【完結】原作主人公vsオリ主   作:大根ハツカ

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七二話:敗者復活戦/vsオリ主

 

 

「ぐはーっ‼︎」

「テメェが俺に勝てる訳ねぇだろ馬鹿が‼︎」

 

 一撃。

 体重の入った重いパンチが九歳の折手メアをブッ飛ばす。彼女はあまりにも軽く、無意識に手加減をして突き飛ばすような形になった。

 

「こ、ここまで、相手にならないとはね……」

「テメェの《ご都合主義(デウス・エクス・マキナ)》がある限り、俺に負けはねぇ。こんなのは前の戦いの結末を繰り返すだけだ」

「な、なに? ボクがメインヒロインなのにボクと戦った経験があるのか……? 敵幹部が味方になる系のパターンか? 羨ましい……」

「どの口で言ってやがる! 味方が黒幕だったパターンだクソが‼︎」

 

 あまりにも早い決着。

 まぁ、こんなのは戦う前から分かりきっていた事だ。……と(・)い(・)う(・)、慢(・)心(・)が(・)良(・)く(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)も(・)し(・)れ(・)な(・)い(・)。

 

「それにしても……前の戦い、か。二(・)番(・)煎(・)じ(・)は(・)良(・)く(・)な(・)い(・)よ(・)ね(・)」

「………………は?」

 

 折手メア。

 彼女が最悪と呼ばれたのは何故だったか。

 性格が悪いからか? 能力が凶悪だからか?

 いいや、違う。それもあるが、何よりも。

 

 

「も(・)っ(・)と(・)ハ(・)チ(・)ャ(・)メ(・)チ(・)ャ(・)に(・)し(・)よ(・)う(・)ぜ(・)☆」

 

 

 た(・)だ(・)余(・)計(・)な(・)事(・)を(・)し(・)て(・)世(・)界(・)に(・)迷(・)惑(・)を(・)か(・)け(・)続(・)け(・)た(・)実(・)績(・)に(・)よ(・)る(・)も(・)の(・)だ(・)。

 

「────────ぁ」

「ボクの《ご都合主義(デウス・エクス・マキナ)》がある限りキミが負けないと言うのなら、このボクですら制御し得ない最強の不確定因子を呼び込むまでさ」

「お、まえ……コイツは……‼︎」

「この世で最強の存在ってなーんだ?」

 

 それはただの童女だった。

 それは最強の転生者だった。

 それは宇宙を閉じ込めたみたいな特徴的なオーロラ色の髪だった。

 

 

「六(・)界(・)列(・)強(・)・第(・)一(・)位(・)ッ、ア(・)リ(・)ス(・)・ア(・)ウ(・)タ(・)ー(・)ラ(・)ン(・)ド(・)⁉︎」

 

 

 ビキビキビキビキッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 世界に亀裂が入る音が響く。

 

 その童女は何もしていない。

 というより、その童女はまだこの世界に存在すらしていない。にもかかわらず、童女の存在に気が付いた世界の方が勝手に崩壊しようとしている。

 それほどの圧力。それほどの絶望。世界を壊す終末摂理(ワールドエンド)すら比べ物にならない、世界が勝手に壊れるほどの力。

 

「ま、ずい。マズいぞ、伊吹! 第一位にとっては時系列だとか過去編だとかは関係ない! 彼女が転生した瞬間ッ、現代もまとめて消滅する‼︎」

「なんかそうらしいよ! いい感じにタイムリミットもできたし、頑張れ六道伊吹(タイトルロール)‼︎」

「ありがとう、父さん! 折手はくたばれ‼︎」

 

 世界の終わり、その象徴。

 折手メアなんかはもう後回しでいい。

 拳を握り、第一位に立ち向かう。

 

(どれだけ最強って言っても、あれは異界化による世界の歪みが生み出した第一位の影。第一位本人ではないし、俺の《破界(ワールドブレイカー)》をぶつければ簡単に消滅する程度のものでしかない!)

 

 童女との距離は僅か三メートル。

 一歩足を踏み出す。

 その瞬間────

 

 

「…………え?」

 

 

 ────世界が、切り替わった。

 

 まるで、ゲームで別エリアに移動したみたいに。

 一歩前とまるで違う景色。

 一秒前とまるで違う地形。

 

 そこは、地球上とは思えないような目を疑う光景。

 

 それは銀河を泳いでいるかのような風景。

 或いは、深海の奥で輝く奇妙な生命の胃袋。

 或いは、遺伝子が極彩色に光る細胞。

 或いは、神様が創造したステンドグラスの教会。

 或いは、万華鏡の中にある異世界。

 或いは、或いは、或いは、或いは、或いは。

 

 その風景を一言で表すことは不可能。

 そもそも風景が一つに固定されることは無く、角度によって見え方が異なる風景が更に秒単位で切り替わる。文字(ノベル)でも、写真(イラスト)でも、動画(アニメ)でも、この世界を真に描写する事は叶わないだろう。

 ただ、言える事は陳腐な一言だけ。

 それは目を疑うような幻(・)想(・)の世界だった。

 

「異界化、なのか? 転生者が何百人も集まらないと起こらないものを、まだ存在してもいないヤツがたった一人で起こしたってのか⁉︎」

「それが第一位。キャラマテにすら討伐は不可能と書かれた公式チートさ」

 

 もはや、空間すらも歪んでいた。

 たった三メートルしかなかった距離が、今では地平線の彼方まで伸びている。

 

 そんな、熱にうなされて見る夢の中で。

 ぞぞぞぞぞぞぞぞぞっ、と蠢くものがあった。

 

「……ぬい、ぐるみ……?」

「油断するなよ、伊吹。あの第一位が生み出したものだ、中に宇宙がまるまる一つ詰まっていても私は驚かない」

 

 父さんがそう警告する。

 見た目はカラフルで目が悪くなりそうな極彩色の色合いに、脚の生えた魚のような縫い目の荒いぬいぐるみ。

 しかし、その実態は第一位の想像物(クリーチャー)。中から何が飛び出すが分かったもんじゃない最悪のびっくり箱だ。

 

「……それでも、ビビってないで戦(や)ってみなきゃ何も始まらねぇ‼︎」

「あ、おい! 待て‼︎」

 

 父さんの制止も無視して走る。

 ぬいぐるみは素通りして構わない。

 俺の目的はあくまで第一位でしかない。

 

(ま、そう上手くはいかねぇよな)

 

 ぎゅるんッ‼︎ とキモチワルイほど滑らかな動きでぬいぐるみが接近する。

 明らかに有り得ない加速と、明らかにその速度域では不可能なカーブ。そもそも流れている時間が俺とは違うとしか思えない動きから、回避は不可能だと考えて迎撃を選択する。

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ッ‼︎」

 

 ぬいぐるみと俺の右手が触れる。

 その、直後。

 

 

 

 ──メ(・)キ(・)メ(・)キ(・)メ(・)キ(・)ィ(・)ッ(・)‼︎ と(・)。

 消(・)滅(・)す(・)る(・)事(・)の(・)な(・)い(・)ぬ(・)い(・)ぐ(・)る(・)み(・)が(・)、ダ(・)ン(・)プ(・)カ(・)ー(・)と(・)衝(・)突(・)し(・)た(・)よ(・)う(・)な(・)威(・)力(・)で(・)右(・)腕(・)を(・)粉(・)砕(・)す(・)る(・)。

 

 

「────が」

 

 一瞬、意味が分からなかった。

 それは確かに異能の反応があったのに。

 

「がっ、ァァアアアアアアアアアアアッ⁉︎」

 

 自分の状況を理解すると同時、痛みに叫ぶ。

 この肉体は《ゾンビウイルス》に感染していないため、骨が粉砕された右腕はもう治らない。

 

「な、にが」

「異能が発動しなかった、訳じゃないよ。《破界(ワールドブレイカー)》は確かに異能を無効化させた。その結果があれだ」

「だったら!」

「で(・)も(・)、キ(・)ミ(・)の(・)異(・)能(・)は(・)一(・)度(・)に(・)つ(・)き(・)一(・)つ(・)し(・)か(・)消(・)せ(・)な(・)い(・)。粒(・)子(・)一(・)つ(・)一(・)つ(・)が(・)異(・)な(・)る(・)異(・)能(・)に(・)よ(・)っ(・)て(・)構(・)成(・)さ(・)れ(・)た(・)ア(・)レ(・)を(・)倒(・)す(・)に(・)は(・)、キ(・)ミ(・)の(・)限(・)界(・)を(・)い(・)く(・)ら(・)超(・)え(・)た(・)所(・)で(・)届(・)か(・)な(・)い(・)っ(・)て(・)訳(・)さ(・)」

「──────は?」

 

 耳を疑う。

 粒子一つ一つが異なる異能。

 史上最小にして、史上最多。史上最悪にして、最強の異能。

 

 肉体(アバター)、道具(アイテム)、技能(スキル)、領域(エリア)など、世界の一部を切り取って現世を侵食する通常の異能の枠には収まらない。

 世界を丸ごと持ち込むかのような無法。世界を丸ごと書き換えるかのような災厄。

 

 

「世界(ワールド)型の異能、《夢》。……私達はそう呼んでいる。あくまで、天命機関が付けた仮名ではあるが」

 

 

 アリス・アウターランドが何か意図した訳ではない。

 ただ、頭の中で思い描いた夢。そ(・)れ(・)が(・)勝(・)手(・)に(・)現(・)実(・)を(・)侵(・)蝕(・)し(・)、世(・)界(・)を(・)蹂(・)躙(・)し(・)て(・)い(・)る(・)だ(・)け(・)。

 

「あっ、キャラマテにもそう書いてたけどそれって正式名称じゃなかったんだね」

「……しかも、第一位は未だ本気ではない。私がかつて予測した因果律ビッグバンは六つの工程によってなされる」

「ナチュラルにボクを無視したね?」

「黙ってろ、折手」

 

 父さんは指を一本ずつ折って数える。

 

「第一段界(フェーズⅠ)、理想歪曲。世界に異能が存在する最初期の段階。第二段界(フェーズⅡ)、妄想幻像。我々の目に第一位が見え始める段階。第三段界(フェーズⅢ)、仮想銀河。……現在はこの第三段界(フェーズⅢ)だな」

 

 第三段界(フェーズⅢ)、仮想銀河。

 第一位を起点とした、異界化現象が引き起こされる段階か。

 

「第四段界(フェーズⅣ)、夢想枢軸。宇宙が第一位を中心に回転し始める段階。第五段界(フェーズⅤ)、追想破局。過去や未来が消滅する段階。そして……」

「……六つ目、か」

「第六段界(フェーズⅥ)、幻想流転。第(・)一(・)位(・)が(・)こ(・)の(・)世(・)界(・)に(・)転(・)生(・)す(・)る(・)段(・)階(・)。この第六段界(フェーズⅥ)に到達した時点で、こ(・)の(・)世(・)界(・)の(・)終(・)わ(・)り(・)は(・)確(・)定(・)す(・)る(・)」

「────ッ‼︎」

 

 世界の終わり。軽々しく語られるが、その言葉に込められた重みは本物だ。

 

「それまでに、アイツを殺せって?」

「……、」

「無理だろ。いくら俺の《破界(ワールドブレイカー)》があったって、圧倒的物量に押し切られちゃ終いだ」

 

 ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞッ‼︎ と。

 異能感知が《夢》の拡散を捉える。いいや、もはや異能感知ですらそれを捉えきれない。

 あまりにも異能の量が多く、あまりにも異能の力が強すぎる。砂漠の中で一粒の砂を探すようなものだ。

 

 景色が不連続に切り替わる。

 自分の中の時間感覚すら信じられなくなる。

 こんなバケモノを殺せるとは思えない。

 

 

「──だ(・)か(・)ら(・)、叩(・)く(・)な(・)ら(・)折(・)手(・)メ(・)ア(・)だ(・)‼︎」

 

 

 瞬間、強く地面を蹴る。

 第一位を直接倒せなくても、第一位を呼び出した元凶を叩けばこの世界から退散するはずだ。

 

「やっと構ってくれるのかい? 寂しかったよ、六道伊吹(タイトルロール)!」

「やっぱりテメェは一度、ちゃんとブン殴らなきゃな‼︎」

 

 不連続に切り替わる世界。

 もはや相対的な位置関係は意味をなさない。

 三メートルの距離が地平線までに伸びて、前にいたはずの少女が真上に移動する事だってある。

 

 何処をどう進めばいいのか分からない。

 だから、きっと、俺(・)だ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)折(・)手(・)メ(・)ア(・)は(・)倒(・)せ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 

「父(・)さ(・)ん(・)!」

「四(・)秒(・)後(・)。右(・)斜(・)め(・)後(・)ろ(・)だ(・)!」

 

 

 アダマスの未来視。

 不連続に切り替わる世界で、折手メアの出現位置を予測した。

 

 狙うは顔面。

 意識を刈り取るようにヤツの顎を撃ち抜き、ついでに《破界(ワールドブレイカー)》を使用してこの馬鹿を現代に連れ帰る。

 

「こんの大馬鹿野郎がッ‼︎」

 

 粉砕された右手の代わりに、左手を振るう。

 あらゆる異世界を打ち壊す異能を発動する。

 

 

 

 ──そ(・)の(・)、直(・)前(・)。

 

 

「あっ、しまった」

 

 

 折手メアの間抜けな声が響く。

 彼女の瞳に、俺(・)の(・)横(・)に(・)い(・)る(・)ナ(・)ニ(・)カ(・)が(・)映(・)る(・)。

 

 それは人形というよりも、まるで陶器のような質感を持ったモノ。

 黒い軍服を着た人型であるが、首が上のない姿形と二メートルの大きさが威圧感を与える。

 そして、何よりも恐ろしいのはその手に持った斧。赤い錆で覆われたそれは、ギロチンの刃のような印象を受ける。

 

「首斬り役人(ヘッズマン)……悪(・)夢(・)の(・)執(・)行(・)者(・)か(・)。ご(・)め(・)ん(・)、キ(・)ミ(・)は(・)死(・)ん(・)だ(・)」

 

 折手メアの言葉の意味を理解するよりも早く、首斬り役人(ヘッズマン)と呼ばれたそれは斧を振りかぶる。

 

(避け──)

 

 ダ(・)ン(・)ッ(・)ッ(・)ッ(・)‼︎‼︎‼︎ と(・)。

 首(・)は(・)既(・)に(・)切(・)断(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

 世界は不連続に切り替わる。

 漫画のコマみたいに、途中経過がすっ飛ばされて結果を押し付けられた。

 まるで元々繋がっていなかったのが当たり前みたいに、頭がずり落ちていく。

 

 もう、俺はゾンビじゃない。

 切断された首は当たり前に治らない。

 

 

『あ(・)ら(・)。そ(・)れ(・)な(・)ら(・)、わ(・)た(・)し(・)が(・)そ(・)の(・)肉(・)体(・)の(・)使(・)い(・)方(・)を(・)教(・)え(・)て(・)あ(・)げ(・)る(・)わ(・)ぁ(・)』

 

 

 だ(・)け(・)ど(・)、あ(・)の(・)二(・)人(・)の(・)子(・)供(・)が(・)普(・)通(・)な(・)ん(・)て(・)言(・)葉(・)に(・)収(・)ま(・)る(・)わ(・)け(・)が(・)な(・)い(・)。

 

(……ありがとう、母さん)

 

 ずっと俺の側にいてくれた母親が、どんな形状にも変化できる肉体の使い方を教授する。

 断たれた首が再び繋がる。粉砕された右腕が元の形状を取り戻す。

 

「……歯ぁ食い縛れよ、折手」

「ふはっ、これはボクもッ、予想外……‼︎」

「──《破界(ワールドブレイカー)》ッッ‼︎‼︎」

 

 ゴッッッ‼︎‼︎‼︎ と。

 握り締められた右手が、折手メアの顔面をブン殴った。

 

 

 

 そして。

 呆気なく、第一位は消え去った。

 

 

「じゃあ、俺はもう行くよ」

 

 嬉しそうな顔で気絶する折手メアの首根っこを掴み、俺は父さんに今生の別れを告げる。

 

「ああ……元気でな」

「ああ、…………ありがとう」

 

 此処は過去ではない。

 だから、此処で何をしたって彼らは生き返らない。

 

 折手メアの蘇生なんて離れ業が可能なのは、彼女が転生するという性質を持っていたが故だ。

 だから、両親とはもう二度と会う事はない。

 

「世界を救え、なんて事は言わない。ただ、思うがままに暴れろ。それできっと、ついでに世界は救われる」

 

 それでも、会えて良かった。

 この人達の子供である事を誇りに思う。

 ただ、心の底からそう感じた。

 

 名残惜しさを断ち切り、掌を掲げる。

 

 

「《破界(ワールドブレイカー)》ッ‼︎」

 

 

 不安定な過去編は完膚なきまでに砕かれる。

 そして────

 

 


 

 

 

 

 

「生存者リスト」

 

▽天命機関

ブレンダ

ジェンマ

ロドリゴ

レオンハルト

ファウスト

イヴリン

etc

 

▽転生者

六道伊吹

アドレイド・アブソリュート

二神双葉

三瀬春夏冬

九相霧黎

ディートリンデ

フラン=シェリー・サンクチュアリ

ルーアハ

折手メア

《破邪の剣(アスカロン)》

 

▽一般人

栗栖椎菜

デッドコピー×20000

二神妹

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