【完結】ロリコンハゲトレーナー(仮)に拾われたら地獄でした   作:シェーク両面粒高

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第2話 ハゲ大地に立つ

「朝のあの娘たちは何だったんだろ……?」

 

 正体不明の可愛いロリウマ娘3人衆と会ったその日の放課後、学園の教官主導のトレーニングを終えた私は再び体育館裏にやってきていました。もちろん例の自主トレをするためです。

 今日1日中なにをするときも彼女たちのことが頭から離れませんでした。あの跳躍した鮮烈な姿は今でも思い出せるぐらいです。将来、GⅠを取るようなウマ娘はあんな感じなのでしょうか。私にGⅠウマ娘の知り合いはいないので確かめようもないことですが。

 

「……」

 

 白いチョークの印がついたコンクリの壁を見上げます。ハニーが迫り、エナとシューが超えて見せた一番上の印をじっと見ます。私の目的は身長を伸ばすことなので、垂直跳びの記録を伸ばすことは本来の目的とは違うのですが、そこは私もウマ娘、負けることはやっぱり悔しいのです。

 今朝に記録更新した最高到達点を更に超えてやると、内心息巻いて自主トレを開始しました。

 

「よっ! はっ!」

 

 膝を曲げてて力をため、それを解放するように伸びあがってつま先で地面を蹴ってジャンプします。ジャンプするごとに右手に持ったチョークで壁に印をつけます。

 それを何度も繰り返していました。最高到達点こそ超えることはできませんでしたが、それに迫ることはできていました。何度も連続してジャンプしていると、脚に疲労を感じてきました。

 

「ふぅ~、ちょっと休憩しよっかな」

 

 一度壁を背に座って休憩しようと振り向いたときでした。

 

「ほお」

「……え?」

 

 振り向いた先にジャージ姿の男が立っていたのです。頭がつるつるのハゲ男が。考え込むような様子で顎に手をやりながら。

 全く気配がしませんでした。私は驚愕のあまり言葉が何も出てこず、体も固まってしまっています。

 

「あ~こりゃスマンな。勝手に見てもうて」

 

 関西弁のハゲ男は表情を崩して笑みを浮かべながらこちらに近づいてきました。ハゲなので年齢が分かりにくいですが、アラサーといったところでしょうか。ハゲ頭の割には若いです。

 彼が私の目の前に来たところでやっと私の硬直が解けました。

 

「だ、誰ですか?」

「俺? トレーナーやで。ほれ、これ見てみ」

 

 ハゲ男はジャージにつけているトレーナーバッジを見せてきました。本当にトレーナーのようです。

 

「トレーナーさんが何か用ですか?」

「せや。キミに──」

 

 ハゲ男は私の目の前で片膝をついて屈むと──

 

「キミに、一目惚れしたんや」

「ひいっ!?」

 

 ──がしっと、私の手を取ったのです。彼の両手で重ねるように私の手が握られました。

 

「キミ、ええ体しとるなあ……ああ、最高や……!」

 

 ハゲ男が恍惚した表情で私を舐めるように見つめてきます。嫌悪感と不快感と気持ち悪さしか感じない行為によって全身に鳥肌が立ちます。体ってなんですか体って!? これが王子様風イケメン男トレーナーやイケない遊びを教えてくれそうなあだるてぃな男前トレーナーなら話は別ですが、関西弁のハゲ男など論外なのです! 

 間違いありません。この男は変態です! 

 

「離してくださいっ!」

「おっと」

 

 重ねられた彼の手を勢いよく振りほどきます。

 

「気持ち悪い……」

「酷いなあ。俺の本音やのに。(トモ)、太もも、ふくらはぎ、平坦で小さい体……そしてそのジャンプ力、ええなあ。ほんまにええわぁ……」

「キモ……な、なんなんですかあなた!? 変なことばっかり言うなら、先生や生徒会の人に言いますよ!」

「えーちょっとそれは勘弁してほしいなあ。なあ一度でええから脚触らせてくれや……!」

「ひっ!」

 

 下卑た笑みを浮かべてにじり寄ってくるハゲ男に本能的に恐怖を覚えた私は彼の横をすり抜け逃げ出しました。身体能力でいえば怖がる必要はないのかもしれませんが、それを凌駕するような気味の悪さが勝ったのです。

 

「あっ、待ってや!」

「待ちません! 明日、学園の先生に言いつけますから!」

 

 ハゲ男から距離を取った私はスマホを構えて写真を撮りました。証拠写真のためです。焚かれたフラッシュが彼の頭に反射して私に返ってきました。

 

「うおっ、眩し」

「眩しいのはこっちです! このハゲ!」

 

 そう捨て台詞を残して私は体育館裏から去っていきました。

 寮の前まで全速力でダッシュしてそこで一度立ち止まり背後を確認すると、さすがに男の姿はありませんでした。追ってはきてないようです。

 

「はあ、はあ……」

 

 息を切らしながらスマホで撮った写真を確認すると、頭部が光り輝くハゲ男が目を細めて立っていました。

 

 

 ◇

 

 

 翌日の学園、朝のホームルームのあと早速担任の教師にハゲ男のことを言いに行きました。ちなみに担任教師は優しくて人気のある若い女性です。

 昨日セクハラまがいのことをされたとあるがままに話し、ハゲ男に相応の処分を希望しました。その話の中でスマホで撮った彼の写真を見せると思いもしない反応が返ってきました。

 

「え? この人かー……えーっと……」

 

 どうやら担任教師はこのハゲ男を知っているようでした。それにしてもこの歯切れの悪さは何でしょうか。もしかして元カレとか? もしそうなら彼女の男の趣味は最悪と言わざるをえません。ブ〇ース・ウ〇リスのような男前ならまだしも、あの関西弁ハゲ男は生臭坊主のようないかにも胡散臭い感じなのです。

 

「ちょっと先生じゃどうしようもできないかな……一応上の方には報告しとくけど……」

「へ?」

「ごめんなさいね。もしまた何かあったら言って。その時は先生も何とかするから!」

 

 担任教師はそう言うと教室を去って行ってしまいました。

 

「どういうことなの……」

 

 全く何がどうなっているのか分かりません。この教師の反応もハゲ男の正体も、謎は深まるばかりです。

 

 

 

 

 昼休み、食堂の丸テーブルにて友人2人と食事をしていました。昔からの腐れ縁である2人です。それを示すように、3人の学生カバンには昔遠足に行ったときに買った羽が生えた謎のウマ娘のキーホルダーが未だにぶら下がっています。何が言いたいのかと言うと、私たちは仲良しなのです。

 そんな気の置けない2人と食事をしていても、昨日の事と今朝の教師の反応が頭から離れません。

 

「……」

「どったのレオ? 上の空で心ここにあらずって感じだけど」

「クロ……」

 

 リンゴを齧りながら私に声をかけたのはクロという芦毛セミロングのウマ娘の友人です。重賞を2つも勝っている凄いウマ娘です。ちなみにレオというのが私の名前です。もちろんクロもレオも名前の一部を使ったニックネームですけどね。

 何を隠そう体育館裏に連れていきジャンプ勝負し私が勝利した相手こそクロです。ジャンプとはいえ重賞2勝ウマ娘に勝てたときの気分は最高でした。

 

「分かった~。恋煩いでしょ~? レオちゃん、気になる男の人でもできた~?」

 

 緩い感じで会話の間に入ってきたのはプロンです。鹿毛のロングヘアに茶色のメンコを耳に着けているウマ娘です。デビューするも未勝利戦で勝てず、しかも左膝の骨折をした経験もある彼女ですが、それを乗り越え、地方に行って経験を積んでから中央に戻ってきた頑張り屋さんです。

 

「…………」

「ええ? その反応は……レオ、まさか!」

「ちがうよ!」

「レオちゃんあやし~」

「もうっ、プロンまでっ」

 

 そんな会話しながら、あながちプロンの言うことも外れてないと思ってしまいました。恋煩いは論外として、気になる男というのは間違いではないのです。

 

「こんなちっちゃい体して生意気だなレオは! お姉さんに本当のこと言ってみなさい!」

「そんなんじゃないって……ねえ、2人とも」

「うん?」

「どうしたの~? もしかして本当に~?」

「実は、昨日の事なんだけど──」

 

 そこで私は決心しました。昨日のことを話すことにしたのです。

 ハゲ男にセクハラまがいのことをされたと2人に話し、撮った彼の写真を見せました。

 

「「……」」

 

 すると2人は顔を上げて、お互いに顔を見合わせていました。

 

「え? どうしたのその反応。まさか2人とも知ってる人?」

「……小耳に挟んだ程度なんだけど、最近ちょっと噂になってるトレーナーがいるんだ。実物は見たことないんだけど、この人がそうかも。関西弁ってのも合ってる」

「私も~。チームの子が話してるの聞いたよ~。それでちょっと前、クロちゃんと話したんだよ~。『レオちゃん危ないね~?』って」

「……なに? どういうこと?」

 

 そういう噂があったことは理解しました。しかし、私が危ないというのは一体どういうことでしょうか。まさか今日のことが予見できるような何かがあったと? 

 

「2人とも知ってるなら教えてよ。この男、一体どういうトレーナーなの?」

「どういうトレーナーって……」

「そうだね~、一言で言うなら」

 

 クロとプロンはそこで目を合わせて、示し合わせたかのように同時に口を開き──

 

 

「「ロリコンハゲトレーナー」」

 

 

 ──と、声を重ねてそう言いました。簡潔なその言葉の意味を理解するまで少し時間がかかりました。

 

 ろりこん……はげ……とれーなー……ロリコン!? 

 

「……ハゲはいいとして、ろ、ロリコン……?」

「そうなんだよ。なんかさ、最近小さいウマ娘を何人か連れて学園内を歩いてるスキンヘッドのトレーナーがいるってね。あちこちで目撃されてるらしいよ」

「その小さいウマ娘たち、トレーナーが攫ってきたって噂なの~。そんなウマ娘攫いの変態ロリコンハゲトレーナーさんにレオちゃんが見つかったら……」

 

 私が攫われる、と。そういうことですか。

 

「って、私は高等部だよ! ロリじゃないよ!」

「その体で言ってもねえ……」

 

 クロは口元に笑みを浮かべながら私の体を上から下まで見ています。それにつられて私も自身の体を見下ろすと、小学生にしか見えない小柄で凹凸のない体がありました。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでるナイスバディのクロと、手足が長くてすらっとスレンダーなプロンと比べると我ながら悲しくなってきました。

 

「というか、実際にそのロリコンハゲトレーナーに迫られたわけでしょ? もうそれがロリって見られてるって証明じゃん?」

「ううぅ……クロのいぢわる」

「あーごめんねレオ。言い過ぎた。これあげるから許して」

 

 クロがいぢめてくるので拗ねていると、クロは自分のデザートのアップルパイを譲ってくれました。本当にクロはリンゴが好きですね……

 

「しかも~そのトレーナー、小さいウマ娘の1人に『ハニー』って呼んでるんだって~。その娘のこと、好きなんだろうね~」

「うっわホント? キッツ……マジの変態ロリコンじゃん」

「……ん?」

 

 貰ったリンゴパイを頬張りながら2人の話を聞いていると、聞き捨てならない単語が耳に入りました。

 確かに今『ハニー』とプロンは言ったのです。なら確認するべきことがあります。

 

「ねえ、さっき小さいウマ娘連れてるって言ってたけどそれって何人か分かる?」

 

 2人に向かって尋ねるとプロンがそれに答えてくれました。

 

「えっと~、3人って聞いた気がするよ~」

 

 それを聞いて妙に腑に落ちました。『ハニー』と呼ばれるウマ娘がいる3人組……必然的にあのウマ娘たちが思い浮かばれます。

 ということはあの3人……ハニー、エナ、シューとあのハゲ男は繋がっていると考えるのが自然でしょう。あの3人がハゲ男に私のことを話したのではないでしょうか。そう考えると今日いきなりあのハゲ男が現れたことに説明がつきます。

 ……ハニーと名前を呼んだだけなのに、勘違いされて変態ロリコン扱いされているハゲ男はちょっと可哀想ではあります。

 

「あと~、小さい子以外に見たことのないウマ娘も一緒にいたって言ってる娘もいるよ~。なんか、シスターさんの帽子かぶってる黒髪のすごい美人さんだとか~」

 

 それを聞いて瞬時にクロが反応しました。

 

「プロン、それ本当? 私はやたらキラキラした芦毛のウマ娘だって聞いたけど」

 

 謎が謎を呼ばんと言わんばかりにまた新情報が浮かび上がってきました。

 小さいウマ娘以外にも、正体の分からないウマ娘も引き連れているらしい謎のハゲ男。そもそも、高等部にでもなればトレーニングコースに出ているトレーナーなら大体の顔は知っているものですが、あのハゲ男は私も見たことがないのです。それも不思議なことでした。目立つ風貌ですから、いたら分からない訳ないと思うのですが……

 

「一体何者なんだろう……あのハゲ男」

 

 謎は深まるばかりです。




主人公とその友人たち

〇レオ(????レオ??)
 主人公。ちっさい。

〇クロ(????クロ??)
 サバサバ系。ダートのGⅢを2勝してるすごいウマ娘。リンゴが大好物らしい。

〇プロン(????プロン??)
 おっとり系。勝てないことと故障により退学も考えていたが、中央を離れて園田トレセンで走って復活し、中央に戻ってきた。
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