『フクブ起きてる?』
「寝てる」
『なんで?』
「なんで……?」
電話に出ている時点で〝寝てる〟はまあ嘘なわけだが、それにしたって返答がおかしい。
着信主はオーキッド。とはつまり捻ることなく相手は灰谷蘭だ。
純丘は時計を確認した。零時を回ったところである。ンな時間に電話かけてくんなという話でもある。
ちなみに純丘が起きていたのは単に、バイト終わった〜風呂メシ済ませた〜勉強した〜寝よ〜のうち、寝よ〜の部分に差し掛かる直前だったためだ。
寝かせろよ俺を。
『起きろよ』
「ええ……なんだ突然」
『起きろよ〜今日七夕だぜ? 夏祭りだぜ?』
「夏祭りこの時間までやってねえだろ。屋台も閉まってんじゃねえの」
『今日さ〜竜胆と喧嘩してよ』
「今度はなんだ、またテレビのリモコンか」
純丘は呆れ声とともに、腹筋を使って起き上がった。
蘭は明らかに駄々をこねる口調で、しかも字面だけでは一見わかりづらいが、呂律が回っていない。これは確実にアルコールが入っている。
法律違反を俺の前で晒すなとは、純丘もよっぽど言いたいところだが、とはいえこれを放逐すると後々が少し怖い。蘭はあれでも、ハタチどころか、十八歳未満だ。酩酊状態なら判断力も下がる。
『あんさあ。引っ越したじゃん俺らァ』
「そうだな、何故か俺が引っ越したのを理由にな」
『フクブだけとかずるくね』
「知らねえ。引っ越したのが原因か?」
『んー。……違ェけどさー。竜胆が家にDJブース置いたわけよォ』
耳を疑う発言しか飛び出してこない。ジャージのズボンから足を引っこ抜きつつ、純丘は目を瞑った。
家にDJブース置く世界とかちょっとよくわかんないですね。
「……それで?」
『そんでェ、あいつどっから拾ってくンだかや〜たらダチ多いじゃん』
「そうだな」
人当たりがいいんだか人気なんだか蘭と対比の結果やさしく見えるんだかなんなんだか、とかくやたらと顔が広い。
ちなみに外出先で愛想よく対応しているのを一通り眺めて〝知り合い?〟と尋ねると〝うんなんか、■■のツレのダチ?〟とか返ってくる。だいたいの場合純丘は別に■■クンとやらを知らない。
ぽんと本人の名前が出ないのは、竜胆が基本的に、興味のない名前をあんまり覚えないからだ。話したことは覚えているので変な信者作りそうだなコイツと純丘は思っている。大概他人を言えたフシではない。
閑話休題。
『うちにはDJブースがあるわけよ』
「さっき言ってたな」
ジーンズを探し出して履く。さっき風呂入ったのにな〜と純丘は明後日に視線を向ける。
もはや行かない選択肢もないので、潔く諦めるとして。
『自慢がてら呼ぶじゃん』
「呼ぶんだな」
『ダチのダチとかそのツレとかヨメとかヨメのダチの女とかいっぱいくるじゃん』
「そうなんだな」
そもそも、家にそんな人数を呼んで、しかも入るあたりが部屋の規模を示している。とりあえず十何人はデフォルト。
『そンでェ、いい感じに酒も入ってな? 盛り上がるわけよあいつら。……俺がきもちよ〜く寝てるときに』
「なるほど」
『壁一枚向こうで』
「おつかれ」
純丘は極めて真摯に相槌を打った。未成年飲酒の部分は意図的に聞かなかったことにした。
何時ぐらいまで寝てたんだろコイツ、とも思うが、同居人に無許可で友達入れて騒いでいる時点で竜胆の方が悪い。
『叩き出してェ、ンでも散らかった家にいるのもテンション下がンだよなあ。俺カリスマだし』
「カリスマじゃなくてもテンション下がっていいだろそれは」
ともあれここで祭りに繋がるらしい。気分転換にでかけてそのまま帰る気を無くしたという顛末。
散らかっているせいか、兄弟喧嘩のあとで顔を合わせづらい可愛げがあるのかは、純丘の知るところではない。
家の鍵を拾って、パーカーのポケットに財布とハンカチを詰めて、肩にかける。靴は——一瞬考えて、それから純丘はサンダルを突っかけた。
玄関の扉を開ければ生ぬるい風が頬を撫でる。
真夏の夜は蒸し暑い。アスファルトは未だ熱を燻らせている。
「どこいんの」
『……駅?』
「……東京都だけで駅が何個あると思ってる?」
『当ててみろよ、副部長だろ?』
「確実に関係ないんだよ」
八月上旬。蘭の言葉通り、旧暦七夕の前後だ。
七夕祭りが開催されるところは都内だけでも少なくはない。
ちょいと純丘は小首を傾げて、脳内でリストアップし、しばし考え込む。
「マァいいや。てか噴水の音するけど、今外? コンビニ入ってろよ」
『馬鹿の一つ覚えみてえなガンガンのクーラーん中にいろって?』
「いいから入ってろ馬鹿」
それから純丘は自転車置き場から自転車を引きずり出した。
旧暦七夕
「入ってろっつったのに、いるし」
チェーンが空回りする音が響く。
なめらかに目の前で自転車を止めれば、人影がゆらりと顔を上げる。
髪色も顔立ちも派手なヤンキーが、駅前の手摺付近の段差に腰掛けて、路面を無表情で見つめる絵面。ずいぶん人目を引いたことだろう。
補導されてねえのは貫禄あるからか大人しいからか、純丘の頭の片隅をどうでもいいような思考が過る。
「せめて電車動いてるときに呼べよな……」
「はは、まぁじ? 渋谷跨いで、んふは、ママチャリ漕いできたわけ?」
「中野もちょっと通った……ママチャリいいぜ、なにせ使いやすい」
会話の片手間にも、がたんとスタンドを立て、更に蹴り上げてストッパーをかける。
「それに相変わらずレンタバイクとレンタカーのレンタルフル装備なもんでな」
「にしてもママチャリはシンプルダセェ」
「うるせえ谷垣さんからの贈りもんだぞ丁重に扱えよ」
「お古かよ、どーりで」
「ヴィンテージには価値があるんだよ」
「ン十年そこらのチャリにヴィンテージの価値があると思ってんじゃねえ」
元警察署長谷垣のことを一応蘭はちゃんと覚えている。まあ世話になったといえばなったので。元副部長と竜胆も加えて、三点セットでやたらと目をかけられてたので。
「てかタクとかあんだろよ」
「あるなあ。……ところで君の目の前にいるのは俺なわけだが、どこまで本気で言ってる?」
「ウケる」
蘭はうすく口角を引き上げた。無論十割冗談だ。だろうなと純丘も肩をすくめた。
生まれてこの方、タクシーを使った記憶など、中学以前の話かそれこそ灰谷兄弟に強制連行されたときぐらいだ。
自転車のカゴからビニール袋を取り上げ、後輩の隣に腰を下ろす。取り出したのは三ツ矢サイダーだ。
慎重な手付きでペットボトルのキャップをひねる。パキッと音が鳴った。
シューッ…………
「アやべ」
——泡立った炭酸が、キャップの隙間からぼたぼたこぼれ落ちる。
自宅からここまで、純丘は通算四十分ちょい自転車でかっ飛ばしていた。サイダーはそのカゴに入れていたわけだ。
炭酸飲料を四十分ちょいカゴの中で跳ねさせたならばそうもなろう。
「あ〜あァ」
揶揄いの声音を混ぜて、横では蘭が笑っている。ヤンキー座りで膝頭に手首を引っ掛けて、やらかした……の顔をした純丘を眺めている。
手からサイダーの残骸を滴らせて「ちょっと手ェ洗ってくるわ」純丘は噴水の方へと駆け出した。
蛇口を捻って水を出して洗う手間を噴水で省くのは、たぶんやめたほうがいい。
「……灰谷蘭くん」
「ん〜」
「俺がちょっと席外してる間になに飲んでんだろうな君は」
「さっきオマエがこぼしたサイダーの余り」
「そうだな、余りっつか九割残ってたのを飲み干しやがってよ」
油断も隙もありゃしない。
仁王立ちで腕を組む元先輩に、灰谷蘭は目を瞬かせた。それから空っぽのペットボトルを指で振った。
「飲めねえ味じゃなかったぜ?」
「めちゃめちゃ美味いの間違いだろうがアサヒ飲料と俺に謝れ」
「悪ィなアサヒ飲料」
「俺には……?」
微塵も悪びれないのでどうしようもない。反省しようという気持ちはありませんか。そこになければないですね。
諦めの溜息とともに、純丘はハンカチで己のてのひらを拭った。ついで、自転車のカゴからアクエリアス(五〇〇ml)を引きずり出す。パキッと開けても炭酸ではないので軽やかに噴き出すことはなかった。
……本当は蘭に渡すはずだったのはこちらのアクエリアスだが、まあそういうこともあるわけだ。
最初から蘭のぶんも用意しているあたりが純丘榎である。
「あつ」
汗が首筋を伝っていく。アクエリアスを半分飲み干して、純丘は息を吐いた。
深夜一時を回っても、めちゃめちゃ暑いがやや暑いに変わったぐらいで暑いものは暑い。舗装された都会では、昼間に籠もった熱も発散されにくい。
ぷうんと漂う蚊を柏手で正確に叩く。ひとつ潰えた悲しき命が地面に落とされる。汗を感知して寄ってくると言うので、当然熱帯夜に代謝の良い野郎二人なんぞ大量に集まるわけ。
特に声をかけるでもない様子を、蘭もやはり特に会話するでもなく眺めていた。それから、おもむろに立ち上がって、純丘の背後に回る。
一瞥した純丘は、すこしだけ不思議そうに首を傾げて、すぐに視線を外した。片方のてのひらでアクエリアスを弄んでいる。
「フクブさあ」
「ぁン? ……俺は背もたれじゃねンだよ」
背後から被さるようにして、ごとんと肩に顎を乗せてくる。純丘はあからさまに迷惑そうに顔をしかめた。
筋肉質でタッパがある男に全身全霊で寄りかかられると、重いのはもちろん、シンプルに暑い。
呂律はマシになっているが、まだアルコールは完全には抜けていないのか、蘭の体温は普段より高い。まず彼らは二人とも、普段からそれなりに身体を動かすタイプなので、基礎体温が高い。
つまり暑い。
ただただ暑い。
「明日ヒマ?」
「つい一時間前に日付変わってるわけだが、君の言う明日っていつだ?」
「土曜」
「今日だな。午後からバイト」
「……あーね」
純丘の肩に刺さった顎は、蘭が喋るたびに刺さり直す。
地味に痛い。そしてやはり暑い。
お忘れかもしれないがここは八月上旬の東京だ。
「君は?」
「なにが」
「今日ヒマなんかなと」
「んー。……ん」
「寝るんなら寝床あるとこ行けよ」
「眠くねえよ」
「左様か」
それからしばらく二人とも黙った。
時折、噴水が湧き上がる音が響いている。東京二十三区内でも虫の鳴き声というものは場所によりけり、聞こえなくもないが、さすがにタイル舗装された駅周辺ではその声も小さい。
後ろからもたれ掛かられ、その場から動けない純丘は、アクエリアスをもう一口二口飲んだ。喉を潤して胃の腑の底へと落ちていく。
「……ちなみに蘭」
潤した舌が再び回る。数拍を置いて、あー? と間伸びした声が吐き出された。
刺さった顎と押しつけられた肋から、肩と背中を伝って、純丘の骨がかすかに振動する。
「俺明日は午前どうせなんもねえし、つか君に呼びつけられた今、帰ってもどうせ寝るまでに二時回るだろうし」
「カワイソ」
「腹立つな」
言うわりにどうでもいいような口振りだ。
「だからどうせなら海までチャリ行って朝日見て帰ろうかと思うんだが。君後ろ乗ってく?」
「……それ昔オマエ、道交法違反だからやらねえっつってなかった?」
「言ったっけ。……言ってそうだな。まあ道交法は相変わらず違反」
「うわー、犯罪教唆かよ。乗ってく」
ようやく蘭は膝を伸ばして、一歩退いた。
実は彼、ずっとしゃがみ込んでいたせいで、足の裏がめちゃめちゃ痺れている。ぴりぴりとくすぐったさにも似た痛みが足裏を苛む。気合いで顔には出していない。
六本木のカリスマなのでそういうプライドがあります。
一方階段に腰掛けていた純丘は、痺れるようなこともなく、立ち上がってぐっと伸びをする。尻を軽くはたいて砂埃をとっぱらい、自転車の鍵を開ける。
「この荷台乗って走ってたら絶対尻痛くなンだろ」
「降りていいぞ〜」
「ア? 誰だよタンデム言い出したの」
「君ホンットめんどくさいな」
「てめーに似たんだよクソ先輩」
「ほざけよバカ後輩」
争いは同レベルでしか成立しないとは一種の言説だが、よく言ったものだ。
ロードバイクでたまにある、カーボン素材などを使用したモデルなどであればいざ知らず、ママチャリならわりかし耐久力がある。一瞬ふらついたものの——「おい」「いやいけるいける」「知らねーぞマジ」——バランスを維持するコツを掴めば、自転車は道路をなめらかに走り出す。
夜道を照らしているのは街灯と信号と、あと自転車のライト。
蘭はうなじの付け根のところで後ろ髪を束ねていた。向かい風を受けてかすかに膨らんでいる。肌と髪のあわいを風が通っていく感触に、彼は目を細めている。
およそ七〇㎏の後輩と、自分の体重を乗っけて、純丘の足は揺るぎなくペダルを漕いでいる。最近は空手道場のアルバイトも再開したことを蘭は把握していた。道場でのバイトが成り立つ程度には鍛えており、体幹も丈夫。
あとフクブはどっちかっつーと足に筋肉ついてる方。
「フクブあの時間すぐ電話取ンの、珍しいよな」
「いつもなら寝てるからな。今日は課題してたが……いや、出るまで遅いってわかってて電話したのかよ」
「ガッコ、夏は休みなんじゃねえの」
「話聞く気あるか?」
「あると思ってたワケ」
「そこ開き直るかよ」
なお、思っていたことはない。思ったより話聞いてるなと思うことならよくある。
ちなみに純丘も純丘で、興味のない話や法律違反スレスレアウトは右から左に流していることが稀によくあり、つまりはお互い様だ。
「……ウチの専門は、夏休み、八月盆の時期にしかねえの」
「社畜かよ……」
「学畜かな……」
坂道はさすがにキツイので、純丘はひとまず自転車から降りた。蘭にも降りるように促すが「え? 俺が? 地べたを?」「さっきまでその地べたに両足つけてたろが」まあ素直に従うわけもない。
倒れる直前まで傾けて、なんなら軽く振ってみたものの、驚異の体幹により頑として降りない。
無言で見下された少年は澄んだ目で見返している。曇りなき眼である。
体幹は揺るがないし自転車から剥がれる様子もない。
「クワガタか?」
「鼻っ柱折られてェってンならそう言えよ水臭えな」
「遠慮しておこう……しょうがねえな、ならカブトムシにしてやるよ」
「遠慮の意味知ってるか〜?」
「君よか知ってるだろ」
「そりゃそう」
仕方なく一八〇㎝近くの体躯を荷台に乗せたまま、純丘は自転車を元通りのバランスに戻す。誰もいない歩道に乗り上げて、ハンドルを押して、歩いていく。
しれっと荷台からサドルに移動する後輩についてはもう無視した。確かに牽いてるときは後輪側に乗られるより楽だし。
「……フクブさあ」
「あんだよ」
「刺青入れたろ」
「入れるの見てたろ。なんならデザインも予約も君がやったんだよな。おかげさまで俺は次の日の授業まじで死んでた」
「かわいそうだったな」
元凶の言葉がコレ。無害そうにうつくしく微笑むさまは、逆に、人々の警戒心を呼び起こすだろう。
灰谷兄弟の兄の方が無害なわけがない。
「大学の合格蹴ったろ」
「そういや、報告しても驚かなかったのは蘭ぐらいだな」
「そりゃ頭オカシーって思ったけど、フクブが変なトコぱっぱらぱーなのは中学から変わんねえしなァ?」
「ははは」
純丘は笑った。笑いながら、自転車のフレームにあぐらをかく脛に、わりと強めに後ろ蹴りを入れた。
間髪入れずに爪先で蹴り返された。なんなら二撃入れられた。
ヤンキーなので反撃の瞬発力が高い。過剰防衛どころかとどめを刺しに来るところがある。
「相変わらず俺らとつるむだろ」
「実は今日呼び出したのは君なんだよな」
「わざわざ出張ってきたのはオマエのほ〜う」
「よぉし今度から無視でいいわけだな〜?」
三撃目の蹴りも直撃した。位置的にふくらはぎになるのでまだマシだが、マシポイントはそれだけ。
「そろそろ痣になりそ……」
「……いいのかよ」
主語はない。
数秒黙って、それから、純丘は口を開いた。
「これでもいろいろ考えてるよ」
「そりゃ知ってる」
「うん。……君が突っ込むのは珍しいな?」
「んー」
自転車の上で少年は背を反らす。サドルを掴んだままなので落ちる心配はない。
長い髪が垂れ下がって、タイヤに巻き込まれないように純丘は歩く速度を緩めた。
蘭はしばらくそうしていたが、今度は背中を丸めて、ハンドルによりかかるようにする。ハンドルを握る純丘の腕の隙間に捩じ込むように頭を突っ込んでくる。自転車を牽く側としては心底邪魔である。
「……なんとなく」
「左様で」
端的な相槌。追及することもない。純丘のコメントも一言で完結し、また沈黙が降りる。
そもそも、今日の蘭は最初から様子がおかしい。
喧嘩したにしても、用もなく、六本木どころか港区から出るのはまれだ。独りきりなら、呂律が回らないほど酒を入れやしない。
酒が入ったままの状態で純丘に電話するなど、もっとない。誰かに構ってほしいだけなら一報を入れる先はどこにでもいる。
蘭が、他人が開けた飲み物に口をつけるところは、少なくとも純丘は初めて見た。
「……アチィ」
「夏だしな」
「ねみー」
「今寝たら竜胆呼びつけるぞ」
「やめろ」
「だろうな」
ぱたぱたと足がばたついている。普段のような、傍若無人な振る舞いというよりは、子どもの駄々に類似していた。
坂道のてっぺんまで到着して、ようやく純丘は、蘭をサドルから荷台に追いやる。再び自転車に座り直して、ぐっとペダルを踏めば、あとは下り坂、からからとチェーンを空回しに加速していく。
純丘の背後の後輩は、フレームに足を乗せて、純丘の肩に両手を置いて、伸び上がるように背筋を伸ばしている。
夜のしじまにて音は遠く、パトカーもいない大通り、青く煌く信号の下をくぐり抜けていく。
風がTシャツを膨らませ、前方からの風圧に乾いた目を純丘は瞬かせた。
「あんさあ」
蘭が喋った。
「なんだよ」
少し大きめの声を意識して、純丘は返答した。
「海辞めてラーメンにしろよ」
「今二時前なんだが本気で言ってんの?」
「豚骨大盛りチャーシューマシマシ」
「やめろやめろ腹減る」
からから。からから。
自転車のタイヤは回り続ける。他愛もない会話とともに夜は更けていく。
そういうこともあるわけだ。
DJブース
:キャラブック3巻
駅
:阿佐ケ谷駅
ママチャリ
:シティサイクルって言い方のがかっこよくない?
道交法
:道路交通法57条2項
他人が開けた飲み物
:「数えきれない」から書いている通り
ラーメン
:このあと食べに行った
とんこつラーメン