【完結】ロリコンハゲトレーナー(仮)に拾われたら地獄でした   作:シェーク両面粒高

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第1話 あ! ろりうまむすめが あらわれた!

 ──拝啓、田舎のお父さん、お母さん、元気にしてますか? 

 

「────ラ!」

 

 ──私ですか? もちろん元気です。トレセン学園の生活は大変なことも多いけど、楽しいこともたくさんあります。

 

「──待て、コラ!」

 

 ──でも、聞いて欲しいことがひとつ、あるんです。それは……

 

「待てっつってんだろ、コラ!!!!!」

 

 

 

 ──いま、命がピンチです。追われてます。助けて。

 

 

 

「殺すぞ!!!!!」

 

 学園の校舎内にて中庭にあったベンチを振り回し、無造作に纏められた鹿毛のポニーテールを振り乱しながらガタイのいい超気性難のウマ娘が私()()を追ってきています。一目見て思いました。このウマ娘は気性難のキングオブキングスだと。だってそうじゃなきゃ、狭い廊下でベンチを振り回したりしません。

 校舎内を全速力でその超気性難から逃げているのが私です。そりゃもう、処刑される友人を救うために走る主人公のように。まあ、処刑されそうなのは私なのですが。走れワタシ。

 

「だ、誰か助けて~!」

 

 どうしてこんなことになったのでしょう。実は心当たりがあります。それは先頭を行く私のあとをついてくる3人のロリウマ娘と1人のハゲ男のせいだと思うのです。

 顔だけちらっと後ろを振り向くと──

 

「あはは! オーちゃんはやーい!」

「ふえぇ……こわいよぉ……」

「うろたえないの! ここはせんりゃくてきてったいよ!」

 

 私の後ろできゃっきゃ言いながら逃げている3人のロリウマ娘たちです。そして──

 

「あんま揺らさんといて……アイツに殺される前に俺が死ぬ……うっぷ」

 

 まるで神輿のように3人に担がれている関西弁の男。

 その男の頭には髪の毛が一本もありません。つるつるです。つまりハゲです。ハゲ。え? スキンヘッドじゃないかって? どっちも一緒だって友人が言ってました。ブロッコリーとカリフラワーは同じ野菜だと豪語する信頼できる友人です。

 だからハゲです。つるつるです。スキンヘッドもハゲです。

 

 

 ああ、どうしてこんなことに。

 不意に、初めて彼女たちと出会った数日前のことを思い出してしまいました──

 

 

 ◇

 

 カーテンの隙間から差し込んだ朝日がちょうど顔に当たり、目を覚ましました。見慣れた寮の天井が目に入ってきます。

 

「……んぅ……」

 

 体を起こして枕元の時計を見ると、アラームが鳴るまであと10分といったところでした。こういうとき、得したと思うのか、損をしたかと思うのか、人によって違うらしいですね。ちなみには私は損をしたと思う方です。10分ともいえど、睡眠時間とは尊いものです。

 

「……」

 

 でも、せっかく起きたのだからまた寝てはもったいない気がします。なので私は早めに自主トレへ出かけることにしました。最低限身嗜みを整え、部屋着からジャージにパパっと着替えます。

 

「……よしっ」

 

 まだ寝ている同室の子を起こさないように、静かに部屋を出ていきました。

 

 

 

 足を運んだのは体育館の裏です。体育館の影に隠れて暗い早朝のここにはもちろん誰もいません。

 ですが時間帯を変えると誰かいることもあります。人の目を避けるにはちょうど良いからでしょう。私が見た中では、喧嘩をしていたり、お嬢っぽいウマ娘が誰かと電話していたり、芦毛のカワイイ子が先輩方を従えていたり、あとはウマ娘同士の熱い愛のこくは…………げふんげふん、ぷらいばしぃの侵害です。これは語るべきことではないでしょう。

 

 軽く準備体操をしてから体育館裏の壁に近づき、それを見上げます。その壁の少し上の方に、いくつも白いチョークでつけたあとが残っていました。もちろんその犯人は私です。

 

 さて、私の自主トレを始めましょう。その自主トレとは……

 

「──えいっ!」

 

 ジャンプして、手に持ったチョークでできるだけ高いところに印をつけることです。厳密に言えば、高くジャンプするというのが私の自主トレです。

 

「やった記録更新! 今日は調子がいいみたい!」

 

 普通のウマ娘の自主トレならランニングとかなのでしょうが、私がしているのはただジャンプを繰り返すことです。なぜこんなことをしているかというと、

 

「もっと高くジャンプして、身長を伸ばさないと……!」

 

 身長を伸ばすためです。

 

 ……はっきり言ってしまいましょう。私の身長はとてもとても低いです。どれぐらい低いのかというと、たまたますれ違ったニシノフラワーさんより低いぐらいです。ちなみに私は高等部の生徒です。

 これがどれだけ厳しい現実か皆さんには分かりますか!? 小〇生と思われるニシノフラワーさんより身長が低いんですよ!? あり得なくないですか!? 恥ずかしながら、この身長のせいか高等部になった今でもスカウトされたことがありません。私は悪い意味でフリーなのです……

 

 栄養のことも勉強して色んなものを食べました。寝るのがいいと聞いたので沢山寝ました。ぶら下がり健康器具なるものも買いました。でも全て効果がなかったのです……しくしく。

 なので、私がたどり着いたのはジャンプして身長を伸ばすということでした。図書室で偶然目にした本に、なんとジャンプを続けるだけで身長が伸びると載っていたんです。正直なんとも眉唾な話だと訝しんだのを覚えています。しかし、追い込まれていた私は「やらないよりマシかな……」と思って何となく始めてみたのです。始めてから現在まで、かれこれ1年以上は経過しています。

 

 ここまで聞いた皆さん、そんなの本当に効果があるのかとお思いでしょう? 

 ふふふ……聞いて驚かないでください、なんと! この1年で身長は5ミリも伸びたのです! 中等部で1ミリも微動だにしなかった身長が、ですよ!? これがどれだけ凄まじいことか! あの怪しい本に書いてあることは嘘ではなかったのです。 

 身長を伸ばして、まだ見ぬトレーナーさんにスカウトしてもらうことが私の最大目標です。未出走のまま学園を卒業だなんて、田舎の両親に申し訳が立ちません。 

 

「よっ、ほっ! ……まだまだ」

 

 ジャンプして自主トレを続けます。アニメならぴょんぴょんと効果音がつきそうなものですが、あいにく現実では乾いた着地音がするのみです。

 

 ──「────だよ」「────よぅ」「──わよ!」

「……ん?」

 

 なので着地音以外の音には敏感なのです。今確かにどこかから話し声が聴こえました。ジャンプをやめてウマ耳をぴこぴこと動かします。

 

 ──「ほら────よ!」「ふえ──やめ──」「こわが──いの!」

 

 話し声が段々と大きくなってきています。どうやら声の主たちはこちらに近づいてきているようです。

 別にやましいことをしているわけではないのですが、反射的に身構えてしまいます。こんな朝っぱらからこんな体育館裏に何用でしょうか? ……私の言えたことではありませんけどね……

 

「……?」

 

 そこで一瞬、無音の空白が訪れます。話し声も足音も聞こえなくなりました。どうしたの、と考える前に──

 

「ふえ~~~~っ!」

 

 ──と、半泣きのロリウマ娘が1人、飛び出すように私の前に姿を現しました。黄色のベレー帽をかぶっているその子は私の目の前でへたり込むと、おびえる様にこちらを見上げました。といっても、鹿毛のくるくるのくせっ毛ボブのせいで目元が隠れているため、その眼は見て取れませんでしたが。

 

「ひっ……ひっく……ふ、ふえ~~~~」

「えっえっ、だ、大丈夫……? こ、怖くないよ~」

 

 遂に泣き出したウマ娘に混乱させられた私はとりあえず屈んで声をかけました。

 声をかけるのと同時ぐらいでしょうか、そのウマ娘が飛び出てきたほうから2人のロリウマ娘がゆっくりと姿を現しました。

 

「シュー! なにないてるの! もっとしゃんとなさい!」

 

 先に口を開いたのは、ストロベリーブロンドの三つ編みで、左耳に特徴的な花(確か、スイカズラの花でしたっけ?)の飾りを着け、見た目にも態度的にも高飛車なお嬢様系ロリウマ娘。水色に白の水玉模様が入ったワンピースを着ています。カワイイ。

 

「ハニーがひっぱるからだよ~。だいじょうぶ? シュー」

 

 シューと呼ばれたベレー帽のくせっ毛ボブのウマ娘に駆け寄ったのは、黒めの髪色でピッグテールにしているロリウマ娘。Tシャツとショートパンツから健康的な手足が伸びており、快活な印象を受けます。右耳に青と白の縞々模様が入ったリボンをつけています。カワイイ。

 

「ひっく……エ、エナ……うん。ありがとう」

「ほら、たとう? よごれちゃうよ」

 

 その快活そうなロリウマ娘はエナという名前らしいです。エナはシューに手を貸して立たせて、シューのエプロンスカートや尻尾を払って汚れを落としてあげていました。

 改めてシューの服装を見ると、ブラウスとエプロンスカートというお淑やかなものでした。黒色の星形ワッペンをつけた黄色のベレー帽を斜めにかぶり、ベレー帽の中心に空いた穴から右耳を外に出しています。額にある菱形の流星がくるくるくせっ毛のアクセントになっています。カワイイ。

 

 整理しましょう。高飛車なお嬢様がハニー、快活な子がエナ、気弱そうな子がシューです。

 一体この子たちは何者でしょうか? 見るからに小学生の低学年ぐらいの年齢ですから、学園の生徒ではないでしょう。ニシノフラワーさんより身長の低い私よりもっと背が低いのです。学園のウマ娘の妹さんとかでしょうか? う~ん、謎です。

 

「えーっと、お嬢ちゃんたちは……?」

 

 疑問に思って、そうストレートに訊きます。

 すると、エナが私の正面に立って口を開きました。

 

「あたしはエナ! こっちがシューで、そっちがハニー」

 

 うん、さっき地の文で確認したから大丈夫だよ。ありがとうね、エナちゃん。カワイイね。すごくカワイイね。そうじゃなくてね、何者かを──

 

「ねえ、そのかべにしるしつけてるのって、おねえさん?」

「……お、おねえさん?」

 

 エナは私の背後にある体育館の壁を指さしていました。地上から5メートルほどの高さに、チョークの印がたくさんついています。

 それより、お、おねえさん! なんと甘美な響きでしょう。外出すると「お嬢ちゃん迷子?」とか「お前どこ小だよ」とか言われる私にとって、それは初めて言われた言葉でした。

 ……おっと、思わず感慨に浸ってしまうとこでした。

 

「うん。そうだけど」

「やっぱり! ハニー、このおねえさんなんだって!」

「そう、あなたが……そのからだで、なかなかやるわね。ほめてあげるわ」

 

 エナに呼びかけられたハニーが1歩、2歩と足を踏み出しました。このチョークをつけた人を探していたのでしょうか。

 て言うかそのからだでって、私の方が身長高いんですけど! ……と思いましたが、ロリに張り合うのは情けないので今の言葉は心に留めておくことにしました。

 

「でも、わたくしのほうがたかくとべるんだから!」

 

 ハニーは私の横を通り過ぎて壁へと向かい合いました。そして──

 

「──ふっ!」

 

 ──高く、高くジャンプしました。

 全身をばねのように使い、ワンピースを翻しながら宙に舞う姿に思わず言葉を失いました。ストロベリーブロンドの三つ編みが尾を引くように輝き、あまりにもそれが綺麗で目を奪われました。

 そして彼女の伸ばした手は私がつけたチョークの──

 

「──っ」

「え……?」

 

 ──すぐ真下数センチのところをタッチしました。

 軽やかに着地したハニーは壁を見上げて、悔しそうに声を上げました。

 

「ああもうっ! あとちょっとじゃない! おねえさま、やるわね」

「へ? いやあ、ははは……」

 

 ぷんすかと肩を怒らせるハニーの背中を見て、はっと我に返りました。

 彼女は小学生低学年ぐらいのロリウマ娘です。まだまだ子どもです。それが高等部の私とほとんど同じ……いや、手の長さや身長から考えると、明らかに私より跳んでいます。

 前提として私もジャンプ力には自信があるわけでして、以前友人のウマ娘を連れてきて一緒にジャンプをしたことがあるんです。ちなみに中央で重賞を勝っているウマ娘です。その子よりも私はより高く跳べていたのです。私よりも身長もあって足の速い友人に勝てて、思い切り両手でガッツポーズをしたものです。

 

 ハニーは本当にいったい何者なのでしょう。この跳躍力は尋常ではありません。分かるのは彼女が才能ある有望なウマ娘ということだけです。

 そもそもこのロリウマ娘たちの目的は? この印をつけたウマ娘……つまり私に勝つために探していたということでしょうか? 私が言うのも何ですが、足の速さではなく跳躍することに興味があるなんて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だなと、素直に思いました。

 

 そんなことを考えていると、気づけばエナがシューの手を引いてハニーの代わりに壁の前に立っていました。

 

「つぎはあたしたちだね! シューもしよ?」

「ふぇ……ぼ、ぼくはいいよ」

 

 ぼ、ぼく!? シューちゃんもしかしてボクっ娘ですか!? いけません、カワイすぎます! 

 

「そんなあ……そうだ! いっしょにとぼうよ!」

「え…………う、うん……エナがいっしょなら、ぼくとぶよ」

「やった! あたしもシューがいっしょならうれしいな!」

「え、えへへ」

 

 なんですかこれ。いったい何を見せられてるんですか私は! うっ……思わず鼻血が出そうです……エナシュー尊い……

 

「じゃあ、せーのっでとぼう?」

「わかった……」

「て、はなすね。いくよ……せーのっ!」

 

 正気に戻った私はその2人の様子を冷静に見ていました。

 驚愕の跳躍力を見せたハニーには及ばないだろうと、勝手な予測を立てていました。特にシューは自信も無さそうでしたし。そもそも、あんなロリウマ娘が何人もいてはたまったものではありません。

 

「えいっ!」「……やっ!」

 

 同時にジャンプした2人。

 

「へっ?」

 

 それを見て、思わず間抜けな声が出てしまいます。なぜそんな乙女にあるまじき声が出たかと言うと──

 

「よっと。へへっ、やっぱシューはすごいなあ!」

「ううん。エナのおかげだよっ」

 

 ──エナとシューがタッチした高さはチョークの印を優に超えていたからです。そしてエナよりもシューの方が僅かに高く跳んでいました。

 エナとシューは手をグーにしてこつんと2人の拳を合わせ、お互いを讃え合っていました。

 

「えっ、えええええええええ!?」

 

 ラスボスを倒したらと思ったら、裏ボスがその後ろにいました。それも2人。2人は私の1年余りの努力の結晶をいとも容易く超えてみせました。

 

「ふんっ、わたくしだって……もういっかいよ!」

 

 と、ハニーが意気揚々と再び壁に向かおうとしましたがそこで軽快な電子音が流れました。その音はエナのポケットから流れていました。

 エナはスマホを取り出してその画面を確認しました。なにかメッセージが来ているようでした。

 

「トレーナーさんがもどってきてって。サクさんがあさごはんいっしょにたべようっていってるだって!」

「サクさんが!? すぐにもどるわよ! それではごきげんよう、おねえさま」

「ばいばい、おねえさん!」

「……さよなら……」

「え? うん。みんな、さようなら……」

 

 別れを告げると、3人ともあっという間に姿を消しました。

 

「な、なんだったの……?」

 

 静かな体育館裏が戻ってきていました。

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