【完結】ロリコンハゲトレーナー(仮)に拾われたら地獄でした   作:シェーク両面粒高

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作ってしまった設定を投げて供養するだけの回。


第9話 逃げシス?

 その秘策を授かり、1日限りの特訓を終えた私はトレセン学園へ戻ってきていました。帰りは森の中を抜けず、舗装された方を通ってきました。あとは寮に帰るだけでした。日はまだ出ているとはいえ傾いてきているので、さっさと帰らないと暗くなってしまいます。

 

「こっちから行けば、近道にならないかな……?」

 

 普段はあまり来ないところではあったのですが、高等部までに培われた土地勘を生かして校舎の裏側の道を通ってみようと足を向けました。普段いるところでも、こういう知らない道を行くのはワクワクするものです。

 校舎の裏の道は人気がなく、誰ともすれ違わなかったのですが──

 

「……ん? 声が聞こえる……?」

 

 前方に開けたスペースがあるのが見え、そこから誰かの声がしてきます。どうやら1人ではなく複数人の声で、しかも──

 

「これ、歌……?」

 

 ただ話している声ではなく、複数人が何か歌っているようでした。歩いて近づいていくと、それがより聞こえるようになってきました。

 無意識に足音を消して、ゆっくりと歩いてそこに近づいていきます。そして建物の物陰からチラッと片目だけ出して、その歌が聞こえている方を伺います。まるで家〇婦は見たとでもいうような感じです。

 するとそこには何人かのウマ娘が体操服姿でマイクを持って歌っていました。

 

「「「「「逃げ出す!(逃げ出す!) 逃げ出せ!(逃げ出せ!) だって I LOVE YOU!」」」」」

 

 歌っているウマ娘の中で、一番手前にロングヘアの芦毛のウマ娘がいるのが見えます。その向こうに黒髪ハーフアップで翡翠色の目をしたウマ娘がいました。どちらも見たことのないウマ娘です。

 

「だめーっ! ストップストップ!!」

「……なんだ、マーベリック先輩。ミス?」

 

 そこで音が止まり、歌が中断されました。ストップと言ったウマ娘の姿は見えませんが、会話から察するにどうやらマーベリックというウマ娘らしいです。それに返しているのは芦毛ロングのウマ娘でした。

 

「ミスじゃなくて、これ逃げシスのパクリ曲じゃん! なんかどっかで見たような歌詞だと思ったし、よく聴けば曲もそのまんまじゃん! そりゃ初見でこんなに歌えるわけだよ!」

「そうか? 歌詞結構変えてるんだが……ま、コンテンツの消費速度が速い現代社会、前に聴いた曲のことなんてすぐ忘れる輩ばかりだから大丈夫だろう?」

「なにもかも大丈夫じゃなーい! てか、これ考えたのアップちゃんか! だめだめ! ね、サナ!」

「…………?」

 

 サナと呼ばれた、黒髪ハーフアップで翡翠色の瞳をしたウマ娘が小首を傾げます。あと、芦毛ロングのウマ娘はアップというようです。

 

「『…………?』じゃないよおおお。かわいいのはいいんだけどおおおお!」

「……マーベリック、暑い……」

 

 そしてさっきから抗議の声をあげているマーベリックがサナに抱き着いたことにより、こちらから彼女も姿を確認できました。マーベリックはパイロットゴーグルをかけた鹿毛のお団子ヘアーで背の高いウマ娘でした。

 

「まあまあ、マーベリックちゃん。曲作るなんて難しいんだもの、コピーバンドよろしくコピーウマドルでまずはやっていくのもいいんじゃない?」

「ラスカル先輩……むむ、確かに一理ありますね……」

 

 またしても新しいウマ娘……黄色い縁の眼鏡をかけてウェーブがかった鹿毛のミドルヘアーをした、ラスカル先輩と呼ばれたウマ娘がマーベリックの肩を叩いているのがこちらから見えました。その物腰からして、みんなのお姉さんって雰囲気です。

 

「ほら、マーベリック先輩、私の言った通りだろう」

「なんでアップちゃんはドヤ顔なの! もう、ブロードマインド先輩も何か言って……って、先輩?」

「……もう、私は無理だわ……年だわ……がくっ」

「ど、どうしたんですか!?」

 

 ブロードマインドというウマ娘は見えませんが、何かあったのでしょうか。

 

「ラスカル先輩、いったい何が……?」

「ブロードマインド先輩、今日のトレーニングきつかったんだって。ナウいヤングじゃなくなってきてるってさっき言ってたよ」

「だからこんなにへばってるんですか……」

 

 ここで整理する必要があるのか分かりませんが整理しましょう。

 パクリ曲を作ったのが芦毛ロングのアップ。

 さっきからハイテンションな鹿毛お団子ヘアーにパイロットゴーグルをかけたマーベリック。

 黒髪ハーフアップに翡翠色の瞳をした物静かなサナ。

 黄色の眼鏡をかけウェーブがかった鹿毛のミドルヘアをしたお姉さんラスカル。

 そして正体不明の、ナウいヤングじゃないのがブロードマインド。

 

「もうっ! 私たちが障害レース版逃げシス(仮)になるんだよ! そうみんなで決意したじゃん!」

 

 と、言うように、どうやら彼女たちはそのニゲシスとやらになりたいんだそうです……はて、ニゲシス、どっかで聞いたような……

 

「──やっと見つけたわっ☆ あなたたちがニゲシスね?」

 

 どこからともなくその声が聞こえてきました。その声は聞いたことのあるもので……って、デジー!? デジーがいつの間にか彼女たち5人の前に立っていました。 

 そう言えばニゲシスと言っていたのはデジーでした。それを探しに行くとも言っていました。

 

 マーベリックが前に出て突然現れたデジーに対応しています。

 

「え、あなたは……?」

「ワタシはデジー☆ ワタシもあなたたちと一緒にウマドルしたいわっ☆」

「え……でも、障害レースの逃げウマ娘しか──」

「ワタシも障害レースのウマ娘よ☆ しかも逃げのね☆」

「え、そうなの? うーん、コースで見たことないんだけどな……最近転向してきたのかな? みんな、どうする?」

「マーベリック先輩が決めればいい。リーダーは先輩なんだから」

 

 アップの言ったそれにサナもラスカルも頷き返していました。

 

「アップちゃん、みんな……うんっ。いいよ! ようこそ障害レース版逃げシス(仮)へ!」

「ありがとう☆ これからしばらくお願いするわっ☆」

 

 そうして何やら場は盛り上がっているようでした。

 

「…………」

 

 私はそれを見届けると、そっと踵を返しました。

 邪魔をしたくないとかそういうことではなく、見つかったら面倒くさそうだったからです。でも、障害レース版逃げシス(仮)については、これからも気にかけてみようとは思いました。

 

 それぐらいには、まあ、彼女たちは魅力的に映ったのです。




「障害馬で逃げシス作ったら誰や!?」と考えたのがきっかけのこの回。

 芦毛ロング:アップトゥデイト
 鹿毛お団子ヘアーにパイロットゴーグル:アポロマーベリック……泣
 黒髪ハーフアップに翡翠色の瞳:サナシオン
 黄色の眼鏡にウェーブがかった鹿毛のお姉さん:マルカラスカル
 そして正体不明のノットナウいヤング:ブロードマインド

 サナシオン以外は中山大障害と中山グランドジャンプを制覇かつ逃げたことがある馬を選出。異論は認める。
 サナシオンはJG2を2勝だけですが、個人的に大好きな逃げ馬だったので出したかったんです……。ちなみにオジュウが初めて中山GJ勝った時に単勝1.3倍の抜けた1番人気がこのサナシオンだったのです。個人的にはもうちょっと飛越をうまく教え込ませていれば、もっと活躍できたのかなと勝手に思っています。故障は仕方ないですけどね……。
 今は酪農学園大学馬術部で頑張っているようです。幸せな馬生を!
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