プロローグ「二人の冒険の夜明け」
「この帽子を、
後に四皇と呼ばれる海賊『赤髪のシャンクス』は、大切な友人と彼の娘が作るという”新時代”に懸け、一つの帽子を彼らに託した。
「いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな」
一つの王国が滅んだことで。
大海賊の片腕を失ったことで。
己の非力さを知った二人は、彼のような偉大な海賊になるために、自らの足で進むことを選んだ。
あの日から、十年。
「〜〜♪」
心地の良い鼻歌を歌う少女と、それを子守唄に眠る麦わら帽子を被った少年が、手作りの小さな舟に乗っていた。
この世界の海が危険であることなど、百も承知で。
ザバァ!!
格好の獲物を二匹見つけた巨大な怪物が、彼らの前に飛び出してきた。
のんびりとした鼻歌が途絶えるが、二人の間に慌てる様子はない。
「出てきたね、近海の主!」
「よし! おれが先にぶっ倒す!」
麦わらの少年は拳を大きく振りかぶった。
それこそ、手が後ろまで伸びるほどに。
「ゴムゴムの……!」
しかし、弾丸のようなパンチが放たれるよりも数瞬前。
バチバチ! と。
黒い稲妻が迸る。
「失せなよ」
「――!!」
近海の主の体が硬直し、わずかに体が震える。
「
身動きの取れなくなった近海の主の顔に、強烈なパンチが炸裂し、怪物は海へと沈んでいく。
「うーん。まだうまく使えないなあ」
「よーし! おれの勝ちだな!」
「あれー? もしかしてルフィ、私のおかげで勝てたのわかってないの~?」
「なんだよ、ウタ! 一人でだって勝てる!」
「出た! 負け惜しみ~! 昔から変わらないなぁ、ルフィは!」
「勝手に言ってろ! お前のいうことなんてもう聞かねえ!」
ふん! と顔をそむけたルフィの肩を、ウタはトントンと叩く。
「ねえ見て、ルフィ! あっちにおーっきなお肉があるよ!」
「肉ぅ~!? 本当か、ウタ!」
「あっはっは! 何も聞かないって言ってたのに! 子どもじゃないんだから!」
「ああ! だましやがったな、この!」
自分を睨みつけてくるルフィのことなど気にもかけず、ウタはパンと手をたたいて水平線を見つめる。
「そんなことより、早く進もうよ!」
「そうだな、まずは仲間集めだ!」
「十人くらいは欲しいよね〜!」
「あとは海賊旗!」
「私が描いてあげたやつ、付けなかったのルフィだよね?」
「だってあれ、シャンクスの海賊旗じゃんか!」
「あはははっ! 冗談だよ。いつか絵が上手い人に描いてもらおうね、私たちのトレードマーク」
「おう! 麦わら帽子が、俺たちの目指す夢のマークだからな!」
二人は広大な海へ向かって、高々と宣言をする。
「俺は海賊王になって!」
「私は世界一の歌姫になって!」
それぞれの道のりを口にした二人だが、その夢の果ては同じ場所にある。
「新時代を!!!」
かくして。
大いなる旅は始まったのだ!!