【完結】ビンクスの酒を歌う歌姫のFILM RED   作:ひび

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第2話 ライブ開幕

 

 歌姫のライブが始まろうとしていた。

 前夜祭は大成功に終わり、参加者は自分達の船で一夜を明かした。

 酒と料理が提供されたこともあって気合は十分。会場に入ったファンは、割り当てられた席で、今か今かと『救世主』と呼ばれる人物の登場を待ちかねていた。

 

「とうとう歌姫のライブが始まるのかぁ! くぅ~~~この臨場感たまらねえぜ!!」

「おれ、昨日は楽しみでぜんぜん眠れなかった!!」

 

 麦わらの一味に割り当てられた特等席は、ステージが最もよく見える場所だった。

 エレジアの外れに作られたドーム状の会場の中央。海に沈んだ浮島の上はステージのほぼ正面にあり、一番の大ファンであるウソップとチョッパーは、想像以上の特等席であることに興奮して両腕を空に伸ばした。

 

「おいルフィ、どうした」

 

 同じく浮島で一人、酒を煽っていたゾロが船長に問いかける。

 ルフィの様子がおかしく、会場の盛り上がりとは真逆の険しい表情を浮かべていた。腕を組んで座り込んでかたくなに口を開こうとしない。

 どっかり座っていたフランキーが、最も事情を知っていそうなウソップに耳打ちで問いかける。

 

「おい、ルフィのやつマジでどうしたんだ」

「分かんねえ。昨日からずっとあんな調子でよ……」

 

 一番事情を知っていそうなウソップにも分からず、他の仲間も首を横に振った。

 船長が語らない以上事情を聞くわけにはいかなかったが、やはり気になってしまう。

 何か心配事でもあるのか、やはり事情を聞いてみるべきか。

 そう考えた時に異変が起こった。

 

 会場中が闇に落ちる。

 突然、舞台の照明が切られたのだ。

 どうしたんだ、何が起きたんだと観客がざわつき始める。

 

「おい、ステージを見ろ……!」

「ついに始まるんだ」

 

 観客が言葉を発すると、全員の視線が正面を向いた。

 霧の中から天に光がのび上がる。

 闇の中から美しく、ファンにとっては聞き慣れた至上の声が響き渡った。

 全ての視線がステージ上に釘付けになる。

 舞台上で舞っているのは、パーカーを深くかぶった女性だ。彼女が一曲歌う間に、蔓延していた霧は晴れて、世界は虹色の光に包まれた。

 導かれたのは美しい童話の世界。天井の石壁が七色に発光して、空中に可愛らしい音符が舞っている。海面が夜空の星のように煌めく。

 全てが夢のような世界にファンはもちろん、麦わらの一味さえも魅了される。

 ステージの上に立った歌姫は、目元まで深々とかぶったパーカーを脱ぎ捨ててた――

 

「みんなお待たせッ! ウタだよ!!」

 

 満面の笑みを見せながら大きく手を振った紅白の髪の女性は、救世主と呼ばれた歌姫ーープリンセス・ウタだ。

 

「ウタ様ぁぁ!!!」

「本物だ、本物の歌姫様!」

「うおおおお!! U・T・A!!」

『U・T・A!! U・T・A!!』

 

 会場中から彼女を讃える大歓声が響いた。

 航海を終えてようやく彼女に会えた。近付けたのだ。喜びのあまり感極まって号泣している者もいた。

 ウタも、そんなファン達に向けてにっと気持ちよく笑いかける。

 

「来てくれてありがとう! 今日はいっぱい楽しんじゃおう!!」

 

 両手を上げた歌姫の呼びかけに、会場はこれ以上ないほど沸いた。

 爆発したのかと思うほどの割れんばかりの歓声は、島を超えて遥か彼方まで響いただろう。

 彼女の歌声と人柄には抗えない魅力があった。

 

 しかしほんの一瞬。

 舞台で歓声を受ける歌姫の視線がある方向を向く。

 唯一、この場の空気に馴染もうとしない人物がいた。ルフィは歓声に揺らぐことなく、腕を組んで隅で座り込んだまま動かない。

 ほんの一瞬だけ、誰も気づかないほどかすかにウタの表情が曇る。

 しかし、それに気付いた者はいない。

 すぐに完璧な笑顔を貼り付けてファンに呼びかけた。

 

「それじゃあ盛り上がってきたところで、続けて二曲目いっちゃうよ!」

「おっと、そうはいかねえ!!」

 

 可愛らしい声を銃声が掻き消した。

 今までの盛り上がりが嘘のように静まりかえる。

 幸せな雰囲気に満ちていた会場に水を刺した男は海賊だ。続々と小舟で長剣や銃を持った無法者がはい上がって、ステージ上の歌姫を取り囲む。海賊帽子をかぶった船長と思われる男が剣をかかげて声を張り上げた。

 

「ライブはここまでだ! 歌姫様は俺たちが戴いていくぜ!!」

 

 突然の略奪宣言に、ファンの間で一気に動揺が広まった。

 舞台に立つウタは焦ることもなくつまらなさそうに彼らを見下げた。

 

「海賊だ! しかもあんなにっ……!」

「おいおい。何でだよ、こんなタイミングで来なくてもいいだろ!」

「あのままじゃウタちゃん危ねえっ」

 

 彼女のファンでもある麦わらの一味の中でも特に執心な三人が、大切なライブを守るために出て行こうとした。

 だが当のウタは余裕たっぷり。逆に舐めるような笑みで彼らを見下ろした。

 

「あなたたち。私のことを攫うつもりなんだ」

「ああ。世界中で人気の歌姫は高く売れるだろうからなぁ。金も名声も手に入る」

「ふーん。つまりワルの中のワル。すっごく悪い人ってことだね」

 

 壇上で冷静に分析するウタ。

 海賊は彼女を包囲して取り押さえようと徐々に詰め寄っていく。

 ファンは悲鳴をあげた。『希望』が奪われる瞬間を見たくないと言わんばかりに、視線を逸らしているものがほとんどだ。そんな彼らに元気よく手を振って呼びかけた。

 

「大丈夫! もしライブに来てくれたみんなの中に、こんな風に悪いことをしてた人がいたら安心して。今日までのことはわたしが許してあげる。でもこれから始まる新時代で悪いことする人は容赦しないから!!」

「ふざけた女だ。人数差が分からねえのか」

「お前らやっちまえ!!」

「うおおおっ!!」

 

 ウタの警告を無視して下っ端の海賊達が一斉に襲い掛かった。

 これ以上看破できないと、サンジが真っ先に舞台に足をかけて飛び出せるように構える。

 様子を見守っていた他の仲間達もいつでも動けるように腰を浮かせる。

 

「大丈夫! 私はみんなの救世主だから!! 海賊なんかに絶対負けたりしないよ!」

 

 ウタは笑顔のままパチンと指を打ち鳴らした。

 その音を合図に、襲おうとした彼らに異変が起こった。

 

「っ。な、なんだこりゃあ!? 音符!?」

 

 歌姫に襲い掛かろうとした海賊の一人が叫んだ。

 ライブが始まった時から宙に漂っていた明るい色の音符や星型の物体が、彼の周囲に集まり始めたのだ。ウタが細い指先でそれらを操っているようで、ロープのように巻き付いていく。

 誰もがただの飾り付けだと思っていたそれらは確かな実体を持っていた。

 

「おい、外れねえぞこれっ!」

「動けねえっ……まさかこいつ能力者か!」

「人の話は聞くものだよ。しばらく上で反省しててね……さあ飛んでけっ!」

「うおおおぉぉっ!!?」

 

 音符群が一本のロープのように連結して、次々に海賊達を縛り上げていく。

 歌姫に注目していたファンもあっけにとられる手早さで、なすすべなくライブを守り抜いた歌を見て感心の声があがった。

 

「すげえ。あんなに強そうな海賊が手も足も出ない」

「ウタ様って強かったのか……!」

「そう、私はすっごく強い! それじゃあ二曲目いっくよー!!」

 

 熱心なファンも、歌姫に戦う力があることまでは知らなかった。

 ウタが余裕を持ってゆっくりと二局目のイントロを歌い始める。

 下っ端達はなす術なく拘束された。舞台には船長である男だけがポツンと取り残されている。

 

「っ、お前ら、何勝手に捕まってやがるんだ……!!」

 

 彼は自分の部下達を全て失って慌てた。

 何事もなかったようにライブを続行するウタを、歯噛みしながら忌々しげに見上げる。

 パフォーマンス中のウタも視線に気づき、可愛らしくウィンクしてかえした。

 

「こんの、クソガキ。海賊を舐めやがって、っ、うおわぁぁぁっ!!?」

 

 持っていた剣を振り上げて駆け登ろうとするが、彼も遅れて漂ってきた音符に縛り上げられ、情けない声をあげながら会場の空を舞う。ステージの真上にはいつの間にか楽譜のような線が浮かび上がっており、横暴を働こうとした連中は、一人残らず貼り付けられた。

 息継ぎのタイミングで、ウタは「やってやった」と言わんばかりに観客に向けて指先を向ける。

 無粋な乱入者は成敗された。会場中が歓喜の声援で、爆発したように盛り上がる。 

 

「すごいよウタちゅわぁぁぁぁん!!!」

「すっげえ! プリンセスウタ、あんなに強かったんだな!!」

「能力者のようだけれど、何の能力かしら……?」

 

 プリンセスウタは、麦わらの一味が驚くほどの強さを見せつけた。

 現実では起こせないこの現象、悪魔の実の能力者で間違いないとロビンは考察する。音符形状の実体を出していることから、音に関係する能力という所までは推察できるが、能力の詳細までは読み取ることができなかった。

 

 さらにウタの引き起こす現象はそれだけで止まらない。

 追加で指をパチンと鳴らすと、彼女は舞台上で神々しい光に包まれた。

 新しい現象に誰もが興味を惹かれて身を乗り出す。

 ライブの舞台衣装でもあった可愛らしい白服が黄金の鎧に変化する。

 巨大な剣と盾を手にして王冠を戴き、重力を無視して宙に浮かんだ。

 ――ウタは、王の姿に変身した。

 

「ファンのみんな! 今まで苦しかったね。誰にも守ってもらえなくて辛かったね。でもみんなのことは、これから私が守ってあげるっ!!」

 

 歌姫は勝利の勝鬨を上げた。

 ファンもめいっぱい叫んで呼応する。

 同時に空から祝福するかのように光が降り注いだ。

 それはただの光ではない。

 空から降ってきたのは食糧や娯楽品だ。

 ファンもそのことに気付いて、ちょっとした騒ぎになった。

 

「おい、あれってドーナッツ……?」

「肉や魚もある。すげえ。食べ物が浮かんでるぞ!」

 

 骨つき肉、完成してボウルに盛られたサラダやパエリア、林檎やバナナなどの果物。他にもグラスに入った飲み物や酒。子供のおもちゃやぬいぐるみなど。昨晩の前夜祭が可愛らしく見えるほどたくさんの品々が浮かんでいた。

 魅力的なものが山ほど降ってくる景色に魅入られる中、あるファンの少年が赤い果実に手を伸ばす。全部幻で手がすり抜けるといったことはなく掴むことができた。

 意を決して齧り付く。

 甘酸っぱい果汁が口一杯にひろがった。

 

「おいしい……!」

「そうでしょ」

 

 黄金の鎧を装備したウタは、悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。

 改めてファンに向き直って宣言する。

 

「これからはもう水や食べ物にも困ることはない! 誰かから奪わなくてもいいし、争わなくてもいい!! 永遠に楽しい音楽が響き続ける世界になる!」

 

 会場の中心まで飛び上がって、腕を大の字に開いて会場中に呼びかける。

 

「今から私が、新時代の幕開けを宣言するよ!!」

「うおおおおおっ!!」

『U・T・A!! U・T・Aッ――!!』

 

 彼らは激しく歌姫の名前をコールする。

 

 ――新時代。

 誰もが望んでいた世界の到来に、会場の歓声は最高潮に達した。

 かたくなに無言を貫いていたルフィが僅かに反応して、表情を誰にも見せないようにウタを見上げた。観客のほうを見ているウタはその視線に気付可なかった。

 一方で麦わらの一味の反応はというと、ファンたちとは違う困惑したものだった。

 山のように果物を抱えたウソップが真っ先に戸惑いながら仲間に意見を問う。

 

「おいおい。歌姫ってのは、食いもんまで無限に出せるのか?」

「物体を移動させているわけではなく無から生み出しているなんて……彼女の言うことが本当だとすると、一人が持てる能力の限界を遥かに超えている」

「けどよ、こいつはどう見たって本物だぜ」

 

 フランキーが黄色いバナナを軽く振ってみせる。

 ファン達は涙を流して喜んでいるが、明らかに不自然だ。たとえ『覚醒』した悪魔の実の能力者であったとしても、一人で無尽蔵に人々の生活を支えることなんてできるはずがない。

 救世主を名乗った歌姫は、一体何をしようとしているのか?

 会場中が歌姫・ウタに信仰に近い感情を抱いている中、慎重に彼女の演説を聞いた。

 

「ウタ! みんなを守ってくれるの?」

 

 救世主の歌姫に一人の幼い子供が問いかける。

 会場中のファンに応えるように宙を舞っていたウタは声に気付いて、黄金鎧の剣と盾を消して子供の前に降りた。

 

「そうだよ。これからはエンドレスに私が守ってあげる」

 

 憧れの眼差しを受けて、優しく微笑んで頭を撫でた。

 すると子供はますます嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねた。

 

「ウタって歌が上手なだけじゃなくて、すっごく強いんだね! 格好よかった!」

「ふふ。キミ、見る目あるじゃん」

 

 ウタは幼い子供が自慢するような子供っぽい仕草で胸を張った。

 目を輝かせていた子供だったが、しかし思い出したようにしょんぼりと落ち込んだ。

 

「でもライブが終わったらウタとはお別れだよね」

「大丈夫、いなくならないよ。ずっと守ってあげるって言ったじゃん」

「僕、帰らなくちゃいけないよ」

「え、どうして?」

 

 頭を撫でられていた子供は、「えっ」と声をこぼした。

 ウタは不思議そうに首をかしげている。

 何か間違ったことを言ってしまっただろうかと怖くなった。

 

「ウタは、いつもは別な場所で暮らしてるんだよね。僕についてきてくれるの?」

「ううん、でもみんなここで暮らせばいいよ。元いた場所に戻っても辛いだけなんでしょ」

「そうだけど、帰って羊の面倒を見ないといけないから……」

「仕事なんていかなくたっていいんだよ。これからは働かなくても、ここでずっと幸せに生きていけるんだからさ」

 

 ウタはにっと笑顔を見せる。

 新時代が到来すれば、この世のあらゆるしがらみから解放される。これこそが、ファンの望んだ『新時代』だろう。

 みんなの喜ぶ声を聞くためにウタは会場に顔を向けた。しかしファンらは顔を見合わせて戸惑っているようだった。

 

「どういうことだ?」

「ウタ様が俺たちを守ってくれるって言っただろ。食べ物も住む所もあるなら安全だ」

「確かにそれはすごいことだけど、私は生活もあるし家に帰らなくちゃ……」

「ずっとこの島に居続けるわけにはいかないしな」

 

 会場が徐々にざわつきはじめる。

 急にみんな酔いが覚めたみたいに我に帰っていく。そんな様子をウタは不思議に思った。

 

「心配ないってば。ここにいれば永遠にみんなを幸せにしてあげられるんだよ」

「でも、やっぱりダメだよウタ、僕、ずっとここにはいられない」

「どうして? 君も、辛いことから救われたくて来たんじゃないの?」

「それは、そう、だけど……」

 

 少年は言葉を詰まらせた。

 周囲にいた他のファンも気まずそうにウタから視線を逸らす。

 映像電伝虫を通して交流したファンの望みは全部叶えている。それなのにどうして消極的なのか理由がわからない。

 ウタは誰にも聞こえないようにつぶやいた。

 

「……困ったな。歌えば分かってくれるかな」

 

 みんな幸せになりたがっているのは変わらないはずだ。もっと楽しいことがあればいいのだろうか。

 いや違う。きっと新時代を実感していないからだ。

 歌えば、素敵な世界に変わると分かってくれるだろう。

 争いも貧困もない、歌声が永遠に響き渡る世界を作れたのだと分かれば受け入れてくれるはずだ。

 

(うん、大丈夫。私は歌姫のウタ。歌でみんなを幸せにする女なんだから……!)

 

 ライブも二曲目が始まったばかり。

 もっとたくさん楽しんでもらって、新時代を分かってもらえばいい。そう自分の中で結論づけた。

 しかしそれは余儀なく中断されることになる。

 

「港に船がない!!」

 

 不穏な空気が蔓延しはじめた会場を、一人の金切り声が切り裂いた。

 ウタを含めた全員がその方向を見る。会場の入り口で、息切れした男が外に続く通路を指差しながら訴えていた。

 その男に向かって、数人が近づいて笑いながら事情を問う。

 

「何だよ。まさか船泥棒か。お前、船を盗まれたのか」

「そうだ。だが俺のだけじゃない! あれだけあった船が一隻も無くなってるんだ!!」

「何だって!? マジなのか。どういうことなんだ!!」

「どうもこうもない。俺の船はどこに行ったんだ!?」

 

 船の所有者たちは急な出来事に焦り始めている。

 他のファンも大きくざわついた。

 船一隻の価値は非常に大きい。それが一気になくなってしまったとするなら、それはとんでもない大事件だ。何かの間違いではないかと誰もが思った。

 

「それなら大丈夫、安心して! みんなの船はちゃんとあるから!」

「歌姫様……!?」

 

 ライブの主催者でもあるウタがそばに舞い降りて答えた。

 まるで船が消えていることを最初から知っていたかのような態度に、船主たちは戸惑った。

 

「船がなくなったのはウタ様の仕業なんですか?」

「ごめんね。港の船は移動させちゃったの」

「困ります! あの船は本当に大切なものなんです!」

「船がなきゃみんな故郷に帰れないんですよ!」

「大丈夫、取ったりしないってば……でもね、自力で海に出るのは危ないからさ。本当はエレジアに残ってほしいけど、どうしても帰りたい人は、わたしがパパッと送ってあげるから。ね?」

 

 焦らなくても船はちゃんと返すつもりだ。

 能力があれば、家にも一番安全な方法で送り届けることができる。あくまで安全のためだと説得するが、「そんなことを言われても困りますよ……!」と口々に言われてしまって反応は良くなかった。他のファンの間でも「僕たち帰れないの?」と、徐々に不安が広まっている。

 

「そ、そうだよね。ちょっと待って……!」

 

 焦る気持ちの中でウタは判断を迫られた。

 自分の力があれば、あらゆる願いを叶えることができる。船だって盗る気はさらさらない。そのことをちゃんと知ってもらえば分かってくれるはず。

 まずはファンのみんなに落ち着いてもらおう。

 そう思って再び口を開こうとした。

 

「やめろ、ウタ」

 

 声を出す前に、背後から肩を掴まれる。

 取り繕っていたウタの表情が凍りつく。

 麦わら帽子を深く被ったルフィが、幼馴染を止めにきた。

 

 

 

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