いけど首が飛んでる! これで年末の隠し芸大会もバッチリですねぇ」

 

「ふはは。化け物舐めんじゃねー。ほーら全身バラバラの術〜」

 

「これは……壮観ですね。さながら猟奇殺人現場です。萃香殿でなければ間違いなく蘇生を試みる絵面ですね」

 

「……ノックしても返事が無いと思ったら……何をやっているんだこいつらは……! これが、これが人類の未来を託す者たちの姿か……?」

 

 

ワクワクに胸を躍らせていたジルクニフは、開いた扉に手をかけたままガックリとしていた。

 

3人は昼間から飲んで出来上がっていた。正確に言うと2人だが、もう1人も全く止める様子が無いため似たようなものである。

 

 

「あ、ジルクニフさん。お疲れさまです。どうしました?」

 

「……悟殿。人類を任せたぞ。いつもありがとうな」

 

 

半ばヤケクソで感謝を伝えると、心配したような返事が来た。

 

 

「え、ありがとうございます……? ジルクニフさん、仕事し過ぎですよ。ほら飲みましょ飲みましょ」

 

「そうだな……いただこう。ただし、用件を伝えてからだ。悟殿。私の手に余る問題が生じた。知恵を貸してくれないだろうか」

 

「良いですよ! ジルクニフさんの頼みなら!」

 

 

ジルクニフはその笑顔を見て、鈴木悟の種族変更を手伝って良かったなぁ、なんて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくかくしかじか。

 

 

「なるほど。困っている人がいると」

 

「そうだな。悟殿たちには縁もゆかりも無い話だが、真摯に助けを求めていることは確かだ」

 

「めんどくせぇ」

 

「まあそうだろうな。私もあの女とは関わりたくはない」

 

 

ぞんざいな萃香の返事にジルクニフは苦笑しつつ同意した。お人好しの鈴木悟はどうだろうか。

 

 

「うーん。そりゃあユグドラシルで雑魚モンスターを殲滅するって感じなら超位魔法でも撃てば良いけど……"こっちの生き物"にいきなり攻撃する理由が無いんだよなぁ」

 

 

鈴木悟は顎を撫でながら考えている。ジルクニフはそれをじっくりと待った。

 

 

「例えば俺の飲酒と沈静化問題の解決にはそれこそ暴力を使いました。必要なことだと信じているから、何を言われようと胸を張って反論もするしいざとなれば抵抗もできます」

 

 

鈴木悟は自らの価値観を語る。鬼になってから多少は変質したようだが、本質は変わっていない。

 

 

「でも、例えそれが人助けだとして、『頼まれたからいっぱい殺した』はなんか筋が通らないというか……すみません。うまく言語化できません」

 

「いや、いいんだ悟殿。言っている意味は十分にわかる。むしろポンポンとその絶大な力を振る舞うような人ではないと再認識できて安心したぞ」

 

「ありがとうございます。ただ、そのまま人が喰われるのを見逃すのも寝覚めが悪いので……まずは可能ならばビーストマンとやらと対話を試みようかなと。幸い俺は半分は人間じゃないので、ビーストマンの食欲のターゲットにならないかもだし」

 

「対話か。ただの人間が言った言葉なら一蹴するところだが、悟殿なら任せてみようと思わせてくれるな。やはり頼りになる」

 

「なんか今日すごい褒められるなぁ……あ、でも竜王国の女王様が望んでいるのは援軍なんですよね? 最悪対話で納得したら俺何もせずに帰りますけど……」

 

「その時はその時だろう。そもそもが自国の問題だ。一応法国の援軍のおかげで戦線の維持はできているし、その間に建て直す時間はあるだろう。こちらが落ち着けば、そのうち帝国騎士団の派遣も考えても良い」

 

 

話をした時点で女王への義理は通したとジルクニフは考えている。

 

また、竜王国がビーストマンに万一飲み込まれた場合は帝国にそれらが押し寄せることになるが、そうなる前に帝国騎士団の派兵は間に合うとも思っている。

 

そもそも鈴木悟の力によって劇的な解決は望めるだろうが、それではいつまでたっても竜王国は自立できないだろう。

 

そして仮に何もせず帰ってきたとしても、今度は体勢の整った帝国騎士団にフールーダを加えて送れば良い。それでビーストマンの撃退は果たせる。

 

結論、どっちでも良い。ジルクニフはそう考えた。

 

 

「という訳だ。竜王国には今の会話の子細を省いて返事をする。現地到着後に女王が色々と文句を言ってくるかもしれないが、何も気にしなくて良い」

 

「はは……怒られないと良いなぁ。ジルクニフさん、よろしくお願いします」

 

 

これほど力に溢れた『半人半鬼』を怒れるような君主であれば、また違った結果になっているのではないかとジルクニフは密かに思った。

 

 

「萃香さん、じゃあ行ってきますね」

 

「私も行くよ。別に私は何もしないが、もし対話が決裂したらそのままそこで悟に特訓付けてやるよ」

 

「んん? 特訓? どういうことですか?」

 

「鬼ってのはな、やっぱり戦わないと強くならねーんだよ。そのビーストマンとやらはそこらの人間より頑丈なんだろ? しかもいっぱいいるらしいし。じゃあ乱戦の練習にも丁度良いじゃないか」

 

「なるほど……ま、まあまずは対話ですからね! 対話!!」

 

「お前、私の話聞いて『ちょっと戦いたい』って思ったろ? どんどん鬼に染まってて何よりだよ」

 

 

微妙な顔をする悟の背中をバシバシと叩きながら萃香が続ける。

 

 

「あとはその土地特有の酒とかあるだろ。最近部屋にこもりきりで飽きてきたんだ。用が済んだら探そうぜ」

 

「あ、絶対こっちが本命だ」

 

 

悟の呟きはその場の全員の心を代弁していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後 アーグランド評議国と旧王国領の国境付近にて。

 

 

パンドラズアクターは出迎えた白金の鎧に向かって話しかけていた。

 

 

「というわけでツアー殿。父上と萃香殿が竜王国に向かいました。目的は対話です。決裂の場合はある程度の数のビーストマンを仕留めます。出立は今朝の話です」

 

「あのさぁ。プレイヤーってのは往々にして僕たちの習わしやら礼儀やらを無視するけど……キミたちほど僕たち竜王を軽んじていた者はいなかったよ。まあキミに言っても仕方ないか。本当にしょうがないな、あの鬼たちは」

 

 

痛烈な皮肉の次に同情的な視線を向けられたパンドラズアクターは、しかし胸を張って答えた。

 

 

「私の自慢の両親でございます」

 

「はぁ……段々わかってきたよ。まあ、とりあえず報告ありがとう。いちいちここまでくるのも面倒だろうから、コレあげる」

 

 

白金の鎧は煌めく小さな何かをパンドラズアクターに投げて渡した。

 

 

「それに向かって話しかけてくれたら応答する。くれぐれもあの鬼には渡さないでくれよ?」

 

「ありがとうございます。ツアー殿。そういえばお酒は飲まれますか? 評判のものを持ってきましたが」

 

「いただいておこうか。一応言っておくけど、ビーストマンを滅ぼすとか言い出したら流石に出るとこ出るからね」

 

「重々承知しております。では、また」

 

「もう来ないで欲しいかなぁ」

 

 

転移門をくぐるパンドラズアクターを、ものすごーく呆れた声で見送るツアーであった。

 

 

 

 

 

 

 

出立から3日後

 

 

竜王国 首都 女王ドラウディロンの謁見の間にて

 

 

「まさか本当に来ていただけるとは……鈴木悟様および『鬼の四天王』様両名、控室にてお待ちいただいています」

 

「よし、通してくれ」

 

 

少し緊張した面持ちの鈴木悟と、いつも通り赤ら顔で大股で歩く萃香が扉をくぐる。謁見の間には満面の笑みを浮かべた幼女がいた。

 

 

「ふたりとも、きてくれてありがとう!! わがりゅーおーこくのためにたたかってほしいのだ!!」

 

 

沈黙。

 

鈴木悟は『何か違和感あるけどこんな幼女が国のトップとか大丈夫か?』と早くも不安になっていた。

 

一方の萃香はと言うと。

 

 

「なんだこの若造りババアは」

 

「なんだこの飲んだくれは」

 

 

「「あ?」」

 

 

いきなり喧嘩一歩手前までいっていた。幼女の方も明らかに見せてはいけない険しい表情をしていた。

 

 

「いやいきなり火花散らさないで……」

 

「女王陛下、さすがに取り繕うのが下手すぎます……」

 

「「あ、どうも……お互い大変そうですね……」」

 

 

 

白髪の鬼と疲れ顔の宰相。身分も種族も違う二人は謎のシンパシーを感じていた。

 

 

 

 






萃香と悟とパンドラズアクターが宴会芸についてどやどやしてるシーン、自分でめっちゃ気に入ってます。

あと悟くんが最近鬼の力手に入れたし萃香にカッコいいところ見せられたしで調子に乗っているので、次回あたり一発かましとこうかなと思います(予告)

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