ここからは物語を組み立てる規模がかなり大きいので、ついに毎日投稿できなくなるかもしれません。
その分、面白いものにできるように頑張ります。
たくさん楽しんでください。
第二十話「子守唄」
ラブーンと約束を交わしたウタたちの前で謎の二人組、Mr.9とミス・ウエンズデーが土下座をしていた。
「お願いします! 私たちの町、ウイスキーピークへと連れて行ってください!」
ラブーンの体内でこの二人を懲らしめた時に、この二人が持っていた
そのために、常に一つ先の島を指す
(ねえ、ウタ。こいつらさっき負けたからって下手に出てるだけよ。絶対裏切るわ。私には分かる)
ナミがそっとウタに耳打ちをする。
しかし、ウタはにっこりと笑ったまま、
「乗っていいよ! 一緒に次の島に行こう! ルフィもそれでいいよね?」
「おう、いいぞ!」
というわけで。
「じゃあ、またね! ラブーン! 元気にしてるんだよー!」
――ブォォォオオオオオオオ!!!!
楽しそうに声を上げるラブーンの声に背中を押され、麦わらの一味with謎の男女による航海が始まったのだが。
「……疲れた…………」
「本当にね。まさか
大雪が降ったと思えば春一番が心地よく吹き、その風が通り抜けないうちに嵐が来る。
航海術以上の肌感覚で気候を探るナミでさえ、この海を攻略するのは困難を極めていた。
あっという間に進路がそれ、氷山にかすり、雷が落ち、強風で帆が破れかける。
その全てを全員の力(ゾロは寝ているので何もしていない)でどうにか乗り切った。
「それでも、何とか終わったよ。一本目の航海が!」
ナミが指さした先には、大きなサボテンがそびえる島が見えた。
あの島が、ウィスキーピーク。
どんな島かは分からないが、だからこそワクワクする。
「それでは、我々はこの辺で!」
「送ってくれてありがとう! 縁があったらまたいずれ!」
まだ港についていないにも関わらず、Mr.9とミス・ウエンズデーはそれだけ言って島へと飛び出して消えて行ってしまった。
「なんだったんだ、あいつら」
「うーん。まあ、無事に帰ってこれたならよかった!」
気にすることなく、ルフィたちは港へと進んでいく。
蛇が出るか鬼が出るか。
なにが起こってもおかしくないのが、この
そう、思っていたのだが。
「ようこそ! 歓迎の町、ウィスキーピークへ!」
百人近い町の人々が、海賊であるルフィたちを出迎えてくれた。
状況の理解できないルフィ達の前に、ロールケーキを六つ頭にくっつけたような奇抜な髪形をした男性がやってきて、丁寧に頭を下げた。
「いらっっしゃい。私の名前はイガラッポイ。ここは酒造と音楽の盛んな町、ウィスキーピーク。酒なら海のようにございます。ぜひとも、あなたたちの冒険の話を肴に、宴の席をもうけさせてはいただけませんか」
「「「喜んで~~~~っ!!!!」」」
(三バカ……)
ルフィとサンジとウソップが、肩を組んで宴へと向かっていく。
それを見たナミがやれやれと首を振るが、はしゃいでいないだけで酒が飲めるからとゾロも乗り気のようだった。
「あなたがテンション高くないなんて珍しいわね、ウタ」
「え? そうかな?」
「そうじゃない。いつもだったらライブだーって走り出すところだと思ったけど」
「確かに! もちろん、後でやるけどさ」
ウタは言葉にできない違和感を覚えていた。
町の人たちの笑顔や笑い声が、なんとなく本物のようでないように見えてしまって。
「考えすぎかな」
「まあ、なんでもいいでしょ。あのバカたちの食料とか考えるなら、好きなだけ食べさせてくれるっていう好意に甘えましょ」
「ん! そうだね!」
ニコっと笑って、ウタは頷く。
イガラッポイに背中を押されて、ウタとナミも酒場の中へと入る。
そして、ウイスキーピークの日は暮れていく。
月明かりが、寝静まったウイスキーピークを照らす。
麦わらの一味のほとんどは、航海と宴の疲れとご馳走の満腹感で深い眠りに落ちてしまっている。
そんな中。
コツン、コツン、と足音が響く。
「今宵も、月光に踊るサボテン岩が美しい」
呟いたのは、町長イガラッポイ。
静かにサボテン岩を眺めるイガラッポイの元へ、皆を歓迎していた一人である体格のいいシスターが歩いてくる。
「全く。あんな弱そうなガキたちに“歓迎”する必要があるのかね。あの二人がクジラの肉を取るのも失敗したみたいだし、食料だって無限じゃないんだ」
「
「な、なに……!?」
イガラッポイが取り出したのは、ウタとルフィの手配書だった。
「ご、五千万に三千万!?!?!?」
「さっそく船にある金品を押収して、やつらを縛り付けて……」
「なァ、悪いんだが。あいつらは寝かしといてやってくれないか」
月明かりに照らされたのは、三本の剣を腰に差した剣士。
「やっぱり、ここは“賞金稼ぎの巣”か。賞金稼ぎ、相手になるぜ。“
「な、なぜわが社の名を……!」
ゾロもかつては名のある賞金稼ぎだったのだ。名前さえ知ることすらできない犯罪集団からも、一度スカウトを受けている。
「秘密だったか?」
「仕方がない。また一つ……サボテン岩に墓標が増えるな……!」
直後、眠っていたはずの町人たちが一斉に飛び出し、ゾロへと襲い掛かる。
賞金稼ぎ百人VSゾロの戦いが始まる。
ここはウイスキーピーク。
丸いサボテンのようなシルエットの岩に、無数の墓標が刺さって針となった、初心者を刈る
ウイスキーピークの“歓迎”が、今始まった。
今日は月が綺麗に見える。
船旅の疲れもあるが、アーロンとの一件で基礎的な体力が増えた気もする。
「~~♪」
ウタは
酒があまり得意ではないからと、飲むのを遠慮したのも今思えばいい判断だったかもしれない。
最初から、ウタは彼らのことを信じ切れていなかった。
笑い声や歓迎する声と、ウタが『聞いた』感情が嚙み合っていなかったのだ。
もしかしたら、圧制や恐怖に支配をされているから笑っているのかもしれないと思った。だから様子を見るためだけに、ウタは
「やっぱり百人は疲れるなぁ。でも、そのおかげでいい情報も聞けたし、ラッキー♪」
酒場の席で眠る麦わらの一味たちを眺めながら、ウタは微笑む。
なによりも良かったのは、相手が素直な敵だったこと。
誰かに命令をされてウタたちに刃を向けざるを得ない優しい人々である可能性が、一番怖かった。
だが、それならば、心気なくルフィたちに戦ってもらえばいい。
「音楽家の夜は長いなぁ~、にしし!」
あとはゾロがバロックワークスとかいう集団をウタワールドの中で倒しきり、麦わらの一味には勝てないと理解させたうえで能力を解く。
それだけで終わりだと思ってたのだが。
「な、なんだ!? なんで全員が寝てるんだ!?」
「今頃、あのガキたちもまとめて倒すつもりじゃなかったの!?」
別の場所にいたのか、遅れてやってきたMr.9とミス・ウエンズデーが酒場に現れたのだ。
能力による疲労もあり、この場から動ける気もしない上に、この二人をウタワールドに引き込む余力もない。
こうなれば、強引にルフィだけを起こすべきではあるのだが、ゾロはいま、賞金稼ぎ百人を相手にしているのだ。
万が一を考えて、ルフィはウタワールドの中にとどまっていてほしい。
「ま、不味いぞ……! おれたちだって
直後、酒場の入り口ごとMr.9たちのいたところが爆発した。
瓦礫や木片が吹き飛び、ウタの頬をかすめる。
「身内の処理を命令されたと思えば、殺す奴らが増えちまうなんてな……」
やってきたのは、チリチリの髪をしたサングラスの男と、雨でもないのに傘を差したオレンジのワンピースを着た女。
ミス・ウエンズデーが、その二人を見て呟く。
「Mr.5、ミス・バレンタイン……!」
二人の名前を口にしたミス・ウエンズデーに対し、Mr.5は言う。
「
「しかも、よく調べてみれば、
「……!!」
ミス・ウエンズデーが二人を睨みつける。
その沈黙が答えであるかのように、Mr.5はにやりと笑って懐から写真を取り出した。
「罪人の名は、アラバスタ王国護衛隊長イガラム。そして、アラバスタ王国“王女”、ネフェルタリ・ビビ」
「……そこまでバレてるのね」
ミス・ウエンズデーは奇怪な衣装から武器を取り出そうと手をかける。
しかし、その前にウタが声を上げた。
「ねえ、あなた」
「……!? あなた、起きてたの!」
「もちろん。だって、これみんな私の能力で眠ってるんだもん」
「な……っ!?」
ウタウタの実の能力を使えば、寝ている間に殺すことも、同士討ちをさせて命を奪うこともできる。
ウタは
「それでさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「な、なに……?」
「私、あなたのことを勝手に助けようと思ってるんだけど、いい?」
「は?」
ウタはにっこりと笑う。
「なんとなくさ、ずっと思ってたの。あなたって
「……なにを」
「私の夢はね、世界中の人を私の歌で笑顔にすることなの。だから、あなたみたいに誰かのために生きようと思う人の誇りの尊さを、私は知ってる」
シャンクスだって、ルフィだって、自分がしたいからと冒険をしているけれど、いつだって誰かのために怒って、剣や拳を握る人たちだった。
「というわけで、彼らを起こすとしますか!」
ぱちんと指を鳴らすと、麦わらの一味の三人が目を覚ます。
「向こうで話は聞いてたけど、いいの? 勝手に首突っ込んで」
「ナミ。相手は王女様だよ? 助けたらお金がいっぱいもらえるかも」
「さあ、やるわよ! 起きなさい、ルフィ、ウソップ」
「お、おれがやるのか……!?」
まず起き上がったのはウソップ。
事情はウタワールドで説明をしてあるが、それでも戦闘要員として駆り出されることに驚いていた。
「大丈夫。勝てるよ、ウソップなら」
「ま、まあな! 勇敢なる海の戦士に任せておけ!」
「んで、ルフィはまだ寝てるけど」
「問題ないよ」
優しく笑ったウタは、そっとルフィに声をかける。
「ルフィ。助けてもらっていい?」
「ん? どうした?」
「ほらね、私が言うといつでも起きてくれるんだよ、ルフィって」
「はいはい。いつものいつもの」
舞台は整った。
アラバスタ王国“王女”ビビを、犯罪集団バロックワークスから守りきれ。
「いつの間に加勢してやがるんだクソコック!」
「うるせえ、アホマリモ! ウタちゃんからお前を助けてやれって声が聞こえたんだよ!」
「ウタのやつ、余計なことを……!」
「てめえの力不足でウタちゃんとナミさんに何かあったらぶっ殺すからな!」
「いいじゃねえか、相手してやるよ!」
「はっはっは! よそ見ばかりしやがって! 隙だらけだ!」
「「うるせえ!!!」」
「アギャ~~~~~!?!?!?」