麦わらの一味「歌姫のウタ」   作:さとね

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大変お待たせしました。
空島って構成がとても綺麗なので、少しずらすと歯車が狂うのでまだ調整に手間取ってます。
考えれば考えるほどワンピースってすげえって思います。


第四十二話「無法者の町」

 

「今日は何かおかしい日だったぜ……」

「巨大ガレオン船が降ってきたと思ったら」

「指針を空に奪われて……」

「妙なサルが現れて船を引き上げる」

「でも船ごと食っちゃうでっけーカメにあって」

「夜が来て……」

「巨人の何十倍もある大怪物……!」

 

 怒涛の展開に心身ともに疲弊した一味たちは、ぐったりと床に座りって今までのことを振り返る。

 どこをとってもあり得ないの連続を、最後に締めたのは、サルみたいな見た目をした大柄の男だった。

 

「さすがにあれにはビビったね、どーも……」

 

 ふう、と全員が一つ息を吐いて、

 

「出ていけ〜〜!!!」

 

 マシラを全員でぶっ飛ばして、麦わらの一味はようやく休みを取り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 その後。

 ナミは普通に怒っていた。

 

「あんたたち! 何のために海底に潜ってたの!」

 

 ナミが指差したのは、ルフィやウタたちが沈没船から引っ張り上げてきた品々。

 本人たちは財宝を拾ってきたと言っているのだが、その中には財宝と呼べるものは一つもない。

 錆びたヨロイ、割れた陶器、欠けたナイフに謎の小舟と大きいだけの貝。

 

「こんなガラクタばっかり持ってきて、空への手がかりなんて一つもないじゃない!」

「だから何もなかったんだ!」

「そうだよ! ね、サンジ!」

「ああ、ウタちゃんの言う通りなんだ、ナミさん」

 

 サンジはどうにか持ってきたガラクタを見下ろして、

 

「あの船は何者かに荒らされた後だった。でなけりゃ内紛が起きたかのどっちかだ」

「だったらなおさらじゃない! 空へ行くなら、同じ目に私たちも合うかもしれないのよ!」

「まあまあ、ナミってば。そんなにカリカリしなくても……」

「そんな甘い考えじゃダメなのよ、ウタ!」

 

 いつも間にか錆びた盾と槍を装備していたウタヘ、ナミはビシッと指を指した。

 

「情報が命を左右するのに、なにこの錆びた剣! 食器! 貝! 必要なのは海図とか日誌なの!」

「あああああ!」

 

 ガシャガシャとナミに踏み潰されているガラクタたちを、ゾロとサンジが悲しそうに見つめる。

 さらに、ヨロイで身を固めるルフィと盾と槍を構えるルフィとウタヘ、ナミは自然を移して、

 

「それで、あんたたちのそれはなに?」

「かっこいいでしょ!」

「かっこいいだろ!」

 

 ゴンッ! と愛の拳が二人の脳天に突き刺さった。

 想像以上の威力に、七武海を落とした賞金首たちがその場に崩れ落ちる。

 

「だ、大丈夫、ウタ!?」

 

 心配そうにウタヘ駆け寄って、ビビはウタの頭を撫でる。

 ビビが撫でてくれたからか、すぐに回復したウタは負けじとナミへと向かう。

 

「だったらこれはどう、ナミ! おっきい貝! 可愛いでしょ!」

「いらないわよ、アホッ!」

「うえ〜ん! ビビぃ〜!」

「わ、私はかわいいと思うわよ、その貝!」

 

 泣きついてきたウタの頭をポンポンと叩いて、ビビはなだめる。

 はぁ、と息を吐いたナミへ、一味の様子を眺めていたロビンがねぎらいの言葉をかける。

 

「大変そうね」

「本当よ、まったく。これで完全に行き先を失ったわ!」

 

 この偉大なる航路(グランドライン)では、記録指針(ログポース)に従って進む以外の航路がない。

 その指針が上へ向いてしまって、さらには空に行くための方法すらないのだから、どうやっても詰みなのだ。

 しかし。

 

「はい、これ。さっきのおサルさんの船から取ってきたのよ」

「え、これ……永久指針(エターナルポース)……!?」

 

 それに書かれた名前はジャヤ。

 どうやらその島が、彼らの本拠地らしい。

 

「ジャヤってところなら行けるの?」

「ええ。これなら問題ないわね」

「よぉ〜し! ジャヤ舵いっぱ〜い!」

「空島への手がかりを探しに行くぞー!」

 

 ピョンピョンとその場で跳ねたウタは、その途中でぴたりと止まる。

 

「あれ、でもジャヤに行ったら記録(ログ)が上書きされちゃわない?」

「行ってすぐ記録(ログ)が溜まるわけじゃないわ。その前に情報を集めて島を出ればいいんじゃないかしら」

「お! それなら問題ないね! よぉ〜し、ジャヤ舵いっぱ〜い!」

 

 ルフィはメリー号の船頭に乗って、大きく手を広げる。

 行き先は一時、謎の土地ジャヤへ。

 空島への準備への航路を、麦わらの一味は進み始める。

 

 そして、そこから数刻。

 気候もかなり安定をし始めて、ジャヤが近づいてきたことがそれだけで分かる。

 ぽかぽかした穏やかで暖かな風は、ジャヤが春島であろうと感じさせてくれる。

 

「春はいい気候だな。カモメも嬉しそうだ」

 

 チョッパーがのんびりと見上げた先には、カモメが三羽。

 ゆったりと空を飛んでいた……のだが。

 ボトトト、と。

 カモメが空から落ちてきたのだ。

 瞬間、ウタが進行方向へ視線を移す。

 

「そんな……!?」

「ど、どうしたんだ、ウタ!? 敵か!」

「ううん! たぶん、敵じゃない……けど」

 

 ウタはカモメへと視線を戻す。

 落ちてきた瞬間に、まだギリギリ生き残っていたカモメの感情が何となく聞こえたのだ。

 ——撃たれた、と。

 

「チョッパー! そのカモメって……!」

「う、撃たれてるんだ! ほら、弾もある!」

 

 ウタの背筋に悪寒が走る。

 銃声が、聞こえなかったのだ。

 

「——ウソップ!」

「……わりい、ウタ。おれには、見えねえ」

 

 メリー号のマストに登って必死に周囲を見渡すウソップだが、彼にも銃撃の相手は見えていない。

 だが、そのうちにウソップは小さくつぶやいた。

 

「いや、いるぞ……! なんとなくしか分からねえが、確かにやべえやつがいる……!」

「こっちへの敵意は……なさそう、かな?」

 

 警戒をし続けるウソップとナミ。だが、そんな中で船頭のルフィは呑気に背伸びをしていた。

 

「なんだ、敵か?」

「敵ではないと思う……けど」

「警戒した方がいいぜ! あのやべーやつ、たぶんこれから向かうジャヤってところ、危ないんじゃねえか……?」

 

 心配そうにしているウソップを見上げて、ルフィはぐっと背伸びをする。

 

「大丈夫だろ。つえーやつが出てきても、ぶっ飛ばせばいいだけだ!」

「あははっ! そーだね、ルフィがいるなら安心だ!」

「よーし! それじゃあ気にせず、ジャヤ舵いっぱ〜い!」

 

 そうして、麦わらの一味はジャヤへ向かい……

 

 

 

 

 

 

「「ワタクシはこの町では決して、ケンカしないと誓います」」

 

 船を降りたルフィとウタは、ナミに言われた言葉を復唱していた。

 その理由は、港の至る所に停まる海賊船たちだった。

 

「いい? この町にはどうやら海賊たちがうようよいるの。変なことをしたら、すぐに騒ぎになって情報収集どころじゃなくなる。空に行くために、ケンカはしないこと。分かった?」

「「はーーい」」

「心配ね……」

「大丈夫よ。私もついていくから!」

「余計に心配ね……!!」

 

 ルフィとウタに続いて、ビビが二人に続く。

 海賊になって最初についた島なのだ。冒険の始まりを船で待っていられないらしい。

 

「カルーは船番、任せたわよ!」

「クエー!」

 

 長距離の移動がないため、カルーはチョッパーと遊んで待つことに。

 そして、このメンツが心配なナミは、用心棒としてゾロを引っ張り出し、五人でジャヤでの情報収集を始めることにした。

 海賊が多いので、何かあった時のためにサンジも船に残ってもらう。

 いつの間にかロビンがどこかへ行ってしまっているが、おそらく別で情報収集をするのだろう。

 

「本当に騒ぎだけは起こすんじゃないわよ!」

「あーーー」

「何その気の抜けた返事は、まったくもう!」

 

 うんざりとナミがため息を吐いた直後、目の前でドサリと人が倒れる音が響く。

 見れば、真っ黒な服を着た白髪の男が、顔面蒼白で真紅の血を吐き出してるではないか。

 どうやら、隣に立っている白馬から落ちてしまったらしい。

 

「すまんが、お前ら……立たせてくれ……」

「だ、大丈夫!?」

「いやいや……悪いな」

 

 すぐさま衰弱した男を馬に乗せたウタへ、男は微笑みながら、

 

「助かった……。おれは生まれつき体が弱いんだ……ハァ……行こう、ストロンガー」

「ガブッ」

「「いや馬も弱いのかい」」

 

 ルフィとゾロがスパッとツッコミを入れる。

 ウタやビビは馬のことを心配しているようだが、なんとか進むことはできるようだった。

 

「お礼と言っちゃ何だが……おひとつどうだい……?」

 

 男が差し出してきたのは、りんごが山積みされたバスケット。

 どこからどう見ても怪しいそのりんごに、ルフィとウタは迷いなく手を伸ばした。

 

「「いただきます」」

「ち、ちょっと。ルフィ、ウタ!? そんな無警戒に口に運ぶなんて……!」

 

 りんごを迷わず咀嚼し始めたルフィとウタへ、ビビが声をかけるが、その直後。

 ドォン! とすぐ近くで爆発が起こった。

 そして、その原因を語る町人たちの声が聞こえてくる。

 

「さっき妙な男からリンゴをもらったやつらが……五人、爆発したんだ!」

「店の中は惨劇だぜ……!」

 

 モグモグと、そんな言葉を聞きながらルフィとウタはリンゴを飲み込んでいた。

 二人の首根っこを掴んで、ナミとビビが声を上げる。

 

「ル、ルフィ! いますぐそのリンゴを吐き出しなさい!」

「ウタもよ! 死んじゃうわよ!」

「……うーん。多分、大丈夫だと思うけどな。……だよね、おじさん?」

「アハハ……その通り。ハズレを引いたなら、もう吹き飛んじまってるはずさ……」

「運がいいね、私!」

「それだけじゃねえだろうに……アハハ……面白いやつらだ……」

 

 パカ……パカ……と重々しい足取りで、白馬に横たわった白髪の男は去っていく。

 リンゴを食べ終わって呑気にまた歩き始めるルフィたちの横で、ナミは苛立ちを露わにしていた。

 

「なんなのよ、この町!」

「まー、そう荒れんなよナミ」

「あんた、意味もなく殺されかけたのよ!」

「海賊がうようよいるんだから、そんなときもあるよー」

「なんでウタもそんな呑気なのよ! ビビも言ってあげて!」

「これが……海賊……っ!」

「ちょっとワクワクしてるんじゃないわよ、アホっ!」

 

 ナミはルフィたちを怒鳴りつけて先頭を切って進む。

 道中、雄叫びを上げる格闘チャンピオンに奪われかけた視線を強引に正面に戻し、目的である情報収集の場を探していた。

 

「ここは素敵ね。ガラの悪い町だけど、静かなところもあるみたいね」

「私はもう少しワイワイしてる方が好きかも」

「でも、美味そうな匂いはするんだよなぁ」

「……確かに、いい匂いがするわね」

「なんでもいいけど、酒が飲みてえな」

 

 クンクンと鼻を鳴らすビビの横で、ルフィたちはグイグイと先に進んでいく。

 だが、奥から出てきた店主のような男は、なにやら困ったような顔をしていた。

 

「お、お客様! ただいまこの『トロピカルホテル』は、ベラミー様ご一行の貸切となっておりまして」

「ありゃ。貸切なんだー」

「いいじゃん、中に入るくらい」

「ベラミーって誰よ」

 

 ルフィたちが引かずに立っていると、後ろから声が響く。

 

「おい、誰だその小汚い馬の骨は……」

「サ、サーキース様! これは、その……!」

「言い訳はいいから早く追い出して! 貸切にいくら使ってると思ってるの!」

「ってことで、帰れ、クソガキ」

 

 サーキースと呼ばれた銀髪に成金のような毛皮のコートを羽織る男が、ルフィを睨みつけた。

 当然、そんな態度にルフィが納得するわけもなく。

 

「なあ、こいつぶっ飛ばしていいか?」

「ほらほら。ナミと約束したでしょ、ルフィ」

「そうだった」

 

 ケンカはしないと約束したルフィのボーッとした顔を見て、サーケースは嘲笑を浮かべる。

 

「面白ェ奴らだ。このおれをぶっ飛ばす?」

 

 得意げな態度を崩さないサーキースはコートのポッケに手を突っ込んで小銭をルフィたちの前に投げ捨てた。

 

「それにしても貧相なナリだな。これで好きな服でも買うといい」

「え、いいの!?」

「やったぞ、肉が食える!」

 

 喜んでお金を拾おうとした二人の服を引っ掴んで、ナミは去っていく。

 

「行くわよ、不愉快!」

「ナミ。一ベリーでも大切なお金よ……?」

「いいの! あんなお金いらないわ!」

「なんだ。要らないのか……ハハハ!」

 

 嘲るサーキースを尻目に、ルフィたちはホテルを後にした。

 そうして向かうのは、情報収集には不可欠である酒場。

 ここには多くの人がやってきては、いろいろな話をして去っていく。情報通な人間がいたり、物知りな店主がいたり、情報を得るのなら酒場が最適なはずだ。

 

「ぷはー!」

 

 酒を美味そうに飲む横で、ナミは店主に声をかける。

 

「おじさん。ここの記録(ログ)はどれくらいで溜まるの?」

「そうだな。四日ってところか。この町には無法者たちしかいねえから、記録(ログ)が溜まったら早めに出た方がいいぜ」

「なら、ゆっくりもしてられないわね。ねえ、おじさ——」

「ねえ、おじさんっ!」

「おい、おっさん!」

 

 隣でチェリーパイを食べていたルフィとウタが、同時に声を上げた。

 さらに、その奥で同じチェリーパイを食べたみすぼらしい見た目の大男も同じように声を上げる。

 

「このチェリーパイは死ぬほどマズイな!」

「このチェリーパイ、すっごくマズイね!」

「このチェリーパイは死ぬほどウメェな!」

 

「「「……ん???」」」

 

 わずかに間があって、三人は軽く睨みつけて今度はドリンクを手にする。

 

「このドリンクは格別にウメェな!」

「このドリンク、すごくマズイね!」

「このドリンクは格別にマズイな!」

 

 ガタン! と三人は同時に席を立った。

 

「てめぇら、おれにケンカ売ってんのか……!?」

「おめえこそケンカ売ってんだろうが、やんのか!」

「私、ここのご飯全部口に合わないかも……」

 

 バチバチと火花を散らす二人の間で、ふらふらとよろけるウタ。

 ルフィと大男は依然として張り合いを続けており、今度はお土産勝負が始まる。

 

「おっさん! おれ、肉を五十個、お土産で!」

「おれはチェリーパイを五十一個、土産で頼む」

「あ、やっぱりおれは五十二個……」

「わりぃ、おれのパイは五十三個だ」

 

 そんなこんなで、二人の競り合いは続き、

 

「「なんだお前やんのかァ!?!?」」

 

 一触即発の空気がルフィと大男の間に流れていた。

 あまりに突拍子もない出来事に、ナミたちが慌てて止めに入る。

 

「約束したでしょ、喧嘩しないって! それにそんな量の肉を買うお金もないわよ!」

 

 ぐっと殴りかかるのを堪えているルフィへ、大男が問いかける。

 

「お前ら……海賊か?」

「ああ……! 懸賞金は三千万!」

「ちなみに、私はルフィよりも多い五千万!」

 

 水を流し込んで口直しを終えたウタが、ルフィに張り合うように割って入る。

 

「ああ……!? お前らが三千万と五千万……!?」

 

 ルフィとウタの顔をマジマジと見た大男は、ドカンと机を叩きつけて叫ぶ。

 

「ウソつけェ! そんなワケあるかァ!」

「嘘なんかつくか、本当だァ!」

 

 今にもケンカが始まりそうな空気に耐えかねて、店主が注文していた土産を突き出して仲裁をする。

 

「ホラホラ。店の中で乱闘はゴメンだぜ。てめぇはこれもってさっさと帰んな!」

「…………フン」

 

 袋に詰められたチェリーパイをぶん取った大男は、不機嫌そうに店から出ていく。

 ようやくその場が落ち着いたかのように思えたが、入れ替わりで入ってきた金髪の男を客たちが見た瞬間に、周囲の空気が変わった。

 青いコートを羽織った男の名を、周囲の客たちが口にする。

 

「ベ、ベラミーだ……っ!!」

 

 その名にピクリと最初に反応をしたのはウタだった。

 先ほど訪れたホテルを貸し切っていた男の名前。つまりは、悪名高い海賊。

 

「麦わら被った男と、赤と白の髪をした女の海賊が、ここにいるか……?」

 

 ベラミーは獲物を狙う粘着的な視線を、ルフィとウタに向けていた。

 




アンケートありがとうございました。
アマプラでfilmシリーズを見返す日々です。
書くのが楽しみですね。
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