【完結】原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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八八話:決戦/vs裏ボス

 

 

 結(・)局(・)。

 

 ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)は(・)殺(・)せ(・)な(・)い(・)。

 六(・)道(・)伊(・)吹(・)で(・)は(・)、絶(・)対(・)に(・)。

 

 

 


 

 

 

 一歩、脚を踏み出す。

 アリス・アウターランドへ向かって踏み込む。

 

 

 瞬(・)間(・)、体(・)の(・)内(・)側(・)で(・)何(・)か(・)が(・)爆(・)発(・)し(・)た(・)。

 

 

「    ッ、    っっっ⁉︎」

 

 ゴガッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 轟音は一拍遅れて、鼓膜ではなく脳を直接揺らすように叩きつけられた。

 

 アリス・アウターランドは何もしていない。

 何かする必要さえ存在しない。

 

 世界(ワールド)型の異能、《夢》。

 既にこの場にある粒子は一つ一つが異なる異能。

 その一つが偶然、爆発を引き起こす効果を持っていたというだけ。

 

 光に目が灼かれ、熱に皮膚が焼かれ、轟音に鼓膜が破れ、爆風に内臓がイカれる。

 もはや痛みさえ感じない。いいや、もしかすると、俺は既に死んで

 

 

  ざ                  ザ

 

 

 ──衝(・)撃(・)に(・)苦(・)し(・)み(・)な(・)が(・)ら(・)、歩(・)み(・)は(・)止(・)め(・)な(・)い(・)。

 

 爆破など序の口。

 いや、あんなのこっちが勝手に地雷に引っ掛かったに過ぎない。あれはアリス・アウターランドからしたら、攻撃ですらなかった。

 

 はやる気持ちに応えるように、脚が地面を強く蹴り飛ばし──

 

 

 ──ガ(・)ン(・)ッ‼︎ と(・)。

 地(・)面(・)が(・)衝(・)撃(・)を(・)増(・)幅(・)し(・)て(・)反(・)射(・)す(・)る(・)。

 

 

 つまり、そういう異能が地面にあった。

 トラックと衝突した時のような衝撃に襲われる。あり得ない方向に脚が曲がり、肉体は上空へと吹き飛ばされた。

 俺は地面へと顔面から高速で落下し

 

 

 ざ

                  ザザ

 

 

 ──何(・)と(・)か(・)両(・)脚(・)で(・)着(・)地(・)す(・)る(・)。

 

 無策で突っ込んでも意味はない。

 相手の出方をうかがう。

 

 カッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 視界の隅でで何かが光った。

 

 異能の反応はなかった。

 いいや、厳密には異能の反応はある。しかし、粒子一つ一つが異なる異能で構成されたこの世界では、異能の反応が飽和して一つ一つの異能の反応を感じ取れない。

 

 だから、それが異能の攻撃なのかは分からない。

 だが、俺は反射的に異能で迎撃した。

 

「《破(ワールド)────ッ⁉︎」

 

 

 そ(・)の(・)時(・)に(・)は(・)既(・)に(・)、雷(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)ナ(・)ニ(・)カ(・)が(・)俺(・)の(・)肉(・)体(・)を(・)貫(・)通(・)し(・)て(・)い(・)た(・)。

 

 

 それは光よりも速く、宇宙の拡大速度よりも速く、俺の上半身の八割を吹き飛ばし

 

 

 

     ざざざ

              ザザザザザ

 

 

「──《破界(ワールドブレイカー)》‼︎」

 

 一度目。

 

 考(・)え(・)る(・)よ(・)り(・)も(・)先(・)に(・)体(・)が(・)動(・)く(・)。

 動いてから自覚する。

 俺はどうやら異能を迎撃していた。

 

 カッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 視界の隅で何かが光った。

 

 それは光よりも速く、宇宙の拡大速度よりも速く、しかし俺の異能の方が早かった。

 異能の無効化。限られた六度の内の一つを使い、雷のようなナニカを打ち消──

 

 

 ──メ(・)キ(・)メ(・)キ(・)ィ(・)ッ‼︎ と(・)。

 迎(・)撃(・)し(・)た(・)右(・)腕(・)が(・)弾(・)け(・)飛(・)ぶ(・)。

 

 

「が────アアああああああああああ⁉︎」

 

 そう、粒子一つ一つが異なる異能。

 一度につき一つの異能しか無効化できない俺では、アリス・アウターランドの攻撃は打ち消しきれない。

 

 大量の血液が噴水みたいに噴き出る。

 だが、右腕を惜しむ暇はなかった。

 頭上から超巨大な猫の頭が落ちてきて、

 

 

 ざざざざざ

                ザザザザザザ

 

 

 ──異能での迎撃など不可能だと判断。

 ゴロゴロと転がるように地面を前転して回避する。

 

 後手に回れば無数の異能による質量で押し潰される。

 常に先手。攻めて、攻めて、攻めて、攻めまくる以外に道はない。

 

 地面を転がったまま、両(・)手(・)両(・)脚(・)で(・)地面を跳ねて勢いを殺す事なく立ち上がる。

 回転力を速度に変えて、アリス・アウターランドに向かって走り、

 

 

 ざざざざざざざ     ザザザザザザザザ

 

 

 走り、

 

 ざざざざざざざざざざざざ‼︎

  ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ‼︎

 

 

 走り、

 

 

 ざざざざざざざさザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザ‼︎

 

 

 走────ざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッッッ‼︎‼︎‼︎

 

 

 

「き(・)づ(・)か(・)な(・)い(・)の(・)?」

「気(・)付(・)い(・)て(・)る(・)さ(・)」

 

 

 

 アリス・アウターランドと視線が交差する。

 彼女との距離は始めから一歩も縮まっていない。

 それは地面が動いているとか、空間が歪んでいるとか、そういう事ではなかった。

 

 そう、結局。

 六道伊吹ごときではアリス・アウターランドに敵わない。

 ハードモードというレベルですらない。戦いというカタチにもならない敗北確定戦。

 

「この世界はループしている。だから、実際の頻度は知らないけど、何回かのループに一度、俺とテメェは戦ってる」

「……ぜんたいのいちパーセントですら、ないけれど」

「で(・)も(・)、こ(・)れ(・)は(・)何(・)度(・)目(・)だ(・)?」

 

 たとえ確率がどれだけ低いとしても、母数が無限ならその数もまた無限ではないのか。

 俺とアリス・アウターランドは既に、無限に等しい回数の戦いを繰り返している。

 

「そして、この白い世界には過去も未来も存在しない。こ(・)の(・)空(・)間(・)の(・)中(・)は(・)ル(・)ー(・)プ(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)。だ(・)か(・)ら(・)、残(・)っ(・)て(・)ん(・)だ(・)な(・)?」

「…………」

「こ(・)の(・)場(・)所(・)で(・)死(・)亡(・)し(・)た(・)、無(・)数(・)の(・)六(・)道(・)伊(・)吹(・)た(・)ち(・)の(・)記(・)憶(・)が(・)‼︎ 残(・)留(・)し(・)た(・)精(・)神(・)情(・)報(・)が(・)ッ‼︎」

 

 

 六(・)道(・)伊(・)吹(・)は(・)一(・)歩(・)も(・)進(・)め(・)ず(・)死(・)亡(・)し(・)た(・)。

 そ(・)の(・)無(・)数(・)の(・)死(・)の(・)記(・)憶(・)が(・)合(・)わ(・)さ(・)っ(・)て(・)ツ(・)ギ(・)ハ(・)ギ(・)さ(・)れ(・)た(・)結(・)果(・)、ま(・)る(・)で(・)互(・)角(・)の(・)戦(・)闘(・)が(・)行(・)え(・)て(・)い(・)る(・)か(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)錯(・)覚(・)し(・)た(・)だ(・)け(・)。

 

 

 立ったまま白昼夢を見ていたようなモノ。

 ふいに前世の記憶を思い出しただけの事。

 俺とアリス・アウターランドの距離は一歩だって埋まっちゃいない。だ(・)っ(・)て(・)、ま(・)だ(・)俺(・)は(・)戦(・)っ(・)て(・)す(・)ら(・)い(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。毎(・)回(・)初(・)手(・)で(・)死(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)だ(・)け(・)な(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

「それで?」

「………………、」

「きづいたから、ナニ? なんどくりかえしても、アナタはアリスにかてない。アリスはさいきょうで、アリスはアリスだから」

 

 無限に等しいループを繰り返して。

 しかし、まだ俺は此処。初期位置から一歩も動いていない。

 

 第五位(クシャナ)のように、ループごとに疲労が蓄積する事はない。

 だって、アリス・アウターランドはまだ目覚めてもいない。寝ぼけたままの童女が疲労する訳がない。

 

「きなさい、リクドウイブキ。いつものとおり、ふんさいしてあげる」

 

 そして──

 

 

「超える‼︎」

 

 

 ──一(・)歩(・)、無(・)傷(・)で(・)脚(・)を(・)踏(・)み(・)出(・)す(・)。

 

「──────────は?」

 

 

 ざざざざざざざざざざざ‼︎

      ザザザザザザザザザザザザザザザ‼︎

 

 

 二歩目で呆気なく六道伊吹は死亡した。

 だが、あり得なかった。

 アリス・アウターランド相手に二歩も前に進めるという事態が信じられなかった。

 

「な、に────ッ⁉︎」

「こんなのは死にゲーと同じだよ」

 

 なんて事なさそうに、告げる。

 実際には達成感と、これだけやっても二歩という疲労感に襲われているが。それを隠して、自信満々に言う。

 

「テメェが持つのは無数の異能。だけど、この空間はループされない。俺が始めに立つ位置も、俺の周囲に存在する粒子(いのう)も、何一つとして変化はない。な(・)ら(・)、ど(・)う(・)す(・)れ(・)ば(・)テ(・)メ(・)ェ(・)に(・)近(・)づ(・)け(・)る(・)か(・)死(・)ん(・)で(・)覚(・)え(・)れ(・)ば(・)良(・)い(・)」

「あり、えない! まんにひとつも、じゃない。どうすれば、なんかじゃない。ぜろパーセント! どうやっても、アナタはちかづけない‼︎  アリスがもつムゲンのイノウにはかなわない‼︎ そのはずなのにッ‼︎」

「それこそあり得ねぇよ。テメェを転生させたのは誰だ? 俺一人をこの白い世界に導いたのは誰だ? ──折(・)手(・)メ(・)ア(・)だ(・)ぞ(・)⁉︎」

「──────あ」

「あ(・)の(・)メ(・)ア(・)が(・)勝(・)ち(・)目(・)の(・)な(・)い(・)負(・)け(・)イ(・)ベ(・)な(・)ん(・)か(・)を(・)許(・)す(・)訳(・)が(・)ね(・)ぇ(・)だ(・)ろ(・)ッ‼︎」

 

 俺だけじゃアリス・アウターランドは殺せない。

 だが、折手メアなら? ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)の(・)天(・)敵(・)で(・)あ(・)る(・)折(・)手(・)メ(・)ア(・)の(・)力(・)を(・)借(・)り(・)ら(・)れ(・)た(・)な(・)ら(・)ば(・)、万(・)に(・)一(・)つ(・)の(・)可(・)能(・)性(・)が(・)見(・)え(・)て(・)く(・)る(・)。

 

 あとは折手メアを信じるだけだ。

 絶対に勝ち筋は存在する、と。

 無限に存在する可能性(ルート)の何処かに、絶対に幸せな未来(TRUE END)があるはずだと!

 

「俺はメアを信じている! あいつは最低最悪のクソ野郎だがッ、それでもッ、何の抵抗もできず俺がボコボコにされるのを見て悦に浸るようなゲス野郎じゃなかった! 必ずッ、用意されているはずなんだ! こんな俺でもテメェに勝てるッ、そんな可能性(ルート)がッッ‼︎‼︎」

「っっっ⁉︎」

「テメェの異能は無限だが、俺の人体が取り得る行動は有限だ。なら後は、ADV(アドベンチャーゲーム)の分岐を一つ一つ調べるようなモンだろ。虱(しらみ)潰しに有限の選択肢を試し続ければ、いつかテメェの無限だって超えられる‼︎」

 

 それだけ言って。

 六道伊吹は死亡した。

 

 

 ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッッッ‼︎‼︎‼︎

 

 

 そこから、無限の繰り返しがあった。

 一億とか、一兆とか、そんな普段使うような数字じゃない。無量大数だとか、単位が用意されているレベルですらない。

 文字通り、人間程度の脳では無限としか認識できないような回数の繰り返し(ループ)が。

 

 

 一歩、一歩。

 前に進む。アリス・アウターランドに近づく。

 

 歩み、走り、這い、吹き飛び。

 ズタボロになりながらも、埃に塗れて六道伊吹は進む。

 

 

 やがて。

 六道伊吹は辿り着いた。

 

 

「まさかッ、ここまで────ッ⁉︎」

「ま、たせた……なァ‼︎」

 

 

 アリス・アウターランド。

 彼女に手が届く距離まで接近する。

 

 右手を強く握り締める。

 《魂絶(ソウルリーパー)》は使わない。それに意味がない事は最(・)初(・)の(・)周(・)で理解している。

 

 故に、込める異能は一つ。

 この一撃で、全ての戦いに決着をつける‼︎

 

 

「《崩界(ワールドブレイカー)》ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 バッギィィンッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 鋼鉄を金槌でブチ壊したような音が響く。

 

 其は、終末を破却する異能。

 終末摂理(ワールドエンド)を破壊する規格外(EXランク)の世界強度。

 第五摂理と第六摂理を破壊した実績がある、救世の右手が第一摂理に触れ────

 

 

 

 

 

 

「───終(ワー)末(ルド)摂(エン)理(ド) 」

 

 

 ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッッッ‼︎‼︎‼︎

 

 

「……………………………………は?」

 

 

 効いた。異能は確かに発動した。

 第(・)一(・)摂(・)理(・)を(・)破(・)壊(・)し(・)た(・)感(・)触(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)の(・)に(・)、第(・)一(・)摂(・)理(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)殺(・)さ(・)れ(・)た(・)。

 

「な、にが……ッ⁉︎」

「あたりまえでしょ。アリスの『レイメイ』のせつりは、すべてワールドエンドのきそとなるワールドエンド。ほ(・)か(・)の(・)ワ(・)ー(・)ル(・)ド(・)エ(・)ン(・)ド(・)が(・)あ(・)る(・)か(・)ぎ(・)り(・)、ぎ(・)ゃ(・)く(・)せ(・)つ(・)て(・)き(・)に(・)ア(・)リ(・)ス(・)の(・)ワ(・)ー(・)ル(・)ド(・)エ(・)ン(・)ド(・)は(・)さ(・)い(・)こ(・)う(・)ち(・)く(・)さ(・)れ(・)る(・)」

 

 第二摂理、『頽廃』。

 第三摂理、『拡散』。

 第四摂理、『枯渇』。

 第五摂理、『矛盾』。

 第六摂理、『彁妛』。

 番外摂理、『白紙』。

 

 それら六つの終末摂理(ワールドエンド)を破壊した状態でなければ、第一摂理は何度だって再構築される。

 階段飛ばしで裏ボスを倒す事はできない。この世全てのラスボスを倒した後でなければ、アリス・アウターランドとは戦いの土俵にすら立てない。

 

「さて、ここからどうするのかしら?」

「………………お、」

「アナタのもつイノウはなにもつうようしないようだけど?」

「お、おおおオオオオオオオオオオオオオッ‼︎」

 

 《破界(ワールドブレイカー)》は効かない。

 無限の異能を全て打ち消す事などできない。

 

 《魂絶(ソウルリーパー)》は効かない。

 あまりにも質量がデカすぎるアリス・アウターランドの魂は破壊しきれない。

 

 《崩界(ワールドブレイカー)》は効かない。

 終末摂理(ワールドエンド)は何度だって再構築される。

 

 何もできない。

 それでも、諦める事もできなかった。

 俺は再び編み出した手順をなぞり、アリス・アウターランドに拳を叩きつけザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ‼︎‼︎‼︎

 

 

 そして。

 無限の地獄が始まった。

 

 

 


 

 

 

 結局。

 アリス・アウターランドは殺せない。

 

 それは六道伊吹がどうとかいう話ではなくて、アリス・アウターランドは誰にも殺せない。

 ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)で(・)さ(・)え(・)も(・)、ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)を(・)殺(・)す(・)事(・)は(・)で(・)き(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

 

(むだなあがきを、よくやるわね)

 

 

 六道伊吹に殴られる。

 六道伊吹が死ぬ。

 

 六道伊吹に殴られる。

 六道伊吹が死ぬ。

 

 六道伊吹に殴られる。

 六道伊吹が死ぬ。

 

 同じ光景を何度も何度も繰り返す。

 無駄だと知りながら、六道伊吹は何度も拳をアリス・アウターランドへ叩きつけた。

 勝ち目なんて決まっているのに。もはや残るは消化試合でしかないのに。

 

 

「あきらめないの?」

「諦められる訳ねぇだろうが‼︎」

 

 

 やはり理解できない。

 宇宙が創世された一三八億年を超える年月を共にしても、アリス・アウターランドは六道伊吹を理解する事ができなかった。

 世界を容易に踏み潰す事ができる童女と、ちっぽけな世界の一部でしかない少年との間には、銀河よりも大きな断絶があった。

 

 

「そんなに、このセカイがたいせつ?」

「世界なんざどうでもいい! それでもッ、テメェという理不尽が許せねぇんだよッ‼︎」

 

 

 六道伊吹の顔色は真っ青を超えて真っ白になっていた。

 それも当然。この白い世界で、一体どれだけの六道伊吹が死亡したのか。

 厳密には彼らは同一人物ではないが、無限にも匹敵する死の記憶をちっぽけな人間の脳味噌が受け止め切れる訳がないのだ。

 

 恐らく、情報の取捨選択はしているだろう。

 この場で死した六道伊吹の生前の記憶は受け継がず、この白い世界での記憶のみを引き継いでいる。

 ……いいや、もっと限定しているか? 白い世界での思い出の中でも、本当に必要な情報だけ──正解の分岐だけを記憶しているに違いない。

 

 しかし、それでも、人間が受け止めるには膨大すぎる情報量。

 いっそ自殺した方が楽なんじゃないかとさえ思えるほどの苦痛が、六道伊吹の脳味噌を苛んでいる。

 

 

「テメェという理不尽が! 不条理が‼︎ 結末(デッドエンド)が許せねぇッ‼︎ それを覆すためならッ、俺は世界だって救ってやるッ‼︎」

「……やっぱり、わからない。リカイ、できない」

 

 

 理解する必要はなかった。

 だって、この戦いはもう終わる。

 六道伊吹は既に限界に達して──い(・)い(・)や(・)、と(・)っ(・)く(・)に(・)限(・)界(・)な(・)ん(・)て(・)超(・)え(・)て(・)い(・)る(・)。

 

 余命一年と言われた状態で、百年生きるような無茶苦茶を成し遂げている。

 だが、不老不死にはなれない。あと少し、あと僅か、具体的にはこの白い世界でた(・)っ(・)た(・)一(・)〇(・)億(・)年(・)程(・)度(・)が経過すれば六道伊吹の脳は情報量に耐えきれず弾け飛ぶ。

 

 

「──おもえば、アナタとはずいぶんナガイつきあいね」

 

 

 こんな世界初めてだと、アリスは笑う。

 アリスが転生する前にアリスの存在に気がつく人間(アダマス)なんて初めて見たし、アリスの転生を妨害して世界を延命させた魔女(メア)だって初めてだった。

 ──それに、目の前でアリスに立ち向かう少年(イブキ)だって。

 

 

「ええ、みとめましょう。カチあるセカイだったわ、アナタのこきょうは」

 

 

 ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ‼︎‼︎‼︎

 

 

 

「だ(・)か(・)ら(・)──か(・)ん(・)ぷ(・)な(・)き(・)ま(・)で(・)、ふ(・)み(・)つ(・)ぶ(・)し(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)」

 

 

 

 断絶があった。

 決して埋まる事のない、断絶が。

 

 

 ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ‼︎‼︎‼︎

 

 

 


 

 

 

「ふふふふふふ、あははははははははは‼︎」

 

 

 そして。

 無限にも等しい六道伊吹達の死に様を見て。

 アリス・アウターランドは突然に笑い出した。

 

「…………なんだ?」

「すごいっ! すごいのね! アナタ‼︎」

 

 思い返せば、それは最も大きな表情の変化だったのかもしれない。

 まぁ、記憶の大半を省略(カット)している俺ではそれが事実かどうかは判断できないのだが。それでも、少なくとも俺(・)は見た事のない笑顔だった。

 

 笑い、嗤い、微笑い。

 アリス・アウターランドは目尻に浮かぶ涙を拭って、告げた。

 

 

「ア(・)ナ(・)タ(・)よ(・)り(・)さ(・)き(・)に(・)、セ(・)カ(・)イ(・)の(・)ほ(・)う(・)が(・)ゲ(・)ン(・)カ(・)イ(・)を(・)む(・)か(・)え(・)る(・)な(・)ん(・)て(・)‼︎」

 

 

 ぎぎぎぎぎ、と。

 驚愕と共に目を見開く。

 

 その意味が、理解できてしまった。

 

 

 

「こ(・)れ(・)が(・)、最(・)終(・)周(・)──な(・)の(・)か(・)ッ⁉︎」

 

 

 

 ああ、アダマスも言っていた。

 折手メアの番外摂理によるループは無限ではない。

 世界が許容できる情報量は有限だと。無限にも匹敵する回数を繰り返せても、その数は実際のところ有限に過ぎないのだと。

 

 だから、これが結末だった。

 世(・)界(・)は(・)限(・)界(・)を(・)迎(・)え(・)、番(・)外(・)摂(・)理(・)は(・)破(・)綻(・)し(・)た(・)。

 

「ふふふ、いがいとあっけないオワリね」

 

 笑みと共に、アリス・アウターランドはあくびをする。

 すっかり寝坊だと恥ずかしがるみたいに。

 

 

「さようなら、リクドウイブキ。さようなら、アリスのたのしいユメのセカイ!」

 

 

 そして。

 そして。

 そして。

 そして。

 そして。

 そして。

 

 

 

 ビ(・)キ(・)ビ(・)キ(・)ビ(・)キ(・)ビ(・)キ(・)ィ(・)ッ(・)ッ(・)ッ(・)‼︎‼︎‼︎ と(・)。

 ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)の(・)こ(・)め(・)か(・)み(・)に(・)耐(・)え(・)き(・)れ(・)な(・)い(・)激(・)痛(・)が(・)走(・)っ(・)た(・)。

 

 

「っっ、──────ぇ?」

 

 

 激痛。

 頭、脳、神経。

 そ(・)れ(・)よ(・)り(・)も(・)も(・)っ(・)と(・)、奥(・)深(・)く(・)に(・)あ(・)る(・)モ(・)ノ(・)が(・)痛(・)い(・)。

 

「…………は」

「な、にを」

「ははッ」

「なにを、した……?」

「ははははははッ、はははははははははははははははははははははははははははははッ‼︎」

「ア(・)リ(・)ス(・)に(・)な(・)に(・)を(・)し(・)た(・)ッ、リ(・)ク(・)ド(・)ウ(・)イ(・)ブ(・)キ(・)‼︎」

 

 答えは、一言。

 

 

「魂(・)を(・)破(・)壊(・)し(・)た(・)」

 

 

 間に合った。

 最終周にしてようやく、俺の足掻きは致命傷へ至った。

 

「ふかのうよ! だって、アナタがいったもの! アリスのたましいは、シツリョウがデカすぎるって‼︎」

「確かに言った。だけど、それでも、異能が効かない訳じゃない。なら、できるんじゃねぇのか? 無(・)限(・)に(・)《魂絶(・・)》を(・)叩(・)き(・)つ(・)け(・)て(・)テ(・)メ(・)ェ(・)の(・)魂(・)を(・)破(・)壊(・)す(・)る(・)事(・)だ(・)っ(・)て(・)‼︎」

「────────、」

 

 なにせ、この白い世界はループしない。

 アリス・アウターランドはループの影響を受けない。

 だから、俺がつけた僅かな傷さえも次周(ツギ)へ引き継がれる。雨(・)垂(・)れ(・)が(・)岩(・)を(・)も(・)穿(・)つ(・)よ(・)う(・)に(・)、俺(・)の(・)無(・)駄(・)な(・)足(・)掻(・)き(・)が(・)ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)の(・)魂(・)に(・)ヒ(・)ビ(・)を(・)い(・)れ(・)た(・)。

 

 

「────ころす」

 

 

 初(・)め(・)て(・)、ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)が(・)殺(・)意(・)を(・)見(・)せ(・)た(・)。

 戦闘の姿勢を取る必要すらなかった童女が、初めて戦いの土俵に上がった。

 

 今から見せるのが本当の実力。

 六界列強(グレートシックス)・第一位、アリス・アウターランドの本気。

 

 今、世界を壊す呪文(キーワード)が告げられる。

 

 

「世界(reve)新(rse)生───《 幻(ドリ)想(ーム)世(ワー)界(ルド) 》」

 

 

 直後、世界がひっくり返った。

 世界観(ジャンル)が書き換わる。

 物理法則(第零摂理)が捻じ曲がる。

 これより先は異世界、常識のない非現実の世界。

 

「──あと、イ(・)チ(・)ド(・)。アナタのテにふれられたら、アリスのタマシイはかんぜんにホウカイする」

「余裕だな、既に正規ルートは分かってんだから」

「そう、なら……リ(・)セ(・)ッ(・)ト(・)す(・)る(・)わ(・)」

「……………………………………は?」

 

 世(・)界(・)が(・)う(・)ね(・)る(・)。

 粒(・)子(・)の(・)配(・)置(・)が(・)変(・)更(・)さ(・)れ(・)る(・)。

 記(・)憶(・)し(・)た(・)正(・)規(・)ル(・)ー(・)ト(・)が(・)白(・)紙(・)に(・)帰(・)る(・)。

 

「もう、しにおぼえはできない。させない。ムゲンのイノウ、それをとくとアジワウがいいわ」

 

 残機はゼロ。後はない。

 にも拘(かかわ)らず、此処からは初見の領域。

 たった一度の過ち(ミス)も許されない、強制ノーミス初見縛り。

 

 

「……こんどこそ、さようならよ‼︎」

 

 

 粒子(いのう)が一斉に起動する。

 銀河さえ消し飛ばせるような衝撃が、無限に重ねられる。

 

 当たれば死。

 逃げ場は無。

 絶死の衝撃が壁となり、宇宙の拡大速度よりも速く迫り──

 

 

 

 

 ────ゴ(・)ロ(・)ゴ(・)ロ(・)と(・)転(・)が(・)っ(・)て(・)、そ(・)の(・)壁(・)を(・)潜(・)り(・)抜(・)け(・)た(・)。

 

 

「──────────は」

 

 

 今度の今度こそ。

 アリス・アウターランドは理解を放棄した。

 

 無様な有様だった。

 避けた、というよりも。コケたようにも見えた。顔面から地面に転がっていたため、鼻からは血が出ていた。

 しかし、それでも、アリス・アウターランドの攻撃を受けて、負傷という負傷はそれだけだった。

 

 だが、あり得ない。

 そもそも、避けられる速度はしていない。攻撃が放たれるよりも──いいや、そもそも、ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)が(・)攻(・)撃(・)を(・)行(・)お(・)う(・)と(・)思(・)う(・)よ(・)り(・)も(・)早(・)く(・)動(・)い(・)て(・)い(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)説(・)明(・)が(・)つ(・)か(・)な(・)い(・)動(・)き(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

 あり得ない。

 あり得ない、が。

 あり得たとしたら、それは……?

 

 

 

「ま(・)、さ(・)か(・)────み(・)ら(・)い(・)、よ(・)そ(・)く(・)……⁉︎」

「正(・)解(・)‼︎」

 

 

 

 思い出せ。

 六道伊吹の父親は誰だった?

 

「テメェの異能は何度も受けた。見て、知って、覚えて。だ(・)か(・)ら(・)俺(・)の(・)異(・)能(・)感(・)知(・)は(・)、粒(・)子(・)一(・)つ(・)一(・)つ(・)の(・)反(・)応(・)が(・)手(・)に(・)取(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)分(・)か(・)る(・)ま(・)で(・)研(・)ぎ(・)澄(・)ま(・)さ(・)れ(・)た(・)」

 

 そこに、アダマス譲りの頭脳が組み合わさればどうなるか。

 全ての異能の反応──この白い世界にある粒子全ての動きが把握でき、異能の効果を過去の六道伊吹達の記憶から知っており、その二つから未来を演算できる頭脳がある。

 

「あとは単純なメタ読みだ。ど(・)れ(・)だ(・)け(・)戦(・)っ(・)た(・)と(・)思(・)っ(・)て(・)や(・)が(・)る(・)。テ(・)メ(・)ェ(・)の(・)魂(・)胆(・)な(・)ん(・)ざ(・)見(・)え(・)見(・)え(・)な(・)ん(・)だ(・)よ(・)」

 

 だから、此処に成った。

 六(・)道(・)伊(・)吹(・)は(・)ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)を(・)理(・)解(・)し(・)、今(・)こ(・)の(・)場(・)限(・)定(・)の(・)未(・)来(・)予(・)測(・)能(・)力(・)を(・)獲(・)得(・)す(・)る(・)に(・)至(・)っ(・)た(・)。

 

「あ、ああ」

 

 アリス・アウターランドの声が震える。

 ここに至って初めて、彼女は恐怖を覚えた。

 アリス・アウターランドは死んだ事がない。いつだって、先に臨終するのは童女ではなく世界の方だった。無数の世界を終わらせながら、無数の世界に生まれ変わりながら、一方で彼女は死を経験した事がなかった。

 故に、アリス・アウターランドは──彼女の魂は死(・)を知らない。

 

「あああ、あああああっ」

 

 だが、この世界には存在する。

 アリス・アウターランドを終わらせる者、彼女に未知の恐怖を与える者────死神(てんてき)が、此処には存在した。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 絶叫。

 世界(いのう)全てが胎動する。

 アリス・アウターランドの恐怖に応えるように、童女を死に至らしめる六道伊吹を排除しようと牙を剥く。

 

 想定内。

 もはや童女は考える力を失った。

 故に、全身全霊をもって迎え撃つ‼︎

 

 一言、世界を覆す呪文(キーワード)を告げた。

 

 

「世界、新生(reverse)───《現実世界(ノンフィクション)》」

 

 

 裏返った世界を、更にひっくり返す。

 世界観(ジャンル)を削ぎ落とす。

 物理法則(第零摂理)が息を吹き返す。

 これより先は現世、悲劇のない当たり前の世界。

 

 相対するは世界の終わり。

 あらゆる転生者の頂点に立つ者。

 最大最強の理不尽(デッドエンド)──アリス・アウターランド‼︎

 

「ははッ、そんな結末(デッドエンド)なんざ覆してやるよッ‼︎」

「きっ、きえろォォおおおおおおおおおお‼︎」

 

 瞬間、無限の異能が押し寄せる。

 圧倒的質量攻撃。今度こそ、隙間も存在しない異能の壁。

 だが、その未来は知っている。迎(・)撃(・)は(・)既(・)に(・)果(・)た(・)さ(・)れ(・)た(・)。

 

 

「──《破界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 一度目。

 

 狙うは一点。

 異能の壁を構築する粒子の一つ。

 

 その粒子が消滅した瞬間、空いた穴を埋めようと周囲の粒子が動き出し、そ(・)れ(・)ぞ(・)れ(・)が(・)ぶ(・)つ(・)か(・)り(・)合(・)っ(・)た(・)事(・)で(・)異(・)能(・)が(・)暴(・)発(・)す(・)る(・)。

 結(・)果(・)と(・)し(・)て(・)、ま(・)る(・)で(・)俺(・)を(・)避(・)け(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)壁(・)に(・)人(・)一(・)人(・)分(・)の(・)穴(・)が(・)空(・)い(・)た(・)。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》──“鎧(アーマー)”フォーム」

 

 

 二度目。

 

 地面を蹴る。

 地面に埋まった衝撃を反射する異能を、六秒間のみ無効化する。

 大地を駆け、無数に存在する選択肢から正解のルートを走り抜ける。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》──“銃弾(ブレット)”フォーム」

 

 

 三度目。

 

 歯で自らの頬を噛みちぎり、唾と共に血を前方へ吐き飛ばす。

 直後、カッッッ‼︎‼︎‼︎ と視界の隅で光る。

 宇宙の拡大速度よりも速く迫る雷のようなナニカが、血液を介して粒子の一部が打ち消された事で、ほんの僅かに軌道が逸れて俺の耳の横を通り過ぎていく。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》──“釘(ネイル)”フォーム」

 

 

 四度目。

 

 首元に嫌な感覚があった。

 自分でもどんな途中式があったのかさえ分からない演算の結果、とある異能を六分間封印する。

 多分、それは無限に近い時間を共に過ごした俺でさえ知らない異能。アリス・アウターランドでさえも自覚していないナニカ。分からない、理解できないそれを、分からないまま封じ込める。

 

 三メートル。

 二メートル。

 一メートル。

 

 一瞬で距離が詰まる。

 否、一瞬ではなかった。

 此処に至るまで、無限にも等しい時間があった。

 無限の地獄で得た経験が、今この時、六道伊吹の背中を押してくれる!

 

 アリス・アウターランドはもう、すぐそこ。

 手が届く距離に到達する。

 

 右手を強く強く握る。

 最大最強の力を込めて、思いっきり振るう。

 

 

 

 ──そ(・)の(・)、直(・)前(・)。

 

 

 

「───終(ワー)末(ルド)摂(エン)理(ド) 」

 

 

 世界そのものが異世界へと変質する。

 顕現するは第一の死因(おわり)。

 この世界に刻まれた『黎明』の法則。

 語られざる終末論の一つ(Apocalypse#01)。

 

 ジリリリリリリリリリリッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 世界の終わりが喧しく鳴り響く。

 それは、目覚めの象徴。目覚まし時計のように騒がしく、太陽のように眩い光の奔流。

 

 アリス・アウターランドは終末摂理(ワールドエンド)を鎧のように纏った。

 俺が同時に使えるのは一種類の異能のみ。理(・)論(・)上(・)、終(・)末(・)摂(・)理(・)で(・)防(・)御(・)し(・)続(・)け(・)れ(・)ば(・)魂(・)を(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)る(・)事(・)は(・)な(・)い(・)。

 

 

「──《崩界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 五度目。

 

 無(・)論(・)、そ(・)れ(・)す(・)ら(・)も(・)想(・)定(・)内(・)。

 第一摂理を破壊する。すぐに再構築されるのだとしても、ほんの一瞬、隙が生まれる。

 

 アリス・アウターランドの目が見開いた。

 俺と童女の視線が交差する。

 彼女が見上げるは、振り上げられた右手。

 

 

「──《魂絶(ソウルリーパー)》ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 六度目。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そ(・)し(・)て(・)、想(・)定(・)外(・)が(・)た(・)だ(・)一(・)つ(・)。

 俺(・)の(・)隣(・)に(・)、得(・)体(・)の(・)知(・)れ(・)な(・)い(・)ナ(・)ニ(・)カ(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)。

 

 

 それは人形というよりも、まるで陶器のような質感を持ったモノ。

 黒い軍服を着た人型であるが、首が上のない姿形と二メートルの大きさが威圧感を与える。

 そして、何よりも恐ろしいのはその手に持った斧。赤い錆で覆われたそれは、ギロチンの刃のような印象を受ける。

 

 首斬り役人(ヘッズマン)。

 七年前に時間遡行した時に見たモノ。

 かつて折手メアがそう呼んだ悪(・)夢(・)の(・)執(・)行(・)者(・)が、錆びた斧を振りかぶっていた。

 

「──────え」

 

 異(・)能(・)感(・)知(・)が(・)反(・)応(・)し(・)な(・)い(・)。

 粒(・)子(・)一(・)つ(・)一(・)つ(・)の(・)異(・)能(・)の(・)反(・)応(・)を(・)知(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)、そ(・)の(・)異(・)様(・)さ(・)が(・)浮(・)き(・)彫(・)り(・)に(・)な(・)る(・)。

 そ(・)れ(・)は(・)明(・)ら(・)か(・)に(・)こ(・)の(・)世(・)界(・)の(・)摂(・)理(・)か(・)ら(・)浮(・)い(・)て(・)い(・)る(・)の(・)に(・)、異(・)能(・)で(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 ダンッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 気付けば、既に右手は切り離されていた。

 

 咄嗟に、左手をもう一度振りかぶる。

 だが、遅い。既に第一摂理は再構築されている。

 恐怖に発狂していたアリス・アウターランドも既に冷静さを取り戻していた。

 

 異能は既に使い切った。

 七度目以降は生命を削る愚行となる。

 冷静さを取り戻したアリス・アウターランド相手に、俺の命が保つほど早く手が届くとは思えない。

 

 

 

「────ふふっ」

 

 

 

 そ(・)れ(・)な(・)の(・)に(・)。

 ま(・)る(・)で(・)仕(・)方(・)が(・)な(・)い(・)な(・)あ(・)と(・)で(・)も(・)言(・)っ(・)て(・)笑(・)う(・)よ(・)う(・)に(・)、ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)は(・)自(・)ら(・)の(・)頬(・)を(・)差(・)し(・)出(・)し(・)た(・)。

 

 

 直後の事だった。

 俺の左手が、アリス・アウターランドを殴り飛ばした。

 

 

 世界終末まで 

 残り─── 

 

 

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