今までで一番面白くなる予定です。
感想とかお気に入りに評価、本当にありがたいです。
この先もよろしくお願いします。
ドラム王国を出てから数日が経過し、アラバスタは目と鼻の先だった。
ウタがリトルガーデンで千人規模のバロックワークスを追い返したこともあり、非常に穏やかに麦わらの一味はアラバスタへと上陸した。
「ビビー! みてみてー!」
辿り着いたアラバスタの港町、ナノハナに上陸したウタは、地面に足をつけた瞬間に楽しそうにステップをして、
「天使の歌姫、ウタちゃん! Withカルーっ!」
「クエーー!」
美しくポーズをとったウタの背中からカルーの翼が広がり、正面からはまるで天使のように見える……とのことだった。
ビビは楽しそうに笑って、
「ふふふっ! カルーったら、いつの間にウタさんと仲良くなったの?」
「クエっ!」
動物の感情や気持ちを『聞く』ことができるので、カルーと仲良くなるのは一瞬だった。
だが、浮かれているウタへナミが釘を刺す。
「あんたとルフィは手配書が出回ってるんだから、気をつけなさいよ。大きな国に来た今回は特に!」
「はーい! でもね、カルーって王国最速の超カルガモ部隊の隊長なんだって! ほかの仲間たちにも会いたいなぁ」
「クエっクエっ!」
バサバサと翼を動かすカルーも、早く仲間に会いたいようだった。
「そうだ。カル―には頼みたいことが……」
「あああーーーーっ!!!??」
ビビが何かを話そうとしたところで、ナミが叫び声をあげた。
どうしたものかとナミを見ると、頭を抱えながら周りをキョロキョロと見まわし、
「ルフィがいないの! あいつ、勝手にどっか行っちゃった!」
「あちゃー! 多分、ご飯屋さんに行ったね……」
「あのバカ……! あいつも指名手配されてるのに! 海軍に見つかったらどうなることやら……」
「では私、探してきます!」
ビシッと敬礼をしたウタは、耳を澄ませてルフィの居場所を探す。
数秒すると、ウタの髪の毛がピクンっと跳ねた。
「あっちから、いい匂いがする……!」
「普通にご飯を食べに行こうとしてるだけじゃない!」
「どっちにしろ、物資の調達するんでしょー? 私、ルフィとご飯食べてくるねー!」
「……まったく! 気をつけなさいよ!」
「はーい!」
鼻唄を歌いながら、ウタはステップでルフィの元へと進んでいく。
いい匂いがする場所で、さらにルフィの気配を感じるところへ向かって行く。
その途中で、ウタはナノハナの街並みを眺める。
砂の国ながら、海に隣接するナノハナは非常に活気があり、人が並んでいる露店などもちらほら見かける。
家々は雨があまり降らないからか、箱のような四角形のものが多い。その中には、灯台や鐘を鳴らすための細長い建物が散在している。
「素敵な町。本当に、ここで反乱が起きてるんだ」
ビビから聞いた話では、反乱軍の拠点はここから離れたユバという町らしく、ここは比較的治安が良いところなのだそうだ。
「これくらい、みんなが笑ってくれたらいいんだけど……あ! あった!」
見かけたのは『spice bean』という看板が掲げられた飲食店。人気の店なのか、入り口には多くの人が出入りしていた。
並ぶとなると少し手間だが、先に店にいるだろうルフィの席の隣に座ってしまえば問題ないだろう。
「こんにちはー!」
お店に入ると、ひと際に目を引く麦わら帽子がいた。
もしゃもしゃと食べ物を山ほど食べるその後ろ姿は、間違いなくルフィだ。
どうやら、ルフィは町の人と大食い勝負をしているらしく、それを見物している人たちが増えてきて人の出入りが多かったらしい。
「おっさん! ここのメシ、すげぇうめえな!」
「あ、ありがとう……」
あまりに大量のご飯をニコニコと胃袋に流し込んでいるルフィの体は風船のように膨らんでいるため、あまりに変わったルフィの体を見て、店主は苦笑いしかできなかったようだ。
「やっほ! どう、ルフィ!」
「お、ウタか! お前も食うかー?」
「うん! 食べる!」
ウタは隣に座って、あーんと口を開ける。
頬杖をついてご飯を待っているウタの口に、なんと一口で食べきれないサイズの肉が放り込まれた。
「美味しいけど、美味しいけど! ルフィ!」
「なんだ? 肉が一番うめえぞ?」
「もう! ありがとう、すごく美味しいよ!」
「だろ! にしし!」
理想には程遠いとウタがため息をついていると、いつの間にか入り口が騒がしくなってきている。
ルフィに意識を向けすぎて気づくのに遅れたが、どうやら聞こえた言葉が本当ならば、穏やかではないようだ。
「……ルフィ。海軍が来てるかも」
「なに!? 海軍!?」
ナミが言っていた通りだ。
ルフィもウタも、いまや世界中に顔写真が広がっている指名手配犯。変装も何もせずにここまで楽しく食事をしていれば、常駐の海軍に話が伝わるのもすぐだろう。
「ルフィ! 早くご飯を食べていくよ!」
「おう! でも、これもうめえんだ! 食ってみてくれ!」
「え、ちょっと……あーん! ……美味しい!」
「だろー!?」
「――よくもぬけぬけと大衆の面前でメシが食べられるもんだな」
聞こえてきたのは、低い男の声。
振り返れば、そこにいたのは飲食店に葉巻を咥えながら入ってきた海軍の男。
「えっと……こんにちは?」
「大人しく捕まれ。それでおれの仕事はおしまいだ」
「それはちょっと難しいかも! ルフィ、行くよ!」
「わ、分かった!」
テーブルに並んでいた食事を口に詰め込むだけ詰め込んだルフィを引っ張って、ウタは店の外に出る。
当然、海軍の男もルフィたちを逃がすつもりはないようで、
「二度もおれが逃がすと思うなよ、麦わらの一味!」
海軍の男は、体を煙にしてルフィとウタを掴もうと腕を伸ばした。
エースと同じ
最初に捕まったのは、食べ過ぎで身動きが遅くなっているルフィだった。
「とらえたぞ、麦わら……!」
体が煙そのもののため、スモーカーの意志で掴むことはできるが、ルフィがもがいたところで煙を掴むことができずに、ばたばたと体を動かすことしかできない。
そんなルフィを見て、ウタはスモーカーを睨みつけ、
「ねえ、ルフィから離れてよ」
煙となったスモーカーの腕を、ウタは
「な……ッ!? この力は……!」
ウタはスモーカーを掴んだ手とは反対の手を頭上に掲げ、金色に輝く斧を取り出した。
そして、それをスモーカーの腕に勢いよく振り下ろした。
「――クソっ!」
万が一、ウタの斧がスモーカーの煙となった腕を攻撃できる場合、油断をしていたでは済まされないケガを負うことになる。
スモーカーは悔しそうに煙を解除し、ルフィを手放した。
ハッタリが上手くいった。攻撃力皆無の斧を投げ捨てると、ウタはすぐにルフィの手を取る。
「逃げるよ、ルフィ!」
「おう!」
スモーカーに捕まりながらも口の中にため込んでいた料理を飲み込んでいたルフィは、元気よく返事をしてウタとともに走り出す。
店をでてすぐ、買い出しを終えて荷物を背負う一味たちと合流した。
「みんな、ごめん! 海軍に見つかっちゃった!」
「言わんこっちゃない! さっさと荷物積んで船を出すわよ!」
うんざりとしながら、ナミを先頭にして一味は船へと走り出す。
と、そんな中で、ビビが足を止める。
「そうだ、カルー! あなたにお願いがあるの!」
ビビは買ってきた水の入った樽をカルーの首にかけ、懐に紙を忍ばせる。
「これには、私とイガラムで探ったクロコダイルの情報が書かれているの。これをお父様に渡して、みんなにクロコダイルの本当の顔を教えて!」
「クエッ!!」
「それじゃあ、頼んだわよ、カルー!」
「クエーーーー!!」
走り出したカルーを見送るビビの横で、ウタも手を振る。
「カルー! お友達、絶対に会わせてねー!」
「クエーーーーっ!」
ぱたぱたと翼を振って返事をするカルーの背中を見ながら、ウタは後ろを振り返った。
「このままじゃ、海軍に追いつかれちゃう!」
ウタは大きく息を吸う。
ここで眠らせるほどの歌を歌うのは危険だ。この先はまだまだ長い。自分が動けなくなった直後にバロックワークスの敵と出くわしてしまったら、見る影もない。
ゆえに、ウタは鼻唄を歌いながら、指揮をするように指先を立てて大きく腕を横に振った。
「
目の前に、巨大な鍵盤のような外観をした壁が現れる。
相変わらず耐久性はほとんどないだろうが、視界を妨げることもできたし、初めて見た海軍たちは警戒して距離を詰めてこない。
「今のうちに、みんな!」
麦わらの一味は時間稼ぎをしている間にメリー号へと乗り込み、港町ナノハナから反乱軍の拠点、ユバへと向かう。
そのためには海岸沿いから西へと進んで緑の町エルマルにて船を降り、そこから歩いて半日ほど、北上する必要がある。
ナノハナでは、そのための物資を補充していたのだ。
どうにか、ルフィたちは緑の町エルマルに着いたのだが、海軍が迫っていることもあり、すぐに麦わらの一味は砂漠を歩き始める。
「ねえ、ビビ。ここって、緑の町なんだよね?」
「ええ。……かつては、緑いっぱいの活気ある町だったわ」
そう言うビビは、どこか遠くを見つめていた。
エルマルには誰も住んではおらず、緑なんて言葉は想像すらできないほど一面が砂で埋まってしまっていた。
幼いころの記憶を思い出しているのだろうか。わずかに唇を嚙んでからビビが話始めようとしたところで、ルフィの声が聞こえた。
「おい、大変だーっ!」
走ってやってきたルフィは、離れたところで倒れている白い鳥を指さして、
「大けがしている鳥がいっぱいいるんだ! チョッパー、治してやってくれよ!」
「う、うん!」
チョッパーが鳥の元へ走ろうとしているが、ウタはなぜか心配そうにする様子はない。
むしろ、皆が見ている方向とは逆へ視線を向ける。
「……ふうん」
ウタが視線を向けると、みんなの荷物を盗もうとしている鳥の仲間がいた。どうやら、けがをしたふりをして油断を誘い、盗みを働く鳥たちなのだろう。
その
「悪いことしちゃ、ダメだよ?」
「――――!?!?!?!?」
ウタから出た殺気は、チョッパーが治療している鳥たちにも伝わったようで、震えながらこっそりと担いでいた荷物を持ったままウタの隣に並んだ。
「ま、待って! その鳥はワルサギって言うの! 旅人をだまして荷物を盗む鳥なんだけど……」
「大丈夫だよ、ビビ!」
ウタはニコニコと笑いながら、隣に立つワルサギの頭をなでる。
「この子たち、ケガを治してくれたお礼に、しばらく荷物を持ってくれるんだって! ……ね?」
「――(コクコクコクコクコク)!!!!!!」
「いい子たち! これからよろしくねー!」
荷物持ちを快諾してくれたワルサギたちとともに、麦わらの一味はユバへと進む。
熱く苦しい砂漠の道を、ウタは楽しそうに歌いながら進んでいく。
いつの間にか、ワルサギたちは一列になってウタの歌に体を揺らしながら進んでいた。味方も敵もごちゃまぜにして進み続けるウタは、ビシッと前を指さして言う。
「さあ、行こう! 打倒、クロコダイル!」
「ええ! 早く、反乱軍を止めましょう!」
ウタとビビは、砂漠の過酷な環境に負けることなく、ユバへの道を進み続けていった。