麦わらの一味「歌姫のウタ」   作:さとね

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お気に入り400超えてます。とてもびっくりです。
ランキングにも全然載ってないのに、見つけてくれてありがとうございます。
面白いもの書けるように頑張ります。
もっとたくさんの人に読んでもらって、楽しんでもらいたいな。


第二十一話「逃亡劇」

 

 

 正体不明の犯罪組織、バロックワークス。

 そのオフィサーエージェントであるMr.5、ミス・バレンタインの前に立つのは、ルフィとウソップ。

 

「たった二人でおれたちとやる気か。命知らずもいいところだな」

「キャハハハ! 格の差ってやつを教えてあげないとね」

 

 壊れた酒場の入り口で、何人もの海賊を葬ってきたエージェントが笑う。

 ゴクリと唾を飲むウソップだったが、ルフィはイマイチ状況が把握できていないようで、

 

「んで、なんでこいつらと戦うんだ?」

「話聞いてなかったのかよ、お前! 王国が大変で、ミス・ウエンズデーってやつが王女でだな……!」

 

 どうにかこうにか説明しようとするウソップだったが、ただ座っているだけなのに既に息が上がっているウタが一言でまとめる。

 

「ご馳走をくれたご飯の人たち殺そうとしてるから、まもってあげて」

「なにィ!? そいつは許せねえな……!」

「そんなどうしようもねえ理由でおれたちと戦う気か?」

「飯の恩ってのは大切なんだぞ!」

 

 叫んだルフィに対して、Mr.5はやる気なさげに鼻をほじり始めた。

 

「まあ、好きに言ってろ。おれたちは好きにやるだけだ」

「——! ルフィ、危ねえ!」

「遅えよ。鼻空想砲(ノーズファンシーキャノン)!」

 

 ドガァン! とルフィを正体不明の爆撃が襲う。

 呆気ねぇな、とMr.5はため息を吐くが、

 

「ゴムゴムの(ピストル)ッ!!」

「ごふァ!?」

 

 爆風の中から飛び出してきたルフィのパンチで、Mr.5は吹き飛ばされる。

 飛んで行ったMr.5を追って、ルフィは走り出す。

 

「ウソップ! そいつ任せた!」

「お、おう! 任せとけ!」

 

 残されたのは、ミス・バレンタインとウソップの二人。

 仲間が殴り飛ばされたというのに、彼女はニヤニヤと笑っているだけだった。

 

「な、なにがおかしい!」

「別に。ただ、不意打ち一発入れただけで勝った気になるなんて、よっぽどなバカなんだろうなって思っただけ」

「は! お前こそルフィの強さを分かってねえんだな」

「じゃあ、あんたは強いの?」

「おうとも! おれは勇敢なる海の戦士——」

「言葉なんかいらないから、戦いで教えてよ!」

 

 ミスバレンタインはふわりとその場でジャンプをして、ウソップの視界から消えていった。

 慌てて外に出てウソップが上を見ると、

 

「一万キロプレスッ!」

「うおぁ!?」

 

 突然、猛スピードで落ちてきたミス・バレンタインを、ウソップは反射的に避ける。

 

「キャハハハ! いい勘してるじゃん!」

「お前、まさか悪魔の実の……!」

「正解! 私は、キロキロの実を食べて体重操作を自在にできる!」

偉大なる航路(グランドライン)にはそんなやつがうじゃうじゃいるってことか……!」

 

 戦うための道具を出そうとするウソップの手が震えているのを見て、ミス・バレンタインは大笑いをする。

 

「キャハハハハ! 手が震えてるじゃない! そんな覚悟でこの海に来たことを後悔するんだね!」

 

 再び、体重を軽くしてふわりと浮かぶミス・バレンタイン。

 それを見て、ウソップは不敵に笑う。

 

「なに、別にビビってるんじゃねえよ」

「じゃあ何さ!」

「武者震いさ。お前らみたいな化け物たちを倒さねえと、親父には追いつけねえ!」

「言ってろ! 一万キロプレス——」

「ウソップハンマーカウンタァ!」

 

 ゴンっっ!!! と紙一重でミス・バレンタインの攻撃を避けたウソップが、落ちてきた頭にハンマーでカウンターを合わせる。

 速度と重さの乗ったミス・バレンタインの攻撃にハンマーも砕け散るが、彼女の頭もその衝撃に耐えられない。

 見事に気を失ったミス・バレンタインを見下ろして、ウソップは呟く。

 

「お前なんかより、どっかの執事の方が何倍も速くて強かったよ」

 

 それだけ言い残して、ウソップはルフィの方へ目を向ける。

 ウソップが『見た』限り、ミス・バレンタインよりもMr.5の方が格上だ。ルフィもそれを本能的に分かって、真っ先にあいつへと向かっていったのだろうが、

 

「……食後のいい運動になった」

 

 血だらけになって気を失ったMr.5が、ルフィに引きずられていた。

 ミス・ウエンズデーもとい、アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビは、その光景を見て息を呑む。

 

「なんて強さ……! こんなやつらがどうしてこんな入り口に……!」

 

 ビビがそんな言葉を呟いた直後、敵がいなくなったことを確認したウタはホッと息を吐く。

 

「ふう。なんとかなったね。……よかっ、た……」

 

 ふらりと倒れたウタを、ナミがそっと支える。

 

「まったく。無茶ばっかするんだから。いつかサクッと命とか懸けそうで怖いったらないわ」

 

 ナミがウタを背負うと、ウタワールドから解放されたバロックワークスの面々が次々に目を覚ます。

 しまった、とビビは慌てるが、ロールケーキ頭のイガラッポイもとい、アラバスタ護衛隊長イガラムがビビに告げる。

 

「問題ありませんよ、ビビ様。彼らには、おそらくもう戦う気力はありません」

「……え?」

 

 ウタワールドの中に囚われている間、その中ではゾロとサンジが徹底的に彼らを懲らしめていた。

 たとえそれが現実ではないとしても、ゾロに斬られた感覚も、サンジに蹴られた感覚も、全て残っている。

 立ち上がった賞金稼ぎたちを目覚めたゾロとサンジが睨みつける。

 

「「まだ、やるか?」」

「ひぃぃいいいいい!!!!」

 

 夢の世界で何度となく敗北した賞金稼ぎたちは、悲鳴を上げて逃げていった。

 

「……すごい」

 

 麦わらの一味の強さを知ったビビは、空いた酒樽を椅子にして皆に事情の説明をした。

 進んだ文明と平和に満ちた砂の国、アラバスタ。そんな国に革命の波が起き、それにバロックワークスが関わっていることに気づいたビビは、潜入捜査としてミス・ウエンズデーになって情報を探っていた、

 そして見つけたのは、衝撃の事実。

 

「バロックワークスの本当の目的は理想国家ではなく、アラバスタ王国の乗っ取り! 革命軍の動きも、あいつらの仕業だと私は思ってる」

「おい、黒幕って誰なんだ?」

「い、言えないわ! 相手が王下七武海の一人”クロコダイル”だなんて知ったら、あなたたちだって無事では済まない…………」

「…………え? なんて?」

 

 あんぐりと口を開けていたナミの隣で、休んで体力が回復したウタが何故かポーズを取っていた。

 そこにいたのは、どこからどうみてもバロックワークスの仲間であろうラッコとハゲタカ。

 

「見てみて、ナミ! このラッコさん、すごい絵が上手なの! ほら、似顔絵もこんなにそっくりで——」

「あんたそれ、あいつらの仲間のラッコじゃないの!?!?」

 

 牙を剥き出しにして怒鳴るナミにラッコはナミたちの似顔絵も見せてくれた。

 

「わっ! うまーい!」

「でしょー!」

「これで逃げ場がなくなったわけね!?!?!?」

 

 泣きながら叫んだナミは、その場に座り込んでシクシクと泣き始める。

 ごめんなさい……とビビが申し訳なさそうにナミの背中をさすっていると「背後からご安心ください!」という声が響く。

 

「私に策があります!」

 

 やってきたのは、おそらくビビの服装を真似ただろうイガラムだった。

 人形を何体か抱えているところを見ると、囮役でも買ってくれるのだろうか。

 

「ちなみに。参考までに言っておきますが、クロコダイルが王下七武海に入る前の懸賞金は八千万ベリーです」

「アーロンの四倍じゃない!」

「私とルフィ足したら同じだね! 力を合わせれば勝てる!」

「そういう問題じゃないでしょうが! 懸賞金を足して多い方が勝つゲームじゃないのよ!」

「それで、ビビ様をアラバスタへ送り届けていただくという話は……」

「ん? いいぞ! ついでだし!」

「勝手に話を進めるんじゃないわよ!」

「それでは、ビビ様。アラバスタへの永久指針(エターナルポース)を私に」

 

 聞き慣れない単語が出てきて、ナミはそれの単語を聞き返した。

 永久指針(エターナルポース)

 一度記録した島の磁気を永久に記録し、常にその島の方角へ向き続ける指針。

 イガラムはそれをビビから受け取ると、船へと歩き出す。

 

「私はあなたになりすまし、アラバスタへの直進航路を進みます。あなたたちはビビ様を連れて通常の航路にてアラバスタを目指してください」

「分かったわ、イガラム」

「どうかご無事で……。祖国で会いましょう」

 

 そう言って、イガラムは船に乗り、アラバスタへの進路を進み始めた。

 それを見送った一味たちは、自分たちも船を出すために振り返る。

 直後。

 

 ——ドゴォォン!!

 

 爆発の音が聞こえて。

 

「……イガラム?」

 

 振り返れば、そこには炎しかなかった。

 森のように燃え盛る炎に、イガラムの生死さえ確認できない。否、確認する必要すらない。

 追手はもう、すぐ目の前にまで来ていた。

 

「立派だった!」

 

 一番初めにルフィが船へと進み始める。

 

「ナミ、ログは!」

「もう溜まってるわ!」

「行くぞ、ウタも早くしろ!」

 

 ウタは炎の森を眺める。

 許せない、と単純に思った。

 ふつふつと怒りが湧いてきて、バロックワークスのやつらをぶん殴ってやろうと拳を握りしめて、

 

「…………」

 

 唇を噛み締めて炎を見つめるビビを見て、ウタはその拳を解いた。

 ここで怒りに我を忘れるのは、彼らにあまりにも失礼だ。

 

「行こう、ビビ」

 

 ウタはビビを抱きしめ、言う。

 

「私たちが、クロコダイルとかいうやつ、ぶっ倒してあげるから」

 

 すぐに麦わらの一味は走り出し、全員が船に乗った瞬間に出航する。

 ビビにはナミほどではないが航海術を持っているため、二人の指示によって最速でウイスキーピークを抜けていく。

 ようやく落ち着いた船内で、ルフィが後ろを振り返る。

 

「なあ、追手って何人いるんだ?」

「分からないけど、バロックワークスは二千人いて、ウイスキーピークのような島が近くに幾つかあるらしいけど……」

「じゃあ、何百人も来てたりして!」

 

 ナミが冗談混じりに笑ってそう言うと、聞き覚えのない声が返事をした。

 

「残念。正解は千人よ」

 

 即座にその場にいた全員が臨戦体制を取った。

 船で優雅に座っているのは、露出の高い黒い服と革製のハットを被った女性だった。

 その姿を見て、ビビが冷や汗をかく。

 

「なんであなたがこんなところに! ミス・オールサンデー!」

 

 ビビが口にしたのは、バロックワークス副社長であり、社長であるMr.0 クロコダイルの相方を務める者の名前。

 ほくそ笑むミス・オールサンデーは、ビビから視線をウタヘと逸らす。

 

「あなたが、“歌姫のウタ”ね」

「だったらなに?」

「ウイスキーピークからの報告を見た瞬間、社長(ボス)の目の色が変わったのよ。王女だけでなく、あなたもここに連れてこいってね」

「どうして、私を」

「興味があるのよ。あなたのその能力」

 

 ミス・オールサンデーは穏やかな顔のまま、予想だにしない言葉を呟いた。

 

 

 

「あなた、知っているんじゃないの? 古代兵器“ヴィーナス”の在処を」

 

 

 

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