話を作りながらですが、早めに投稿できるように頑張ります。
それでは空島編もとい「黄金の音色の天使の歌声編」スタートです。
よろしくお願いします! 楽しんでねー!
第四十話「その記録指針は天を指す」
空は快晴。
雨粒一つも見当たらない、心地の良い天気。
ウタウタの力によって眠らされ、完全に逃げ切った麦わらの一味は、久しぶりのんびりとした航海をしていた。
そして、ルフィとウタは肩を組んで、
「新しい仲間に、かんぱーいっ!!」
麦わらの一味に加わったビビとカルーを迎えるための宴を、遅れて彼らは始めていた。
だが、浮かれているのは二人だけで、その他のメンバーは笑ってすらいない。
「ねえ、ウタ。それより先に、やることがあるんじゃない」
「ええ。歓迎してくれるのは嬉しいけれど、こればかりは無視していられないわ」
ナミとビビがウタヘ声をかける。
それは当然、ビビ以外にもう一人の女性が船に乗っているためだった。
「あら。麦わらくんと歌姫ちゃんがいいって言ってるんだから、てっきり仲間にいれてくれるものかと」
ニコ・ロビン。
元バロックワークス副社長であり、つい先日までルフィたちの敵だった女だ。
ルフィを助けたという恩があるがゆえに、一味たちは手を出さずにいたが、それもそろそろ限界のようだった。
「おい、お前ら。こんな麗しいレディに向かって、その態度はねえんじゃねえか? ああ、こちら、ダージリンでございます」
「ありがとう、コックさん。優しいのね」
「はいぃ!!♡」
訂正すると、サンジ以外は限界のようだった。
ロビンは椅子に腰掛けて優雅に紅茶を嗜みながら、
「できることなら死にたかったのだけれど、あなたたちがクロコダイルに勝つものだから、死に切れなかった。残念ながらね」
「死にたかった?」
すぐにウタが聞き返した。
「ええ。私は二十年間ずっと、
「うーん、あんまりよく分かんないんだけどさ」
ウタは何気ない声で、こう問いかけた。
「海は広いよ? 全部探してないのに、諦めるの?」
「いえ。生き残ってしまったのだから、出来る限りは探してみるわ。だから、仲間に入れてほしいの」
「あ、そうなんだ! いいよー!」
「「「「おいウタァ!!!!」」」」
一味から一斉にツッコミが入る。
ゾロはウタの油断が我慢ならないようで、
「こいつが組織の仇討ちをしようとしてたらどうするんだ、ウタ。その責任まで背負う覚悟があって、言ってんだろうな」
「うーん。私的にはまったく敵意なんて感じないんだけど。そこまで言うならば仕方ない!」
ウタはパン、と手を叩いてメリー号のクローゼットへ走っていった。
そして、数分後に出てきたウタは、チェックの入ったベレー帽を被り、いつもの白のパーカーを茶色のコートへと変えていた。
帽子のツバを押さえ、ピコピコと髪の毛を動かしたウタは、ニヤリと笑う。
「これより、事情聴取を開始しますっ!」
なぜか、ウタはとてもノリノリだった。
丸テーブルを引っ張り出し、椅子を二つ持ってきて、ウタとロビンは向かい合う。
最初に切り出したのはウタだった。
「質問するから、素直に答えて」
「ええ。分かったわ」
「ね、ねえ、ウタ。嘘だって、つくかもしれないのよ」
「関係ないよ、ビビ。大抵の嘘なら、
「……いい耳を持っているのね」
「えへへ。それほどでも!」
コホン、と咳払いをして、ウタは事情聴取を始めた。
「それでは、あなたの経歴を教えてくださいな」
「八歳で考古学者。そして賞金首になったわ」
「そんな小さいときから!?」
「そういう家系なのよ。そして、その後二〇年、政府から姿を隠して生きてきたわ」
「二〇年も逃げられるものなの?」
素直な疑問だった。
理由は当然、
ガープがいなければ、今頃自分は政府にとらえられていたのだから。
小さくロビンは笑って、その疑問に答える。
「もちろん、子どもでは無理だった。だから、悪党に付き従う事で身を守ったわ」
淡々と、ロビンは過ぎ去った地獄を語る。
「お陰で、裏で動くのは得意よ?」
「お、自信満々だね! 例えばどんなの?」
「暗殺♡」
「なるほど! みんな、この人は一切嘘をついてないよ!」
「なおさらやべえじゃねえか!!」
ウソップが即ツッコミを入れた。
だが、そんなものは気にしていないルフィと、そもそもロビンが最初に麦わらの一味に来たときにはまだ仲間でなかったチョッパーが、ロビンが咲かせた腕と遊んでいた。
「ん〜〜?」
くにゃりと曲がった腕につられるように二人は横に身体を倒し、そのまま引っくり返る。
そのままロビンの能力によって遊んでもらっている二人を見て、ウタも我慢できずにベレー帽とコートを投げ捨てて飛びつく。
「私も遊びたーい!」
「ち、ちょっとウタ!」
心配そうにビビが声をかけるが、そんなビビの前にもロビンの手が現れる。
「な、なによ。私はこんな子ども騙しには……」
ふりふり、と。
ビビは目の前で左右に揺れるロビンの手を目で追ってしまう。
「……子ども…………騙しには……」
本人も忘れていたが、ビビはネコネコの実を食べた能力者だ。
強力な能力を持っているとしても、気を抜いて戦うつもりがないときは、彼女にはネコっぽい本能のようなものあるだけの元王女様なのだ。
「にゃにゃにゃ……っ!」
ぶんぶんぶん! とビビはロビンの手をぺしぺしと叩いて遊んでしまっていた。
その姿を見て、うんざりとナミは首を横に振る。
「ビビ……」
「——はッ!」
本能に負けてしまったことに後から気づいて、ビビは顔を真っ赤にしてその場に崩れ落ちた。
「……私は、なんて恥ずかしいことを……」
「ビビらしくていいじゃん! ほらほら〜」
落ち込むビビのアゴの下をウタが撫でると、ビビはくすぐったそうにしながらも気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
「…………って、なんで恥を重ねさせるのウタっ!」
「あはははっ! かわいーっ!」
シャー! っと牙を剥いてウタとビビがじゃれあっている横で、いまだに冷静なナミは小さな声で問いかける。
「あなた、まだ話していないことがあるわよね?」
「なにかしら? 聞かれたのなら、答えるわよ」
「古代兵器”ヴィーナス”。あなたが前に私たちに言った言葉よ。あの時にウタを悲しませたの、私は忘れてないからね」
ウイスキーピークから出た際に現れたロビンが言った、得体の知れないそのヴィーナスという名前にはウタが関わっているのだと、ロビンは確かに言っていた。
そして、ロビンはそのときにこう言っていたのだ。ウタは
「別に、私自身は兵器には興味はないのだけれど。でも、嘘は一言も言ったつもりはないわ」
「じゃあ、ウタは本当に……!?」
「それは私には分からないわ。これはあくまでも推測の域を出ない。そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
曖昧な返事に、ナミは眉間にシワを寄せた。
これでは、何も前に進んでいない。
「ねえねえ、なんの話してるのー?」
「あんたの話よ! 聞いててよ、ちゃんと!」
「聞いてるけどさ。それってそんなに大事なことなのかな?」
ケロッとした顔で、ウタは言う。
「確かに、初めて聞いた時はショックだったけどさ。でも、あの後にちゃんと分かったもん。私には、みんながいるって」
ニッコリ笑ったウタは、ルフィへ声をかける。
「ねえね、ルフィ。私、兵器かもしれないんだって!」
「何言ってんだ? ウタはウタだろ」
「……ね?」
パチリとウインクをしたウタを見て、ナミははぁと息を吐く。
「それじゃあ、せめてあなたが知ってる情報を教えなさい」
「ウタウタの力が関わっていること。私が見つけた文献には、ヴィーナスとその実の力になんらかの繋がりがあったことしか書かれていなかったわ」
「じゃあ、保管庫っていうのは」
「果たしてウタウタの実が本当に保管庫にあったのかは、私は知らないわ。ただ、
ロビンが悪党たちの中を点々とする中で、さまざまな情報を耳にしてきた。
その中にこんな話があったのだ。
「政府は重要な悪魔の実を手に入れた場合、厳重な警備の元で悪魔の実をどこかへと輸送しているの。行き先は不明。用途も不明。でも、送られるということは、保管されるということ」
「ちなみに、ウタの出身はどこなの?」
「うーん。シャンクスからは教えてもらえなかったんだよね。それに、シャンクスに拾われる前の記憶はまったくなくて」
しかし、ウタはまったく気にしていないようだった。
「まあ、どうでもいいよ、そんなこと! どこで生まれたって、私は私だからっ」
「……そういう子だったわね、あなたは」
「そういえば、一つだけあったわ。ヴィーナスについての記述が」
ロビン曰く、その情報には信憑性がないらしい。ヴィーナスという名前は複数回目にしたが、その記述だけは古い文献にたった一度しか記されていなかったようなのだ。
「読み取れたのはいくつかの単語だけだったけれど『金色の衣』『女神』『空想』この三つの単語があったの。
「きっと、冒険すれば分かるよ! 海はとっても広いんだもの!」
ウタは楽しそうに腕を広げて大空を見つめる。
その場でくるりと回転したウタは、ロビンの目をまっすぐに見つめて、
「じゃあ、最後! あなたの夢は?」
「私の、夢……?」
「うん。海賊、やるんでしょ? 夢もロマンもないのに、冒険なんてできないじゃん!」
ワクワク、とウタはロビンを見つめてその場でふらふらと動く。
じっとしていられないのか、足踏みをしているウタを見て、ロビンはクスッと笑う。
「私の夢は歴史を知り、紡ぐこと。この世界の闇に埋もれてしまった歴史を掘り起こして、次の世界に伝えたいの」
「とっても素敵な夢! 絶対に叶えようね!」
無邪気な笑顔を見せるウタを前に、ロビンは素直に驚き、目を丸くしていた。
その明るさに戸惑いながらも、ロビンは頷いた。
「ええ。よろしく、歌姫さん」
「……私はまだ、信用してないわよ」
ウタとは違い、ナミはロビンの言葉の真意までは聞き取れない。
ゆえに、いまだに警戒をしているようなのだが、
「ああ、そういえば。クロコダイルから宝石を少し持ってきちゃった。いるかしら?」
「いやんっ! 大好きよ、お姉様♡」
「ソッコーで買収されやがった!」
ゾロとウソップがツッコミを入れる。
一味たちの中で警戒しているのはこの二人だけなのだ。
ルフィとチョッパーはロビンの手で遊んでいるし、ビビはいまだにロビンの手にじゃれているし、サンジはまたロビンのためのお菓子を作っているし、カルーに至っては、
「見てみて! カルーの真似! クエーっ!」
「クエーーっっ!!」
ロビンの能力で大量の手を背中に生やして翼に見立てたウタが、カルーの真似をして遊び、カルーもそのポーズを真似して楽しんでいた。
それを見て、ウソップも笑い出す。
「ギャハハ! なんだそれ、ウタ!」
「…………ったく、どいつもこいつも」
呆れたゾロは手すりによりかかってため息を吐く。
そんなゾロの隣に、ウタはささっと駆け寄って、
「ほらほら、険しい顔しないのー!」
「お前がなんと言おうと、おれはいつでも剣を抜けるようにするぞ」
「大丈夫大丈夫。安心してってば!」
バンバンとゾロの背中を叩いたウタは、あからさまに嫌そうな顔をするゾロを見て楽しそうに笑う。
「さあさあ、気を取り直して冒険だよ! ナミ!
「西北西にまっすぐね。順調よ」
「よーし! 仲間も増えてきたことだし、どんどん行こう! ね、ルフィ!」
「おう! 冒険だー!」
「目指すは世界の果てまで! 海も空もどこまでも広がっていて、何が起こるか分からないから、冒険は楽しい——」
そんな言葉を、ウタが言い切るより先に。
ウタの言葉に応えるように、予期せぬ事態が起こる。
「……雨?」
最初にゾロがそう呟いて直後、それが雨ではないことが分かった。
木片だった。
朽ちて腐った木片が、空から雨のように降り始めて。
「空から……!?」
「船が……!!?」
「振ってきたァ〜〜〜!?!?!?」
メリー号の何十倍もあるガレオン船が、空から降ってきたのだ。
すさまじい音と波を立てて水面に落ちてきたガレオン船の衝撃に、メリー号全体が震える。
思わず全員が船にしがみつくが、船の揺れ方があまりにも大きく、油断をすれば簡単に船などひっくり返ってしまいそうだった。
「舵を切れ!」
「きくかよこの波で!」
「ルフィ! 一緒に船を守るよ!」
「おう! ウソップも頼む!」
「ああ、おれが危険なものがないかを見て…………って、うぎゃああああ!?!?」
ガレオン船の落下に遅れるように、人骨自体が目の前に降ってきた。
動転したウソップは思わずその骨をぶん投げて、
「きゃあぁぁぁあ!? そんなの投げないでよ、アホ!」
「また落ちてくるぞ〜!!!」
「どうにか耐えろ!!!」
そんなこんなで、本日の天気は晴れ時々ガレオン船。
「なんだったんだ、これは……」
「空には何もなかったのに……」
「……え!? 嘘でしょ……!?」
「どうしたの、ナミ?」
ナミの方へ視線を移すと、ナミは青ざめた表情で
さらにその針はどう考えても西北西へは向いていなくて。
「
「…………それはきっと、故障ではないわね」
言ったのは、ロビンだった。
「新しい
ロビンは静かに、空を見上げた。
「空島に……
その言葉に嘘をついている様子がないことは、ナミでもはっきりと分かった。
活動報告に、アンケートへのご意見や、今後の展開や掛け合いで見たいものを募集する場所を作りました。
なにかあればそちらにもらえればと思います。
よろしくお願いします!