【完結】原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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九八話:最終決戦/vsボスラッシュ

 

 

「グッモーニング、伊吹。まぁ、モーニングと言うには遅すぎるがな。ゴールデンウィークでボケたか?」

 

 そ(・)の(・)瞬(・)間(・)が(・)、原(・)作(・)開(・)始(・)地(・)点(・)。

 折(・)手(・)メ(・)ア(・)が(・)定(・)め(・)た(・)物語(セカイ)の(・)始(・)ま(・)り(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り60秒 

 

 

 随分と久しぶりに聞いた親友の声。

 涙腺が緩む、足を止めて話したくなる。

 だが、湧き上がる感情を全て無視して、俺は窓に向かって走った。

 

 向かう先は折手メアがいる二年八組。

 現在地の二年一組との位置関係は──中(・)庭(・)を(・)挟(・)ん(・)だ(・)向(・)か(・)い(・)側(・)‼︎

 

 勢いのまま窓枠に足をかける。

 行ける。たとえ特別な肉体を失っても、火事場の馬鹿力を自由自在に引き出す技術までは失っていない!

 

 

 大(・)跳(・)躍(・)。

 

 

 走り幅跳びの要領で窓枠を踏み、数メートルの距離を跳び越える。

 窓ガラスを突き破り、向かい側の教室に飛び込む。

 

 

 世界終末まで 

 残り55秒 

 

 

 誰も、何も声をあげなかった。

 沈黙。悲鳴や驚愕以前に、誰も理解が追いつかなかったのだろう。

 

 周囲の様子に拘泥している暇はなかった。

 窓際の席に座る少女に向かって、単刀直入に要件を伝える。

 

「メア、力を貸せ」

「…………え、は? うん???」

「協力しろって訳じゃねぇ。俺の前に六界列強(グレートシックス)を呼び出せ」

「ど、どういう事かな???」

「ごちゃごちゃ言ってる暇はねぇんだ! 簡単な事だ!」

 

 両手で折手メアの小さな肩を掴み、揺さぶりながら至近距離から言葉をかける。

 折手メアが絶対に動きたくなるような一言を‼︎

 

 

「六(・)道(・)伊(・)吹(・)の(・)カ(・)ッ(・)コ(・)い(・)い(・)所(・)を(・)見(・)せ(・)て(・)や(・)る(・)‼︎」

 

 

 世界終末まで 

 残り50秒 

 

 

「…………は」

 

 

 世界終末まで 

 残り49秒 

 

 

「あはッ!」

 

 

 世界終末まで 

 残り48秒 

 

 

「うひひっ!」

 

 

 世界終末まで 

 残り47秒 

 

 

「うん、じゃあ──」

 

 

 世界終末まで 

 残り46秒 

 

 

 

「ボ(・)ク(・)も(・)敵(・)だ(・)。や(・)っ(・)て(・)み(・)な(・)よ(・)、原(・)作(・)主(・)人(・)公(・)‼︎」

「だ(・)ろ(・)う(・)と(・)思(・)っ(・)た(・)よ(・)‼︎」

 

 

 

 世界終末まで 

 残り45秒 

 

 

 直(・)後(・)。

 宇(・)宙(・)か(・)ら(・)隕(・)石(・)が(・)超(・)音(・)速(・)で(・)落(・)ち(・)る(・)。

 

 

 

 

九八話 最終決戦

VS_BOSS-RUSH.

 

 

 

 

 どうせそんな事だろうと予想していた。

 折手メアはまだ改心していない。

 俺が彼女と築いた信頼関係は存在しない。

 だから、六道伊吹(タイトルロール)と折手メア(オリ主)は必ず激突する宿命にある。

 

 一方で、折手メアの行動は読みやすい。

 彼女の動機は全て『六道伊吹(タイトルロール)』に繋がる。

 ならば、他ならぬ俺だけは折手メアの行動を誘導(コントール)できる。

 

 折手メアの思考回路は単純だ。

 敵が──それも六界列強(ボスキャラ)があっさり倒された場合、も(・)っ(・)と(・)強(・)い(・)敵(・)を(・)差(・)し(・)向(・)け(・)よ(・)う(・)と(・)考(・)え(・)る(・)。

 

 わざわざ時間をかけて敵を探す必要はない。

 倒しさえすれば、敵はすぐに補充される。

 俺が考える事はただ一つ。次(・)々(・)と(・)現(・)れ(・)る(・)六(・)界(・)列(・)強(・)を(・)倒(・)し(・)、彼(・)ら(・)が(・)有(・)す(・)る(・)終(・)末(・)摂(・)理(・)を(・)破(・)壊(・)す(・)る(・)事(・)だ(・)け(・)。

 

 故に、小細工はいらない。

 ただ正面から撃ち破るのみ。

 

 

 世界終末まで 

 残り45秒 

 

 

 隕石。

 天より降り注ぐ神の如き一撃。

 

 《ご都合主義(デウス・エクス・マキナ)》による現実改変。

 実は隕石が地球との直撃コースにあった、というようにこの世界が書き換えられたのだろう。

 

 当然、ただの一般人では立ち向かう事もできない。

 

 異能を無効化するチカラはない。

 壊れても再生する肉体はない。

 不可逆の傷を刻み付ける武器はない。

 頼れるたくさんの味方はいない。

 それらを手に入れる時間もない。

 

 元より、六道伊吹とはちっぽけな生き物だ。

 奇跡的な確率により同じ世界の同じ時間軸に転生できたからこそ、特別な異能を授かって戦えただけ。

 だが、今の俺はまだ死んでいない。何の力も得ていない。この理不尽(デッドエンド)を覆す事はできない。

 

 

(────本(・)当(・)に(・)?)

 

 

 本当に、そうだろうか?

 だって、俺にはあるではないか。

 一周前の俺が唯一遺す事ができた重要な要素。

 

 前(・)世(・)の(・)記(・)憶(・)。

 

 確かに、リセットされた。

 今の俺は生きている。

 だが、それでも俺は死亡した。

 過去に戻った訳じゃない。

 あの出来事が無かった事になった訳じゃない。

 俺(・)は(・)死(・)ん(・)だ(・)後(・)に(・)も(・)う(・)一(・)度(・)生(・)ま(・)れ(・)直(・)し(・)た(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)、無(・)数(・)の(・)ル(・)ー(・)プ(・)の(・)記(・)憶(・)と(・)は(・)俺(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)前(・)世(・)の(・)記(・)憶(・)に(・)等(・)し(・)い(・)。

 

 できるはずだ、六道伊吹。

 無数のループを前世として、今(・)こ(・)こ(・)で(・)世(・)界(・)観(・)を(・)再(・)構(・)築(・)す(・)る(・)事(・)が(・)‼︎

 

(前世追憶(セット)、心象構築(セット)、世界侵蝕(セット))

 

 前世の記憶を振り返る。

 長い長い無限のループ。

 世界中を駆け回った日々。

 転生者、天使、一般人、バリエーション豊かな大勢の人々と俺は戦い、共に歩んだ。

 

(法則改竄(セット)、摂理装填(セット)、異界伐採(セット))

 

 現実なんて滅茶苦茶で。

 非現実に溢れていて。

 でも、そこには日常があった。

 異能なんかに負けない、当たり前ってヤツが。

 

 それは異能なんかよりよっぽど強い力だった。

 暴力なんかよりも、よっぽど尊い力だった。

 

(終末破却(セット))

 

 込める。

 本当に素晴らしい世界の情景を。

 俺(・)が(・)破(・)壊(・)し(・)た(・)当(・)た(・)り(・)前(・)の(・)世(・)界(・)っ(・)て(・)ヤ(・)ツ(・)を(・)。

 

 さぁ、世界を覆す呪文(キーワード)を叫べッッッ‼︎‼︎‼︎

 

 

 

「世界、新生(reverse)───《現実世界(ノンフィクション)》ッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 直後、世界がひっくり返った。

 世界観(ジャンル)が書き換わる。

 物理法則(第零摂理)が捻じ曲がる。

 これより先は異世界、俺が理不尽を覆す世界。

 

 これが俺にとっての現実(セカイ)。

 異能はあった。

 魂なんかもあった。

 非現実的な光景は数え切れないほど見た。

 

 でも、それでも。

 そんなのに負けない当たり前の強さってヤツを知った。

 

 墜落する隕石に手をかざす。

 世界はこんな所じゃ終わらない。

 この俺がッ、終わらせやしない‼︎

 

 

「最終摂理接続─────終末摂理(ワールドエンド)ッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 瞬(・)間(・)、隕(・)石(・)が(・)消(・)し(・)飛(・)ぶ(・)。

 衝(・)撃(・)の(・)余(・)波(・)が(・)校(・)舎(・)を(・)吹(・)き(・)飛(・)ば(・)す(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り40秒 

 

 

 世界そのものが異世界へと変質する。

 顕現するは最終の死因(おわり)。

 この世界に刻まれた『破界』の摂理。

 語られざる終末論の最後(Apocalypse#Fin)。

 

 最後の終末摂理(ワールドエンド)。

 最終摂理──────『破界』。

 

 終末摂理(ワールドエンド)とは、世界の終わりの具現。

 《破界(ワールドブレイカー)》によって異能と化した世界全てを消し飛ばした俺には、終末摂理(ワールドエンド)を世界に刻み込んで六界列強(グレートシックス)になれる資格があった。

 

 即ち、六界列強(グレートシックス)・最終位。

 それが六道伊吹の肩書だった。

 

「…………は?」

「終末摂理(ワールドエンド)っ‼︎」

 

 更に畳み掛ける。

 少女に直接触れて、終末摂理(ワールドエンド)をブチ込む。

 

 バッギィィンッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 鋼鉄を金槌でブチ壊したような音が響いた。

 

 番(・)外(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 折(・)手(・)メ(・)ア(・)、撃(・)破(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り36秒 

 

 

 終末摂理(ワールドエンド)はそれぞれ異なる特性を持つ。

 例えば、第四位(ディートリヒ)の『枯渇』の摂理は魔力の完全消費。例えば、第五位(クシャナ)の『矛盾』の摂理はタイムパラドックスの誘発、など。それぞれの世界の終末を具現化する。

 

 故に、『破界』の摂理の性質とは《破界(ワールドブレイカー)》そのもの。

 《破界(ワールドブレイカー)》から派生した魂を破壊する《魂絶(ソウルリーパー)》や終末摂理(ワールドエンド)を破壊する《崩界(ワールドブレイカー)》を再現できても不思議ではない。

 

 《破界(ワールドブレイカー)》が異能を破壊する異能であったように。

 『破界』の摂理は終末摂理(ワールドエンド)を破壊する終末摂理(ワールドエンド)であったのだ。

 

「…………あは」

「足りねぇぞ、メア。お前の知る限りの最悪を、俺にぶつけてみろ」

「はは、はははははははははははははははは‼︎」

 

 笑い狂い。

 魔女は呪いを放つみたいに指を差した。

 

 

「も(・)う(・)後(・)ろ(・)に(・)い(・)る(・)よ(・)」

 

 

 ゴ(・)ッ(・)ッ(・)ッ(・)‼︎‼︎‼︎ と(・)。

 言(・)葉(・)で(・)は(・)表(・)現(・)で(・)き(・)な(・)い(・)ほ(・)ど(・)醜(・)悪(・)な(・)異(・)型(・)の(・)怪(・)物(・)が(・)墜(・)落(・)す(・)る(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り30秒 

 

 

(六界列強(グレートシックス)・第六位、正体不明(アンノウン)ッ‼︎)

「縺弱>繧薙℃繧?>繧薙$繧上s縺舌o繧」

 

 金属を擦り合わせたような不快音波を放つ怪物。

 しかし、怪物の本領たる知覚するだけで精神を破壊する認識災害は終末摂理(ワールドエンド)で身を包む俺には通用しない。姿形も声も匂いの微粒子も、俺に届く前に消し飛ばしている。

 何せ、終末摂理(ワールドエンド)とは世界に刻まれた摂理(ルール)。たとえ発動し続けたとしても自身に負担はなく、異能の時と違って時間制限も存在しない。防御方法には最適という訳だ。

 

 この怪物を殺すだけなら簡単だ。

 終末摂理(ワールドエンド)で一掃すればいい。

 たとえ相手が同じ終末摂理(ワールドエンド)で迎撃しようと、《破界(ワールドブレイカー)》の性質を引き継いでいる以上、相殺される事なくこちらの終末摂理(ワールドエンド)が相手を蹂躙する。

 

 だが、終末摂理(ワールドエンド)の制御は難しい。

 通常の使用ならば兎も角、《崩界(ワールドブレイカー)》を始めとした応用を遠隔で行うのは不可能。また概念の破壊といった離れ技も、今の俺では他に何を巻き込んでしまうか分からない。

 つまり、確実に相手の終末摂理(ワールドエンド)を破壊するのなら、相手の肉体に直接触れる必要がある。肉体を消し飛ばして接触箇所がなくなれば戦った意味がない。

 

(だったら──ッ)

 

 

 パ(・)ン(・)ッ、と(・)。

 乾(・)い(・)た(・)破(・)裂(・)音(・)が(・)響(・)く(・)。

 銃(・)声(・)。俺(・)の(・)手(・)の(・)中(・)に(・)あ(・)る(・)銃(・)口(・)は(・)第(・)六(・)位(・)に(・)向(・)け(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り27秒 

 

 

 折手メアの懐から盗(ス)った拳銃。

 無限のループの中には銃を使った経験もあったのか、弾倉に込められていた全弾が第六位の胴体(?)をブチ抜いた。

 

 そ(・)う(・)、単(・)な(・)る(・)現(・)代(・)兵(・)器(・)が(・)転(・)生(・)者(・)の(・)世(・)界(・)観(・)を(・)無(・)視(・)し(・)て(・)傷(・)つ(・)け(・)た(・)。

 

 本来ならばあり得ない現象。

 だが、忘れていないだろうか?

 終末摂理(ワールドエンド)とはその正統接続者に世界を滅ぼす力を与えるのではなく、世(・)界(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)が(・)滅(・)ぼ(・)さ(・)れ(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)改(・)変(・)す(・)る(・)力(・)だ(・)と(・)。

 

 例えば、第四位(ディートリヒ)の『枯渇』の摂理は魔力が完全に消費された事で世界が終わったという死因(ほろび)を刻み付ける事で、逆(・)説(・)的(・)に(・)こ(・)の(・)世(・)界(・)は(・)魔(・)力(・)で(・)構(・)成(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)と(・)い(・)う(・)ふ(・)う(・)に(・)改(・)変(・)し(・)た(・)。

 同じように、俺の『破界』の摂理は異能を無効化する力によって世界全てが消し飛ばされたという死因(ほろび)を刻み付けた。そ(・)の(・)結(・)果(・)と(・)し(・)て(・)、逆(・)説(・)的(・)に(・)世(・)界(・)全(・)て(・)が(・)異(・)能(・)と(・)し(・)て(・)の(・)性(・)質(・)を(・)得(・)た(・)。

 つ(・)ま(・)り(・)、現(・)在(・)の(・)世(・)界(・)は(・)粒(・)子(・)一(・)つ(・)一(・)つ(・)が(・)世(・)界(・)観(・)を(・)貫(・)通(・)す(・)る(・)効(・)果(・)を(・)有(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 

「縺弱▲縲√℃縺後?√′繧。繧。繝ッッッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 初めての痛みにうめく怪物。

 その一瞬で、距離を詰める。

 怪物が一方的に攻撃できる時代は終わった。

 これからは現地人(こっち)が怪物(おまえ)を殺す番だ!

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)ッ‼︎」

 

 

 拳を叩き付ける。

 終末摂理(ワールドエンド)ごと第六位を消し飛ばした。

 

 第(・)六(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 正(・)体(・)不(・)明(・)、撃(・)破(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り25秒 

 

 

「オラッ、次だァ!」

 

 俺の声に応えるように。

 空間の歪みが更なる敵を戦場へ誘う。

 

 第五位、クシャナ。

 当然の事ながら何の了承もなく連れて来られたヤツは、眼前に迫る敵に目を見開く。

 

「なッ、六界列強(グレートシックス)⁉︎ 既存のヤツじゃない! オマエさん、第七位かッ⁉︎」

「ハズレ。俺は最終位、テメェらを殺して最後の六界列強(グレートシックス)になる男だ!」

 

 咄嗟の判断だったのだろう。

 クシャナは反射的に自身の異能を発動する。

 

 《時間飽和現象(Conut Over)》。

 宇宙全ての時間を停止する無法能力。

 敵を一方的に甚振る事ができる最悪の力。

 た(・)だ(・)し(・)、敵(・)が(・)俺(・)で(・)も(・)な(・)け(・)り(・)ゃ(・)の(・)話(・)だ(・)が(・)。

 

「────終末摂理(ワールドエンド)」

 

 

 世界終末まで 

 残り22秒 

 

 

 何の捻りもなく放つ終末摂理(ワールドエンド)。

 宇宙規模の時間の停止がいとも簡単に否定される。

 

 お得意の無敵時間は不発。

 この後のクシャナの行動は死ぬほど見た。

 《遡行記憶通信(Time Leap)》による逃走。

 ただでさえ余裕のない今、そんなダルい事をさせてたまるか。

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)ッ‼︎」

 

 

 クシャナに触れる。

 過去──時(・)間(・)軸(・)と(・)い(・)う(・)概(・)念(・)ご(・)と(・)ク(・)シ(・)ャ(・)ナ(・)の(・)存(・)在(・)を(・)破(・)壊(・)す(・)る(・)。

 

 第(・)五(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 ク(・)シ(・)ャ(・)ナ(・)、撃(・)破(・)。

 

 逃がさない。逃げ場など与えない。

 概念破壊は制御が難しいが、使えない訳ではない。第五摂理を破壊した後──誰かを巻き込んでも構わない状態ならば、いくらでも使用できる。

 

 

 世界終末まで 

 残り20秒 

 

 

 カッッッ‼︎‼︎‼︎ と、異能の反応。

 背後から迫る光速(ひかり)の斬撃。

 避けはせず、そのまま終末摂理(ワールドエンド)で無効化する。

 

「キッ、サマァ! よくもクシャナをォ‼︎」

「悪いけど、今はお前程度に拘泥している暇はねぇんだわ」

 

 六界列強(グレートシックス)・第四位。

 ディートリヒ・フォン・エルケーニッヒ。

 

 爆発するような異能の反応。

 恐らく、今までに奪ってきた無数の異能を使うつもりだろう。

 

「────終末摂理(ワールドエンド)」

 

 だが、絶望的に相性が悪い。

 振り向きざまに全ての異能を無効化する。

 

 ディートリヒの表情(かお)に恐怖が浮かぶ。

 一瞬、足が逃げ出そうとして地面を踏ん張った。

 

 咄嗟に逃げ出さなかったのはプライドか、それとも親友の敵討ちのためか。

 どちらにせよ、その一瞬の迷いが命取りだ。

 

「終末摂理(ワールドエンド)っ!」

 

 ディートリヒの肉体に触れ──魂(・)の(・)感(・)触(・)が(・)な(・)い(・)。

 

 

(──ッ、コ(・)イ(・)ツ(・)⁉︎ 既(・)に(・)逃(・)げ(・)て(・)や(・)が(・)る(・)‼︎)

 

 

 世界終末まで 

 残り16秒 

 

 

 ディートリヒの騎士甲冑を纏った姿は、肉体(アバター)型の異能《神体加護》により引き出したモノ。

 本来は自身の肉体と重ねるようにして発動するその異能を、自身から独立するようにして発動すれば、ほんの一瞬の時間稼ぎになる。

 

 《神体加護》と重なって見えないような位置取りで逃げるのは、見たことのない顔の男。

 十中八九、ディートリヒに憑依された現地人の肉体だろう。

 必死に走る足を刈り取るように蹴り、顔面から地面に転がる男の胴体を踏み潰す。

 

「……終末摂理(ワールドエンド)」

 

 

 世界終末まで 

 残り14秒 

 

 

(またハズレ⁉︎ 魂だけで逃げやがったのかッ⁉︎)

 

 憑依転生が故に肉体を捨てられる強み。

 それを活かして、魂だけで逃亡を続ける。

 

 しかし、それでも俺から逃げる事は不可能だ。

 異能感知。最終摂理によって世界全てが異能と化した今、俺の特技は世界全てを知覚するに至った。

 この世界の内側にいる限り、たとえそれが形のない魂であろうと俺からは逃げられない。

 

「チッ、やっぱりテメェが一番面倒くせぇ六界列強(グレートシックス)だったよ」

 

 魂(・)を(・)掴(・)む(・)。

 

 通常、魂に形など存在しない。

 だが、俺が何度魂を破壊したと思っている。

 異能に干渉する俺の終末摂理(ワールドエンド)を応用すれば、異能の源である魂自体に触れる事も可能だった。

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)ッ‼︎」

 

 

 断末魔は聞こえない。

 魂を握り潰すように、終末摂理(ワールドエンド)を発動した。

 

 第(・)四(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 デ(・)ィ(・)ー(・)ト(・)リ(・)ヒ(・)・フ(・)ォ(・)ン(・)・エ(・)ル(・)ケ(・)ー(・)ニ(・)ッ(・)ヒ(・)、撃(・)破(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り10秒 

 

 

 コバッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 宇宙の彼方から放たれた光線が惑星を貫く。

 掠めるだけで生命活動を停止させる死の一閃。

 それを難なく避け、攻撃の方向を見つめる。

 超遠隔異能攻撃となると、それが誰かなど明白だ。

 

「引き篭もり一号か」

 

 第三位、フラン=シェリ・サンクチュアリ。

 距離の遠さすらも実力の範囲内だと折手メアは考え、空間を捻じ曲げて直接呼び出す事はしなかったのか。

 

 構わない。

 ならば、俺から直接行くまで。

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)」

 

 

 世界終末まで 

 残り8秒 

 

 

 バギィッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 空間を叩き割り、距離という概念を破壊する。

 間にあった惑星・衛星・恒星やらの障害物を全て物理的にブチ抜き、地球から十四億光年離れた赤色矮星に辿り着く。

 

「なッ、原住民(Native)ごときが我(わたし)の陣地(Position)まで⁉︎」

「安全圏から愉快に殺せると思ったかァ? ざんねぇん。テメェが好き勝手できる場所なんざこの世にはねぇんだよ!」

「く、くるな。くるな、くるなくるなくるなくるなァァアアあああああああああああああ‼︎‼︎‼︎」

「黙れクソ野郎」

 

 近距離まで迫られたらあっさりと狂乱し、道具(アイテム)型の異能を投げる事でしか抵抗できなくなった天才科学者(笑)をブン殴る。

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)ッ‼︎」

 

 

 第(・)三(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 フ(・)ラ(・)ン(・)=シ(・)ェ(・)リ(・)ー(・)・サ(・)ン(・)ク(・)チ(・)ュ(・)ア(・)リ(・)、撃(・)破(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り6秒 

 

 

 再び空間を破壊して地球へ戻る。

 この星の何処かに第二位(ルーアハ)が隠れているが、世界全てに異能の反応をばら撒いているためか場所が特定できない。

 一度異能を無効化して、直後に再び展開される異能の反応から発信源を探知するという方法もあるが、あんな馬鹿にわざわざ手間をかける理由もない。

 

 

「────終末摂理(ワールドエンド)」

 

 

 惑(・)星(・)内(・)側(・)を(・)丸(・)々(・)消(・)し(・)飛(・)ば(・)す(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り4秒 

 

 

 完全に空洞となった地球。

 跡形もない地底に、唯一無事なものがある。

 

 第二位、ルーアハ。

 世界一つ分の質量を丸々秘めた老人の丈夫さならば、まとめて終末摂理(ワールドエンド)で消し飛ばしてもかろうじて生き残ると思っていた。

 

「こんの狂人がァあああああ⁉︎」

「死んでろ、老害」

 

 一瞬の交錯。

 わめく老人の喉を右手が貫く。

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)っ‼︎」

 

 

 第(・)二(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 ル(・)ー(・)ア(・)ハ(・)、撃(・)破(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り2秒 

 

 

 残る六界列強(グレートシックス)はただ一人。

 ただし、彼女が顕現するのを待つ時間はない。

 

 故に──

 

 

「────終末摂理(ワールドエンド)」

 

 

 ベキベキバキバキッ‼︎ と。

 世界が剥がれ、“白”い世界が表出する。

 

 世界の基底部分。

 過去も未来もないイカれた空間。

 そ(・)し(・)て(・)、彼(・)女(・)が(・)眠(・)る(・)場(・)所(・)。

 

 

 世界終末まで 

 残り1秒 

 

 

 足を、踏み入れる。

 タイマーは止まった。

 この白い世界において、時間経過は存在しない。

 

「さぁ、準備は整った。俺とお前を除く全ての終末摂理(ワールドエンド)は破壊した」

 

 残るは二つ。

 六道伊吹の最終摂理。

 そして、彼女の第一摂理。

 

「きたっていうの……? たったイップンでッ⁉︎」

 

 眼前には目を見開く童女の姿。

 彼女に向かって俺は宣言する。

 

 

「テ(・)メ(・)ェ(・)の(・)理(・)不(・)尽(・)を(・)覆(・)し(・)て(・)や(・)る(・)よ(・)、ア(・)リ(・)ス(・)‼︎」

 

 

 第一位、アリス・アウターランド。

 第一(はじまり)の六界列強(グレートシックス)と最終(さいご)の六界列強(グレートシックス)が激突する。

 

 

 世界終末まで 

 残り── 

 

 

「終末摂理(ワールドエンド)‼︎‼︎‼︎」

 

 

 一掃。

 俺とアリスを隔てる無数の異能が消失する。

 

 逃げ隠れする必要なんてない。

 ただ正面を突き進めばいい。

 

 ただし、今回は他の六人と同じようにいかない。

 第一摂理は他の終末摂理(ワールドエンド)が存在する限り再構築される。それは、俺の最終摂理も同じ。

 アリス・アウターランドに挑むのなら、第一摂理を破壊しようと望むのなら、先に自身の終末摂理(ワールドエンド)を捨てる必要があった。

 

 故(・)に(・)、俺(・)は(・)我(・)が(・)異(・)能(・)の(・)名(・)を(・)告(・)げ(・)る(・)。

 

 

「────《崩界(ワールドブレイカー)》」

 

 

 最(・)終(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 

 

 自らの異能で、自らの終末摂理を破壊する。

 前世(かつて)、俺は異能のない世界観から異能を否定する領域(エリア)型の異能を有していた。

 しかし、今の俺は異能の存在を知ってしまっている。異能を否定する領域(エリア)型の異能など生まれるはずがない。──領(・)域(・)型(・)の(・)異(・)能(・)は(・)、だ(・)が(・)。

 

 技能(スキル)型の異能、《崩界(ワールドブレイカー)》。

 俺(・)が(・)前(・)世(・)で(・)有(・)し(・)て(・)い(・)た(・)異(・)能(・)と(・)い(・)う(・)名(・)の(・)技(・)術(・)を(・)現(・)世(・)に(・)も(・)引(・)き(・)継(・)ぐ(・)異(・)能(・)。

 終(・)末(・)摂(・)理(・)を(・)持(・)た(・)ず(・)と(・)も(・)、俺(・)は(・)終(・)末(・)摂(・)理(・)を(・)破(・)壊(・)す(・)る(・)事(・)が(・)で(・)き(・)る(・)‼︎

 

「これで終いだッ、アリス! テメェの絶望(デッドエンド)なんざ粉々に砕いてやる‼︎」

 

 トン、と。

 俺の手がアリス・アウターランドに届く。

 頭を撫でるように、死神の手が優しく触れる。

 

 

「──《崩界(ワールドブレイカー)》ッ‼︎」

 

 

 第(・)一(・)摂(・)理(・)、破(・)────

 

 

 

「───終(ワー)末(ルド)摂(エン)理(ド) 」

 

 

 

 瞬(・)間(・)。

 何(・)も(・)か(・)も(・)が(・)消(・)し(・)飛(・)ぶ(・)。

 

「ッッ⁉︎ 《破界(ワールドブレイカー)》‼︎」

 

 ジリリリリリリリリリリッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 喧しく鳴り響く世界の終わり。

 太陽のように眩い光の奔流を《破界(ワールドブレイカー)》で相殺する。

 

 反射的に迎撃は成功した。

 だが、何もかもが失敗だった。

 だって、今の攻撃が意味するのは──

 

 

 ──第(・)一(・)摂(・)理(・)、顕(・)在(・)。

 

 

「な、んで?」

 

 思わず、唇から声が漏れた。

 第一摂理を除く終末摂理(ワールドエンド)は全て破壊した。

 だから、第一摂理は再構築されない。そ(・)の(・)は(・)ず(・)で(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)⁉︎

 

「──ムリよ、アリスをすくうなんて」

「破壊、できなかった……? それともッ、再構築の条件がまだあるのか⁉︎」

「どちらもちがうわ。カンタンなことなのよ。ねぇ、リクドウイブキ。ワールドエンドとはセカイのオワリのぐげんかよ。それぞれのセカイがおわったゲンインをこのセカイにうつしだす」

「あ、ああ。それが……?」

「あら、わからない。ほんとうにアタリマエのはなし」

 

 童女は。

 アリス・アウターランドは微笑んで告げる。

 

 

「────ム(・)ス(・)ウ(・)の(・)セ(・)カ(・)イ(・)を(・)ほ(・)ろ(・)ぼ(・)し(・)た(・)ア(・)リ(・)ス(・)は(・)、い(・)っ(・)た(・)い(・)い(・)く(・)つ(・)の(・)ワ(・)ー(・)ル(・)ド(・)エ(・)ン(・)ド(・)を(・)も(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)ね(・)」

 

 

 息が、止まる。

 返答はできなかった。

 リアクションすら取れなかった。

 

 アリス・アウターランドは無限の力を有する。

 故に、有限でしかない世界に転生するたび、その世界を終わらせてきた。

 何度も、何度も、何度も。アリス・アウターランドという魂が生じてから、彼女がこの世界に転生してくるまでずっと。

 

 そ(・)の(・)滅(・)ぼ(・)し(・)た(・)世(・)界(・)と(・)同(・)じ(・)数(・)だ(・)け(・)終(・)末(・)摂(・)理(・)を(・)有(・)し(・)て(・)い(・)る(・)と(・)し(・)た(・)ら(・)。

 

 再構築ではなかった。

 確かに、終末摂理(ワールドエンド)は破壊されたのだ。

 た(・)だ(・)、た(・)っ(・)た(・)一(・)つ(・)を(・)破(・)壊(・)さ(・)れ(・)た(・)所(・)で(・)何(・)の(・)影(・)響(・)も(・)な(・)い(・)と(・)い(・)う(・)だ(・)け(・)で(・)。

 

 

「ム(・)ゲ(・)ン(・)の(・)ワ(・)ー(・)ル(・)ド(・)エ(・)ン(・)ド(・)。ア(・)ナ(・)タ(・)に(・)は(・)ム(・)リ(・)よ(・)、ひ(・)と(・)つ(・)の(・)セ(・)カ(・)イ(・)を(・)ほ(・)ろ(・)ぼ(・)す(・)だ(・)け(・)で(・)カ(・)ラ(・)ダ(・)が(・)け(・)し(・)と(・)ぶ(・)リ(・)ク(・)ド(・)ウ(・)イ(・)ブ(・)キ(・)に(・)は(・)」

 

 

 呪いのようだった。

 アリス・アウターランドが滅ぼした世界の残滓が、アリス・アウターランドの足を引っ張る。

 まるでお前だけ救われるなんて許さない、とでも過去の亡霊が言っているように。

 

 一つや二つの終末摂理(ワールドエンド)なら破壊できた。

 十や二十でも代償を支払えばどうにかなった。

 何なら千や万の終末摂理(ワールドエンド)だってこの身を犠牲にすれば破壊し尽くす事さえ可能かもしれない。

 

 しかし、無(・)限(・)だ。

 

 絶対に、足りない。

 俺一人が身を捧げた所で、アリス・アウターランドの背負う業を破壊し切る事はできない!

 

 厳密な定義ではその言葉を使う事は間違っているのかもしれない。世界が無限に存在していたとしても、アリス・アウターランドが破壊した世界は有限なのかもしれない。

 それでも、俺からすれば両者に違いなんてない。人間のちっぽけな脳味噌からすれば、言葉で表現できないレベルに大きな数字は理解の範疇を超えている。

 

「く、そ」

 

 な(・)の(・)に(・)、握(・)っ(・)た(・)拳(・)が(・)元(・)に(・)戻(・)ら(・)な(・)い(・)。

 

 諦めても誰も責めない状況。

 諦める以外に道はない逆境。

 なのに、まだ俺の目は死なない。

 

(もう、諦めたさ。できるできないとか、無理だとか、不可能だとか。そ(・)ん(・)な(・)ち(・)っ(・)ぽ(・)け(・)な(・)理(・)由(・)で(・)諦(・)め(・)る(・)だ(・)な(・)ん(・)て(・)事(・)を(・)諦(・)め(・)た(・)‼︎)

 

 何の勝算もない。

 作戦なんて全部吹っ飛んだ。

 それでもッ、諦められる訳がない!

 

 ただ、もう一度異能を叩き付けると決めた。

 俺が死のうと、魂が焼き切れようと、アリス・アウターランドの呪いが解けるまで永遠に‼︎

 

 もう一度、アリス・アウターランドを睨む。

 いいや、その視線の先には一人の女の子にみっともなくしがみつく世界の亡霊──無限の終末摂理(ワールドエンド)‼︎

 

 

「足を引っ張ってんじゃねぇぞ! 一人の女の子も救えない負け犬共がッ‼︎」

 

 

 啖呵を切る。

 少女の呪いを断ち切るためにッ‼︎

 何の未来もない特攻に身を費やすっ‼︎

 

 

 

 

 ──ま(・)さ(・)に(・)、そ(・)の(・)瞬(・)間(・)。

 

 

 

 

 

 

 

「よ(・)く(・)言(・)っ(・)た(・)ッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 バ(・)ギ(・)ィ(・)ィ(・)ィ(・)ッ(・)‼︎‼︎‼︎ と(・)。

 白(・)い(・)世(・)界(・)が(・)ヒ(・)ビ(・)割(・)れ(・)た(・)。

 

 見覚えのあるヤツだった。

 俺がよく知っている男(・)だった。

 

 

「そうさ。既に終わった世界のためにアリスが苦しむ理由が何処にある⁉︎ 生きて死ぬ。そして生まれ変わる。そういった当たり前の事をしてきたヤツらがッ、産まれる事さえもできなかったアリスを糾弾できて良い訳がない‼︎ そうだろッ⁉︎」

 

 

 しかし、あり得ない。

 この白い世界は六道伊吹しか入れない。

 過去に折手メアが異能を使ってそう制限したため、過去も未来もないこの世界は永遠にアリス・アウターランドと六道伊吹の存在しか許さない。

 

 だが、あり得るとしたら?

 もしも何のルール違反もなく、もう一人の侵入者が現れるとしたら?

 

 で、あれば。

 その少(・)年(・)の名も、たった一つしかない。

 

 呆然、と。

 アリス・アウターランドは呟いた。

 

 

「…………リ(・)ク(・)ド(・)ウ(・)、イ(・)ブ(・)キ(・)……?」

 

 

 それが唯一の正解だった。

 

 六道伊吹しか侵入が許されないのなら。

 その少年もまた六道伊吹だったのだ。

 

 信じられない、と目を見開く童女を見て。

 ボロい学生服を着た黒髪の少年は笑った。

 

「何をそう驚いている? 考えてみれば当たり前の話だろう?」

「な、にを……⁉︎」

「こ(・)の(・)場(・)所(・)に(・)は(・)過(・)去(・)も(・)未(・)来(・)も(・)な(・)い(・)。ル(・)ー(・)プ(・)は(・)デ(・)ー(・)タ(・)の(・)上(・)書(・)き(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)も(・)の(・)で(・)、過(・)去(・)自(・)体(・)が(・)変(・)わ(・)っ(・)た(・)訳(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)」

 

 なら。

 だったら。

 

 

「──過(・)去(・)の(・)時(・)系(・)列(・)に(・)確(・)か(・)に(・)存(・)在(・)し(・)た(・)俺(・)が(・)、お(・)前(・)達(・)の(・)戦(・)い(・)に(・)乱(・)入(・)で(・)き(・)て(・)も(・)不(・)思(・)議(・)で(・)は(・)な(・)い(・)だ(・)ろ(・)う(・)?」

 

 

 何(・)処(・)か(・)の(・)ル(・)ー(・)プ(・)に(・)存(・)在(・)し(・)た(・)六(・)道(・)伊(・)吹(・)の(・)一(・)人(・)は(・)そ(・)う(・)言(・)っ(・)て(・)笑(・)っ(・)た(・)。

 

「無限にある第一摂理の内、たった一つが破壊された程度じゃ何も変わらない。異能によって作り上げられたこの世界の悲劇は覆らない。───で(・)も(・)、世(・)界(・)は(・)確(・)か(・)に(・)揺(・)ら(・)い(・)だ(・)ぞ(・)」

「ま、さか」

「未来から過去へ遡及する形で、世界に衝撃が走った。だから、来た。だから、来れた。本来ならお前と顔を合わせる事もなく死んだはずの俺が、お前のためにやって来た。そ(・)し(・)て(・)、そ(・)れ(・)は(・)俺(・)一(・)人(・)に(・)許(・)さ(・)れ(・)た(・)偉(・)業(・)じ(・)ゃ(・)ね(・)ぇ(・)ッッッ‼︎‼︎‼︎」

「まさか、アナタたちは────ッ⁉︎」

 

 

 バ(・)キ(・)バ(・)キ(・)バ(・)キ(・)バ(・)キ(・)バ(・)キ(・)ッッッ‼︎‼︎‼︎ と(・)。

 世(・)界(・)が(・)砕(・)け(・)る(・)音(・)が(・)何(・)箇(・)所(・)も(・)響(・)く(・)──響(・)き(・)続(・)け(・)る(・)。

 

 

 無(・)限(・)の(・)ル(・)ー(・)プ(・)に(・)存(・)在(・)し(・)た(・)無(・)限(・)の(・)六(・)道(・)伊(・)吹(・)。

 彼(・)ら(・)は(・)六(・)道(・)伊(・)吹(・)で(・)あ(・)る(・)と(・)い(・)う(・)だ(・)け(・)で(・)、こ(・)の(・)戦(・)い(・)に(・)参(・)加(・)す(・)る(・)資(・)格(・)を(・)持(・)つ(・)。

 

 

 現れるのは学生服を着た少年だけではない。

 格好一つを見ても分かる通り、六道伊吹とは様々だった。

 無限の可能性の中で、六道伊吹という定義はインフレーションのように広がっていった。

 

 ──例えば、それは真紅の復讐鬼。

 折手メアに騙され、仲間を皆殺しにされた者。

 白銀の魔女を殺すために生涯を捧げた、血みどろの刃。

 

 ──例えば、それは魔女の傀儡。

 折手メアの思惑通りに踊る者。

 四種の七天神装(アーティファクト)で身を包む、甲冑を纏う天使の如き聖騎士。

 

 ──例えば、それは単なる負け犬。

 何も成し遂げられず死んだ者。

 新たな六道伊吹の可能性を得ることもなく、道の途上で死した敗北者。

 

 ──例えば、それは魔王の右腕。

 アドレイドに負けて奴隷となった者。

 魔王と結託して大アブソリュート帝国を築き上げ、世界征服に王手をかけた策略家。

 

 ──例えば、それは天使の相棒。

 ブレンダの手を取り正義の道を進む者。

 体の大半を機械で置き換えた改造人間(サイボーグ)にして、転生者を殺す叡智を積み上げた熾天使(セラフィム)。

 

 ──例えば、それは簒奪者の伴侶。

 栗栖椎菜とその娘のために駆け落ちした者。

 指名手配されながらも裏社会に大きく食い込み、異能事件を専門に謎を解き明かす車椅子探偵。

 

 ──例えば、それは憤怒の怪物。

 折手メアに監禁された果てにいる者。

 倫理も常識も贅肉と共に削ぎ落とされ、ただ怒りだけが存在するガイコツのような脱獄者。

 

 ──例えば、それは朽ち果てた亡霊。

 死してもなお現世にしがみつく者。

 世界の終わりに立ち向かうため、九相霧黎と融合した憑依者。 

 

 ──例えば、それは全ての始まりの男。

 一番最初のループに存在した者。

 初見ノーミスでアリス・アウターランドにまで辿り着き、歴史に偉大な一歩を刻んだ英雄。

 

 例えば、例えば、例えば、例えば、例えば。

 人の形をしていない者も多かった。

 俺と全く同じ姿のヤツも、どんな未来を辿ったらそんな姿形に変わるのかと思うヤツもいた。

 

 同じ人間なのに全く違う。

 同じ人間なのに息が合わない。

 一人一人が異なる人生(ルート)を歩んだ六道伊吹。

 異なる場所で出会えば、殺し合う未来だってあったかもしれない。

 

 で(・)も(・)、そ(・)れ(・)で(・)も(・)。

 目(・)の(・)前(・)の(・)女(・)の(・)子(・)を(・)見(・)捨(・)て(・)る(・)腰(・)抜(・)け(・)な(・)ん(・)か(・)六(・)道(・)伊(・)吹(・)に(・)は(・)た(・)っ(・)た(・)の(・)一(・)人(・)も(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 

「行くぞ、アリス・アウターランド」

 

 

 何処かで、誰かが言った。

 六道伊吹が告げた。

 

 

「お(・)前(・)と(・)世(・)界(・)の(・)ど(・)ち(・)ら(・)か(・)し(・)か(・)救(・)え(・)な(・)い(・)、そ(・)ん(・)な(・)理(・)不(・)尽(・)を(・)覆(・)す(・)‼︎ 前(・)回(・)は(・)諦(・)め(・)た(・)事(・)を(・)ッ、今(・)度(・)こ(・)そ(・)‼︎」

 

 

 直後。

 無限の六道伊吹と無限の終末摂理(ワールドエンド)が激突した。

 

 一人一人が限界まで異能を使用して。

 一人一人があっけなく弾け飛ぶ。

 

 それでも、何となく分かる。

 徐(・)々(・)に(・)終(・)末(・)摂(・)理(・)が(・)削(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)事(・)が(・)。

 

 無限のループにも意味はあったのだ。

 情けない延命じゃない。

 死体の山を積み上げていただけじゃない。

 全ての人生は、全ての世界は、ただこの一戦のためにあったのかもしれない。

 

「はっ、はははははははは! ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっっ‼︎‼︎‼︎」

 

 思わず笑えてきた。

 サメ映画でももうちょっと分かりやすい。

 無限にいる少年がたった一人の女の子に群がる光景は側から見たら理解できなかった。

 

「ああ、でも、そうだな」

 

 その光景を見て。

 さっきまでとは違う笑みが浮かぶ。

 アリス・アウターランドという女の子が異様な風景の中に埋もれて、当たり前の存在になっているのが嬉しかった。

 

 やっぱり、とまぶたの裏に思い描く。

 アリス・アウターランドは生まれてくるべきだ。

 

 だって、そうだろう?

 無限の世界から憎まれた子供だとしても。

 ここには六道伊吹しかいないのだとしても。

 

 でも、それでも。

 

 

「こ(・)れ(・)だ(・)け(・)多(・)く(・)の(・)人(・)が(・)祝(・)福(・)し(・)て(・)る(・)ん(・)だ(・)! や(・)っ(・)ぱ(・)り(・)お(・)前(・)は(・)生(・)ま(・)れ(・)て(・)く(・)る(・)べ(・)き(・)だ(・)よ(・)、ア(・)リ(・)ス(・)‼︎」

 

 

 俺もまた六道伊吹の群れに混ざる。

 後はもうメチャクチャだった。

 ただなりふり構わず異能を発動し続ける。

 

 やすりで木材を削るみたいに。

 無限の六道伊吹の犠牲でアリス・アウターランドの足を引っ張る無限の終末摂理(ワールドエンド)が削ぎ落とされていく。

 

 果たして、それはどれだけの時間だったのか。

 時間経過のない世界で、そんな無駄な事を思った。

 

 やがて。

 無限の六道伊吹が弾け飛んで静まり返った場所で、残った一人の女の子は小さく呟いた。

 

 

「いい、のかな……? アリスが、しあわせになっていいのかな……」

「いいに決まってんだろ」

 

 

 返答はあった。

 アリス・アウターランドの側で横たわった少年。

 最終周の六道伊吹は、全ての六道伊吹を代弁するようにこう言った。

 

 

「早(・)く(・)来(・)い(・)よ(・)、ア(・)リ(・)ス(・)! お(・)前(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)は(・)ち(・)っ(・)ぽ(・)け(・)な(・)世(・)界(・)で(・)俺(・)達(・)は(・)待(・)っ(・)て(・)る(・)‼︎」

 

 

 第(・)一(・)摂(・)理(・)、破(・)壊(・)。

 ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)、救(・)済(・)。

 

 終(・)末(・)破(・)却(・)、完(・)遂(・)‼︎

 

 






次回→「九九話:─────────」

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