【完結】ロリコンハゲトレーナー(仮)に拾われたら地獄でした 作:シェーク両面粒高
その他は大体未実装ウマ娘です。
「はあ~」
ハゲ男のことを担任教師と友人2人に話した日の翌日の朝、ため息をつきながら寮から学園へ登校ルートを歩んでいきます。結局、2人が持っていた情報はそこまでだったらしく、話はそれ以上進展しませんでした。謎のハゲ男に狙われているのは気持ちの良いものではなく、なんとなくもやもやとした気分になります。
だからでしょうか、ボーっとしながら歩いていたので、立ち止まって会話をするウマ娘の集団がいることに気づかなかったのです。
「あたっ!」「うぐっ!」
その中の1人のウマ娘とぶつかってしまったのです。相手のみぞおちに私の頭突きがきれいに入ったらしく、女の子らしくないくぐもった声が聞こえました。
……ん? この声、どこかで聞いたような……
「っ! オイ! レオちゃ……っ、クソチビ! だいじょう……いや! てめえ何やらかしてくれてんだあ!?」
「げ……ワル子」
黒鹿毛の短髪で目つきの悪いいかにもヤンキー女といった風貌のウマ娘がこちらにガンつけてきています。このウマ娘はワル子と言って、文字通り意地悪なウマ娘です。名前にワルとは入ってないのですが、あまりにも私に対して意地悪なので私の周辺の人物たちはそう呼んでいます。
これまでのことを色々かいつまんで言うと、私とワル子は犬猿の仲なのです。
「おはよう! じゃあねワル子さんっ」
「はあ!? 逃がすわけねえだろうが!」
「ぐえっ!」
ワル子は横を通り過ぎようとした私の制服の襟をつかんで引っ張ったため、首元が締まり踏まれたカエルのような声が出てしまいました。
「離してよっ!」
襟をつかんでいる手を後ろ手に振り払い、ワル子と臨戦態勢にて向かい合います。
「おいクソチビ。てめえ人にぶつかっといてその態度はなんだあ? 身長だけじゃなく礼儀も脳味噌も足りてねえようだなあ!」
「はんっ! 図体だけデカイワル子に言われたくないよ! ちょっとぶつかっただけで痛がってさあ……筋肉じゃなくて脂肪しかついてないからじゃない?」
「ンだとコラッ!」
「やるかこらー!」
「ちょっとちょっと2人とも、目立つから止めてよ……」
私たちが言い合っているのを見てワル子の友達が間に入ってきました。そう言われて周りを見回すと、確かに登校中のウマ娘たちがみんなこちらを見ているようでした。
いつも不思議なのですが、ワル子の友だちはお淑やかで優しい娘が多いのです。本人はあんなに悪い奴なのに、なぜでしょう?
「あれ、レオじゃん。何やってんの?」
「クロ……!」
そこに通りがかったのは友人のクロです。クロは私とワル子を交互に見やった後、なにか納得したように「ああ……」と言いました。
「なんだいつものか。飽きないねえレオもワル子も。ま、そのぐらいにしとけば? 目立ってるし、あんま続けてると遅刻するよ」
「そうだそうだっ!」
私はクロの後ろに回り、クロを盾にしながらそう抗議しました。
「てか、今日のはなにが原因よ?」
「……それは」
言い淀んでしまいます。ことの発端は私なのです。
「その様子だとレオが悪いっぽいねえ。ほら、悪いならちゃんと謝りなよ」
「く、くろぉ……」
「そんなうるうるした目してもダーメっ。ほら」
クロは私の背中に手を回すと軽く押して前へとつき出します。重い足取りでワル子の目の前まで行きました。
「この度は誠に申し訳ございませんでしたー」
「なんだあその態度! ナメてんのか?」
「あん!? ちゃんと謝ったじゃん!」
「はあー、何やってんだか……っと」
そこで、学園で鳴らされた予鈴が聞こえてきました。
「2人ともそのぐらいに。本当に遅刻するよ」
駆けだしたクロと一緒に私も走り出します。後ろでワル子が何か言っているのが聞こえますが、無視して走っていきました。
併走していたクロがこちらに向いて口を開きます。
「なんで仲いいのにそんな喧嘩するかなあ」
「私とワル子が!? クロ……一体何を見てるの?」
「いやあ、ワル子の方は絶対……いや、なんでもないや」
どこをどう見れば仲がいいように見えるのでしょうか。クロの人を見る目は節穴と言わざるを得ません。こんな調子では将来悪い男に引っかかってしまうでしょう。贔屓目なしにクロは魅力的な女の子なので、友人として心配です。
私とワル子との関係は中等部から始まっており、模擬レースにて対戦したのがきっかけです。模擬レースはハナ差で私がワル子に勝って1着となったのでしたが、そのときに絡まれたのが原因でした。
今でもその時のことは思い出せます。
『やった! 1着だ!』
『お前、やるなあ……なあ』
『ん? なに?』
『俺と……と……』
『と?』
『ともだち、に……』
『? なんて?』
「……と、とんでもねえチビだなあ!」
『なんだと!? 私にけんかうってんのかー!?』
……と、これが全ての始まりでした。
「クロの人を見る目が心配だよ」
「レオにだけは言われたくないなあ」
そんな軽口を叩きながら走っていると、あっという間に学園に到着しました。
◇
午前中の授業が終わり昼休みになるなり、クロとプロンが2人して私の席までやってきました。
「ごめん! 今日はチームのミーティング入っててお昼一緒できないの」
「実は私も~。ごめんね~レオちゃん」
「そうなの? 分かったよ。いってらっしゃい」
私がそう声をかけると2人はすぐさま教室から出ていきました。チームに所属しているウマ娘も大変です。
さて、急遽1人で昼食をとることが確定してしまいました。1人で食堂に行くのもなーと考えた私は、購買で何か買って中庭のベンチで食べようと思い立ちました。我ながらナイスアイデアです。
私はすぐさま購買へ向かいました。
購買でサンドイッチやにんじんジュースを買って中庭へ向かいました。今日は少し肌寒い日だったせいか、中庭はそれほど混んでおらず、空いたベンチを容易に見つけることができました。
空いたベンチに座って、昼食を取ります。私以外にも1人で食べているウマ娘も何人かいるようで、それほど孤独感のようなものは感じませんでした。しかし、普段から3人で食べている私にとって全く寂しくないと言ったら嘘になりますが。
「……?」
大方食べ終わり、食後にパックのにんじんジュースをストローで吸っているときのことでした。校舎の西側から中庭に向かって、頭上が光り輝いている誰かがやって来たのです。光ると言うより、太陽の光を乱反射させ中庭を照らしています。その人物は噴水のとこまでやってきました。よく見ると、その人物の前に3人の幼いシルエットを──
「え、ちょっと──!」
──確認できたところで気づいてしまいました。ちょうど雲に太陽が隠れてその人物の顔が露わになり、全ては確信に変わりました。
「ハゲ男と、あの3人……!」
ジャージ姿のハゲ男の前に、ハニー、エナ、シューの3人がきゃっきゃ言ってじゃれながら歩いています。思わず、ずっとその4人の方をガン見してしまいます。
ハゲ男とロリウマ娘3人衆が繋がっているという私の予想はここで証明されたのでした。しかしこうもあっさりと見つかるとは……
「……ん?」
そこで、ハゲ男の顔がこちらに向きました。彼は私に気づいたようで、それにつられて3人も私の方を向きました。
「おお、キミは」
「あ! おねえさんだー! こんにちわー!」
真っ先に私に駆け寄ってきたのは、黒いピッグテールを揺らしたエナでした。曇りのない天真爛漫な笑みがハゲの反射光より眩しいです。
「ごきげんよう、おねえさま」
「……こ、こんにちは」
「3人とも、こんにちは……」
お嬢様のハニーが片足を引き、ワンピースの裾をもってお辞儀をしました……カーテシーと言うのでしたっけ? ストロベリーブロンドの三つ編みが揺れ、同毛色の尻尾が滑らかに動いています。
小さい声で挨拶をしたシューはハニーの背後からちょこっと顔を出していました。くるくるな癖毛は変わらず、黒い星がついたトレードマークの黄色いベレー帽を被っています。
「1人なん? 友達はおらんのかいな」
「……用事があっていないだけです」
警戒しながらハゲ男の嫌味に答えました。すぐにでも逃げ出せるように荷物をまとめ、脚に意識を持っていきます。
「んな警戒せんでも……この前は堪忍な。いきなり変なことしてすまんかった」
「え……?」
ハゲ頭を下げてハゲ男は謝りました。雲の間から出た太陽光が反射してクソ眩しいです。
思ってもない言葉を聞きました。このハゲ男、反省してるってことでしょうか?
「ねーねー! おねえさん! どうしてきょうのあさいなかったの? わたしたちたいいくかんにいったのに」
「え? 来てたの?」
昨日の放課後と今日の朝、ハゲ男を警戒して自主トレはパスしていたのです。
「そうだよー! ジャンプしょうぶしたかったのにー」
「きょうこそわたくしがかつよていだったのに。おねえさま、にげたわね!」
「いやーそう言うことじゃなくて……」
この娘たちに本当のことを言うこともできず、それとなく誤魔化します。
エナは私の膝に手を置いて身を乗り出すようにこちらに顔を近づけてきています。な、なんですかあ、この白くてモチモチの肌はあ……ほっぺをふにふにしたい……!
……おっと、エナのモチモチほっぺに気を取られている場合ではありません。
「ちょっと、えーっと、トレーナーさん」
「ん? なんや?」
このハゲ男には色々訊かなければなりません。あんな迫り方をされたのです。彼のことを訊く権利は私にあるでしょう。
「この娘たちは一体……何者なんですか?」
「こいつら? そうやな……色々あったから一言で説明すんのは難しいんやけど……」
そこで少し黙り込んだハゲ男はこう答えたのです。
「日本のレースの未来のために連れてきたんや。海外から。将来有望なこいつらに日本のレースを見せてやりたくてな」
「……はあ?」
突拍子もないことをこのハゲは言い出しました。あまりにも抽象的過ぎて話の要領を得ません。
この3人と日本のレースの未来のくだりも意味不明ですし……この3人は本当に海外のウマ娘? 話が大きすぎないでしょうか。
「……どっかから攫ってきたんじゃないですか?」
「ん~、まあちょっと無理したからなあ。攫ったって言われたら否定できんな」
「なっ! 認めるんですね!? このウマ娘攫い! 今度こそ学園に言いつけてやります!」
「そんな物騒な……期限付きやし、ちゃんとこいつらの親御さんには許可とっとるし、
「──そんな」
ハゲ男の言ったことに愕然とします。荒唐無稽な話ですが、彼が言っている通達が本当に出ているのだとしたら、学園の教師が取り合ってくれなかったことにも説明がつきます。
このハゲ男はいったい何者なんでしょう。トレーニングコースでは見かけず、しかしURAからの指示で動いているトレーナーとは……
「そもそも、あなたは何者なんですか? 私、それなりに学園生活長いんですけど、これまであなたを見た覚えがありません」
「そりゃそうやろな。俺この前まで何年もずっと海外……ヨーロッパにおったからな」
「海外でトレーナーを!?」
「うんまあ、そんな感じや。中央のライセンスとってすぐにヨーロッパに行ってな。ヨーロッパ中のチームをドサ回りしてたんや。それに、中央戻ってトレーナーしてたとしても、普通の学園のウマ娘は俺のこと見る機会はほとんどないやろな」
「どういうこと?」
「俺はな──」
──ぶぅおん!
ハゲ男の言葉を遮るように、何かが風を切る音がしました。それはハゲ男のジャージをかすめて飛んでいき、けたたましい音を立てて中庭の地面に跳ねて転がっていきました。やっと止まったそれを見ると、中庭に置いてある……私が今座っているのと同じベンチでした。幸い転がった先に誰もいなかったので、当たった人はいませんでした。
地面に転がったベンチから目を切り、それが飛んできた方……ハゲ男の背後を見ると、10メートル離れたところにいつのまにか体格のいい鹿毛のポニーテールをしたウマ娘がいました。右耳には水色のリボンを着けています。
「おい、お前ら」
臓腑を震わせるようなその声が静まりかえった中庭に響き渡ります。
「オーちゃん! あぶないなあ! ベンチなげたらいけないんだよ!」
「オーさん。ベンチをなげるなんて、おだやかじゃないわね」
「ふ、ふえ~~~~~」
三者三様の反応をする3人に対し、こちらを向いてあのウマ娘に背を向けたまま固まっているハゲ男。思わず彼を見上げると……
「……」
「だ、大丈夫ですか?」
吹き出る汗をだらだら流し、笑顔のまま表情が固定されたハゲ男がいて、思わず彼の状態を心配してしまいました。
ぎこちない動きでハゲ男はやっと振り返りました。
「お、おう。ど、どうしたん? トレーニングはまだやで? 今は昼休みや」
「オレのチークピーシーズに悪戯したのは誰だ?」
そう言われて、ハゲ男とロリウマ娘3人衆は目を合わせて固まりました。
「やっぱり、お前らだな……くっくっく。覚悟は、いいんだな……!?」
そのウマ娘は近くにあったまた違う種類のベンチを片手で持ち上げて肩に担ぎ、こちらに歩みを進めてきました。
「……お前は?」
「え、私?」
「まあ、誰であろうと関係ねえ……ここに居合わせたのが悪かったな……お前ら5人とも……!」
謎のウマ娘は唐突に私に話しかけてくると、ベンチを担いだままこちらに向かって走ってきました。
「殺す!」
なぜか私も彼女の敵に認定されてしまいました。
……ここで1つ分かったことがあります。このウマ娘は間違いなく、気性難です!
「逃げるで! ほらキミも!」
「え、ええ!? ちょっと!?」
「わーい! おいかけっこだ!」
「ちょっと……シュー、いくわよ!」
「ひっく……ぐすっ、ふええええこわいよ~~」
「待てコラ!」
その流れで逃げ出した私たち5人。
学園内をフルに使った逃走劇が始まりました。
ハゲが海外から連れてきた未来の名ウマ娘たち
〇ハニー(ハニー????)
お嬢様系。トレーナー志望の幼馴染の女の子(ヒト)がいる。その子と将来チームを結成することを約束している。
〇エナ(エナ????)とシュー(?シュ??)
" A Clash for the Ages"
海外のウマ娘なのに日本語ペラペラじゃねえかというツッコミは入れないでくださいすいません許してください何でもしますから!