麦わらの一味「歌姫のウタ」   作:さとね

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幕間「晴れ男」

 山を登りに行ったルフィたちを待つビビとウソップは、寒さに凍えながらも山を見つめて皆の無事を祈っていた。

 だが、そんな中、黒い毛皮のコートを着た男たちが村へと入ってくる。

 

「動くな! おれ達は国王ワポルの家来だ! 命令に従わない者の命はないと思え!」

 

 武装した彼らによって、村は一気に包囲される。

 ドルトンも村人に銃口が向けられている現状では、身動きをすることができない。

 タイミングが悪く、ゾロもこの場にはいない。

 これだけの大人数では、ビビとウソップだけでは対処がしきれない。

 

「くそ、どうすれば……!」

 

 唇を噛みしめるドルトンと、何か手はないかと画策するビビとウソップ。

 皆が次の一手を決められずにいる中、ビビがあることに気づく。

 

 雪が、止んでいた。

 

 ほぼ毎日、雪が降り続けると言われている冬島、ドラム王国は、今日も極寒の雪の日だった。

 薄い灰色の雲は依然として空を覆っているが、それでも雪が降っていない。

 そんな違和感に、ビビが気づいた直後だった。

 

「――火拳!!」

 

 ワポルの家来たちが、巨大な炎に飲み込まれた。

 すさまじい勢いで現れた炎は、たちまちに消えて空気に溶けていく。

 その炎の発生源に視線を移すと、そこにはロングコートを羽織りオレンジのハットをかぶった青年が立っていた。

 その体にはなぜか陽炎のように火が灯っているようにも見える。

 ゴシゴシと目を擦ってみても、その光景に変化はない。

 

「取り込み中のところ、失礼。なにやら困っているようだったので、ちょっかいを出させてもらった」

 

 それだけ言った炎の青年は、キョロキョロと周りを見ながら、

 

「すまない。人探しをしているんだが――」

「総員、あのバカを撃ち殺せェ! 村人に当たっても構わん!」

「おいおい。カタギを巻き込んでもいいってのは感心しねえな」

 

 青年は銃を構えたワポルの家来たちの元へ、ゆっくりと手を広げて歩いていく。

 

「的は大きい方がいいだろ。ちゃんと狙えよ」

「舐めやがって……ッ!」

 

 躊躇いなく、青年に向かって銃が乱射される。ウソップは慌ててビビを倒して覆いかぶさり、流れ弾が当たらぬように頭を伏せるが。

 

「……どういう、ことだ」

「安心しな。ちゃんと当たってるぜ。残念ながら、全部溶けちまってるから返却はできねえけどな」

 

 全ての弾丸を体で受けたはずの青年には、傷一つついていなかった。

 その異常な現象にワポルの家来たちは恐怖を覚え、一目散に逃げて行った。

 シン、と静まり返った空間で、青年は思い出したように声を上げる。

 

「そうだ! あいつを探してるんだった!」

 

 青年は偶然にも、ビビとウソップに向かって問いかける。

 

「この国に黒ひげと名乗る男が来たはずだ。そいつはどこにいる?」

「……黒ひげ?」

 

 ビビはすぐに、その名前がこのドラム王国を襲い、ワポルが逃げ出したことでこの悲惨な現状を作り出した張本人だと思い出した。

 

「いえ、その人はもう、この国を出たと聞いています」

「そうか……じゃあ、麦わら帽子を被った海賊と、赤と白の髪をした女の海賊を見なかったか」

「……え?」

 

 ビビは返答に迷った。

 麦わら帽子、という時点で、彼が探しているのはルフィで間違いないだろう。しかし、彼が敵か味方かがわからない以上、安易にあの山の上にいると答えることはできないと察したのだ。

 それにウソップも気づいたのか、勇敢にもあれだけの実力を見せた青年に向かって距離を詰める。

 

「その麦わら帽子の海賊ってのは、おれの船の船長だ。何かするつもりってんなら、おれが相手するぞ……!」

 

 鬼気迫るウソップの迫力を前に、青年は一切動じずに笑い出した。

 

「プハハハ! 悪い悪い! それじゃあ警戒するよな! 説明もなしに失礼した!」

 

 青年は軽く頭を下げて、

 

「弟がお世話になってます」

「…………へ?」

「いやぁ、ルフィとウタはいい仲間を持ったな! 兄として、嬉しい限りだ」

「もしかして……ルフィとウタが言ってた、二人の兄ちゃんのもう一人って……!」

「おう。せっかく二人の仲間に会えたんだ。自己紹介もしておかないとな」

 

 青年は帽子を取り、爽やかな笑顔を浮かべた。

 

「おれはエース。ルフィとウタの兄貴だ。よろしくな」

 

 エースはそう言って、体からメラメラと炎を燃やしていた。

 





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