麦わらの一味「歌姫のウタ」   作:さとね

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第三十九話「夢のつづき」

 

 

 それは一応は『会食』という名目だった。

 場所は大食堂。シワ一つない純白のクロスがかかった縦長のテーブルの上で、本来ならば厳かでありながらも笑顔に満ちた国にとっての要人をもてなすための場所だ。

 だが、その場に海賊が座るというのなら、話は別。

 

「んもんもんばんば!!」

「はいはい。テラコッタさん、ルフィが美味しいご飯ありがとうだって!」

 

 食事を詰め込みすぎて口が膨らみ、聞き取れる言葉など一切発しないルフィの声を、ウタが代弁する。

 だが、そんなウタも行儀いいわけでもなく。

 

「おいしー! お肉、サイコー!」

 

 椅子の上ではしゃぎながら、ウタはもぐもぐとさまざまな料理に手をつけていく。

 さらに、他の一味のメンバーも好き勝手に食事をしているのだ。

 

「おい、ルフィ! いまおれの肉取ろうとしやがったな!」

「早く食わねえとなくなっちまう……って、ウソップの代わりにおれの持っていくんじゃねえ、ルフィ! 酒しか残ってねえ!」

「量ならあるから、ゆっくり食べてね」

「あ、ウタ! この料理美味しいわよ。はい」

「んっ、おいしー! ありがと、ナミ!」

「おいおい、チョッパー。ルフィみたいに詰め込むと……」

「………………!!」

 

 会食なんて言葉をどこかへ投げ捨てた麦わらの一味たちを見て、それを見守るアラバスタの兵士たちが呆然としていた。

 

「気品のかけらもない……! 大食堂でも会食はもっと静かであるハズ……」

 

 そもそも、この場に海賊がいるというのがおかしいのだ。

 国を救ってくれた英雄であるから、コブラ王の命令で彼らを秘密に匿い、こうして会食という体で食事を振る舞っている。

 本来ならば、こうしてもてなしているだけでも重罪なのだ。

 しかし、コブラ王は戸惑う兵士たちにたった一言、声をかけたのだ「身分など関係あるものか。お前たちは、命を救ってもらった者にありがとうの一言も言わずに追い払うつもりか」と。

 だから、兵士たちは見守る。

 

「チョッパーが喉を詰まらせたぞ! 水だ水!」

「大丈夫だよ、サンジ! チョッパー、おっきくなって!」

「……! うごぉあああ! 飲み込んだァ!」

「そんな気合い入れて飯の飲みこむ奴がいるかっての。おい、酒をもっともらえるかー?」

 

 見守っている。

 

「ボォォオオ!?」

「うしし! ナイス、ウソップ!」

「おれたちの特製ハバネロタバスコ星、決まったぜ!」

「やーい! 私のお肉まで食べたのが悪いんだからね!」

「ずりぃぞ、お前ら!」

「やーい! 負け惜しみィ〜!」

「うがぁあ!」

「あ!!! また私のお肉を!」

「ほらほら、ムキにならないの、ウタ。私のあげるから」

「おいしー! ビビも食べなよ、これ!」

「ええ、いただくわ。テラコッタの料理はいつだって一流だもの。美味しいに決まってるのよ」

 

 ビビも、今までないほどに楽しそうに笑っていて。

 ほんの少し、時間が経つ頃には。

 

「みんなー! 盛り上がってるー!?」

「おおおおお〜〜〜!!」

 

 こんがり焼けた骨つき肉をマイクにしたウタがテーブルの上に立ち、ライブを始めていた。

 もうそこに、テーブルに立つことを気にする者など一人もいない。

 ルフィとウソップとチョッパーもテーブルに上がり、好き勝手に踊り始め、兵士たちも手を叩いて盛り上がる。

 どんな食事の場でも、彼らにはすべて宴になってしまうのだ。

 そして、宴が終わって。

 

「宮殿自慢の大浴場よ。本来は雨季にしか使わないんだけど、昨日の雨で使えるようになったから、特別よ」

「すごーい! ゴージャスだね!」

 

 女湯サイドで、ウタとナミとビビがのんびりと入浴を楽しんでいた。

 

「気持ちいいね! これだけ広いお風呂がある船とかあったら楽しそう!」

「あるわよ、きっと。海は広いもの」

「そうね。巨人も恐竜もいて、雪国には桜が咲いて。しばらくは少しくらいじゃ驚きもしないわ」

「楽しそうだね! まだまだ冒険したりない!」

「ふふふ、そうね」

 

 三人は円を作るように背中を洗い合いながら話していた。

 和気あいあいと話している中で、いち早くそれに気づいたのはウタだった。

 

「……まったく。子どもなんだから」

 

 男湯側から、壁を越えてこちらを覗く影がいくつかあった。

 それを見て、ビビは慌てて身体を隠すが、

 

「男なら、堂々と胸を張って覗きなよ!」

 

 タオルなどで隠すことすらしない、裸体で仁王立ちのウタから放たれた一言。

 その言葉に衝撃を受けた男たちは、敗北を感じたのか何やら叫びながら落ちていった。

 

「ち、ちょっとウタ! 少しくらいは恥じらいを……」

「私は、いつか来るその日のために身体も磨いてきたつもりだよ! 恥ずかしがっていたら、海賊王の女になんてなれないじゃない!」

「あははは! でもちょっと顔が赤いわよ、ウタ」

「それは、それ! これは、これ!」

「ルフィに見られるのはまだ早かったみたいね」

「……もう!」

 

 拗ねたウタはぶくぶくと泡を立てながら温泉に身をつけていく。

 ピロピロと動くウタの髪の毛を見て、ビビはクスッと笑った。

 

「ウタって、攻撃意欲はあるのに防御力低いところあるよね」

「あるある。この前だってルフィが寝てるときに……」

「だぁぁぁぁああああ!!!! それは、それだけはダメ、ナミ!!!」

「はいはい。秘密だったわね」

 

 ナミがウタの頭をポンポンと叩くと、ふぅと大きく息を吐いて、ナミはビビを見る。

 

「私たちね。今夜にでもここを出ようかと思ってるの」

「え、ほんと!?」

「うん。一番怪我が酷かったルフィもあれだけ元気になったし、あなたも無事にアラバスタへ届けられた。目的を達成した今、海軍がいるだろうこの島にずっといれば、あなたたちにも迷惑がかかる」

「……そうね」

 

 ほんの少し視線を落としたビビだったが、すぐに笑顔で話を始める。

 それからもしばらくも他愛のない話を続けて、夜は更けていく……。

 

 

 

 

 

 

「ルフィ! 今夜、アラバスタを出るよ!」

「よし! もう一回料理食ったら出よう!」

「すぐに出るのよ、アホ!」

 

 風呂から上がり、一味は荷物をまとめていた。

 アラバスタからの物資も充分に預かり、あとはメリー号へと乗り込んで、出航するのみ。

 船を置いた場所はアルバーナからかなり離れた位置にあるため、急ぐのならば油を売っている時間はない。

 

 ——と。

 あと少しで王宮を出るというところで、ルフィたちの部屋に電伝虫を持った兵士がやってきた。

 プルルルル、と鳴る電話相手の名前を、兵士は口にする。

 

「電話の相手はミス・オールサンデーと名乗っておりまして……」

「な、なんですって!?」

 

 真っ先に受話器を取ったのはビビだった。

 不安そうな表情を浮かべながらも、それに悟られないように精一杯に強い口調で話す。

 

「何のようかしら。バロックワークス副社長様」

『あら、まだそうやって呼んでくれるのね』

 

 聞こえてきた穏やかな声は、間違いなくあのニコ・ロビンだった。

 

『単刀直入に言うわ。私もあなたたちの船に乗せてほしい』

「はァ〜〜!?!?」

 

 一味たちの声が一斉に重なる。

 真っ先に反対をしたのはナミだった。

 

「ダメよ! あいつ、敵なんでしょ!」

「そ、そうだ! クロコダイルの仲間なんて、何をするか分からねえ!」

『そうなるわよね。ただ、私も取引にタダで臨むような人間ではないわ』

 

 一呼吸置いて、ニコ・ロビンは続ける。

 

『あなたたちの船に乗って、既にサンドラ川上流まで上がって来ているわ。ここまでアルバーナから、一時間程度しかかからないはずよ』

「メリー号を盗んだってのか!?」

『逆よ。もう海軍の船が島の至る所にやってきているわ。表立って探している様子はないけれど、見つかれば即アウト。それを助けてあげたの』

「ふーん。なるほどね。詰まるところ、あんたも後ろ盾がいなくなって海軍に捕まるから、私たちに助けてもらおうって腹ね」

『ええ、そうよ』

 

 ニコ・ロビンが否定することはなかった。

 素直に、自分の損得をひけらかす。

 一味は皆、乗り気ではないようだった。しかし、たった一人だけ。

 

「おう、いいぞ」

 

 ルフィだけは、サラッと返事をしてみせた。

 全員が何を言っているんだルフィに詰め寄るが、ルフィは電伝虫を見つめて、

 

「あのとき助けてくれたの、お前だろ?」

『さあ、なんのことかしら』

「え……! もしかして、あの時の手ってこいつの力なのか!?」

 

 声を上げたチョッパーが、事情を説明し始めた。

 トットムジカを止めたあと、傷だらけのルフィはペルの背中に乗ってチョッパーと王宮へと向かった。

 しかし、王宮にはルフィはおらず、やって来たのはウタとビビよりも後。

 その理由はクロコダイルの部下によって撃ち落とされたからだと、言われていたが。

 

「あの時、ペルの身体から変な手が出てきて、銃からペルを守ってくれたんだ。でも、そのまま手を羽に絡ませたせいで下に落ちちまって……」

『クロコダイルは既に王宮に陣取っていたの。傷だらけのまま王宮へ着けば、間違いなくトドメを刺される。だから近くに落ちてもらったのよ』

「ああ。そのおかげで、クロコダイルたちに見つからずにルフィの手当ができたし、おれもすぐにウタたちのところへ向かえたんだ」

 

 そう。

 既にルフィたちは、ニコ・ロビンに借りがあったのだ。

 さらに、ルフィは「こいつ、悪い奴じゃねえぞ」と言っている以上、一味たちはその意見を汲むしかない。

 

「まあ、ルフィがいいならいっか!」

「うっし! じゃあ船、いくか!」

 

 すぐに切り替えたウタは、ルフィの後に続いて部屋から出ようと動き始める。

 

「それじゃあ、私たちの船をよろしくね! ……えっと」

『ロビン。ニコ・ロビンよ。よろしくね、歌姫さん』

 

 そして。

 一味たちの出立の準備は整い、外へと向かっていく。

 そんな中、ビビはウタに声をかけた。

 

「ねえ、ウタ」

「ん? どうしたの?」

 

 ビビの真剣な表情に、ウタは茶化すことなく耳を澄ます。

 

「少しだけ、話があるの」

 

 夜は、さらに更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 アラバスタ王国首都、アルバーナから西へ数十キロ。

 島の中央に流れるサンドラ川を下るメリー号には、()()()()()()()()()()()()()()

 

「すごい綺麗だね、ビビ!」

「ええ。今日は『立志式』ですもの」

 

 場所はアルバーナ王宮。

 ドレスを着付けているビビを見て、ウタは笑顔で手を叩いていた。

 

「本当は、二年前にやる予定だったのよ。でも、そのときにはバロックワークスにいたから」

「そっか。みんなが待ってたんだね」

「ええ」

 

 コクリと頷いたビビは、窓から王宮前の広場を見渡す。

 そこはもう人で溢れかえっており、王女ビビの帰還を喜ぶ人々がその姿を一目見ようと押しかけてきていた。

 着付けが終わり、ビビとウタは二人だけで部屋に座り、コブラ王とイガラムを待つ。

 

「おお……! 驚いた!」

「ええ。王妃様そっくりでございますね」

 

 娘の晴れ舞台を喜ぶコブラ王へ、ビビは言う。

 

()()()

 

 王女として。

 ビビは話す。

 

「大切な話があるの」

 

 そう言って、ビビはウタと目を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スピーチは予定の午前十時から三〇分遅れの十時半に始まり、()()()()()()()()()()()()()()()

 王宮のテラスに立つビビが真っ直ぐに立ったまま、スピーカーから大きな声が流れ始める。

 

「少しだけ、冒険をしました。

 

 それは暗い海を渡る絶望を探す旅でした。

 

 国を離れて見る海はとても大きく、そこにあるのは信じ難く力強い島々。

 

 見たことのない生物……夢と違わぬ風景。

 

 誰かを救うために海に出たつもりが、救われていたのは私でした。

 

 そして、そんな冒険の中で」

 

 そんな切り出しから、ビビはこう紡ぐ。

 

「夢と仲間が、できました」

 

 そうして、ビビは語る。

 

「暗い暗い航海の中で、一つの歌声を聴きました。

 

 それは何よりも力強く、私に問いかけてきました。『お前には光が見えていないだけなのだ』と。

 

 闇の中でも懸命に進路を失わぬように進むその歌声は、踊るように大きな波を越えていきます。

 

 どれだけの逆風だとしても、その歌声は途絶えることなく、私に言います。『そこには夢があるのだ』と。

 

 歴史はやがてこれを幻というけれど、私にはそれだけが真実。

 

 そして……」

 

 

 一呼吸置いて、ビビは言う。

 

「私の夢は、歌声の進む道と重なりました……!」

 

 ビビの声がわずかに揺れる。

 その場に立っているはずのビビの声が、まるで振動をしているかのように震えていた。

 

「私はこの立志式で大人だと認められるけれど、それは本当の意味で国を背負うに足る人間になれたという証明にはなりません。

 

 海が広いことを知ったのなら、その果てに何があるのかを見届けて始めて、私は一人前になれるのだと思います。

 

 私の夢は、世界の広さを知り、この目で見ることです。仲間たちと共に進み、共に笑い、共に苦しみ、そうしてたどり着いた夢にこそ、私の『果て』はあります」

 

 ざわざわと、国民たちが話し始める。

 ビビは一体何の話をしているのかと、不思議そうに首を傾げる。

 

「私はこの国を、愛しています……!」

 

 ビビの声が、震えている。

 泣いているのではないかと国民たちは心配そうにビビを見るが、彼らが見つめる先のビビは無表情で立ったまま。

 

「だからどうか、皆さん。私に時間をください!

 

 世界を見て、国を学び、人を知る時間をください!

 

 いつかこの国を背負うために、夢を叶える時間をください!

 

 必ず夢を叶えて戻ってきます!

 

 そして、その果てで……!」

 

 場所はアルバーナ東の海岸。

 周囲を巡回していた海軍の船を撃墜しながら海岸に船を寄せるメリー号の、目と鼻の先。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私が生まれ、愛したこの国を。アラバスタを世界で一番笑顔で満ちた場所にします!」

 

 アラバスタ全土に繋がる電伝虫を片手に、ビビは背中から生やした翼で空を飛ぶ。

 そして、その背中にウタも飛び乗る。

 爽やかな風が、二人を迎え入れてくれる。

 ビビは空中で身体を捻り、自分の愛している国を見つめ、叫ぶ。

 

「それが私の()()()()だからっ!」

 

 淡く脆い夢を見た。

 だが、それが叶うものなのだと、背中を押してくれる仲間がいた。

 

「だから、行ってきます!」

 

 そして。

 

()()()!」

 

 自分で空を飛ぶ術を身につけたビビを、ここまで二人を乗せて走ってきたカルーは見つめる。

 

「クエ〜〜!!」

 

 ビビは迷っていた。

 この海に出るという決断は、自分のわがままのようなものだ。

 それにカルーを巻き込んでいいのだろうか。

 

「ビビ!」

 

 ビビの背中に乗るウタが叫ぶ。

 

「あなたはこれから、何になるの?」

「え……?」

 

 その言葉の意味が理解できなかったビビへ、ウタは言う。

 

()()なら、わがままでいいんだよ!」

「——っ!!」

 

 ずっと、ビビは王女だったのだ。

 自分の感情を抑え、国全体のための選択をしてきた貴族なのだ。

 でも、もうその必要はない。

 だって彼女は、もう。

 

「来なさい、カルー! 私と一緒に、夢の果てまで!」

 

 夢を追うために海に出た、海賊なのだから。

 

「クエ〜〜!!!!」

 

 カルーはめいっぱいの助走をつけて海へ飛び、ビビの胸に飛び込んだ。

 少しバランスを崩しながらも、ビビはどうにかウタとカルーを背負ってメリー号へと進む。

 

「よし! ここからは私の出番っ!」

 

 ウタはビビからアラバスタの海岸まで響く放送用電伝虫を受け取り、受話器を口元に当てた。

 

「みんなー! ビビの冒険の門出を祝うための歌を、歌わせてもらうねー!」

 

 そうしてウタは、歌う。

 彼女たちの旅立ちを、その続きを進むための歌を。

 

 

 

 信じられる? 信じられる?

 あの星あかりを 海の広さを

 

 信じられる? 信じられるかい?

 朝を待つ この羽に吹く

 追い風の 誘う空を

 

 

 

 アラバスタの国民たちは、その目を疑っていた。

 王宮で立つビビの身体が少しずつ()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 だが、その光景に悲鳴を上げる人はいない。むしろ皆は、その美しさに目を奪われていた。

 奇跡を目の当たりにしているのだと、全員が錯覚していた。

 

 

 

 信じてみる 信じてみる

 この路の果てで 手を振る君を

 

 

 

 ビビが目指す夢の果てを、国民全員が信じていた。

 必ずこの国に彼女が戻り、今よりも豊かで笑顔の絶えない国になるのだという確信を、全員が抱いていた。

 誰かからは分からないが、拍手が起こる。

 次いで、歓声が上がる。

 ビビの言葉が、アラバスタの国民全員に同じ夢を見せたのだ。

 そして。

 

 

 信じられる? 信じられる?

 あの星あかりを 海の広さを

 

 

 海軍の軍艦の全てが、沈黙した。

 スピーカーによって拡散された歌声は海軍たちにも届き、彼らの全てをウタワールドへと誘い込んだのだ。

 戦闘の必要がなくなり、皆が笑顔で待つ船へと二人は降りていく。

 ウタとビビは目を合わせて、ハイタッチをした。

 

「ようこそ、ビビ!」

「ええ! みんな、これからもよろしくね!」

 

 無事に船に辿り着いた二人は、安心感からか同時に腰を下ろし、頭をコツンと合わせて身体を預け合う。

 そして、ウタは歌を歌う。

 沈黙した海軍たちへでもなく、ビビの門出を祝う国民たちへでもなく。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 信じられる 信じられる

 夢のつづきで 共に生きよう

 暁の輝く今日に

 

 

 

 歌い終えたウタは、ゆっくりと目をつぶる。

 ビビの分身を活動時間ギリギリまで出したまま、ウタワールドに海軍たちを引き込んだのだ。

 眠りへと、ウタの意識が誘われていく。

 船出の道ができた麦わらの一味は、すぐに船を進める準備を始め、遠くを見渡すルフィが大きく手を広げて、

 

「しゅっこ——」

「しっ! 静かに!」

 

 叫ぼうとしたルフィの口を塞いだのは、ナミだった。

 なにすんだ! という視線でナミを睨みつけるが、ナミは声を出さずにウタとビビを指差す。

 

「…………そっか!」

 

 笑ったルフィは、メリー号の船頭へと登って寝転がった。

 あまりに無防備な麦わらの一味を攻撃するものなど一人もいない。

 

「行くぞ、みんな」

「ええ。出航ね」

 

 海賊とは思えぬほど小さな声。

 それとは対照的に、首都アルバーナでは大きな歓声が上がっていた。

 王女ビビの身体が、光の粒となって消えていったのだ。

 それはさながら、()()()()()()()が旅立ったようにも見える。

 後に『王女ビビの奇跡と冒険』として語り継がれるその光景を、国民たちは目に焼き付ける。

 そして。

 

「見て。すごい楽しそう」

「どんな夢、見てるんだろうな」

 

 ナミとチョッパーが見守るのは、穏やかな寝息を立てて眠るウタとビビ。

 その寝顔は、幸せな夢を見ているのが一目で分かるほど喜びに満ちていた。

 

 共に歌い、共に笑い、共に戦い。

 誰よりも真正面からケンカをして。

 苦しむ姿を救い、救われ。

 隣に立って強大な敵と立ち向かって。

 短くも長い冒険をともにしたこの二人でなければ、辿り着けない結末だったのだと、誰もが思う。

 

 そうして、二人は同じ夢を見て。

 微笑みながら身体を預け合って、穏やかな寝息を立てる。

 

 たとえ、その夢の果ては同じでなくとも。

 彼女たちがいま見ている夢のつづきは、きっと同じなのだろう。

 

 あらためて。

 ネフェルタリ・ビビは新たな仲間の海賊として、麦わらの一味に加わった。

 

 空も海も、どこまでも広がっている。

 この空と海の果てに行き着くまで。

 彼らの冒険はどこまで続いていく。

 




これにて、アラバスタ編もとい、バロックワークス編完結です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
楽しんでいただけたのなら、評価やお気に入り登録をしてもらえるとモチベーションにも繋がります。でもまあ、別にしなくてもいいです。
というわけで、次は空島——「黄金の音色と天使の歌声」編です。
活動報告とかで「こういうシーン」が見たい!などありましたら教えてください。上手く入れられるようにします。
あと、まだまだ先の話ですが、一応アンケートで聞いておきたいことがあるので、よろしくお願いします。
夢のつづきは、まだまだ続きます。
よろしくお願いします。


使用楽曲「世界のつづき」

スリラーバークが終わったあとは……?

  • シャボンディへ!
  • 金獅子のシキが出てくるでしょ!
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